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荒れる世界経済の影響で、国内不動産は今後どうなるのか?【後編】|不動産エコノミスト吉崎誠二×ココザス代表 安藤義人

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ココザス株式会社 代表取締役CEO 安藤がインタビューを行う本企画。
前編に続き、不動産エコノミストとして活躍されている、吉崎誠二氏に「世界経済の影響を受けて不動産の市場はどうなっていくのか?」について、お聞きしました。
後編では国内不動産だけでなく、海外不動産の市況についても解説いただきます。


吉崎誠二氏

吉崎 誠二 (よしざき せいじ)
不動産エコノミスト、不動産企業コンサルタント、CREビジネスコンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーション、CREコンサルティング、などを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。
また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

●レギュラー出演
ラジオNIKKEI:吉崎誠二の5時から“誠”論(月~水:17時~)
ラジオNIKKEI:吉崎誠二のウォームアップ 830(月:8時30分~)
テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

吉崎誠二 公式ウェブサイトはこちら

海外の不動産市況と、アメリカ経済が与える影響は?

安藤義人(以下、安藤):前編では「国内の不動産市況というのは現在どう捉えるべきか」という点を伺いましたが、海外不動産だとどうでしょうか?
ロンドンや香港、シンガポールは不動産の利回りが低く、東京はまだ高いという話をよく聞きます。

吉崎誠二(以下、吉崎):安藤さんが仰ったエリアや他にもベルリンなど、利回りが低い先進国不動産は多く、1%や2%台という国もあります。
実はその時の、その国の金利がどうかによっても結構変わってきます。
多分、利回りが高いというよりも「イールドギャップがある」という表現が正しいです。

●イールドギャップとは
投資利回りと長期国債金利との差のこと。
不動産投資では、借入金の金利と投資物件の利回りの差と考えれば良いでしょう。
イールドギャップ(%)=投資利回り(%)-長期国債金利(%)

例えば国債金利が0.25%とします。
利回りが4%だとすると「4%-0.25%=3.75%」となり、イールドギャップ差は3.75になるということです。

海外を見ればそのギャップが少なかったり、マイナスになっていることを考えると、日本の利回りが高いという現状は、国債金利が低いという事と大きく関係しているというわけです。

もう1つはドルに対して円安という側面もあり、ドルベースでみれば日本の不動産が相対的に安くなっています。

一方で不動産価格は需給のバランスで決まってきます。
先程お話したとおり、日本の人口が減ることを考えた時に人口が増え続けているニューヨークに比べればどうなのかな?という感じもしますね。

日本の不動産を買い求める外国人が増えている?その理由とは

安藤:最近、中国の富裕層が日本の不動産の情報をさかんに集めているという話も聞いたりするのですが…
円安の影響で外国の方が買っているという現象なのでしょうか?

吉崎:中国はいま、住宅価格が下落基調です。
それも理由ですね。
まず、「三道紅線(3つのレッドライン)」という規制をご存知ですか?
2020年の8月に中国政府から方針が発表され、2021年1月から実施されたのですが、その規制の影響で建築が止まっている物件がたくさんあります。

●3つのレッドラインとは
中国当局が導入した不動産融資規制で、下記3つの財務指針を指します。
これらを守れない不動産業者は、銀行融資の規模などが制限されることになります。

(1)総資産に対する負債比率が70%以下
(2)自己資本に対する負債比率が100%以下
(3)短期負債を上回る現金の保有

日本の場合は物件を引き渡した後に購入者はローンの支払いが始まりますが、中国では違います。
マンション購入の契約を交わすと、引渡し前から、つまり建ててる最中からローンの支払いが始まります。

しかし先程の「3つのレッドライン」の影響もあり、デベロッパーの都度で建築が止まっている物件に対して、こうした物件の契約者がローンを払わないという問題が起こっている。

このような流れで、住宅価格にも大きな影響が出始め、すでに香港も含めて色々な中国エリアで投げ売りも起こっているようです。
中国では一級都市と呼ばれる、上海、北京、広州、シンセンなどのマンション価格も少し低下し始めました。
投げ売りした方々が安定資産を求めて、比較的近場政治的に安定している日本の不動産に興味が再熱しているというのが答えだと思います。

もう1つの理由としては「賃金の上昇」です。
中国は全体的に賃金が上がってきています。
日本は賃金が下がっていますが、中国は上がっているということですね。
そう考えれば、資金に余力がある方々が日本に買いに来ているということです。

ロンドンの市街地は6割ぐらい外国人が持っていた時代もあります。
バブルの頃はニューヨークの不動産を多くの日本人(日本企業)が不動産を持っていました。
そう考えると、外国資本が他国の不動産を購入することは、別に規制があるわけでもないし、またこうしたマネーが日本の不動産価格を押し上げるというプラスの側面も多くあります。
ただ、外国資本が我が国の防衛施設や防衛上重要となるエリアを所有するのはよくないので、「重要土地利用規制法」が成立(2021年6月)し、取引なども規制されています。
都市部に外国人の資本が入ってくることが悪かと言われたら、そうでもない。

不動産を持ってる方にとっては外国資本不動産を買うと価値が上がり、不動産価格の上昇に繋がるので、それほどネガティブに考えることもないような気がしています。
しかし、我が国の国土が、他国の人に取られるという感覚に対するネガティブな意見があるのは仕方がないかなと思います。

ー 現時点だと外国人で日本の不動産を持っている割合は一割も居ないですよね
先程仰っていたロンドンなどに比べたら、結構珍しい話なんですね

吉崎:そうですね、極めて珍しい話です。
何故そうなっているのか。
理由はすごくシンプルで、日本は遠いからだと思っています。
日本はヨーロッパやアメリカ人から見れば、すごく端にあるんです。
日本周辺を、極東っていいますからね。

中東のサウジアラビアがありますよね?
ロンドンとの時差は4時間ぐらいで、ロンドンからすると少し向こうという感じです。
“中”東ですね。
一方で日本とロンドンでは、ざっくりと9時間の時差があります。
中東に比べると遠過ぎる!という感じですね…

また、アメリカから見れば日本は隣国ですが、太平洋を挟んだ隣国になりますよね。
1番近いハワイでも約6時間かかりますし、シアトルでも約8時間かかる。
隣国であっても、そんな感じですからね。

安藤:地理的な部分の問題があるのですね。

吉崎:地理的な問題はとても大きく、端っこの方だと注目されてる度合いが低い。
わざわざ「物件を見に行く」ということも現実的に面倒ですよね。

アメリカの金利上昇や住宅価格の上昇が世界に与える影響とは?

吉崎:今後、世界的な大問題になる可能性があるのは、アメリカの住宅価格です。
7月ぐらいから下がってきているんです。

ー アメリカの住宅価格?どれぐらい下がっているのですか?

吉崎:前年同月では、まだプラスなのですが、一方、前月比でみれば、0.何%ぐらいのマイナスになってきました。(取材時)
2022年10月25日に発表されたケース・シラー指数を見ましたか?
ケース・シラー指数には色々な指数がありますが、20都市平均で8月の前月比は0.9%のマイナスになっています。
7月は0.5%のマイナスでした。

●ケースシラー住宅指数とは
米国の住宅価格の水準を示す指数のこと。
正式名称は「S&P CoreLogic Case-Shiller Home Price Indices(S&Pコア・ロジック・ケース・シラー住宅価格指数)」
主要20都市における戸建て住宅の再販価格を元に算出されるもので、米国の景気指標として重要視されています。

吉崎:アメリカ住宅ローンは、1月の時点で30年固定金利が約3%だったものが、今は6.9%ぐらいになっています。
1月で約3%だったものが、10月で約7%ですからね。
かつてないほどのスピードで金利が上がっているということです。
また、住宅価格が日本の比ではないほどに、2020年6月以降と現在を比べれば1.8倍ぐらい上がっているんです。

こうして考えると、あまりにも住宅価格が高すぎるのと、金利が上がったこともあり、住宅価格が下がってきているというわけです。

他にも「住宅ローン担保証券」というのがありまして。
リーマンショックの時は、アメリカの住宅価格が下がって住宅ローン担保証券がデフォルトを起こし、経済危機に繋がっていきました。
今回は、こんなことにはならないと思いますが、仮にそうなれば、世界の金融市場はガタガタと落ちこむ可能性があります。
リーマンショックと同じパターンは事前に防ぐと思うので、ならないとは思いますが…
過去の例を見るとアメリカは住宅価格が下がってきた時に株価は必ず下がってきています。

日本でも、かんぽ生命などの大きな金融機関は大量に住宅金融支援機構の債権を買っています。
しかし、住宅ローンの債権者(お金を貸した方)は実際はもう銀行ではなく、銀行から次の証券会社や機関投資家に移っているんです。
それがデフォルトを起こしてくると、これらが連動して傾いてきます。
これが前のリーマンショックの流れです。

今回リーマンショックのような経済危機が起こる可能が出てくると「やばい…!」という雰囲気になり、世界的には不動産価格の下落や株価の下落が起こる可能性があるということです。
まぁ、ないと思いますが。可能性がゼロとも言えず…

安藤:アメリカは株価や不動産価格が上がり?
インフレがひどいため金利を上げて意図的に抑えようとしているわけですよね。

吉崎:「高すぎる!」という状況ですからね。
不動産投資家や不動産業の人から見れば「いよいよ、やばいぞ…」と思う方もいると思いますが、アメリカ政府というかFRB側からすれば、意図して金利操作しているわけですからね。

安藤:超長期で投資していくのであれば、そういった大きなトレンドを今は考えなくてもいいですか?

吉崎:考えた方がいいと思います。
ある意味、買い時が来るかもしれないとも言えるので。

安藤:下がったら買いですものね。
では、暴落するかどうかは分からないけども、右肩上がりに上がってきていたのは一旦止まるのは間違いではないと?

吉崎:アメリカの経済成長は勢いよく続いており、いつか不動産価格も再び上昇すると思いますが、いったん止まるのは確実だと思います。

安藤:中国の恒大集団の件での影響はどうでしょうか?
中国の大手デベロッパーの問題はそんなに世界中に飛び火するものでしょうか?

吉崎:飛び火する可能性も無きにしも非ずなのですが…
中国政府が少し前に資金援助をすると発表していたので、一旦収まるのではないかなと思います。
時間を稼いでいるだけかもしれませんね。

ワンルームマンションは良い投資先?

安藤:このような時でも価格がそこまでブレないのは、ワンルームマンションになるのでしょうか。

吉崎:ワンルームマンションの価格は、賃料と利回りでの2つの要素で決まってくるんです。
リスクフリーレート」つまり、国債の金利と、不動産固有のリスクプレミアムとエリア(立地)プレミアムを足すといいと思います

不動産固有の金利は3.5%〜4%ぐらいと見れば良いのですが、足し算をしていくと利回りが大体決まってきます。
エリアは立地プレミアムと言われていて、例えば原宿と所沢では利回りが少し違いますよね。

計算しやすく不動産固有のリスクプレミアム(金利)を3.5%として、リスクフリーレートの0.25%を足すと、4%弱になります。
今の都心の一等地だと、適切な利回りだと思います。
その期待利回りが上がり、4%が5%になればその分は価格は下がりますよね。

例えば、ワンルームマンションの賃料が10万円だとすると、1年間の合計賃料は120万円。
そうすると不動産価格は期待利回りが4%の時は3,000万円で、5%になれば2,400万円という計算になります。
賃金が一定の場合、期待利回りが上がれば価格は下がるということです。
先程お話したとおり、ワンルームマンションの価格は賃料と期待利回りで決まります。
ワンルームマンションで賃料は、大きく動きませんからね。

安藤:期待利回りの目安は大体4%ぐらいなのですね。

吉崎:いまの時点ではそれぐらいです。
さっきの国債の金利は日銀が0.25%で抑えると宣言しており、その構造を取っているのでその部分はぶれません。

こういうことを話すのがエコノミストですよ。

安藤:今回は貴重なお話をありがとうございました。

不動産エコノミスト 吉崎誠二氏との対談、いかがでしたか?
COCO the Styleでは、今後も吉崎氏との対談を掲載予定です。
次回は2022年12月中頃を予定していますので、お楽しみに。

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