今回は不動産クラファンについてお話します


社長、最近SNSで大手クラウドファンディング会社の話題が少し騒がれていますよね。
炎上とまでは言いませんが、ちょっとした騒動になっているようです。
社長もご存じですか?

大手かどうかはちょっと分かりませんが、勢いのある会社ですよね。

前に動画や記事で取り上げたりしていませんでしたか?
名前を出したことがあったかもしれませんが、「短期だから利回りが出せる」みたいな話に特化した会社だった気がします。

多分、そのほかにも非常に有名で、やはりトラブルになっているクラファンについては、うちのチャンネルで何度も取り上げてきましたよね。
でも、その動画をアップした後に、いろいろ圧力がかかったこともありまして…
あまり面倒なことには巻き込まれたくないなと思って。
それで、個別の会社については取り上げないようにしていた時期があったんです。
だから今回の件も、詳しい話や業界内での噂も一通り知っていますし…

動画で確認したい方はこちら
ヤマワケエステートのニュース


償還予定が遅れたという話でしたよね?

そうみたいですね。

大丈夫なんでしょうか?

そもそも不動産クラファンというのは、「不動産特定共同事業法」に基づいた許認可が必要で、その中でも「1号免許」、つまり匿名組合方式を使って行うケースがほとんどです。
なぜあれだけ高い利回りを出せるのか。
高いといってもどのくらいかというと、「ヤマワケさん」の場合、年利10%を超えて20%ほどで募集をしていたようですね。

不動産を買って売る、あるいは開発して売るという「開発型」だからです。

でも、利回りが10%以上、20%近くとなると、怪しいと思われたりしませんか?

そうなんですよね。
「高い利回り=怪しい」というイメージがあるようですが、そこが結びつくのはちょっと理解しがたいところで。
たとえば、目の前に大きなチャンスがあります。
通常の相場だと10億円の物件が、売主が売り急いでいて、今なら5億円で買える。
ただし、

この場合、金利が何%だろうと、5億円を集めてその物件を買い、すぐ10億円で売れば利益が出ますよね。
要は「不動産の買取再販」なんです。
だから5億円を集めるために「年利20%出しますよ」と言っても、まったく問題ないわけです。

でも、年利20%と言っても、たとえば5億円を出して物件を取得し、それをすぐに10億円で売却できるというのであれば──。
今の計算でいくと、20%を12ヶ月で割ると、

つまり、1ヶ月の利回りで言えば1.67%、3ヶ月で抑えられれば5%程度ということになりますよね。
5%というと、5億円に対して2500万円の利払いですけど、それぐらいなら余裕で出せますよね。
だって、5億円が10億円になるわけですから。
5億円分のキャピタルゲインがある中から、2500万円くらいの支払いは十分に可能です。

そうなんです。
もちろん、諸々の手数料が発生しても、それでも相当な利益が残るということなんですね。
たとえば、買い手側にも売り手側にも仲介手数料が発生するとして。
5億円の3%で1500万円、売り側が10億円なら3%で3000万円程度ですよね。
それぐらい払っても、数億円は手元に残るわけです。
つまり、インカムゲイン──賃料収入──を元にして配当を出していくような考え方であれば、

キャピタルゲインを原資として配分していくのであれば、別にこれぐらい出せる案件は実際にあると思います。

一概に利回りの高さだけで、良し悪しは判断できないということですね。

そう思います。
どうして償還延期が起こっているの?


ヤマワケさんも、今まで非常に高利回りな物件を扱ってきていて、期日通りに売却し、投資家に資金を償還することができていました。
ただ、ここにきて札幌市内の、ちょっとおしゃれな物件──オリンピックの会場なども設計した、最近何かと話題の隈研吾さんが手がけた物件ですね──そういったものをファンドとして組成していて。
その第1弾ファンド、つまりファーストは期日通りに償還できたようなんですが、


なぜ滞っているんですか?

発表通りだと思います。
直前で売買契約が流れたんです。
さっきの例でいうと、5億円で仕入れた物件を10億円で売ろうとしたときに、10億円で買うと言ってくれていた買い手が、直前で「やっぱりやめた」と言ってきたとします。
そうなると、売却を前提にしていて、売却益をもってして初めて5億円の元本と、それまでの利払いができるわけですから──。
物件が売れなければ、その原資が1円もない、という状況になってしまうんです。
別にすごく変な話ではないんですよ。
ファンドっていうのは、要は「不動産特定共同事業法(不特法)」に基づくファンドも含めてですが、物件ごとにファンドを組成して、そのお金の中で完結する仕組みになっているんです。
つまり、他のファンドで集めた資金から、

補填することはできないんですね。
ファンドごとに分別管理されているので、だから今回の件も、何らおかしな話ではないんです。
むしろ、ヤマワケさんが一方的に騒がれてしまって、ちょっとかわいそうなくらいですよ。

逆に言えば、今回売却できなかったのに投資家に期日通り償還していたら、それはそれでおかしいということですか?

それってもう「自転車操業」じゃないですか。

たしかにそうですね。

クラファンの不特法ファンドっていうのは「TK(匿名組合)出資」、つまり「出資」という形で資金を集めているわけです。


どうして貸付けだと成り立たないんですか?

だって、利回りが高すぎるからですよ。
たとえば、銀行から2%で借りられるとしたら、そっちのほうがもちろん安いわけです。
でも、さっきのように年利10%、20%、中には25%を超えるようなプロジェクトもあります。
貸付けの金利には、法的な上限があるんです。

あ、法的な話ですね。
たしか10何パーセントを超えたら…みたいな。

段階的に上限があって、一般的には年利15%が上限です。
それ以上でお金を集めたら、もう「出資法違反」になってしまうんですよ。
だからこそ「匿名組合出資」というスキームを採っているからこそ、

もちろん、それ相応のリスクがあるというのも事実です。
なので繰り返しますが、別に何かおかしなことをしているわけではないんです。
他の資金を使って返済したりしてしまうと、それはもう貸付けと同じ扱いになって、利率の上限を超えてしまえば出資法違反になってしまいます。

投資家のリスク


では、今回の件は、不動産業界でよくある「契約が直前で流れた」とか、そういう一時的なトラブルで遅れてるだけで、本質的には問題ないという理解でいいんですか?

いや、「何も問題がない」とは言い切れないと思います。
今回の件も、もし次の売却先も決まらない、なんてことになれば、それはもう「デフォルト」ですよね。
今回は延長という手続きになっているようですが、理屈上は契約書に「契約日を過ぎても何回か更新できる」とか、いろいろ書かれていると思うんです。
どこかのタイミングでは、残余財産を売却して得たお金を、投資家の出資比率に応じて分配するというのが、出資法上、そしてTK出資のスキーム上では普通の話なんですよ。
だから一番よくないのは、「100万円出資しました。高値で売却できた。
だから10数%──15%とかそれ以上──のリターンが得られています」と。
それはそれで良い話ですが、もし買い手が見つからず、売れないとか、価格が下がってしまった場合には、

これは投資家の皆さんも、契約書の中で合意している内容なんです。
つまり、「リスクがあるからリターンがある」という、極めて当たり前の話なんですが──。

SNSなどを見ていると、「100万円を投資したら、100万円戻ってくる」と思っていたり、なぜか「15%の高利回りをノーリスクで得られる」と勘違いしている方もいるようですね。

そうなんです。
だからSNSがざわつくんですよ。
この仕組みにリスクがあるということを、しっかりと理解しなければいけない。

リスクがあるという前提で考えないといけないということですね。

もちろんリスクはあります。
でも、今回のヤマワケさんの対応や現状については、悪い対応だったというわけではないと思っています。
これが「当たり前のこと」かと言えば、そういうわけではないけど、あくまで「起こり得るリスクの一例」として受け止めるべきなんです。

もし「遅れるのが当たり前」みたいな認識になったら、今後ファンドにお金が集まらなくなってしまいますよね。

繰り返しになりますが、こういったリスクがあるということは、投資家が最初から把握しておくべきことです。
今回の件は、そういうリスクが実際に表面化した事例にすぎないという捉え方です。


でも、SNSでは「遅れるっていうのが前日にわかったから、それで怒っている」みたいな声も見ました。

正直、それは内部の人しか分からないことですよね。
例えば、売買契約が締結されていても、決済の前日に手付金を放棄して解除された──となれば、それが前日になるのも無理はありません。
でも、もし何週間も前から分かっていたのに、前日まで投資家に何も伝えなかったのであれば、それは会社の姿勢としては問題だと思います。

なるほど。
結局のところ、これだけで全てが判断できるわけではなくて、やはり内部の状況やタイミングが分からないと見えない部分があるということですね。

だって、本当に予定通り決済ができていれば返済もできたはずですよ。
それに、その発表の内容だって、もしかしたら嘘をついている可能性もあるし、ありのままを正直に伝えているのかもしれない。
それは私たちには分からないじゃないですか。
あるブログ、あるいは記事では、隈研吾さんが設計した建物のうち、ファースト分はきちんと売却されたというエビデンスも出ていました。
当たり前の話ですが、以前にもヤマワケさんの社名には少し触れたことがありまして、

だって、それだけ利鞘が取れる案件となれば、それなりにリスクも伴うものです。

なるほど。
でも、出資している企業がしっかりしているという話も聞きますよね?

そうなんです。
結構まともな会社が出資していたり、親会社がしっかりしていたりする。
「まとも」というのは、不動産業界でしっかりしたパイプを持っていて、優良な物件情報が入ってくるとか、きちんとした事業会社が出資しているとか、そういう意味での「まとも」です。
だから、これは決して詐欺的な話ではないんですよ。
今回、話題になっているのは

そのWe Capitalを子会社として持っているのが、「REVOLUTION」という上場企業です。
この会社、以前は「原弘産」という社名だったと思います。
また別の件で問題になっていて。
たとえば、株主優待で人を集めて株価を上げておいて、

当然、株価は下がりますよね。
「アマギフ(Amazonギフト)をたくさん配ります、だからうちの株を買ってください」と言っておいて、配当利回りが上がる。
結果として株価が上がる──。
でも、そのアマギフを一度も配らなかった。
これは正直、超不誠実だと思います。
そんなことを、そのREVOLUTIONという会社がやっていて。
ヤマワケさんは、その「孫会社」にあたる存在なので、もしかすると、そういう一連の動きと関係があるのでは?と、SNS上では推測している人もいます。

ただ、それが事実かどうかは、正直分かりませんね。

もっと言うと、これはヤマワケさん個人がどうこうというより、ヤマワケさんが手がけている「札幌なんとかの森」みたいなファンド、つまりそのファンドごとに匿名組合を組成していて、出資後は投資家がリスクを負うという構造なんです。
出資であって貸付けではないわけですから、お金が戻らない可能性があるのは当然、投資家のリスクになります。

だからこそ、今回ヤマワケさんが使っているこのファンドはどうなのか──それぞれの案件を一つずつ丁寧に見ていかなければならない。
しかも、映像がしっかり公開されているとか、売却実績があるとか、そういった「当たり前の情報開示」ができる会社ではありません。
だから、必要以上に叩く必要はないんじゃないかと、私は思います。
そういう意味では、以前うちが取り上げていた、すごく大きなクラファン会社とは全然違います。

あちらの会社は状況がかなり危ないと言われていますよね。
Aさんも言っていましたけど、もう1年半くらい前から「時間の問題だ」と言われてましたよね。

そうですね。
投資に取り組む際は、まず仕組みをしっかり理解すること。
そして、自分にはどんなリスクがあるのかを認識したうえで、「償還が少し遅れたから詐欺だ」などと決めつけるのは、ちょっと違うんじゃないかと思います。
優先劣後を理解しよう


クラウドファンディング系の投資って、紹介ページとかに「投資家のお金は優先的に守られます」とか書いてあったりしますけど、あれはどういう意味なんですか?

それは金融業界でいう「シニアローン」「メザニンローン」といった言葉に近いですが、要は「優先劣後構造」という仕組みです。
投資家が優先される位置に出資し、運営会社側が劣後出資を行うことで、一定の損失までは投資家の元本が守られるようにするというものです。
たとえば、10億円のファンドがあったとします。
そのうち、運営会社が3億円分を劣後出資として負担するとします。
細川さんがこのファンドに出資したとして、仮に物件が10億円で購入され、15億円で売却される予定だったが、

このとき、まず3億円の劣後出資分が損失の穴埋めに使われ、残る7億円は優先出資者に全額分配される仕組みです。

つまり、事業者側が負担する分までは損失が出ても大丈夫、ということですね。

そのとおりです。
「優先劣後」というのは、あくまで回収順位のこと。
仮に事業者が30%の劣後出資を設定しているなら、資産価値が30%減までなら、優先出資者には影響がないわけです。
それなら「ノーリスク」と言ってもいいのでは、と考える人もいるかもしれません。
でも、不動産クラファンで「優先劣後があるから安心です」と言っている案件も多いですけど、本当にそうかどうかは契約書をよく読む必要がありますよ。
説明ページに書いてあることだけで判断するのは危険です。

何かあるんですか?

不動産クラファン=優先劣後システムがあるから守られる、というイメージが、ここ数年で投資家の中にすっかり定着してしまったんですよ。
だから細川さんも今回の札幌プロジェクトについて「劣後出資がある」と聞いて安心したんだと思います。
さっき私は例として30%と言いましたが、それはかなりリスクが低いケースです。
実際には、10%、20%といった設定が多く見られます。
ただ今回のプロジェクトは、


それってつまり10億円のファンドだと、100万円だけってことですか?

そういうことです。
つまり、10億円で買った物件が100万円以上目減りした時点で、もう投資家の出資分から損失が出始めるということです。

それって、ほとんど意味がないですよね。

ないに等しいです。
でも、契約書をちゃんと読んでいる人って、実はそんなに多くないんですよ。
しかも今までの不動産クラファンの流れでいうと、ヤマワケさんが過去に手がけていた案件の中には、10%とか20%くらい劣後出資していたものもあったはずです。

それで投資家が「不動産クラファンって優先劣後で守られてるんだ」っていうイメージを持ってしまったわけですね。

業界全体として、ここ数年は劣後出資をしっかり入れた案件が多かったから、そういう思い込みが広がってしまった。
新しいプロジェクトが出てくると、投資家は「今回も優先劣後あるんでしょ?」って無意識に思い込む。
でも実際には0.1%みたいなケースもあるわけで、本当は個別に契約を見なきゃいけないんです。
それなのに「不動産だから安心」って感覚で投資していたら、


今の話、ちょっと怖かったですね。
やっぱりちゃんと見ないとダメですね、本当に。

逆に考えてほしいんです。
「高確率でこの1年で15%上がります」っていう株があったら、あなた投資しますか?

いや、それはさすがに慎重になりますね。

そうでしょ?
株だったら、半分になるリスクだってありますからね。
だから不動産クラファンも、リスクとリターンはバランスしているんですよ。
実際、ほとんどの案件は期日通り償還されていますけど、償還できないケースがあっても、それは仕方ないこと。

すべてのプロジェクトがうまくいくわけじゃない、ということですね。

もしそこまで自信があるなら、投資家に分配する利回りを下げて、自社の利益を増やす方向に動くでしょう。

なるほど。

信用があって「ヤマワケさんは絶対に大丈夫」となれば、無理に高い利回りを提示する必要もない、という話になるんです。

実際にはそうじゃない。
やっぱりリスクとリターンのバランスがあるから、高い利回りが提示されているわけです。
だから、必要以上に「危ない」と騒ぐ必要はないと思います。
不動産クラファンにはいろいろな会社がありますけど、もっと怪しいところも正直ありますよ。

例えばどんな会社ですか?

無駄なリスクは取りたくないので名前は言いませんが、見れば分かるレベルのものもありますよ。
「こんなボロ物件買ってどうするの?」というような案件もあります。
そこはなかなか一般の方には見抜きにくい部分なので、過去のデューデリの動画を見て、勉強していただくのが一番ですね。
「優先劣後」という言葉だけで安心してしまう人──細川さんのような方が、実は一番やられやすいんです。
だから本当に注意が必要です。

気をつけます。
ちなみに社長、全然関係ないんですけど、なんでそんな格好なんですか?

今から温泉に行かないといけないんですよ(笑)。

旅館にいるんですか?

今日は北海道の山奥に来てまして。
温泉の時間があるので、あともう1回入ってからチェックアウトしようと思ってます。

なるほど、了解です。
今回はクラファンについていろいろ教えていただきましたが…
なんでわざわざ北海道の温泉旅館で動画撮らされてるんですか(笑)。

それは、ヤマワケさんの物件がちょうど北海道だったので、なんとなく縁を感じたということで(笑)。

なるほどね、そういう繋がりだったんですね。

今回は「出資と貸付の違い」をテーマにお届けしました。
ありがとうございました。