株式投資

米国債の金利リスクとは?抑える方法と今後の見通しについて紹介

アメリカドル

「米国債の金利リスクとは?」

「金利リスクを抑える方法はある?」

「これから金利が上がるのか下がるのか知りたい」

上記のような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

米国債は世界で最も信頼される債券のひとつですが、金利リスクという避けて通れない要素があります。

本記事では、米国債の金利リスクの仕組みを分かりやすく解説し、そのリスクを抑える具体的な方法や、今後の金利動向の見通しまでを詳しく紹介します。

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この記事の監修者

持丸 雅士

ココザス株式会社|コンサルタント|FP

持丸 雅士

Masashi Mochimaru

突如起きた父親の入院・手術をきっかけにお金に対する不安を感じ、ファイナンシャル・プランナーの勉強を始める。
ファイナンシャルプランナー技能士2級及びAFP認定を取得後、お金に対する正しい知識・情報を世の中に伝えていきたいと思い、個人向け資産形成コンサルティング事業を展開しているココザス株式会社へ入社。
資産形成で不安を抱えているお客様の視点に立ち、年間800人以上の資産形成のサポートを行っている。
また現在はセミナー講師として講演会を行うなど、正しいお金の知識を広げる活動にも取り組んでいる。

米国債の金利リスクとは?初心者にもわかりやすく解説

下がるリスク

米国債は世界で最も安全な資産と呼ばれますが、金利の変動によって価格が上下する金利リスクは避けられません。

特に金利上昇局面では、保有中の債券価値が下がるため注意が必要です。ここでは、米国債の金利リスクを3つ紹介します。

・保有中に金利上昇が起きた場合の評価損
・長期保有と償還時のリスクの違い
・利息収入への影響

1つずつ確認しておきましょう。

保有中に金利上昇が起きた場合の評価損

金利が上がると、既に発行されている低金利の債券は魅力が薄れ、米国債の価格が下落する傾向にあります。

例えば、利回り2%の米国債を購入した後に、市場金利が3%へ上昇すれば新たに発行される債券のほうが有利となり、2%の債券は市場で値下がりするということです。

このように、債券価格と金利には逆の関係があり、特に満期までの期間が長いほど、価格変動の影響を受けやすくなります。

短期債よりも長期債の方が金利上昇による価格下落幅が大きいのが特徴です。

ただし、この評価損は「時価」での損失であり、償還まで保有すれば元本は返ってきます。

短期で売買する場合は注意が必要ですが、長期保有なら実損にはつながらないケースも多くあります。

長期保有と償還時のリスクの違い

債券を満期まで保有すれば、途中で金利が変動しても額面で償還されるため、評価損は実際の損失にはなりません

しかし、金利上昇により高い利回りの新発債券が出てきても、既存の債券は固定利率のままなので、より有利な投資機会を逃す「機会損失」が生じます。

反対に、金利が下がった場合には、保有している高金利債券の価値が上昇し、含み益が発生します。

つまり、長期保有は価格変動のリスクを回避できる一方で、金利変化による投資チャンスを逃す可能性もある点を理解しておく必要があります。

配当収入への影響

米国債は、購入時に固定された利率が設定されているため、金利が変動しても受け取る利息の金額は変わりませんが、受け取った利息を再投資する際には金利動向の影響を受けます

金利が下がっている局面では、再投資先の利回りが低下し、全体の運用効率が悪化します。

一方で金利が上昇している局面では、再投資先の利回りが高まり、トータルの収益が増える可能性があります。

このように、利息自体は安定しているものの、再投資時の金利によって総リターンが変化する点が、見落とされやすい金利リスクの一部です。

なぜ動く?米国債と金利の深い関係

金利の関係

米国債の価格は、市場金利の動きと密接に関係しています。

特に「金利が上がると価格が下がる」という逆相関の関係は、債券投資の基本中の基本です。

この仕組みを理解しておくことで、金利動向に応じた投資判断がより的確に行えるようになります。

ここでは、米国債の価格が金利によってどのように変動するのか、その理由と影響範囲を紹介します。

なぜ金利が上がると米国債価格は下がるのか

市場金利が上昇すると、すでに発行されている低金利の米国債は魅力を失うため、価格が下がる傾向にあります。

投資家は、より高い利回りを得られる新しい債券を選ぶため、既存の低利回り債を売却する際には、価格を引き下げなければ買い手がつきません。

例えば、年利2%の米国債を保有しているときに、市場金利が3%へ上昇すると、同じ100ドルを投資するなら新発債の方が多くの利息を得られます。

そのため、既存の2%債の価格は下落します。

一方で、金利が下がる局面では、過去に発行された高金利の債券が有利となり、価格が上昇します。

このように、米国債の価格と金利は常に逆方向に動く構造になっています。

債券価格と利回りの逆相関の仕組み

債券の価格と利回りが逆に動く理由は、将来受け取る利息や償還金を現在価値に割り引いて評価する仕組みにあります

例えば、毎年一定額の利息を受け取る債券の場合、金利が上昇すれば割引率も上がり、将来受け取るお金の価値が現在では低く計算され、その結果、債券の価格は下がります。

反対に、金利が下がると割引率が低くなり、将来の利息や元本の価値が上がるため、債券価格は上昇するのです。

この仕組みは「割引現在価値」の考え方に基づいており、数学的にも市場原理的にも合理的な関係です。

つまり、金利変動と債券価格の逆相関は、債券投資の根幹をなす原則といえます。

短期債・長期債での金利変動の影響の違い

米国債は、償還までの期間によって金利変動の影響度が異なります。

一般的に、長期債ほど金利変動の影響を強く受け、短期債ほど影響が小さいという特徴があります

長期債は、固定された利率で長期間運用されるため、金利が上昇した際に「より高い利回りを長く逃す」ことになり、価格下落幅が大きくなります。

一方、短期債は数カ月から数年で償還されるため、金利が上がっても比較的早く新しい高金利債に乗り換えられます。

このため、価格の下落幅は比較的小さく抑えられます。

金利上昇局面では短期債中心、金利が安定・低下局面では長期債中心にポートフォリオを構成するなど、期間ごとの特性を活かしたポートフォリオが必要となるでしょう。

金利リスクと為替リスクの違いをやさしく整理

教える

米国債を購入する際に注意すべきリスクには、大きく分けて「金利リスク」と「為替リスク」の2つがあります。

どちらも投資成果に影響しますが、性質や発生するタイミングはまったく異なります。

ここでは、それぞれのリスクの特徴と、なぜ米国債では両方を理解する必要があるのかについて紹介します。

為替リスクとは

為替リスクとは、円とドルの為替レートの変動によって、投資した資産の価値が変動するリスクです

米国債はドル建て資産のため、円高になると円換算での資産価値が減少します。

例えば、1ドル=150円のときに米国債を購入し、その後1ドル=130円に円高が進むと、同じドル額でも円に換算したときの評価額は減ってしまいます。

一方で、円安になると逆に評価額は増えるため、為替リスクは損にも得にもなるリスクということでもあるのです。

為替変動は金利とは関係なく、世界経済や日米の金融政策、貿易収支など多くの要因で動くため、予測が難しい点も特徴です。

金利リスクとは

金利リスクとは、市場金利の変動によって債券価格が上下するリスクです

特に金利が上昇すると、既に発行された低金利の米国債の価値が下落します。

例えば、利回り2%の米国債を保有しているときに市場金利が3%に上昇すれば、より高利回りの新しい債券が人気を集め、既存の債券価格は下がります。

この金利リスクは、保有期間中に債券を売却する場合に損失となる可能性がありますが、満期まで保有すれば額面で償還されるため、実際の損失にはならないケースもあるのです。

金利リスクと為替リスクの違い

金利リスクと為替リスクは、どちらも米国債投資のリターンに影響しますが、発生の要因と影響範囲が異なります

金利リスクは米国内の金融政策や景気動向によって債券価格が変動するリスクであり、「債券そのものの価値」に関するリスクです。

一方、為替リスクは円とドルの交換レートの変動によって、円に換算したときの資産価値が変化するリスクです。

つまり、金利リスクはドルベースでの損益、為替リスクは円ベースでの損益に影響するのです。

米国債に投資する際は、これら2つを切り離さずに考えることが大切です。

金利リスクを抑えるためのポイント

整理と解決

米国債は安全性の高い資産として人気がありますが、金利変動によって価格が上下する金利リスクは避けられません。

とはいえ、投資の仕方を工夫することで、このリスクを最小限に抑えることは可能です。

ここでは、金利リスクを軽減する具体的な方法を3つ紹介します。

・短期債や分散投資で金利上昇局面に対応
・債券ETFを活用してリスク分散
・長期投資で金利サイクルを平準化

1つずつ確認しておきましょう。

短期債や分散投資で金利上昇局面に対応

金利上昇局面では、短期の米国債に投資することでリスクを抑えやすくなります

短期債は償還までの期間が短いため、価格変動の影響を受けにくく、再投資時に高い金利で運用し直すことができます。

また、投資対象を複数の償還期間に分ける分散投資も効果的です。

複数の債券に分けて投資することにより、一部の債券が価格下落しても他の債券が補う形となり、ポートフォリオ全体の安定性が高まります。

米国債には以下の4種類あります。

米国債の種類

特に、短期債・中期債・長期債を組み合わせることは、金利変動リスクを平準化する手法として有効です。

債券ETFを活用してリスク分散

個別の米国債を購入するよりも、債券ETF(上場投資信託)を活用することで効率的に分散投資が可能です

ETFは複数の債券で構成されており、金利変動や特定銘柄のリスクを分散できるのが特徴です。

「短期米国債ETF」や「総合債券ETF」など、自身の投資目的やリスク許容度に合わせて選択する方も多いです。

また、ETFは市場で売買できるため、流動性も高く、金利動向に応じて柔軟にポジションを調整できるのも魅力の1つです。

個人投資家にとって、金利上昇リスクを抑えながら米国債へ投資する手段として非常に便利です。

長期投資で金利サイクルを平準化

短期的な金利変動に一喜一憂せず、長期的な視点で保有し続けることもリスク軽減のひとつです

金利は経済のサイクルによって上昇と下降を繰り返しますが、長期で見れば平均化される傾向があり、極端な損益の偏りが小さくなるのです。

つまり、一時的な含み損が出ても、金利が下がる局面では債券価格が回復する可能性が高く、結果としてリターンが安定しやすくなります。

また、米国債は満期まで保有すれば元本と利息が確実に返済されるため、途中の価格変動は実際の損失にはなりません。

特に安定した収入を目的とする場合、長期保有戦略は有効であり、リバランスを行いつつ、金利サイクルを俯瞰した投資スタンスを取ることで、金利リスクを大きく抑えられるでしょう。

米国債投資はこんな人におすすめ

いいね

米国債は安定性が高く、比較的低リスクで利息収入を得られる資産です。

しかし、価格変動や為替リスクがあるため、すべての投資家に向いているわけではありません。

ここでは、米国債投資に特に適しているタイプの3つの投資家について解説します。

・安定収入を重視する投資家
・円安リスクを取りながら利回りを狙いたい人
・為替や金利を長期的に分散して投資できる人

1つずつ確認しておきましょう。

安定収入を重視する投資家

米国債は定期的に利息が支払われるため、安定した収入源を求める投資家に向いています

米国債の利息は、銀行預金より高い利回りが期待できるため、銀行に預けておくより資産が増えます。

もちろん株式のように大きな値動きはありませんが、金利変動による一時的な価格変動はあるため、短期売買よりも満期まで保有して利息を受け取る運用に適しています。

定期的な現金収入を重視し、リスクを抑えながら運用したい人には非常に適した選択肢です。

円安リスクを取りながら利回りを狙いたい人

米国債はドル建て資産のため、円安になれば円換算での利回りが増えるというメリットがあることから、為替リスクをある程度受け入れられる人に向いています

「円高になった場合、一時的に評価損が出ても動揺せず保有を続けられる人」や「投資の目的が短期売買ではなく、長期的な利息収入や元本回収にある人」など、為替の上下による一時的な損益に慌てることがない人に向いているのです。

また、「為替変動による損益が資産全体に与える影響を理解している人」や「必要に応じて、為替ヘッジなどの手段を使って調整することもできる人」など、投資の知見や経験を持ち合わせている人にも向いています。

為替変動を理解し、リスク管理ができる人であれば、米国債はおすすめの投資先と言えます。

為替や金利を長期的に分散して投資できる人

米国債は金利変動や為替変動の影響を受けるため、長期的に分散投資できる人に向いています

複数の期間の債券やETFを組み合わせたり、定期的に買い増しを行ったりすることで、リスクを平準化できます。

長期的に保有することで、金利上昇や円高などの短期的なリスクを平均化でき、安定した運用成果を目指すことが可能です。

リスクを理解したうえで、時間を味方にできる投資家に適した運用方法です。

これからどうなる?米国債の今後の見通し

ドルと虫眼鏡

米国債は安全性の高い資産として注目されますが、今後の利回りや価格は金利政策や為替市場、世界経済の動向によって左右されます。

ここでは、投資判断に役立つ最新の見通しを、金利、為替、世界経済の視点から整理して紹介します。

米国の金利政策と利上げ・利下げの影響

米国債の価格や利回りは、米連邦準備制度(FRB)の金利政策に大きく影響されます

利上げ局面では、新発債の利回りが上昇するため、既存の低利回り債券の価格は下落しやすくなります。

一方、利下げ局面では既存の高利回り債券の価値が上昇するため、価格が押し上げられます。

投資家は金利動向を注視し、短期的な市場変動に備えることが重要です。

FRBは年内3回の利下げを検討しており、2025年9月18日現在、米国10年国債利回りは依然として4%台と高水準を維持しています。

米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17日のFOMCで、政策金利を0.25%引き下げ、昨年12月以来、6会合ぶりの利下げとなりました。

FOMCのドットチャートでは、年内にさらに2回の利下げ(各▲0.25%)が見込まれています。

トウシル楽天証券の投資情報メディアの画像引用

引用|トウシル 楽天証券の投資情報メディア

パウエル議長は会見で、雇用の下振れリスクに言及する一方、インフレ抑制の重要性を強調しました。

これを受け、市場では追加利下げを意識した動きが出始めています。

2026年・2027年もそれぞれ1回の利下げが見込まれており、今後は雇用統計やインフレ率などを注視する必要があります。

もちろん必ず利下げするとは言いきれないため、常に動向を追っておくことが大切です。

為替市場の動向と円高・円安リスク

米国債はドル建て資産であるため、為替レートの変動が円換算での評価額に直接影響します

円安になると利息や元本の円換算額が増える一方、円高になると減少するのです。

米ドル/円(USDJPY)|為替レート・チャート|みんかぶ FX/為替の画像引用

引用|米ドル/円(USDJPY)|為替レート・チャート|みんかぶ FX/為替

上図のように、ドル円は2021年から右肩上がりに円安が進行している状態です。

ただし、円高に転換した場合は円換算での利息額が目減りするので、為替はチェックしておきましょう。

為替リスクは金利リスクとは独立して発生するため、米国債投資では金利と為替の両方を意識して運用することが重要です。

世界経済のリスク要因と米国債の安全性

世界経済の不安定要素も、米国債の見通しに影響を与えます

景気後退、地政学リスク、国際的な金融市場の混乱などがあると、安全資産とされる米国債への需要が高まり、価格が上昇する傾向があります。

逆に米国経済の過熱やインフレ圧力が強まると、利上げによる価格下落リスクが高まります。

こうしたリスク要因を理解することで、米国債の安定性と潜在的な価格変動をバランスよく判断できます。

まとめ|米国債と上手に付き合うために

今後の付き合い

米国債は世界で最も信頼される安全資産のひとつであり、定期的な利息収入や元本返済の確実性が魅力です。

しかし、金利リスクや為替リスクといった価格変動の要因は避けられず、特に金利が上昇する局面では短期的な評価損が発生する可能性があります。

長期保有や分散投資、債券ETFの活用などでリスクを軽減することは可能ですが、投資スタンスや運用目的によって最適な方法は異なります。

そのため、米国債への投資を検討する際は、自身のリスク許容度や資産全体のバランスを考慮することが重要です。

特に初めて米国債に投資する方や、為替リスクや金利変動への対応に不安がある方は、ファイナンシャルプランナーに相談してポートフォリオの設計や運用戦略を確認することをおすすめします。

ココザスはファイナンシャルプランナーとして米国債を始めとした、投資や資産運用のサポートを行っております。

また、お客様の資産状況や家族構成、将来的なライフプランから適切な投資計画のアドバイスを行います。

さらに税金アドバイスや余剰金作りのための家計の見直し、保険やローンなどについての相談も承っておりますので、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者

持丸 雅士

ココザス株式会社|コンサルタント|FP

持丸 雅士

Masashi Mochimaru

突如起きた父親の入院・手術をきっかけにお金に対する不安を感じ、ファイナンシャル・プランナーの勉強を始める。
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保有資格

AFP(日本FP協会認定)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

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