不動産価格形成の一般的要因
一般的要因とは、一般経済社会における不動産のあり方及びその価格の水準に影響を与える要因のことです。一般的要因は、自然的要因、社会的要因、経済的要因及び行政的要因に大別されます。鑑定評価基準に掲載されている例としては、以下の通りです。
(1)自然的要因
1:地質、地盤等の状態
2:土壌及び土層の状態
3:地勢の状態
4:地理的位置関係
5:気象の状態
<筆者の解説>
温暖化の影響により、海面上昇が深刻な地域があります。観光地で有名なヴェネツィアのサンマルコ広場は高潮の時期になれば水があふれ長靴が必須となっているようです。また、南太平洋に浮かぶサンゴ礁の島で形成される国ツバルは海面上昇のため、存続そのものが危うくなっています。土地が海に沈めば、そのままでは利用することはできず価値が激減します。崖崩れや川の氾濫により、利用できなくなる土地も同様です。
また、地震のたびに起こる液状化現象もこれらと同じように不動産価値を下げる要因となります。こうしてみれば、自然的要因は、不動産価値の根源的な要因であり、価格形成要因の最上位レイヤーと言えるでしょう。
(2)社会的要因
1:人口の状態
2:家族構成及び世帯分離の状態
3:都市形成及び公共施設の整備の状態
4:教育及び社会福祉の状態
5:不動産の取引及び使用収益の慣行
6:建築様式等の状態
7:情報化の進展の状態
8:生活様式等の状態
<筆者の解説>
「利用されること」により価値を生み出す不動産ですから人口動態は大きな要因となります。また、3は「インフラ整備」ということですが、電気ガス水道といったライフライン整備、そして交通機関の整備もこれにあたります。東京メトロではいくつかの延伸計画が進められていますが、これも不動産価格上昇に寄与することになるでしょう。
6は建物価格算定において、SRC・S造・木造 などで価格が異なるということです。
(3)経済的要因
1:貯蓄、消費、投資及び国際収支の状態
2:財政及び金融の状態
3:物価、賃金、雇用及び企業活動の状態
4:税負担の状態
5:企業会計制度の状態
6:技術革新及び産業構造の状態
7:交通体系の状態
8:国際化の状態
<著者の解説>
経済状況が不動産価格に影響を与えることは言うまでもありませんが、金利や税制度もここに入っています。また、交通体系は経済的要因にも入っています。交通体系は、とくに都市部では大きな要因であり、地方でも空港やインターチェンジの新設、あるいは移転などはプラスマイナスともに大きな要因になります。
(4)行政的要因
1:土地利用に関する計画及び規制の状態
2:土地及び建築物の構造、防災等に関する規制の状態
3:宅地及び住宅に関する施策の状態
4:不動産に関する税制の状態
5:不動産の取引に関する規制の状態
<著者の解説>
1、2、3に関しては、良好な街づくりのため、用途地域など様々な規制がかけられており、これは不動産の利用のされ方(=用途)を決めるものですから、不動産価格に直接的なインパクトを与えます。
合理的判断と不動産価格
ここまで述べたことは、不動産鑑定評価基準に基づくもので、いわば「納得性のある、合理的な判断に基づくもの」ということになります。
しかし、誰もが合理的な判断に基づいて購入しないのが不動産の特徴でもあります。眺望が良いということで、崖地の不動産を購入される方もいますし、アドレスがいいということで交通の便の比較的良くないエリアの不動産を購入する方もいます。
経済学的に言えば、不動産も「財」ですので、需給のバランスが価格のベースとなります。そのため、需要増大→価格上がる 供給増大→価格下がる という図式が成り立ちます。
このように、不動産価格は、鑑定理論で一概に決まるものではありません。しかし、不動産価格においては、最上位の価格決定要因はここに挙げた(1)〜(4)の要因で決まることは間違いありません。