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2023年の年間「新設住宅着工戸数」の着地見通しについて|5時から“誠”論 2023年9月11日放送

この記事の取材協力者

吉崎 誠二

不動産エコノミスト

吉崎 誠二

SEIJI YOSHIZAKI

不動産エコノミスト、不動産企業コンサルタント、CREビジネスコンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーション、CREコンサルティング、などを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。
また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

・レギュラー出演
 ラジオNIKKEI:5時から“誠”論(月~水:17時~)
 ラジオNIKKEI:吉崎誠二のウォームアップ 830(月:8時30分~)
 テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

URL: https://www.yoshizakiseiji.com/

2023年年間の新設住宅着工戸数の着地見通しについて

2023年年間の新設住宅着工戸数の着地見通しについて
内田
内田

今日は「2023年年間の新設住宅着工戸数の着地見通しについて」です。

吉崎
吉崎

1年間でどうなりそうだろうか?ということで…
色々な数字を月で見る、前年同月比で見るなど、そういう見方もあります。
年の単位で見てどうなのか?という話をしたいと思います。

内田:「長いトレンドで」ということですか?

吉崎:その前にちょうど2023年1月〜7月までの新設住宅着工戸数の数字が発表されています。
翌月の末日に出ますので、7月分は8月末、8月分も9月末に出るというような状況です。
なので、現在は7月分まで出ています。

ここまでの1月〜7月の数字ですが、半期どうだったのか(前半どうだったのか?)という数字で見た方が見やすいのかな?と思います。

2023年1月〜6月の新設住宅着工戸数

吉崎
吉崎

2023年1〜6月の合計を見てみると…
「40万9,549戸」ということで、昨年の1月〜6月と比べて2.2%のマイナスということです。

内田
内田

小幅マイナスですね。

吉崎:カテゴリー別で見れば、持ち家の方(所有してる土地に自宅を建てる)が、マイナス10.5%で、1〜6月の合計が「11万254戸」です。

これは単純に持ち家を2倍します(×2ですね)
1月〜6月分と同じようなペースで進むという風に見れば「22万508戸」となります。

めちゃくちゃ昔までさかのぼってみたのですが…
持ち家は大体27〜8万戸か30万戸ぐらいありますから、「22万戸」はすごく少ない数字です。
どれくらい昔まで遡ればこれぐらいの数字だったのかな?と思って見てみると、1960年代でした。

これぐらい少ないということなので、2022年1年間は全て前年同月比マイナス。
2023年1月〜6月も、7月も前年同月比マイナスでした。
これは結構歴史的な少なさですね

原因は適地がないから?

原因は適地がないから?
内田
内田

ウッドショックもありましたが…
やはり吉崎さんがよく言う「適地がない」ということは、家にとっても同じことが言えるのでしょうか?

吉崎
吉崎

持ち家ですからね。
持ち家にはパターンがあって、自宅の建て替え。
あるいは空いている自宅の空いているところに、建て増し。

一昔前、80年代・90年代でよく見られたのは、当時の言い方でいう「住宅都市整備公団」が土地を分譲し、その買った土地の上にハウスメーカーさんなどが家を建てる。
このパターンが持ち家なわけです。

内田:なるほど…
そうか、持っている土地がすでにあるわけですね。

吉崎:土地があるパターンです
土地と建物をセットで買うというのが「分譲住宅」ですので…
持ち家は、もともと所有している土地に建てた住宅ですね。

内田:やっぱり資材の高騰が影響したのでしょうか

吉崎:そうですね、1番でしょうね。
「建築工事費が上がっているから」ということになると思います

次に「貸し家(賃貸用住宅)」ですね。
これは2021年の春ぐらいから、ざっくり25カ月。

2023年3月まで、25カ月連続で前年同月比プラスでした。
同じところで、2023年に入ってから、4月・6月がほんのわずかマイナスの前年同月比です。
マイナスの時もありましたが、基本的にはプラスですね。

内田:なるほど…
持ち家とは全然違うようですね。

吉崎:貸家はプラス2.5%。
1月〜6月期では36万8,810戸ということになります。

内田:これをやっぱり貸して、家賃で取れるからいいということでしょうか?

吉崎:そうですね。
冒頭でお話した住宅や、賃貸住宅を建てるとというのもここに入っていますね

去年の1月〜6月期の合計が16万4,754戸でしたので、2.5%の増。
1〜6月期の数字を単純に×2をすれば、33万7,620戸ということになります。

ちなみに1〜6月、去年のペースをそのまま当てはめるとするならば…
35万3,000戸となり、恐らく着地はこの間だと思います。

33万7,000戸〜35万3,000戸の間、恐らく3〜4%とか…
そんな感じの数字じゃないかなと見ています。

これは昨年よりも少し増えた数字になりそうだというところで…
適地がなく、当然、持ち家と同じように、こちらも建設工事費は上がっている
しかしながら、建てる人は増えているというような状況が見てとれると思います

ちなみに35万戸前後だとすれば、ここしばらくコロナ以降では最高の数字になります。
それより前の40万戸近くが建っていた時もあり、2018年・2017年あたりは40万戸を超えていました。
その時から比べると40分の35ですから「12%くらいは下がったな」ということになります。

分譲住宅ではどうか

分譲住宅ではどうか
吉崎
吉崎

一方で、分譲住宅。
こちらが1〜6月期の合計が12万7,987戸です。
約12万8,000戸ということで、前年に比べて-0.2%、昨年ともほとんど変わらずの数字ということです。

このペースでいくと25万5,000戸前後というような数字になるのでは?と思います。
これは恐らく、この先ちょっと減る方向に向かってくると思いますので、単純に×2にはならないであろうと…

内田
内田

分譲住宅が減る理由というのは?

吉崎:分譲住宅というのは、分譲マンション+分譲戸建ての合計です
この番組でも何度も取り上げた「適地がない・土地がない」ということですが、もうほとんどこれは先が見通しができてます

仕込んでから2年ぐらいかかるので、もう既にもう建築中ですから。
もう建築が始まっている、その土地の仕込みが終わっているものばかりです。
このペースでいくと、年間は25万戸ぐらいですが、概ね“例年並み”という感じだと思います。

こうして全体を見れば、持ち家は歴史的な低水準
貸家はここ10年ぐらいで見れば、ピーク時ほどではありませんが…
すごく少なかった時よりかは多い、まぁまぁの数字。
分譲住宅はピーク時は30万戸ぐらい入っていましたので、ピーク時よりは少ないですが、ここ数年で見ればそれなりな感じ。
このような状況で、持ち家の落ち込み分でざっくり10%ぐらい落ち込むかなと思います。

内田:これは大きいですよね。

吉崎:大きいと思います。

総数合計の見通しでいくと、81万9,000戸〜82万戸代の前半というような数字になります。
2009年に初めて100万戸を切って、消費税が上がった時に97万戸ぐらいいきましたが…
今回は82万いくかな?どうかな?という、82万前後かな?と。
リーマンショックというガクッと落ちた時代がありましたが、それを除けば相当遡る必要があるぐらい少ない水準だということですね。

内田:なるほど…
色々な理由があるのでしょうが、これはどうなのでしょうか…
人口が減っていますから、減っていて当たり前もあるみたいな…

吉崎:そうですね。
結局、長期的にはそうだと思います。

そんなに遠くない先に70万戸台…
今年82万戸ですから、もうあと2万戸減れば80万戸を切りますから。

やっぱり産業が広いですから、それも結構大きな打撃になってくると思います。
ハウスメーカーさんや開発住宅開発のメーカーさんはかなり株価が高いですよ。

内田
内田

各社、海外に軸足を移して成長を享受しようという動きがかなり強くなっていますよね。

吉崎
吉崎

戸建て住宅、いわゆる自宅用の住宅においては、海外シフト。
そしてもう一方が、ある程度高水準を維持している賃貸住宅シフト。
このような流れになってきているということですね。

内田:そこの次の成長みたいなものを、株価は“期待して”ということなのでしょうね。

吉崎:今持家・戸建てのところで海外展開は進んでいますが…
他の分野(賃貸用住宅やタワーマンションなどの海外展開)が、恐らく住宅系メーカーでこの先求められてくるんじゃなかろうかと思います。

技術面はどうか

技術面はどうか
内田
内田

日本はやっぱり地震が多い土地で建てているということですから。
ある程度、世界の中でもその技術面では突出してる(高水準)と考えていいわけですよね?

吉崎
吉崎

これがですね、どれぐらい職人さんが現場でつくるか?によるのです

例えばアメリカで造る住宅はいろんな部材を持っていくことができます。
けれども、ノウハウは実は施工、トンカチでコンコンする人ですから、そこまでは持っていけない。
若干、電気のコンセントが曲がっているなど、アメリカでよく見かけますけど…
そういうところは、まだまだ現場の職人さん頼みというところがあります

持っていけるノウハウと持っていけないノウハウ
そして持っていける部材と、持っていけない部材がありますから、一概には日本の安心安全の建物を持っていけるかどうか?
これはちょっと疑問というとこですね。

内田:なるほど…
全部は再現できないけれど、それでも成長は海外に求めないとなかなか国内では難しい。

吉崎:そうですね。
特にこの持ち家が復活する可能性はかなり低いと見ていて…
ハウスメーカーの中にも住宅展示場をやめているところも増えてきました。

内田:コロナ禍もあって住宅展示場の人がすごい減っているという話はありますよね。
それがなかなか戻らない…

吉崎:もう全然でしょうね。
さらに住宅だけではなく、お医者さんが一階に医療クリニックを開業し、その上に住むなど
こういう併用したタイプを今取り組んだりもしています
そうすると持ち家にカウントされますが、やっていることはテナントを入れるということです。
そういう適地もないわけですからね…

そういう意味で「複合型の住宅」が増えつつある
これは恐らく、僕はもう3年か、4年・5年かからないうちに、70万戸台に行くと思います。

あと仮に消費税が上がる、仮に金利が上がるというともう1段減りますので…
その2つがもしも重なったとするならば、来年や再来年になっても70万戸台があってもおかしくないと思います。

内田:そうですね。
今日もねマーケット金利の話でね盛りだくさんで…

吉崎:0.7をいっていましたものね。

内田:それもまたちょっと心配なところではありますが…

吉崎:一方で、貸家は好調というところです。

5時から“誠”論
放送局 :ラジオNIKKEI第1
放送日時:毎週月曜日〜水曜日 17:00~17:50
※ 本コーナーは毎週月曜日のコーナーです
番組公式サイトはこちら
番組のアーカイブ配信はこちら

※ 本記事はラジオNIKKEI第1「5時から“誠”論」の番組内コーナー「ワクワク人生COCO the Style」の内容を抜粋/改変したものです
※ 2023年9月11日(月)放送
※ 日経ラジオ社の承諾を得て作成しています

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不動産エコノミスト、不動産企業コンサルタント、CREビジネスコンサルタント
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また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

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