本日のテーマ
今日は「キャップレート分析」をしていこうと思います。
キャップレートは日本語に訳すと…
キャピタライズに期待する利回り、投資家の期待する利回り(要求利回り)という感じでしょうか?
「これぐらいの利回りを欲しいな」「この不動産に投資するなら…」というような、イメージです。
内田:はじめて聞いた時は「何のことだろう…?」と思いました。
キャップをするレートとは一体何に蓋をするんだろう?みたいな感じでしたけれど…
吉崎:キャップレートは大体、何個かのシンクタンクが出しています。
日本不動産研究所という所が出してるデータが半年に1回出ます。
11月末ぐらいに出たデータがあり、今回はそれを解説してみようかなと思います。
キャップレートとは?
まずキャップレートは先ほど言ったように「期待する利回り」です。
不動産を購入するに際して、これぐらいの賃料・これぐらいの経費を使っている。
賃料から経費を引くと(NOIと言います)要は、純収益です。
値段・経費があり、これが妥当なのか?ということです。
妥当かどうかをどう判断するのか?という目安として…
例えば、年間に100万円の利益があります。
入ってくるの出てくるのを全部差し引きして、100万円です。
その物件が3,000万円となった場合、この価格が妥当なのか?
これを利回りで割っていきます。
計算式は「100÷3,000=3%」です。
これが妥当なのか?ということです。
ここに目安としてのキャップレートがあるとします。
例えば5%ぐらいが正しいんだと仮にすれば…
目安からすると、100÷0.05=2,000万円。
「2,000万ぐらいが妥当かな?」と、こう判断するわけです。
その物件が3,000万円となっていれば、「高すぎ!という判断になるわけです。
という意味で、キャップレートは1つの投資の目安です。
要求なんだけど、目安だと思っています。
現実はそうはいかないよという場合ももちろんあるし…
もっとすごいよって場合もあるし…
吉崎:その目安ですよというところですね。
これは当然、地域、そしてアセットクラス。
つまりオフィスビルだったり、賃貸住宅だったり、物流倉庫など、不動産そのものの種別によって変わります。
身近な例
皆様の身近な賃貸住宅を例に取ると…
賃貸住宅で1番エリア的に最も利回り(要求利回り)が低い範囲というエリアは、城南エリアと呼ばれるエリアです。
恵比寿とか渋谷とかに面してちょっと行ける感じの場所ですね。
これが今最新で言うと、3.8%のキャップレートです。
3.8%でしたので、史上最低が続いているということです。
一方で、ファミリータイプ。
ファミリータイプも前回3.9%、今回は3.8%ということで並びました。
ちなみに…
大阪ワンルームタイプ4.4で変わらず。
札幌 5.0%、福岡 4.7%…
エリアによって多少変わります。
当然エリアによってリスクが異なるからということです。
更に、ワンルームとファミリーどちらの方が利回りが高いか?というと…
(当然、利回りが高いということはリスクは高いということです)
東京でいうと、ワンルームの方がリスクは低いであろう。
ということで、ワンルームマンションの方がワンルームタイプの方がこれまで利回りは低かった。
しかしながら、ここにきてワンルームとファミリーが変わらなくなってきたというのがここ最近の特徴です。
ずっと100%とは言わないけれども…
不動産市況がバーッと盛り上がってる時は似た感じになってきて「若干どうかな?」という時はワンルームの方が低い。
つまり、利回りが割り高ということです。
全体が底上げされるということなんですね。
今後の見通し
ただ、今後もファミリータイプの場合は値上がり期待があります。
ワンルームマンションはほとんど投資用物件です。
ファミリータイプは自分で住むことも考えられるので、つまり実需用に売ることもできるかもしれない。
自分も住むために買ったけれども、それをまた住みたいと言ってる人達に売ることができる。
吉崎:更に値上がった場合は…
株とかと同じで、キャピタルゲインを多く取れる。
確かにリスクはありますが、ボラティリティーが大きいのでキャピタルゲインの可能性が高くなってきます。
こういう価格になってくる時は、こうやってキャップレートが低くなってきます。
内田:なるほど…
それは価格が上がっている時ですか?
吉崎:「上がるムードの時」ですね。
そういうのがここ最近の特徴です。
ただ、これはあくまでも投資家が要求するレートであって、実際それよりは要求よりも高いか低いかで時によって変わってきます。
実取引レートといいます。
実際に取引されている利回りはどれぐらいか?というものです。
内田:それだと多少なりとも差はいつもありますよね?
吉崎:当然こういうご時勢ですから、取引利回りは低くなってます。
この調査もあって、先ほどの城南地域ですね
3.8のキャップレートに対して、取引レートは3.5%です。
低くなっていますよね。
「3.8%ぐらい欲しいね!利回りあったらいいね!」と思いますが、そんなのないのです…
普通は3.5%くらいなのです。
内田:夢と現実みたいな感じですね。
吉崎:この0.3%分ぐらいは「ちょっと上乗せもしょうがないかな…」
「こういうご時勢だから、買っておこうかな…高いけれど…」という感じで買われているというような状況になっているということです。
内田:少し割高感みたいな…
投資家からしたら、気持ちの上ではあるということですね。
吉崎:ここの差が広がってくると熱狂感が上がってるところ。
これが落ち着いてくると、熱狂感が止まってきている。
そろそろサイクル的には次の局面に行くのかなっていう時。
内田:今取り上げた城南エリアのところで、0.3%じゃないですか?
この0.3%はどれぐらいの基準感なのですか?
吉崎:「そんなものかな…」という感じです。
ちなみに城東エリア(墨田区とか江東区)は、期待利回りが4.0%です。
取引レートは3.6%です。
どういうことかっていうと…
要は主戦場がそっちに移っているということです。
内田:差が広がっているということなのですね。
吉崎:要は「城南エリアはちょっと高すぎるのでは?」と…
城南のエリアであれば、丸の内に行くのも清澄白河や門前仲町に行くのもそんなに変わらない。
「もちろん便利じゃん!」と…
あっちの方に目線がみんな行っており、主戦場となってきているのがよく分かりますね。
内田:お金の流れが見えると…
面白いですね。
吉崎:色々な見方ができますので、また他の見方もキャップレートを改めてしてもいいかなと思います。
※ 本記事はラジオNIKKEI第1「5時から”誠”論 NEXT」の番組内コーナー「ワクワク人生COCO the Style」の内容を抜粋/改変したものです
※ 2023年12月11日(月)放送(放送当時は「5時から”誠”論」という番組名でした)
※ 日経ラジオ社の承諾を得て作成しています