登記簿謄本の見方を学ぼう
以前に企業のDD(デュー・デリジェンス)方法で、社長が「登記簿謄本を取ってチェックをする」という話をしていましたが…
登記簿謄本を見てみたのですが、どこが重要なのか?が分からなくて…
どこを見るべきなのか?を、わかりやすく説明していただきたいです。
実物の登記簿謄本を見ながら、どこが重要なのか?を一緒にみていきましょう。
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登記簿謄本とは?
これがいわゆる…
言葉としては聞いたことはあると思いますが、軽く説明すると登記簿謄本の中にも種類があるのです。
例えば、現在事項一部証明書・全部証明書・履歴事項一部証明書、全部証明書というような形で複数の種類があります。
ただ一般的に言われている会社の登記簿謄本(商業登記簿)は、私が今出している履歴事項全部証明書を指しています。
これが会社の過去の履歴が残っている…
ここを覚えておいてくださいね。
見るべきポイント
では1番上から見ていきましょう。
まず「法人番号」がありますが、これは実は重要ではありません。
どうしてでしょうか?
基本的に登記簿の中には公表されている情報と非公表情報(表になっていない)2つが織り交ぜられてます。
今言った「法人番号」は「ココザス 法人番号」で調べると出てくる情報です。
つまり一般的に公表されてる話なので、登記簿にしか載ってない情報ではありません。
その他を見ていくと、本店の住所、会社名、辺は問題ないかな?と思います。
設立の年月日も別に重要ではありません。
会社の目的をチェックしよう
「会社の目的」というところは色々とズラッと書かれているのですが、これはうちが何の事業やっているか?という内容が書かれています。
結構、たくさん書いてありますね。
令和3年、令和4年に新たに変更登記をしているのです。
ここを私は見るようにしています。
どの辺がポイントか?というと、1つ押さえてもらいたいのは…
例えば「金融商品仲介業」のように、許認可が必要な事業が書いてあった場合。
本当にこの法人でその免許を持っているのかな?という点を確認しましょう。
中には無免許でやってる会社もあるということでしょうか…?
そういうことです。
例えば「金融商品仲介業」も「投資助言代理」も金融庁の管轄です。
なので、金融庁のホームページで社名を調べれば出てくるのです。
ココザスは1回載せていたのですが、次に変更した時に消しました。
なくなっていますね。
そう、なくなっています。
これはどういうことか?と言うと、ココザスという会社で免許を取ろうと思っていたのですが、経営戦略上の変更があり、子会社を設立してそこで免許を取ることにしました。
なのでいつまでも載せていると「無免許でやっているんじゃないか?」と誤解を生むので、「やってないことは消した」ということです。
他にも重要なポイントがいくつかあります。
例えば、このタイミングで「生命保険」が追加されたなとか…
次の1年後に「海外不動産の企画開発販売」が追加されたなとか…
「損害保険」も追加されていますし「再生可能エネルギーの販売輸出入」が始まったり…
これは、太陽光ですね。
他にも「子会社関連会社への経営指導・経営管理」など。
このタイミングで子会社を作ってホールディングス化をしていったんだろうな等。
こういった会社の経営者がどういう戦略で意思決定をしているのか?
その歴史を、ここで一部見ることができます。
全てを見ることはできないのですが…
このような動きをしっかりとチェックしていくことはぜひ、やってもらいたいなと思います。
資本金を見るときのポイント
株式の部分に関しては、あまり重要ではないのでここではさらっと説明します。
例えば、外部から資金調達をしてどんどんお金集めてる場合は「発行済み株式総数」というのがどんどん増えていきます。
うちはオーナー企業なので、外部の資金調達をしているわけではなく…
株式分割というやり方で「333株」というちょっと割り切れないややこしい数字を2万に揃えたという感じですね。
これは価値を変えたってことですか?
そうですね。
1株当たりの価値が変わったということになります。
会社全体の価値は変わらず、この価値を333株で割ってたものが2万株に変わったので…
一株当たりの価値は下がりましたが、分割はただのテクニックなので実質的な動きは何にも影響してません。
この辺は上場企業でもないので、さらっと見るぐらいでいいかなと思います。
他に重要なのは、資本金がどういう風に推移しているのか?です。
うちはもともと333万円で始めましたが、1,000万円▶3,000万円▶5,000万円という風に、増資を繰り返しています。
これは増やしている方がいいのでしょうか?
そうですね。
うちで言うと今は登記簿は5,000万円と書かれていますが…
ホームページ上には「6,200万円(資本準備金を含む)」と書かれています。
少し難しい話になってきますが、結局外部から増資しているわけではないので、実際の資本金が増えているわけではないのです。
どういうことか?と言うと、333万円で始めた会社が頑張って仕事をして、利益を出したら法人税を払って、その残りが利益剰余金としてバランスシートの資本金の上にずっと積み上がっていきます。
利益剰余金のうちの一部を資本金に振り替える。
うちはそれで1,000万円▶3,000万円▶5,000万円という形で少しずつ資本金を上げています。
外部から増資するということは、急にここに1億円がドン!っと入るという事です。
そのパターンだったとしても登記簿謄本上には利益が残るので…
いずれにしても資本金が増えているということは、利益を出せているか?
もしくは外部から資本を投入してもらったか?
いずれにしても投資先のDDという観点でいくと、ポジティブです。
これは金額が大きい方がメリットがあるということですか?
別にうちも333万円のままにしてても良かったのですが…
会社のホームページを見た時に「333万円」か「6,200万円」か、どちらが大きく見えますか?という話なので、外からの見た目の問題ですね。
その他で見るべきポイント
他に重要なポイントとしては…
私は代表取締役なので、自宅の住所もガッツリ出ています。
代表者は住所が登記事項になるため、引っ越しをしたら住民票が変わったことを商業登記簿に反映させなければいけないという決まりがあります。
なので、代表者の家は晒されているのです。
私はここをDDの時に…
住んでる場所ですね。
例えば、日本で言うと審査が厳しい不動産デベロッパーはどこか?という話があります。
森ビルの、六本木ヒルズやアークヒルズ。
あのシリーズは非常に審査が厳しいのです。
そういうところに住まれているのであれば、真っ当な方で真っ当な会社なのだろうなと…
森ビルであればかなりいいんじゃないか?という話があるわけです。
逆に、名前は出せませんが大手財閥系でも「あそこはお金さえ出せば誰でも住めるよね」というデベロッパーもあるわけです。
なので「何の物件に住んでいるか?」というところは私が不動産に詳しいからという理由もありますが、結構しっかり見るようにしています。
あとは、役員が1人の会社は辞めたほうががいいと思います。
それはどういうことですか?
そもそも従業員が全然いない可能性があります。
会社としての体を成してない可能性がまずありますよね?
あとは何十人・何百人を抱えている会社だったとしても、もし取締役が1人しかいないのであれば全部自分でやっているという事になりますよね?
そうですね。
歯止めが効かないワンマンオーナー社長の可能性がある。
投資する側としては非常に良くないのです。
例えば営業部門、管理部門の役員がちゃんと配置されていたり。
こういう方がいいと思うので、私はここをまず見た上で…
ホームページの、ココザスで言うとこういうメンバーページを見る。
「ちゃんと安藤という人間がいるな、他の役員がいるな」という点を見た上で、ここに載っているかどうか?を照らし合わせる。
例えばここに登記されている人がホームページ上にいなかったらどういうことだと思いますか?
架空の人物?ですよね…?
「最近辞めた」などですね。
役員クラスが辞める会社は、組織の中で何かが起きている可能性があります。
そういう場合は少し様子を見たり、そういう材料として使ってくださいね。
SOの記載はポジティブ?ネガティブ?
大抵の登記簿謄本はここで終わっていますが、ココザスの場合は「新株予約権」と言って、ストックオプションを発行しているので色々と書かれています。
これはポジティブ情報ですか?ネガティブ情報でしょうか?
ストックオプションというと、上場というイメージがあるので…
プラスの要因かな?と思います。
そうですね。
本当に難しいことが色々と書かれているのですが…
ある程度、真っ当に会社経営をしていて、上を目指して日々努力をしている可能性が高いということで…
ストックオプション(SO)を発行してる会社の方が私は信頼に値します。
そうではないオーナー企業は別に成長する必要もなくて…
オーナーが腹を肥やすためだけに会社が運営されているケースが多いので。
それよりはちゃんと上場を目指して頑張っている会社の方がいいんじゃないかな?と。
とても難しいことが書かれているのですが…
例えばそのうちの会社の価値、時価総額も見ればなんとなく分かりますね。
それはどうしてですか?
例えば、ストックオプション(SO)を発行した時の発行条件などが書かれているのです。
そこからなんとなく予想することができる。
しかしSOは基本的には社内のメンバーや、お世話になってる社会の方に対して(つまり身内に対して)喜んでもらいたくて創業オーナーが発行するものです。
つまり会社の価値を高くして渡すよりは低くしてなるべく多くのSOを渡してあげた方が周り思いなわけです。
そういう意味で言うと、この辺から算出できる時価総額が別に全てを表してるわけではありません。
税法上ギリギリのラインまで低くしておる。
実際の価値はもっと高いけれど、なんとなく参考にはなるかな?と思います。
登記簿謄本には決算情報が書かれてるわけではないので、財務状況まではわかりません。
しかし会社の核となる、どんな事業をやっているのか?
資本金がどうなっているのか?役員の情報・個人の自宅・SOをどれぐらい発行しているのか?など。
あとは、なんとなくの想定時価総額がわかったりします。
ここに書かれてる情報をしっかり読み解けるようにしていただければなと思います。
オフィスの移転から分かること
あとオフィスの移転に関しても、うちは3年ぐらい前に芝公園にあるオフィスに移転してきたわけですが…
その履歴も全て残っていますね。
なので、短期間に移転を繰り返していたりすると、調べるとどんな場所にいたかが分かりますよね?
うちはマンションの一室から創業した会社なので…
変な話、家賃がちゃんと増えていっているのです。
そうすると「成長しているな」ということが、分かります。
ただ家賃が300万円かかるところから、家賃100万円の狭いオフィスに移転したとすると…
「縮小しているな」と思いますから。
そうですよね。
本日のまとめ
今話したようなポイントが登記簿謄本において見るべきポイントです。
いつも「財務諸表を見ましょう」と言っていますが、これはP/LやBSの話ですが、もちろんそれも見ます。
ホームページと登記簿謄本の情報を照らし合わせて…
登記簿謄本は法務局に行くと、誰でも600円で取ることができます。
会社名と所属している区町村だったかな…?
それぐらいの情報だけで取れるので、自分が勤めてる会社の登記簿を取ってみるのも意外に面白いですよ…!
例えば、とある時に登記簿謄本を取ってみたら「社長が社長じゃなくなっていた!?」など、こんなことも私は実際に経験したことがあります。
普通に会社にお勤めになってる方も最低限の知識として知っておいて欲しいなと思います。
またDDの具体的なやり方も紹介していきます。
ありがとうございました。