オルツ上場廃止…なぜ粉飾決算をしなければならなかったか


以前の記事でも取り上げましたけど、オルツというAI関連の会社が粉飾決算をしていたという報道があって、最終的に上場廃止になりました。

なぜオルツは粉飾決算をしなくてはいけなかったのでしょうか?

ITmediaでも取り上げられている記事を見ながら解説していきましょう。

第三者委員会の調査報告書によると、要は会社をよく見せてIPOを行い、高値で上場したいと。
その後も株価を上げるために、売上の9割が実態のないものだったということです。

すごい演出ですよね。「伸び続けている会社だ」と見せかけて、投資家からお金を集めるということですね。

そう。たとえば非上場のときであれば第三者割当増資で企業価値が数十億円、何百億円と上がっていくので、投資金が集まっていく。
でもその売上は、循環取引と呼ばれる、「この金額を戻すから一回入れてよ」というような手法によるものです。

そんなものは売上ではありませんよ。

悪質ですよね。

古典的なやり口です。

A社、B社、C社を経由させて、A社に売上が上がったように見せかけて、実際はC社に広告宣伝費として戻す。
C社はまたB社を経由してA社に戻す。
要はマネーロンダリングですよ。

うまく循環させてるだけなんですね。

そう。今回はA社から売上が上がっており、同じ額を広告宣伝費でA社に返しています。隠す気があるのかと思うくらいの循環取引です。

それを見抜けなかったのが、主幹事の証券会社や監査法人ってことですよね。

そう。上場させてしまった。
上場をすれば一般の個人投資家が株を買えるようになります。

結果、株を買った人たちが大損しました。
東証は大いに反省すべきです。

なかなか見抜けないんですか?

見抜く方法はありますけどね。

一般的に知られている大企業ならいいけど、よくわからない会社ばかりだったら怪しい。
そう思わなきゃいけないと思います。

そうでしたね。以前の動画でも言ってました。
そもそもオルツはなぜ上場できたのか?


審査の過程で、もともとの監査法人は循環取引の可能性を指摘してたらしいです。
当たり前にバレるはずなんです。
「どうして同じ会社の売掛、買掛が同時に存在し、かつ同額なの?」「口座の流れどうなっているの?」となるはずです。

しかしその後、監査法人を変えた後に新しい監査は「不正の疑いは感じなかった」としてしまいました。

突っ込まれたから変えたのでしょうか?

元々の監査法人に拒否された可能性があります。 よくあるパターンですね。
監査法人はしっかり仕事をするので、 「うちはそんな状態の会社は引き受けません」って断る監査法人もあります。
そうなると監査される側の創業者やCFOは困りますよね。
だからより不正を隠して、次の監査法人に持っていくわけです。
そこで問題なかったとされてしまいました。

ステークホルダー全員が自分の利益を優先してる感じですよね。

そう、ビジネスなんですよ。 引き受けたらお金になる。
みんなお金が絡んでる。
だから「自分の身は自分で守ろう」という話です。

IPOって聞くと「安心安全」みたいなイメージがありますよね。

IPO株は儲かるというイメージがありますよね。
オルツを担当していた監査法人は何をやっていた?


最初からそういうつもりの会社だったら、こうなるのも時間の問題だったんでしょうか?

結局何がしたかったのか分かりません。
創業者だけが悪いわけでもない。
ベンチャーキャピタルも株を持っていたはずだと思います。

赤字スタートアップですもんね。

筆頭株主はファンドだと思います。そのファンド達が「いけ!」「上場しろ!」と後押ししてしまった。

途中で「なんか怪しいな」と思っても「やめろ」と言えるファンドはどれだけあるでしょうか。
みんなで100億円出資している中で、不正をしているかも…?と途中で気付いたとして、「不正をやるな!」「正しいことをやろう!」と言えるかというと、多くの人が実行できないと思います。
多くの人は見て見ぬふりをするんですよ。

確かに….

「いつか本物になればいい」と思っちゃうんですよね。
いつか何百億円、何千億円の売り上げが上がる企業になれるかもしれない。
上場して売上が伸びればみんな笑顔になります。
「信じたい」んですよ。
IPOを経て株を売り抜けて自分は利益を得るという、結局ババ抜きですよね。
誰かにそのババを渡すだけ。

ババ抜きということは、誰かが泣くゲームですよね。

ベンチャーキャピタルは見て見ぬフリ?


関係者は全員それを分かっていたんでしょうか?

創業者が一番悪いですよね。

社員は分かっているので、辞めていく。
投資家も分かってるけど言えない。
監査法人も、上場時の引受人も、おそらく分かっていて見て見ぬふりなのではないかと思います。
東証も同じかもしれない。

お金って怖いですね。

小さな嘘を一度つくと、その嘘を隠すためにさらに嘘を重ねる。
最初は小さくても、最後には大きな嘘になってバレる。
誠実さが足りなかった、それだけですよ。

オルツにジョインしたCFOも関わっていたという報道もありましたよね。

監査法人とやり取りするのはCFOですから、CFOも同罪だと思います。
上場書類を見れば、新株予約権の割当や報酬額も出てます。
個人の利益のためにやったのかはわかりません。
IPO株は悪なのか?一般投資家の心構え


オルツ株を買った人は辛いですよね。

そうですね。 でも、全IPO株が悪いわけではない。
全IPO株に投資していたら、平均ではプラスになっているはずです。
うち一社が倒産する可能性を見抜けたら良いですが、東証も見抜けなかったわけですから。
これは仕方ないですね。


投資家目線では、完全に避けるのは難しいですもんね。

そう。上場資料をずっと見ていたら、売上の偏りが激しいことに気付いたかもしれません。
しかし、上場審査がある以上「まともじゃない会社はほとんどない」んですよ。
「この会社は大丈夫か?」なんて考えてもキリがありません。

本当ですね。

10年もかけて何をしていたのか、という話です。株主が損害賠償請求するとのことですので、この事件は終わりです。


IPO株でもたまにこういうことがあるということですね。

私は、IPO案件でもわざわざ若い会社に手を出す必要はないって思いますね。

本日はオルツの件についてでした。

また次の記事でお会いしましょう。ありがとうございました。