手元に残るお金を重視する際の指標

不動産投資では「月の単位、あるいは年の単位で手元に資金があるかどうか、どれくらい残るか」は非常に重要です。
空室が続く、賃料が想定より低い、賃料滞納などで、想定していたキャッシュフローにならなかった場合、自己資金から「持ち出し」の形で、ローン返済や管理費、修繕積立金などに充てなければいけなくなります。そのため、月々のキャシュフローは極めて重要です。
しかし、近年は、投資用不動産価格が高騰しているため、投資前の収益シュミレーションで月次キャシュフローがマイナスでも、投資を行う方も増えています。
長期保有を前提として、ローン返済が終わると、月々のキャシュフローが一気に向上することを狙っているのでしょう。
手元に残るお金を重視する際の指標の代表は、FCR(実質利回り)です。
1:FCR(Free-and-Clear Return):実質利回り
FCRは、NOIを総投資金額(物件価格+購入諸経費)で割って求められる利回りです。
FCR=NOI(純営業利益)÷(物件価格+諸経費)×100
関連する指標では、
NOI=(総収入(=計算上の総収入GPI)-空室分や未回収分)-運営経費
CF(キャシュフロー)=NOI-年間返済額(ADS)
GPIは潜在総収入のことです。空室がなく、賃料の未回収などがなく、1棟物件の場合は、駐輪場や駐車場などの賃料を含めて、想定される賃料すべての合計です。
ここに、想定される空室率をかけて(例えば、入れ替わりのため2年ごとに1カ月の空室想定ならば、23/24をかける)計算すること実際の収入が算出されます。空室や未回収については、家賃保証をつけると考えなくてよくなります。さらに、管理委託費用など賃貸住宅経営に際し必要な運営費用(=OPEXといいます)を引くと、厳密な純営業利益(NOI)を計算することができます。ここから返済額(年間分)を引くと、CF(キャッシュフロー)が計算できます。
算出されたNOIを総投資価格(物件価格+諸経費など)で割るとFCRが求めることができます。
この計算は、借入によるレバレッジ効果をかける前の数字ですので、物件そのものの実力を評価出来る指標と言えます。
また、空室率や未回収損なども含めた指標なので、厳しい条件で出された利回りで、表面利回りやNOI利回りよりも厳しい「真の利回り」とも言えます。
投下した資金を一定期間で確実に回収することを重視する場合の指標

不動産投資では、たいていの場合ローンを借りますが、元手を少なく借り入れを多くすることで「レバレッジ効果」を効かせて、大きな収益を得ることを目指します。
しかし、一般的には物件購入の全てをローンで賄うことは出来ず、ある程度の自己資本を出す必要があります。ここでは、自己資金に注目した指標を解説します。
2:CCR(Cash-on-Cash):自己資本配当率
自己資金に対する年間のキャッシュフローの割合を指します。
CCR=(年間収益-利息)÷自己資金(=総額―借りれ分)×100
CCRは、自己資金がどのくらいの利回りで運用されているかを判断する指標です。
つまり、自己資本利回りを示しており、CCRの値が高いほど投資効率がよいことを示しています。投資した自己資金をいつ回収できるかという見通しにも役立ちます。
3:PB(Pay-back):資金回収期間
PB(資本回収期間)とは、年間のキャッシュフローによって、投資資金が回収できるまでどれくらいの期間がかかるかを示した指標です。つまりPBは、自己資金の効率性を見る指標とも言えます。
PB=自己資金÷CF
例えば、物件価格4,000万円(うち自己資金400万円)で、毎年得られるキャッシュフローが40万円の場合
PB=400万円÷40万円=10年間
この場合は、PBは、10年ということになります。この例では、投下した自己資金が10年で回収できたことになり、あとは借り入れですので、10年後に売却する際、購入金額以上で売れれば、差額分は全て儲けということになります。
関連指標:LTV(Loan To Value)借り入れ比率
1億円の不動産投資に対して1000万円の自己資金で残り(9000万円)を借り入れの場合、
LTV=9000万÷1億×100=90% となります。