不動産バブルは何だったのか?今の不動産市況との比較
さて、今日は「不動産バブルは何だったのか?今の不動産市況との比較」についてお話しいただきます。
まず現状景気は高くなっており、株式市場は沸いています。
89年の時はまだ高校生でしたが、何か沸いていましたね。
あの頃、不動産価格もどんどん上がっていました。
不動産価格が上がり始めたのは、それまでも戦後ずっとじわじわ上がっていましたが、ぐっと上がり始めたのがプラザ合意の後ですよね。
85年の円高のとき、竹下登さんが大蔵大臣でしたね。
それから上がり始めて株も上がるのですが、それにつられるように不動産も上がり始めてきた。
85〜86年は若干円高により、鉄びえが起こるのです。
当時言われていた鉄の出荷の輸出が厳しくなっていき…
それで87〜88年・89年ぐらい、ちょうどダダダダダっと不動産は上がるのです。
そのような流れでした。
要因(1)人口ボーナス
この時のバブルの要因は2つあり、1つは「人口ボーナス」です。
日本の人口が増えている…?
吉崎:増えてるといいますか…
22年〜25年ぐらいに生まれていた団塊世代が、ちょうど昭和64年ぐらいですから…
昭和22年の方が40代を迎える頃になってくる。
ちょうど40歳を超えたぐらいか?超えないかぐらいに向かっていくところでしょうか。
家を買い始めたところ、家庭を持って子供を産んで、家をちょうど買おうかな?という時にさしかかった。
内田:なるほど。
だから不動産業界にとっては人口ボーナスですね。
吉崎:これが実需(実際に住むような不動産)の需要を伸ばした。
そこで実質賃金が上がったのです。
賃金がすごく上昇しました。
今回の株価上昇にどれくらい賃金上昇がついてくるんだろうと…
メディアが街中でインタビューすると「株価は上がっても私の給料は上がっていない」みたいな…
「実質賃金はまだマイナスだ」というのはよく言われることですね。
当時は実質賃金も上がっているのは当然です。
内需の企業が株高を牽引していましたので…
今回は外需。
あるいは外国の為替相場によるプラス要因が働いてとか…
外国人投資家、まず機関投資家も含めた外国の投資家がかなり買っているということで上がっているのです。
内田:内需の株に関してもインバウンドがかなり効果という…
吉崎:その中で実質賃金が上がることによって、不動産が価格が上がっていても付いて来れていたので…
値段が上がっていたというのが、実需が上がった要因です。
そしてもう1個、ネガティブなイメージのバブルをイメージ付けたのが投資ですね。
内田:「土地転がし敷地屋」と言われましたよね。
吉崎:買っておいてどんどん上がるので、それを転売してみたいなことで…
このことを経て様々な規制ができました。
規制が今より少なかったのです。
短期譲渡売買の利益税率も新たにできましたし…
「転がすなよ」というようなこともできたし、当時はそれができていたということ。
要因(2)銀行の動向
もう1つが銀行がお金をすごく貸した。
それも大きかったでしょうね…!
吉崎:それが実需に対しては、今でも比較的住宅ローンに関しては審査が緩い(という言い方は語弊があるかもしれませんが…)
ある程度「形式的な年収が幾らで借入が幾らです」や、そういう変な借入額はなかったなど。
そういうチェックで基本的には「住宅ローンは貸そう」と。
これも国の政策があるので、住宅ローンに関しては多くの銀行、あるいは公的な銀行がお金を貸すのです。
内田:不動産自体に価値があるからということもあるのですか?
吉崎:もちろん不動産も見ていますが、その方の支払能力を基本的に見ていくと…
支払いの質の一方で、投資用の物件は関係ありません。
自宅ではありませんから。
そうすると、その不動産に価値があるかどうか?
この価値に対して今100という価値のものが、この後200になるかもしれない…
バブルなので「170貸しておきましょう」とやっていたわけです。
「上がるとしても制して貸しておこう」ということでしょう。
今のはとても大雑把に言って適当なのですが…
イメージで言うと「100が200になることが見込まれるならば、150貸しとこう」と。
そうすると、価格が下がれば少なくとも100もないわけなので…
100が70になると、150貸していたら80が飛んでいく。
担保価値がなくなったわけです。
その分が不良債権と化していくということを繰り返していました。
たからですね、基本「投資でビルを買いました・投資でマンションを買いました」という方々が厳しい状況に陥り、そして大量に貸していた銀行はそれで苦しんだ。
一方で実需の方は、先ほど言った住宅ローンを組んでいた方に関しては、当然バブル期に増えるのは当然ですが、その後下がりました。
下がったけれども、支払い能力がどうか?というと…
89年のバブルの日経危機の際、当時の最高値から90年かけて年収が一気に下がったか?というとそうでもないわけじゃないですか?
内田:そうですよね。
停滞してる人を知っていたり、あるいはボーナスが激減したりとかするかもしれませんが…
基本的にはそれは良かったわけです。
ボーナス払いでガッツリと払うような前提の人は苦しんだと思います。
しかしボーナス払いに対してあまりウエイトを掛けていなかった方々においては、苦しんだと思いますが…
気分的には1億で買ったものが7,000万円になっていく。
どんどん下がっていくわけです。
少し言い方が語弊がありますが、自分の給料だから払っているわけですからね。
内田:そうですね。
家賃払うのと同じような感覚で、もしかしたら払えたかもしれない…
吉崎:そこにはバブル的要素はなかったとは言いませんが、少なかった。
一方で、さっきの100のものが200になることを見越して150や170を貸した。
それがバブルを生んだ。
今は変わっている?
今はどうなの?というと、今はそれを批判していませんから…
当時の苦い経験がありますし、金融機関もしていません。
もう1つが今回の不動産価格の上昇がじわじわなのです。
さっき言ったとおり、冒頭喋った通り一気にバババっと上がったのです。
当時は「2倍になるかもしれない」と銀行を貸すわけなので…
上げがまた上げを呼び…
吉崎:投資が投資を呼び、上げが上げを呼び…ですね。
今はそういう状況ではなく、金融機関は過去の苦い経験があるからでしょうが、あまりですね。
すべて調べてはいませんが一般的にしてないわけで…
そういうところがあるので、今回は不動産バブル的な感じになっていない。
「日経平均はこんなに高いけれども…」というところです。
大体これがバブルの全体像ですね。
同じこと実はミニバブル期とあって…
その時に日経平均も若干上がりましたが、2006〜2008年くらい、その後にリーマンショックが来ました。
この時はミニバブル期と呼ばれて、この時一気にこの時も地価が3カ年ぐらいすごく上がりました。
この時はマンションデベロッパーがかなり傾いた形で倒産したり…
リーマンショックの手前、日本にいるリーマンショックではなく、アメリカのあの頃から金融危機のクライシスの後からですね。
あの時はもう完全に銀行と同じようにプロジェクトに対して貸していたのです。
マンションを建てます。
何ヶ月で売ります。
そこまででお金を返します。
これに対して「お金を貸して、いつでも何ヶ月で売ります」が、売れなかったのです。
買う人が減ったので…
それで傾いたということで、金融機関がもっと厳しく…
読めなかった様なのですが「いくのではないか?もういけるんじゃないか?」と思って貸していたら倒れたと。
つまり金融機関がどんだけ金を貸しているか?によって結構変わってくるのです。
内田:結局そこですよね…
吉崎:その大元にあるのは、ただただ建ってきた時に金融機関的には「家も貸さなきゃ…」という感じで乗らなければお金を貸すビジネスですからね…
内田頭取だったら、ある程度「行け」と言いますよね。
内田:そうですね。
吉崎頭取が潤っていれば、それを「うちも行かなきゃ…」となりますよね。
吉崎:一般的にそうですよね。
危機感が出てきます。
今回ゆっくり上がっているということは、あの時は早かった。
ここが大きなポイントですよね。
内田:スピードが大事なのですね。
あとは金融機関は調子に乗らなかった…
吉崎:日本語が難しいですが、そういうことですね。
だいたいこれが今は不動産バブルと言えない理由です。
内田:どこの株のことを分析される方々もやっぱり「当時と全然違うんだよ…」という分析をされていますが…
不動産に関してもやっぱり同じなのですね。
吉崎:これはすごく分析もしたし、すごく本音を書きましたが…
ここは結構重要で、銀行はどう貸すか?ですね。
不動産を分けて考えなければいけませんね。
自分で住む用のマンションの話と、住宅ローンの話と、投資用の物件の話で分けて考えないと、ごちゃごちゃになってしまいますね。
※ 本記事はラジオNIKKEI第1「5時から”誠”論 NEXT」の番組内コーナー「ワクワク人生COCO the Style」の内容を抜粋/改変したものです
※ 2024年2月26日(月)放送
※ 日経ラジオ社の承諾を得て作成しています