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第23回 東京メトロ上場で都心不動産市況は変わるのか?|不動産エコノミストが語る、不動産投資COCOだけの話

  • #不動産エコノミストが語る不動産投資COCOだけの話

3月16日に北陸新幹線が福井県敦賀市まで延伸されました。
延伸により、東京から長野、金沢を経由して敦賀までが1本の新幹線で行けるようになり、延伸地域では駅前の開発はもちろん周辺地域の開発が進んでいます。
福井県知事は「100年に1度のチャンス」として意気込みをみせています。
振り返ってみれば、2015年に北陸新幹線は長野~金沢間が開通し、新幹線停車駅周辺では開発が進みました。

例えば、金沢駅周辺は一変するような再開発で、多くの観光客が集まりました。
こうしたことから、2014年・15年は富山市や金沢市の中心部を中心地地価が大きく上昇しました。

現在は、その時よりも不動産市況が良い状況ですので、2024年3月後半に公表される地価公示では、延伸地域(例えば、福井市など)で地価上昇が期待できそうです。
このように、新幹線を含むインフラ整備は不動産市況を好循環にさせ、不動産価格上昇の可能性が高まります。

この記事の取材協力者

吉崎 誠二

不動産エコノミスト

吉崎 誠二

SEIJI YOSHIZAKI

不動産エコノミスト、不動産企業コンサルタント、CREビジネスコンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーション、CREコンサルティング、などを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。
また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

・レギュラー出演
 ラジオNIKKEI:5時から“誠”論(月~水:17時~)
 ラジオNIKKEI:吉崎誠二のウォームアップ 830(月:8時30分~)
 テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

URL: https://www.yoshizakiseiji.com/

国鉄民営化と不動産ビジネス

国鉄民営化と不動産ビジネス

JRが民営化されたのは、1987年のことでした。
かつては日本国有鉄道(国鉄)と呼ばれ国が運営する鉄道会社でしたが、経営効率が悪く赤字が続いていましたが、当時の中曾根康弘内閣総理大臣の英断により、6つの地域に分けて(貨物は別会社)分割して民営化されました。
これが、現在のJR東日本・西日本・東海・四国・九州・北海道・貨物です。

都市部であり、国の費用で敷設されドル箱の新幹線を引継いだ、東日本・東海・西日本(通称:本州3社)は順調に業績を伸ばし上場します

一方、3島会社とよばれた(九州・四国・北海道)は当初から苦戦が予想されていました。
このうち、JR九州は、マンション開発など不動産ビジネスやホテル事業で業績を拡大、豪華観光列車を投入するなど、旅客収入以外のビジネスに注力して業績を拡大、そして2016年に上場を果たします。

本州3社においても、もちろん鉄道の利便性は向上し、また駅ビルを活用した商業施設の運営や不動産ビジネスに進出するなど、飛躍的に巨大企業となりました。

民営化し上場したことで、人口減少地域の路線を廃止するなど、「切り捨て」と呼ばれ批判を受けていますが、大きな飛躍を遂げたことは間違いなく事実といえるでしょう

国と都が運営する東京メトロ

国が関わる鉄道会社で、いまだ「事実上民営化していない」企業が、首都の地下を走る東京メトロです

東京メトロは、かつて帝都高速度交通営団(営団地下鉄)と呼ばれ、電電公社(NTT)や日本国有鉄道(JR)などと同じように国が管轄する特殊法人でした。
その後、2004年に株民営化されました。
しかし、民営化といいつつ、かつてのNTTやJRのように国が大半の株を保有し、現在(24年3月)もJRやNTTと異なり未上場企業で、国が53.4%、東京都が46.6%の株式を保有しています

東京の地下鉄は13路線あり都心をほぼ隈なく網羅

東京の地下鉄は13路線あり都心をほぼ隈なく網羅していますが、経営は2つに分かれています。
都が運営する都営地下鉄が4路線、東京メトロが9路線あります。
前述のように、東京メトロも約半数の株は東京都が持っていることから、これまでなんども一体化が検討されてきました。

読者の方の記憶にあると思いますが、猪瀬直樹氏が都知事の時代に都営地下鉄と東京メトロの一体化を推進しました。
その流れのなかで、東京メトロ半蔵門線と都営地下鉄新宿線の九段下駅は壁で隔てられており、いったん改札を出ての乗換でしたが、13年3月に、壁を撤去し同一ホームでの乗り換えが出来るようになりました。
しかし、都営地下鉄と東京メトロの一体化は断念され、現在に至っています。

東京メトロ上場で不動産市況は活性化する

東京メトロ上場で不動産市況は活性化する

24年1月に、「東京メトロ上場へ、24年度中、早ければ夏にも!」と報じられ、いよいよ上場が近くなってきたようです。
現在の株式保有については前述のとおりですが、このうち、国と都で合計50%分を売却予定とされています。

これで、真の民営化へ向かうことになります
一方で上場すれば、都営地下鉄との一体化は、さらに遠ざかることになります

すでに、東京メトロでは、有楽町線の延伸や南北線の支線(白金高輪駅~品川駅間)建設が決まっています。
上場により、これらの計画進行がスムーズになり、運航開始が早まることになれば、より利便性向上、そして敷設周辺地域の不動産価格の上昇が期待できます
逆に、「採算性の観点から、計画の見直し」とならないよう願うばかりです。

東京メトロは、いくつかの商業ビル(メトロシティなど)を保有していますが、JRに比べるとそれほど多くありません。
そのため収入の大半は旅客事業と思われますが、今後は上場に伴い、地下鉄駅周辺の開発を進めるものと思われます。

そうなれば、周辺地域の活性化につながり、そして不動産価格上昇につながる可能性が高まります

東京メトロの上場が楽しみです。  

この記事の取材協力者

吉崎 誠二

不動産エコノミスト

吉崎 誠二

SEIJI YOSHIZAKI

不動産エコノミスト、不動産企業コンサルタント、CREビジネスコンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーション、CREコンサルティング、などを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。
また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

・レギュラー出演
 ラジオNIKKEI:5時から“誠”論(月~水:17時~)
 ラジオNIKKEI:吉崎誠二のウォームアップ 830(月:8時30分~)
 テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

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