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荒れる世界経済の影響で、国内不動産は今後どうなるのか?【前編】|不動産エコノミスト吉崎誠二×ココザス代表 安藤義人

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ココザス株式会社 代表取締役CEO 安藤がインタビューを行う本企画。
今回は不動産エコノミストとして活躍されている、吉崎誠二氏に「世界経済の影響を受けて不動産の市場はどうなっていくのか?」お話を伺いました。
自ら不動産会社も経営している安藤と、不動産業界と深く関わってきた不動産のプロである吉崎氏からどんな話が広がっていくのか…?
前編・後編の2本立てでお送りします。

吉崎誠二氏

吉崎 誠二 (よしざき せいじ)
不動産エコノミスト、不動産企業コンサルタント、CREビジネスコンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーション、CREコンサルティング、などを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。
また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

●レギュラー出演
ラジオNIKKEI:吉崎誠二の5時から“誠”論(月~水:17時~)
ラジオNIKKEI:吉崎誠二のウォームアップ 830(月:8時30分~)
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

吉崎誠二 公式ウェブサイトはこちら

市況や経済情勢などを広い視野で見るのがエコノミスト

「不動産エコノミスト」という言葉の意味がよく分からないという方が多いと思うのですが…
どんな職業なのか、どんな活動をされているのか簡単にお聞かせいただけますか?

吉崎誠二(以下、吉崎):住宅や不動産を中心に不動産を専門分野にするエコノミスト
エコノミストということなので、経済学的な手法を用いて情報収集、市況分析、予測を行うというのが「不動産エコノミスト」ですね。

広く使われていない言葉ですが…
大学院生の時に「不動産エコノミクス」という授業があって、不動産エコノミクスという言葉からもじって不動産専門のエコノミストという意味で、そのまま「不動産エコノミスト」というように名乗るようになったんですよ。

2014年くらいに名乗り始めた時は僕を知る大学の関係者、大学教授みたいな人たちから「どういう意味?」って凄く聞かれて今みたいな解説をしたわけです。

不動産というものを専門にしているので「不動産エコノミスト」というように使っています。
「エコノミスト、不動産」と検索すると、おそらく僕のことが最上位に出てくると思います。

アナリストとはどういう違いがありますか?

吉崎:アナリストというのは分析をする人。
アナリティクスとか言うでしょ?
分析をする=不動産の分析ですから、この不動産はどうだこうだというのは“不動産そのものの分析”になるんです。

私はエコノミクスなので、見るのはもっと大きなところですね。
市況はどうだとか、東京首都圏のマンション価格はこの方向に動いているななど…このような感じでお話をしています。
そういう分析をするのがエコノミストだと思います。

どんな企業からの調査依頼が多いですか?

吉崎:大手のハウスメーカー、マンションデベロッパー、大手の不動産流通会社が多いですね。

以前は電鉄会社さんとか、トイレやお風呂を作ってる住設メーカーさんとか。
リフォーム系の会社も含め、住宅不動産関係は一通りお手伝いしましたね。
あとは、大手家電量販店もですね。
今家電量販店は、リフォーム部門を持っているところが多いですけど、こうしたビジネスのアドバイザーもやっていました。

不動産エコノミストへのこれまでのキャリア

ー 吉崎さんのキャリアを教えていただけますか?

吉崎:元々は日本生命のニッセイ不動産部門、部門というか不動産事業会社ですね。
その後、株式会社船井総研に転職しました。

それで、株式会社船井総研を2012年末に辞めて、次は株式会社ディー・サインという会社にお世話になりました。
この会社は、リンクアンドモチベーションの中に「オフィスや場」のコンサルティングをする事業部があったのですが、分離独立してディー・サインという会社になりました。

その会社にシンクタンクを創設するということで…
取締役として呼んでいただき、そこのディーサイン不動産総合研究所という一事業部の研究所長となりました。
全体の取締役兼、研究所長という役割を2016年の半ばくらいまでやっていました。
その後、2016年の秋から現在の社団法人住宅不動産総合研究所の理事長をしています。

大学生のころから、不動産や住宅系の分野に携わることを考えています。
就職活動中は、旅行会社とかちょっとミーハーな感じでテレビ局とか受けましたが(笑)
このように基本的には、一貫して住宅や不動産系ばっかりのキャリアということになります。

国内の不動産市場を見る3つのアプローチ

ー 今、アメリカの景気を含めて世界経済が少し不安定だと思うんですけど…
国内の不動産市況というのは現在どう捉えるべきで、今後どうなりそうでしょうか?

※インタビュー実施日10月20日の市況を見ての見解です

吉崎:国内の不動産市場は何で見るかによって結構違うんです。
3つくらいのアプローチがあるんですね。

1つが「地価からのアプローチ」。
地価公示というのは、1月1日時点の金額を基にしています。
2020年の3月に発表された地価公示は1月の時だったのでコロナの影響なく絶好調な数字だったんです。

世間はコロナで凄い大騒ぎしている時に発表された数字が絶好調という、よくわからない数字だったんですけど。
そういうややこしさはあれども、2013年くらいから2020年まで上昇中で2021年が良くなくて、2022年になると回復していく。

見るべきポイントは地価は三大都市に加えて、地方の四大都市の状況です。
札幌、福岡、仙台、広島とかもすごく上昇しているのとともに、その周辺地域もかなり上がっているのが現状です。

現在、地価だけを見れば地方もかなり良くなってきてるとまで言わないけど、以前の悪い感じから抜け出してきてるというような状況にあります。
一方でこれは過去の例を遡れば地方の地価が上がってきた時はそろそろ都市部で落ち始めるシグナルとも言われているんです。

まだ少しは大丈夫だと思いますけど、現時点的にはかなり上がっていて、天井感があるような状況になってきているということですね。

二つ目のアプローチが「中古マンション市況からのアプローチ」です。
住宅の市況を見る場合、なぜマンションなのかと言うと、都市部では戸建ては流通量が少ないからということですね。

新築の場合、例えば都心のど真ん中にでっかいタワーマンションができると価格はそれに引っ張られて上がります。
一方で海の上に安価な物件が大量に供給されるとそれに引っ張られて下がったりもする。
そのため、中古のマンションで見るのが日本の都市部では一般的ということです。

中古マンションの状況を見れば2012年の10月くらいから上がり始めていました。
コロナの影響がひどかったりして2020年の4月・5月が落ちたけれど、それはほんの一瞬だけで基本的には2012年の秋くらいから右肩上がりで上がり続けていているんです。

首都圏全体では1.5倍くらいの上昇で、都市部だけで見ると1.7倍くらい上がってるエリアもあったりします。
これがこの先どうなっていくのかはレインズのデータ等を見て在庫件数を見ればなんとなく読めるのですが…
2022年の6月・7月・8月3か月連続で在庫が積み上がった状況にありました。
在庫が増えてくると価格が下がる可能性が高くなってくるということですが…
まだ明確に下がってるなって感じはないけれども、中古マンションの現在の市況は横ばいな感じがしていますね。

ー 2012年から今にかけて上がってきて、コロナの影響で一瞬だけ落ちたというのは株価と凄い似てると思うんですけど…

吉崎:株価より先に不動産に影響が出てくることもありますが、その傾向が強いと思います。

ー 株価よりも半年くらい早く出ますか?

少し先…でもどうかな。
言われないけど、結構連動してくるかなと思います。

ー では、株価と同じで右肩上がりで上がり続けるということは当然ないので、どこかで休憩しながらまた上がっていくと?

吉崎アメリカ株は右肩上がりでずっと上がっていて、多少調整が入ったりして結構長期的に上がる感じがして。

ー 長期で見たらそうですね。

吉崎:リーマンショックの時など、大きく下がるというのがアメリカとかのパターンですよね。
日本はアメリカと違って、定期的なサイクルで上がっていないケースが多い。
このところは低金利のせいもあって下がってきてないけれど…

次にお話するアメリカの市況を見ていても、金利が上がれば必ず下がってくるというのは宿命的なところがあるので金利次第かなって感じがします。

少し長い期間の日本の不動産マーケットというのを考えた時の話です。
今、空き家問題があったり、人口が減ってくるとか…
こういう事というのはいうまでもなく不動産の価格にポジティブには働かないですよね?

吉崎:そうですね。
不動産は利用されてなんぼというとこなので。

都市部の価格が高いのは賃料が高いからであって、環境が良いということは使う人が多いからということですよね?
なので、使う人が減ってくればその分、価格は下がる可能性が高いということです。

都市部を使う人が減るかって言うとそうでもなくて、超長期的に見れば2050年くらいには日本の今現在ある市町村の内、半分くらいは人口がかなり減るという風に予測されています。

一方でそれは、都市への移動が始まるということでもあるので、すでに福岡とか札幌などの近郊物件価格が非常に上がっている理由の1つですね。
北海道の中で人口移動が起こっていて札幌に人が集まってきているということです。

北海道のイメージで言うと、山間部とか不便な場所から札幌という都会に出てきてる。
福岡も同じように、九州の他県から福岡に集まってきているというようなことが起こるとするならば、場所によれば人口は確かに減るけれど、そのエリアやエリアの中心的なところ、日本の中心をすれば東京だけど…
そこの地価が、不動産価格が大きく下がるというのはちょっと人口が減るからということでは、起こらないんです。

そのエリアにおける利用者の数(不動産を使う人の数)はどうか、ということなので、言うまでもなく人口が大幅に減るような地方の山の中みたいな郊外みたいな所は大きく不動産は下がる可能性が高いということですね。
空き家の数もそういう意味では増えてくると思います。

三つ目のアプローチは「新設住宅着工戸数」です。

ー 国土交通省から定期的に発表されていますよね。

吉崎:月1回、月末に発表されますよね。

今8月末分まで発表されています。
8月末が9月末に発表されて、(取材当日は)まだ10月末じゃないので9月分はまだ出てませんけど…

8月末まで見れば、貸家の着工件数はちょうど1年半(18か月)連続で前年同月比でプラスですね。

吉崎:マンションはすごい建っている一方で、この約1年くらい持ち家=注文住宅は前年同月比で長期的にマイナスです。
これは間違いなく原材料費の上昇により木材とか値段が上がっているので、住宅を建てる人は「なかなか厳しいな…」というような感じになっていることが背景にあると思います。

e-Stat「建築着工統計調査」

引用|e-Stat「建築着工統計調査

不動産と連動していると思うのですが、建材の価格に関してウッドショックとか色々ありましたけど…今後どんな風になりそうですか

吉崎:これは2つくらいの要素があります。
1つは「ペントアップ」という要素。

堰き止められた、止められたペントアップというイメージで…
堰き止められた水が一気に流れると一気に需要が増えるイメージです。

ペントアップ需要という形で、アメリカのコロナ後に不動産価格が上がった理由の1つです。
需要が一気に出てきたというのがまず1つ。

もう1つは「原材料費が上がってきている」ことです。
需要が増えて原材料費が増えて物流コストなどが上がってきて、更にウクライナの問題とかがあるので。
多分これはしばらくの間、まだ原材料費の高止まりは続くんじゃないかなと思います。

ー では都内に戸建てを建てようと思ったら“やはり厳しいという時代がまだ続くってことですね?

吉崎:厳しいと思います。
都内に戸建てを建てようとすると犬小屋みたいな小さな家になってしまいますよね…


▶▶▶後編に続く(2022年12月初旬公開予定)

「世界経済の影響を受け、国内不動産は今後どうなるのか?」前編はここまで。
後編では、国内のワンルームマンション投資や、世界の投資家から見た日本の市場についてお話していきます。
お楽しみに…!

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