PBRとは、株価が割安か、割高かを判断する投資指標
まず、「PBR」とは、その銘柄の株価が割高なのか、割安なのかを測る株価指標のひとつです。
PBRは、現在の株価が1株当たり純資産(もし、投資した企業が倒産した場合など、資産を精算して、株主に戻ってくる1株あたりの金額)の何倍まで買われているかを示しており、単純にPBRが高ければ高いほど「割高」になるまで買われている、低ければ低いほど、「割安」に放置されている、と判断できます。
また、一般的に、PBR「1倍」が株価の「底値の目安」(株価と資産価値が同じ)と言われますが、今回の取り上げる「低PBR銘柄」=PBR1倍割れの企業であることから、「今後、資産価値以上の価値を生み出さない企業」だと見ている投資家が多いということでしょう。
ちなみに、PBRが低くなる理由はいくつかありますが、主なものは、企業の内部留保(当期純利益のうち配当金に回されないお金)が多いこと、株主への還元が少ないこと。
そして、資本を効率的に使って利益をあげることができていないなどがあげられます。
「低PBR銘柄」が話題になるきっかけは、東証の「改革」
それではなぜ、今、「低PBR銘柄」が注目され、買われているのでしょうか。
きっかけは、東京証券取引所(以下、東証)の「市場改革」です。
その改革・第一弾として昨年4月、東証では市場区分の再編・統合が行われました。
改革前は、「東証一部」「東証二部」「マザーズ」「JASDAQスタンダード」「JASDAQグロース」の5つの市場があり、3700を超える上場企業は、会社の規模など様々な条件によって、いずれかの市場に分類されていました。
中でも「東証一部」上場企業といえば、イメージは、キラキラの優良企業。
企業、経営者たちも「目指すは、東証一部」と、事業の成長を図ってきました。
実際、市場区分の再編・統合が行われる前、東証に上場する企業の約6割が「一部」に集中していたのです。
ただ、「一部」上場銘柄のふたを開けてみると、約半分が低PBR銘柄!
しかも、全体で見ても、世界平均のPBRが2.5倍近いのに対して、日経平均のPBRは1.2倍程度と、投資家の目には魅力的に映っていないことがわかります。
そこで、東証は市場改革に踏み切り、企業側に改善を迫ったのです。
東証の改革で、低PBR銘柄に改善期待が台頭
この市場改革によって、5つあった市場が再編・統合され、「プライム」「スタンダード」「グロース」の3つの市場構成に見直されました。
さらに東証は、プライム市場とスタンダード市場に上場している全約3300社に対し、資本コストや市場での評価を認識するよう要請。PBRが1倍を下回る企業に対しても、「1倍を下回る要因の分析」「改善のための具体策の開示」といった対応を求めました。
企業の魅力が増せば、投資する人も増え、企業にとって応援団が増加することになります。
企業は、その期待に応えようと事業を拡大させたり、新規事業の創出に力を入れたりするでしょう。
さらに、投資家から経営の良し悪しを監視されることにもなりますから、企業は透明性のある経営を心掛けるようになり、投資資金や利益をムダに使うことなく、効率的な経営を行うようになるという、いいサイクルが生まれます。
その結果、日本経済全体の活性化にも期待できるのです。
低PBR銘柄の中から、ダイヤの原石を探す
「低PBR銘柄」が、人気化している理由が分かりましたか?
改めて、PBRが低くなる主な理由は、
・株主への還元が少ないこと。
・資本を効率的に使って利益を上げることができていないこと。
と書きました。
では、東証からの要請に従って、PBRを上げる努力をするとするなら、単純にこれら下がる理由の反対をすればいいわけです。
・配当や自社株買いなど、株主への還元を増やすこと。
・資本を効率的に使って利益を上げること。
こう並べるとどうでしょう。
ずいぶんと魅力的な企業に映り、成長も期待できそうな気がしてきませんか?
もう「低PBR銘柄」が、人気化している理由が分かりましたね。
実際、決算発表と同時に、増配や自社株買いを公表する企業が増加しています。
日本では、1990年代後半以降の金融不安や景気の落ち込みによって株価の低迷が続き、PBR1倍割れの企業が続出しました。
そう、ずいぶんと長らく、この状態が放置されてきたのです。
それが今、ようやく改善されるとするなら、歴史が動くようなもの!
期待が高まるのは当然です。
ただし、PBR1倍割れの銘柄すべてが期待できるわけではないことも頭に入れておきましょう。
中には、本当に「資産価値以上の価値を生み出さない企業」があるのですから。