個人の不動産投資、日本と欧米比較
「個人の不動産投資、日本と欧米比較」についてお話していきます。
日本と欧米の不動産投資は色々と比較があります。
結構大きいのが、日本の不動産投資を行うに際して、どれくらいのプロか?という度合いによって違うと思うのですが…
一般的な不動産投資家といいましょうか。
それしかやっていない、何千億円を動かしている人を除き…
一般的な不動産投資家の方々は、基本的に日本ではキャピタルゲインよりも、インカムゲイン狙いの方が多いと思います。
ある程度の長期で持って賃料収入を得るという事と、もう1つが節税目的で買われる方が圧倒的に多いのではないかと思います。
もちろんそれは海外でも同じなのですが…
日本の場合、かなりのプロの方以外はキャピタルゲインを狙う方は多くないのではないか、と思います。
「この物件を1億円で買って、1億5000万円で売り抜け!」という様な事を、最初から狙って行く方は少ないと思います。
これはやはり、日本の不動産の過去、バブルの崩壊やリーマンショックでの下落など。
そういった経験をしているので、ずっと右肩上がりで上がり続けるのかな?どうなのだろう?というものが、頭の片隅にある訳です。
内田:色々あったから「そんなに上がって行く未来は中々考え難いぞ!」と。
吉崎:そうです。
「良い時もあれば悪い時もあるのが世の中だよ」という考え方が多い訳です。
なので違い的な意味では、そのキャピタルゲインを狙わない日本人の思考が強い。
欧米人の方々は比較的に投資する際は、基本的に上がるものだと。
内田:そうですよね。
波はありつつも、右肩上がりに上がっていますものね。
吉崎:時々どーんと落ちるのだけれども…
大体じわじわとずっと上がって行くものだ、という前提です。
今1億円で買ったものを、来年は1億1,000万円で、という感じで、じわじわと上がって行ってくれるものだから「タイミングを見計らって底値で買って高値で売ろう!」というのが欧米の考え方だという事ですね。
物件の選び方にも違いがある
それともう1つ、物件選びも違うと思います。
何処までステイタスを持つか?ステイタスの割り増し量はどれくらいあるのか?が結構違うのです。
あの場所・エリアでこの物件を持っていたら“ぐんっと高い!”という様な、東京の方でも何個かありますよね?
「あの物件であのマンション、かなり希少価値があって…」という様なね。
内田:「少し憧れてしまう」という様な物件ですか?
吉崎:物件名を聞いただけで「そこのマンションを持っているのですか?凄いですね!」と言われる様な。
内田:確かにありますね。
「格好良いね!」というね。
吉崎:ゴルフの会員権でいうと、霞や大洗など。
ああいうものを持っていると「凄いですね!」と。
そういうステイタスのあるマンションは何個かあるのです。
ステイタスに対して上がって行くという感覚と、タワーマンションは頻繁に建ったりするので、沢山出てくる訳です。
地方都市に行くと、比較的駅前にタワーマンションが建ったとなると希少価値が高かったりするのですが…
これがあまりにも頻繁に建つものですから、希少価値という様なもの「あのエリア本当に良いですよ!」というものが、そうはっきりとしない。
しかし、欧米は結構はっきりとしています。
「あそこのあのエリアはかなり良いですよ!」と。
「ここで出物が出たら買わなきゃ!」という様なノリがありますが、比較的日本ではその感じが少なくないですか?
確かにそうかもしれないですね。
何個か…くらいですよね。
結構日本は少ない。
これがやはり、感覚の違いが1つあると思います。
米国で不動産投資はまだ当たり前ではない
吉崎:もう1つは、少し前まで税制度が少し違っていて、戸建て住宅等に使われる、木造住宅等はそうなのですが…
加速度償却といって、築50年や60年の物件でもその時点から4年間で償却ができたのです。
日本に持って帰るとそれができた。
日本の場合は、建て方によって、ある種の物件の減価償却は47年で、木造住宅は22年です。
軽量鉄骨の物件は厚みによって違いますが、34年か27年で減価償却をするというルールです。
アメリカの場合は特に、築50年だと日本の場合は価値がゼロですけれども、その時点から4年で償却できるという仕組みがあったのです。
これは2019年くらいから廃止されましたので、要は使えなくなってしまい、一時期日本人がアメリカの不動産投資を行う事はかなり流行りましたが今はする方が、ゼロとはいいませんが、そんなに多くはない。
今のアメリカの不動産物件に投資している方の圧倒的多くは、2020年・2021年と住宅価格が凄く上がっていたので、それ狙いで買う方は沢山いました。
少し前まで、アメリカの不動産投資といえば節税ですかね。
一発で節税できた物件があった。
その辺りも少し日米の違いがありますね。
内田:株式投資だと、欧米だと個人がやっても当たり前という感じがあるではないですか?
そういう感覚は不動産にもあったりするものなのですか?
吉崎:不動産投資をするのが当たり前、という様なことですか?
その様な事はないと思いますね。
ただ、まず違うのは、比較的に色々と動きますよね。
引っ越しをする方が多い。
昔に比べると、日本人はそんなに引っ越しをしない。
それがまず、農耕民族…とは違うかもしれませんが、引っ越しをする方がそんなに多くはないという事で、違うのはまず1つある。
不動産投資もする方はされますし、日本人よりも多いと思います。
しかし株式投資と同じようにやって当たり前か?というと、そうでもない様な感じはします。
投資の環境は米国と日本では変わらない
そうすると、欧米よりも日本の方が、個人投資家は投資をし易い環境ができている?
環境的にいうと、そうでも無いですね。
そういう意味では、どちらが良いとか悪いとかはないと思います。
ただ、アメリカの方達のように株式を当たり前の様にやるかというと、そこまで当たり前でもないと思いますよ?
日本人も個人で株式投資をしている方は多いではないですか。
そういう意味では、不動産に於いても似た様な感じではないですか?
総数で行くと、1億人投資しているアメリカ人と、3,000万人くらいの株式投資をしているアメリカ人がいたとすると…
その半分くらいが不動産投資もしているとするならば、総数で行くと、アメリカは5,000万人、日本は1,500万人ですよ。
そういう意味では、数自体はそもそもそんなに変わらない、割合的には変わらないのではないですか?
内田:環境自体もそんなに?
吉崎:そんなに大きく変わりません。
ただ先ほどいったように、税制度が少し違うのは事実で、税に対して何処までコミットしていくのかが違うと思います。
日本人は欧米の様に、投資した物件を同じようにずっとホールドされる方が多いですね。
なので、これを多少は売ったり買ったりする、入れ替えたり組み替えたりしていかないと、本当の不動産のおいしい儲け方ができないのでは?と思いますね。
もっと流動性を高めてみたいな所が、不動産のおいしい所な訳なのですね。
そこが1番、日米での違いだと思いますね。
向こうはかなり流動性が高く、売ったり買ったり皆転売したりするので価格が上がっていく。
先ほどいった様な背景には、ずっと持っておくまま・引っ越ししないまま、という様な方が日本人は気質的に多いので。
内田:良し悪しはあるのでしょうけれども、人材の流動化もそうですよね?
流動化して行くと、どんどん高くなって行く可能性もあるという。
吉崎:似た話ですね。
人材も流動化する事によって、賃金も上がり下がりしていく訳ですよね?
内田:どうなのでしょうね、それ。
後進という意味では、日本もアメリカに追い付いて行くという様な所はあるのでしょうかね…?
吉崎:何を以て追いつくか、というのは分かりませんが…
要は先ほどのキャピタルゲインの様なものを狙って行く様な形で、あるものは売り、あるものは買い、という様な。
例えば3個持っている中でこれは売り、これは買い等、そういう組み替えをしていく様な事をしていけば、日本の不動産価格の市況はもっとよくなると思います。
先ほどの人材も同じように、流動性が高いから賃金は上がっている訳ですよね。
それと同じように不動産も流動性が上がれば、不動産価格も全般的には…濃淡ありますよ?
地方だとそんなに大きく上がらない所は沢山あると思いますが、全般的に上がる事は間違い無いと思いますね。
動かないから。
流動性を上げていくことが大切
そう考えるとREIT等は、2001年からですかね?
昔はなかったわけで、小口化して買えるようになって、不動産は全般的に上がるようになった。
つまり不動産の場合、何をもってしても流動性を上げていかなければならない。
株式も同じですよね。
売買が低い時等、証券会社は確かに儲からないでしょうけれども、株式市場自体も冷え込んでいる訳でしょう?
そうですよね。
昔に比べると、そういう金融商品的なものも、不動産関連の様なものが増えてきている訳ですよね。
それはやはり、流動化させる為というのもある。
確実に変わってきてはいる訳ですか?
吉崎:もっと、ベースのマインドの様な所を変えて行けば、そこは変わってくると思います。
ただ、いってもそもそもが農耕民族ではないですか?
先祖を辿れば畑で稲を作っていた息子や娘達な訳では無いですか。
内田:欧米に凄く近付いて行く(同じようになる)というのは、やはり中々難しいかもしれないですが、方向性はそっちの方にある。
吉崎:流動性を築く。
一般の個人不動産投資家の方も、資産の組み替え戦略を考えて…
そういう事ができる様な企業をアドバイザーに付けろ!という事ですね。
物件を売ってお終いではなく、その後に「これは3年くらい持っていて、その後に売った方が良いですよ!」というアドバイスをするとか。
「これは希少価値が高いからずっとホールドで良いと思いますよ!」とか、そういう売ってお終いの会社ではなくて、資産の組み替え、アセットマネジメントまでアドバイスをする企業との付き合いを求めたら良いと思います。
内田:そういう人達は増えていますか?
吉崎:増えていますよ。
内田:ちゃんと見つけないといけませんね。
吉崎:そういう事だと思います。
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※ 本記事はラジオNIKKEI第1「5時から“誠”論」の番組内コーナー「ワクワク人生COCO the Style」の内容を抜粋/改変したものです
※ 2023年4月10日(月)放送
※ 日経ラジオ社の承諾を得て作成しています