最新の住宅土地統計調査のデータからみる空き家増加率
今日は「空き家率の増加」について吉崎さんに教えていただこうと思います。
空き家に対するに関するデータは、5年に一度調査される住宅土地統計調査という国の調査がベースです。
総務省がやっている調査で、国の機関統計。
国勢調査など、とても重要な調査の一つです。
内田:でも5年に一度って結構長いですよね。
吉崎:国勢調査って大変な調査なんですよ。
ちなみに2023年の調査が2024年に発表されていて全世帯の17分の1の標本調査ですので、340万件が対象です。
相当な量ですね。
これは住宅や土地なので、例えば秋田県などの山の方の調査と東京でいうとデータが全然違います。
ある程度数がないとそのサンプル調査の有効性が欠けますよね。
内田:確かにそうでしょうね、ぶれそうですもんね。
吉崎:ぶれそうです。その統計調査結果が全部は出ていませんが、今回一部発表されました。
量が多く速報のような感じで順次出しています。
今回は住宅総数と空き家。
一番注目しているでしょう、ということで4月30日に先出ししました。
調査結果ですが、住宅の総数が6,502万戸。
前回調査2018年から261万戸4.2%の増です。
内田:過去最多だそうですね。
吉崎:これは調査以降ずっと最多ですね。
そもそも、昭和23年に「戦後の住宅状況がどうなのか」「ちゃんと家があるのか」というようなことを調査したわけです。
どんなふうに皆さん住んでいますか?という調査ですね。
住んでいないところ(空き家)は全国で900万戸でした。
内田:これも過去最多ですね。
吉崎:前回調査が849万戸で51万戸増ですが、空室率で見れば13.8%。
前回調査が13.6%細かく言うと13.55%、前々回調査は2013年が13.53%と。
内田:ちょっとずつ増加しているんですね。
今後はどうなる?
しかし、メディアは空き家率過去最多増と書いていましたが、正しく書けば横ばいということですね。
四捨五入すると一緒ですもんね。
吉崎:ただ1993年から今回の30年間ので見て実数で見れば倍くらいになっていますが、2014年の秋だったかな、2015年だったかな…
民間のシンクタンクが今後の予測を発表しました。
その予測を見れば、23年の空き家率は何と21%予測だったとのことです。
内田:全然違う数字ですね。
吉崎:全く違う数字ですね。
前回の2018年調査も予測は16.9%でこちらも予想大外れ。
ちなみにこの後、この予測では25.5%、2028年調査ではぐんと上がるという調査になっていますが、恐らくこうならない。
後で説明しますけど、現状全くこうはなっていません。
内田:予想と何が違うんですかね。
吉崎:まず事実だけ言っていきましょう。
空き家には4つの種類があるという話はここでも何度かした記憶があります。
一つ目が賃貸住宅の空き家、世に言う空室ですね。
二つ目が売却前の住宅、つまり未売却物件。
三つ目が二次的住宅。
これは別荘ですね。主に仮眠所みたいなところ。
そして長期不在の住宅。
四つ目はいわゆる倒壊の恐れとか景観を損なう物件。
内田:問題は4番目のこの長期不在ですね。
吉崎:今回この問題の4番ですが、例えば東京都で見れば全体の全ての中の約13%が全国平均の空き家でしたけど、4番は東京都では2.6%、前回調査では2.3%ちょっと増えましたけども、2%台です。
神奈川県は3.2%で2番目に少ない神奈川と前回調査は3.3%と。
内田:これもほぼ横ばいですね。
というか減っていますね。
吉崎:続いて沖縄県は4%。前回調査は4.1%。
内田:これも減っている。
吉崎:福岡県で今回調査が4.6%、前回が4.3%というところで今ざくっと挙げましたけど、全部で4県。
それから前回調査よりも下がっていくところと増えてるところがあり、確かに地方などちょっと増えているところもありますが、他のエリアでも0.1ポイントとか0.23ポイントぐらいが多いですね。
内田:そうすると本当に僅かなんですね。
吉崎:賃貸住宅亡き後、別荘と売却物件の住宅を除けば、東京なんか約2%しかありませんからね。
内田:これで問題なの?っていうと…確かに数は増えているので問題なんだけど、それで危険が及んだりする声もあるわけですからね。
空き家が減っている理由
想定以上に減った理由から行きましょう。
まず一つ目が2015年に空き家対策特措法というのができました。
そういう危ない家は強制的に指示を出して潰してくださいというような「強制代執行」をしますよ、というものが強化されました。
それが効いているんです。
そして、補助金も結構出しています。
解体マックス100万円まで出しますよというのが効いている。
それともう1つ日本経済新聞でも出てますが、住宅メーカーが買い取りなどをしていて、空き家にならないようにしている。
なるほど。
自分のところで作ったから責任を持って、みたいなね。
吉崎:リフォームして再度売りとかしているところや大都会大都市部では、再開発がすごい進んで都会再開発が進むと、一体開発として周辺のいわゆる使っていないようなもの、またはこの将来空き家になりそうなものは一緒に開発しますので、それで減っていってる。
これらのことが相まって想定以上に増えていないというのが空き家の現状です。
ただし、超過疎地なんかでは空き家は増えていることは事実です。
といういうことで、空き家問題完全に都市部と地方では状況が違います。
都市部の中でも例えば地方の中心部もそうですし、県とかの単位で見れば人口は減少していますが、県庁所在地などでは人口が増えているところもありますから、そういうところでは徐々にですが比較的解消に向かっています。
ただしやっぱり山間部とか人口が著しく減少しているようなところでは、空き家はかなり増えています。
そしてそれも今ワーケーションに使ってくださいね、などその各地域地域の自治体が活用する取り組みをしています。
内田:そうみたいですね。
カフェにしたり、いろいろなことやってますよね。
吉崎:最後にもう1つ。
最後に売買仲介が進まないというのがあって、要は価値がすごく低い100万とか200万とかもっというと50万などで売買していると、仲介会社は手数料をほとんどもらえないわけです。
儲からないからないから手がけない。
そこに対してここぐらいまでなならもらっていいですよ、というようなことを今しようとしている。
空き家問題はかなりいろんな対策が行われているというのが現状です。
内田:問題だ問題だっていうのをいろんなメディアでも言っていることですが、意外にちゃんと進んでいるんですね。
吉崎:徐々に徐々にですけど進んでいるので、予測が結構外れてきているということになります。
日本では2010年代前半も大問題と言われてましたけど、徐々に都市部では解決に向かいつつあるということだと思います。
内田:なるほど。空き家問題ちょっと大変だよっていうメディアを見たら「違うね」と思えるようになりますね。
吉崎:それぞれだよっていう。
全部とは言わないけど、大分良いところもあるよという話だと思いますので、しっかりと情報を得ていただきたいなと思います。
※ 本記事はラジオNIKKEI第1「5時から”誠”論 NEXT」の番組内コーナー「ワクワク人生COCO the Style」の内容を抜粋/改変したものです
※ 2024年5月13日(月)放送
※ 日経ラジオ社の承諾を得て作成しています