唯一の空き家調査は、「住宅・土地統計」調査
国の基幹統計調査である「住宅・土地統計」が2023年に行われ(5年ごとの調査)、24年4月30日にその速報集計結果が総務省より公表されました。
「住宅・土地統計」の結果は、住宅や土地利用等の政策立案の元になるため、調査内容は、住居形態、土地利用容共、所有関係など多岐にわたります。
速報ではこのうち全国と都道府県の総住宅数と空き家数などが先行して公表されました。
この調査は全調査ではなく標本調査ですが、全世帯の1/17にあたる340万世帯を対象にした大規模な調査です。
ここからは、「住宅・土地統計」の速報集計結果に基づき空き家の最新状況について解説します。
増え続ける住宅総数
2023年10月1日(調査時点)における我が国の総住宅数は6502万戸で、前回調査(2018年)と比べて261万戸(4.2%)増加しています。
調査開始以来、住宅総数は一貫して増加しており過去最多となっています。
過去と比較してみれば、40年前の1983年時点では3860万戸で、80年代・90年代は概ね9%台の増加率でした。
平成に入って初めての調査年だった1993年は4,588万戸でしたので、この30年間で1,914万戸増加、約1.4倍となったことになります。
我が国ではすでに人口減少が進んでいますが、世帯数は2030年頃まで増加する見通しであり、まだしばらく、住宅総数は増えるものと思われます。
空き家総数は増加、空き家率はこの10年横ばい
最新の調査では、空き家総数は900万戸(前回調査から51万戸増加)、空き家率は13.8%となりました。
空き家率は2013年調査13.5%、2018年調査13.6%、2023年調査13.8%と、ほぼ横ばいが続いています。
メディアは、「過去最多数、過去最高の空き家率」と大きく報じていましたが、確かに過去最多となっていますが、90年代から2008年くらいまでの間は、数・率ともに急に増えました。
そのころ言われた「空き家問題」ですが、近年は空き家率の拡大は収まりつつあり、「徐々に、改善されつつある」と言うのが正しい表現でしょう。
そもそも「空き家」とは何か?
本調査での空き家にカウントされる住宅は、4つのカテゴリーに分かれ、この合計が先に述べた空き家率13.8%などと発表される値です。
具体的には下記4つです。
1:賃貸住宅の空き家(=空室)
2:売却用住宅の空き家(=未売却物件)
3:2次的住宅(別荘や仮眠所など)
4:長期不在の住宅
(ちなみに、最後の(4)は、これまでは「その他の住宅」という分類でしたが、今回調査結果からは、「賃貸・売却及び2次的住宅を除く空き家」という呼び方に変更されました。)
空き家イメージだけの空き家率は?
一般的な空き家のイメージ、「誰も住んでおらず、使われておらず、放置されている」は、(4)に該当するもので、ここでは、「狭義の空き家」と呼ぶことにします。
この狭義の空き家率は、最新の調査では385万戸で5.9%、2018年調査は349万戸で5.6%、2013年調査は5.3%となっています。
前回調査から37万戸増えたことになります。
都道府県別の空き家率
都道府県別にみれば、空き家率はほぼ横ばいか僅かずつ上昇している県が多くなっていますが、全国11の府県では空き家率が減少しています。
また、狭義の空き家率が最も少ないのは東京都で2.6%(前回調査では2.3%)、続いて神奈川県で3.2%(前回調査では3.3%)、続いて沖縄県4.0%(前回調査では4.1%)、福岡県4.6%(前回調査では4.9%)となっています。
大都市部では狭義の空き家の割合はかなり少なく、前回調査より割合が減少している県は4県あります。その一方で人口減少が顕著な地域では狭義の空き家率は上昇しています。
このように、主に都市部などでは、狭義の空き家増加には歯止めがかかっています。
その背景として、県内では多くの地域で、新しい開発工事、あるいは再開発工事が進み、空き家を含めた一体開発が進んでいること等が要因と考えられます。
加えて、空き家対策特措法が15年に制定され、その後に改正もされて、特定空き家(放置すれば倒壊などの危険が考えられる空き家)に対する対応が強化されており、その効果が出ていることも挙げられるでしょう。