「元本保証の投資」の仕組みと特徴を解説
はじめに元本保証投資の仕組みと特徴について解説します。
投資=リスクという常識を覆す「元本保証型」
一般的に、投資といえばリスクを伴うものと認識されていますが、元本保証型の投資商品はその常識を覆す存在です。
投資と聞くと「○○万円の損失が出た」「日経平均株価が下落し…」などの言葉を耳にする方もいらっしゃることでしょう。投資は増えるだけでなく、減ってしまう危険なものと捉えている人も多いです。
そんな中元本保証型投資とは、元本(投資額)が減少しないことを保証する金融商品を指し、資産保全を最優先に考える投資家に適した選択肢といえます。
代表的な元本保証型商品には、銀行預金、定期預金、個人向け国債(変動10年型)などが挙げられます。
これらの商品は、投資元本が毀損するリスクがないため、安全性を重視する投資家や資産形成を堅実に行いたい層に支持されているのです。
完全保証 vs 条件付き保証の違いに注意
元本保証型投資には、「完全保証型」と「条件付き保証型」が存在し、それぞれリスク特性が異なります。
完全保証型とは銀行預金や政府保証が付帯する国債が代表例です。
金融機関が破綻した場合でも、預金保険制度(ペイオフ)や政府保証により、一定額までの元本と利息が保護される仕組みとなっています。
条件付き保証型は仕組み債や特定の投資信託が該当します。特定の市場指標や契約条件を満たすことで元本が保証されますが、条件を逸脱した場合には元本割れが生じるリスクがあるため、リスク評価が不可欠です。
元本保証型投資を選択する際には、その保証の範囲や条件を正確に理解することが求められます。特に、条件付き保証型では、市場環境や金利変動が影響を及ぼすため、商品特性を十分に分析した上で判断すべきです。
どんな人に向いているのか?
元本保証型投資商品は、以下のような投資家に適しています。
- リスク回避志向が強い投資家:投資元本を絶対に減らしたくない人
- 資産保全を優先する高齢層:リタイア後の生活資金を減らさず、安定的に運用したい人
- 運用経験が少ない初心者層:投資リスクを抑えつつ、金融商品の仕組みを学びたい人
ただし、元本保証型はリターンが相対的に低くなる傾向があり、高利回りを狙う投資家には不向きです。自分のリスク許容度や投資目的を的確に見極めた上で、ポートフォリオ全体のバランスを考慮しましょう。
元本保証のあるおすすめな投資商品5選
ここでは元本保証のあるおすすめな投資商品を5つ紹介します。
- 定期預金(ネット銀行型含む)
- 個人向け国債(変動10年など)
- 学資保険・年金保険
- 仕組預金(条件付き元本保証に注意)
- 企業型・個人型確定拠出年金の元本確保型商品(iDeCo含む)
それぞれの特徴を解説するので、自分に合う投資商品を見つけましょう。
定期預金(ネット銀行型含む)
定期預金は、金融機関に一定期間お金を預けることで利息を得る金融商品です。元本保証があり、預けた金額が減る心配がないため、非常に安全性が高い特徴があります。
特にネット銀行型の定期預金は、金利が高めに設定されていることが多く、効率的に資産を増やせるようになりました。
定期預金は金利が事前に確定しているため、リターンが予測しやすいです。さらに預金保険制度で1,000万円まで保護されているため、銀行破綻時も安心できます。
一方で中途解約すると元本は保証されても利息がほとんど得られない。ネット銀行の場合、店舗がないため直接相談しづらいなどのデメリットもあります。
定期預金は、まとまった資金をしばらく使う予定がない場合に最適です。特に、ボーナスや臨時収入を預けておくことで、リスクを抑えながら確実に増やせることでしょう。
また金利が高いネット銀行を利用することで、通常の銀行よりも多くの利息を得られるため、ネット銀行での定期預金がおすすめです。
個人向け国債(変動10年など)
個人向け国債は、国が発行する債券であり、元本が保証されています。特に変動10年型は、金利が市場に連動して変わるため、低金利環境でも最低0.05%の金利が保証されています。
国が元本を保証しているため、リスクが極めて低いです。
変動金利型は、将来の金利上昇にも対応できますが、購入から1年間は中途解約ができず、2年目以降でも解約すると直近2回分の利息を失う可能性があるため注意しなければいけません。
個人向け国債は、低リスクで中長期的に運用したい場合に適しています。金利が最低保証されているため、預金よりもやや有利に資産を増やす手段として利用できるでしょう。
学資保険・年金保険
学資保険や年金保険は、保険料を定期的に支払い、一定期間後に元本を含めた保険金を受け取る仕組みです。教育費や老後資金として利用されることが多い特徴があります。
保険期間満了時には確実に元本が戻ってくるため、リスクが非常に低いです。万が一契約者が死亡した場合でも支払いが免除される保障がつくケースが多いのも特徴になります。
ただし途中解約すると元本割れしてしまうケースも多いため、解約の予定がないほど資金力が豊富な方や、教育費や老後の生活費を着実に準備したい方におすすめです。
仕組預金(条件付き元本保証に注意)
仕組預金とは、金融商品の価格変動リスクを管理するための取引であるデリバティブ取引を組み込んだ預金商品の総称です。通常の定期預金よりも金利が高い代わりに、為替リスクや中途解約不可といった制約が伴います。
特に外貨建て仕組預金では、為替変動によって元本割れが発生する可能性があり注意が必要です。
仕組預金は、通常の定期預金よりもチャレンジ度が高い金融商品といえます。ある程度リスクを許容できる場合や、短期間で高金利を狙いたい方に向いている投資商品です。
企業型・個人型確定拠出年金の元本確保型商品(iDeCo含む)
確定拠出年金(iDeCoを含む)は、老後資金を積み立てるための制度で、元本確保型商品を選ぶことで、元本保証が得られます。
税制優遇があり、長期運用に適しています。元本確保型商品ならリスクを抑えながら運用することが可能です。
ただし、原則60歳まで引き出しができないため、老後資金を長期的に準備する際に用いられるケースが多いです。
特に節税メリットを最大限活かしたい場合、元本確保型を選択すると安心して運用できるでしょう。
元本保証型投資のメリットとデメリット
ここでは元本保証型投資のメリットとデメリットを紹介します。
メリット | デメリット |
メリット1:元本が保証されている メリット2:精神的な負担が少ない メリット3:リスクが極めて低い | デメリット1:リターンが限定的 デメリット2:インフレリスク デメリット3:成長性に乏しい |
ひとつずつ確認しておきましょう。
メリット1:元本が保証されている
元本保証型投資の最大のメリットは、「元本が保証されている」点です。
投資した元本が減少するリスクがないため、リスクを最小限に抑えて資産を増やすことができるのです。
預貯金、定期預金、国債、元本確保型の投資信託など、元本保証型投資では、契約時に定めた元本額が確実に返還されるため、特に資産保全が求められる局面で効果的と言えるでしょう。
さらに元本保証型の投資は信用力の高い金融機関や政府が発行元であるケースが多く、倒産リスクも低く抑えられている点もメリットのひとつです。
メリット2:精神的な負担が少ない
元本保証型投資は、元本割れがないため市場変動に左右されにくく、長期的に運用する際にも精神的な負担が少ないです。
特に投資初心者の方や、貯金がなくお金の不安がある方は、日々の値動きに一喜一憂してしまい、多少の損失でも焦ってしまう方が多いです。
損失が続くと「投資には向いていない」「今後の生活をどうしよう」と悩むきっかけとなり、精神的なダメージを受けることにもなりかねません。
投資はお金を増やす手法でありながら、そのお金で精神的な余裕を持つことが目的でもあるのです。
元本保証型投資は、お金が減ることがないので、そういった精神的な負担がない点は大きなメリットと言えるでしょう。
メリット3:リスクが極めて低い
元本保証型投資の商品は、一般的にリスクが極めて低く、安定性が確保されています。
例えば、国債は国が保証しているため、そもそもリスクが極めて低いです。定期預金も、銀行が破綻しても預金保険制度(ペイオフ)により、一定金額までは保証されているため、安心して運用できます。
デメリット1:リターンが限定的
元本保証型投資は、リスクが低い分、得られるリターンも低い傾向というデメリットが挙げられます。
昨今の日本での超低金利環境下では、定期預金や国債の利息がほとんどゼロに近い状態でした。ここ数年で多少金利の上昇は見られるものの、株式等と比較するとリターンは非常に低いというデメリットがあります。
デメリット2:インフレリスク
インフレ率が上昇すると、元本保証型投資の実質価値が減少するリスクがあります。
例えば、年1%の利息が得られる投資商品があったとしても、同じ期間に物価が2%上昇すると、利息を含めた実質的な購買力は1%減少します。
つまり、名目上は元本と利息が守られているように見えても、インフレの影響で実際には資産価値が減っていることになります。
長期的な資産形成を目指す際には、このインフレリスクを考慮し、株式や不動産など、インフレに強い資産クラスと組み合わせて運用することで、リスク分散を図る必要があります。
デメリット3:成長性に乏しい
元本保証型投資は、その性質上リスクを抑えた運用ができる一方で、大きなキャピタルゲイン(資産価格の値上がりによる利益)を期待できない点がデメリットです。
元本保証型投資の商品は、安定性を重視しているため、株式や投資信託のような高リターンを狙う投資には適していません。
特に若年層や資産を積極的に増やしたい投資家には、成長性が乏しいため、長期的な資産形成には不向きです。
例えば、30代や40代の働き盛りで資産を積極的に増やしたい場合には、リスクをある程度許容できる株式や高配当ETF、不動産投資などの方が、資産の増加が見込めるでしょう。
また、リスク許容度が高い投資家にとっては、元本保証型投資だけに依存することで、リスクを取りながら資産を増やす機会を逃すリスクもあります。
そのため、元本保証型投資を一定割合に留め、残りをリスク資産に配分することで、バランスよくリスクとリターンを追求する戦略が求められます。
元本保証に「見せかけた」投資商品に注意!
知識もなく元本保証の商品を選んでも、実は「元本保証と見せかけていただけ」というケースもあり、元本割れする場合もあります。ここでは元本保証の注意点を紹介するので、ひとつずつ確認しておきましょう。
「元本確保型ファンド」の落とし穴
「元本確保型ファンド」は、元本保証型と誤解されやすい商品です。
実際には「満期時点で元本を確保できる可能性がある」だけで、途中解約や一定条件を満たさない場合には元本割れのリスクがあるため、誤認しないように注意しましょう。
特に投資信託で多く見られる形態で、契約内容を十分理解しないまま購入すると、元本割れのリスクを見過ごしてしまう恐れがあります。
販売時点の説明不足による誤解
一部の金融機関や担当者が、元本確保型を「元本保証」として説明してしまうケースがあります。
投資家側が元本保
証だと思い込んで購入した結果、運用期間中の価格変動や中途解約リスクに気付かないケースが多発しています。
仮に担当者が元本保証と伝え間違えていたとしても、それを証明できることは難しいので、契約時には商品パンフレットや重要事項説明書を必ず確認し、不明点は担当者に質問する姿勢が重要です。
信頼できる金融機関・担当者の見極め方
信頼できる金融機関や担当者を見極めるには、商品のリスクやデメリットを丁寧に説明しているかがポイントです。
信頼性の高い担当者であれば、投資商品のメリットだけでなく、元本割れや価格変動リスク、解約リスクなども具体的に伝えてくれます。
特に、元本保証型と元本確保型の違いを明確に区別して説明するかどうかが、担当者の知識レベルを測る一つの指標になるでしょう。
複数の意見を比較検討し、透明性が確保された情報を基に判断する姿勢が、元本保証型投資を安全に活用するために重要です。
元本保証投資で失敗しないためのポイント
最後に元本保証投資で失敗しないためのポイントを3点紹介します。
- 目的に合った投資を選ぶ
- 投資商品の信頼性を確認する
- 悩んだら専門家に相談する
ひとつずつ確認しておきましょう。
目的に合った投資を選ぶ
元本保証投資を選ぶ際には、まず投資の目的に合ったものを選択しましょう。
元本保証型の投資商品は、リスク回避を重視する資産運用に適しており、資産を減らさないことを優先する場合に有効です。しかし、リターンが比較的低い点を理解し、短期的な利益を求める目的には適さないことを考慮しておくべきです。
元本保証型の投資商品はNISAや投資信託などリターンが期待できる投資と組み合わせると、資産を守りながら効率的に増やせます。
その結果老後資金の確保や教育資金の準備なども可能となることから、長期間で安定的な運用を重視する場合に向いているのです。
一方で、低金利時代においては、元本保証投資のリターンが物価上昇に追いつかないケースもあり、実質的な購買力が低下するリスクを認識しておく必要があります。
そのため、投資ポートフォリオの一部として活用するのが望ましいです。
投資商品の信頼性を確認する
元本保証投資といっても、商品の仕組みや保証内容には違いがあるため、元本が保証される範囲や条件を十分に理解した上で選びましょう。
例えば定期預金や、国債といった公的保証のある商品はリスクが低いとされています。一方、仕組預金や特約付きの保険商品など、一定の条件下で元本割れが発生するケースもあるのです。
この点を理解しないまま、元本保証というワードを鵜呑みにしてしまう方も多く見受けられます。
元本保証の商品を選ぶ際は、パンフレットや契約書を詳細にチェックし、保証内容を十分に理解することが大切です。
悩んだら専門家に相談する
元本保証投資に関する商品は多岐にわたり、悩んだら即座にファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談しましょう。
数ある選択肢の中から最適なものを見極めるのは容易ではありません。特に投資初心者の方は金融商品の知識や経験が不足しているケースが多いため、適切な選択が出来ない可能性も高いです。
ファイナンシャルプランナーのアドバイスを受けることで、リスクやリターンのバランスを考慮し、自分の資産状況や目的に合った投資が可能となります。
特に、元本保証投資であっても、経済環境の変化や金融機関の信用リスクが影響を及ぼす可能性があるため、専門家の知見を活用することで失敗リスクを軽減できます。
定期的なポートフォリオ見直しも含め、専門家と相談しながら柔軟に対応することが求められるでしょう。
ココザスはファイナンシャルプランナーとして、元本保証型の投資や資産運用のサポートを行っております。
また、お客様の資産状況や家族構成、将来的なライフプランから適切な投資計画のアドバイスもしています。
さらに余剰金作りのための、家計の見直しから保険やローンなどについての相談も承っておりますので、ぜひ一度ご相談下さいませ。
まとめ
元本保証のある投資は、初心者やリスクを抑えたい方にとって安心して資産形成を始められる選択肢です。ただし、「元本保証」といっても商品の仕組みや保証条件には違いがあり、誤解や思わぬリスクが潜むこともあるため注意しなければいけません。
投資の目的や自分のリスク許容度をしっかりと見極めるためにも、ファイナンシャルプランナーなど専門家に相談することが大切です。
元本保証型投資を賢く活用し、無理なく安定した資産運用を目指しましょう。