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第5回 不動産投資理論を信じるか?成功体験を信じるか?|不動産エコノミストが語る、不動産投資COCOだけの話

  • #不動産投資
不動産エコノミストが語る、不動産投資COCOだけの話

この記事の取材協力者

吉崎 誠二

不動産エコノミスト

吉崎 誠二

SEIJI YOSHIZAKI

不動産エコノミスト、不動産企業コンサルタント、CREビジネスコンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーション、CREコンサルティング、などを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。
また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

・レギュラー出演
 ラジオNIKKEI:5時から“誠”論(月~水:17時~)
 ラジオNIKKEI:吉崎誠二のウォームアップ 830(月:8時30分~)
 テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

URL: https://www.yoshizakiseiji.com/

伝説の相場師ジョセフケネディの逸話

伝説の相場師ジョセフケネディの逸話

伝説の相場師と言われたジョセフ・P・ケネディは、アメリカ35代大統領 J・F・ケネディの父ですが、1929年に起こった株式大暴落(暗黒の木曜日)の直前に、最高値圏内で全ての株式を売却して大儲けしました。

のちに、「なぜ、あのタイミングで売却したのか」と聞かれ、「靴磨きをしている時に、靴磨きの少年が石油株や鉄道株を買うといいよ、と言われたから」と答えています。
株式投資、あるいは金融、そうしたこととは無縁と思われる少年にまで株式投資のことを話しているということから、「このバブルはもうすぐ終わる」と考えて、暴落前に株式売却したそうです。

もちろん、この少年の言葉だけで、売り抜けを決めた訳ではないでしょう。
しかし、1920年代の株式トレードは、今のようなデータがそろっているわけでもなく、また法整備も整っておらず、相場師たちがこのような「勘」で取引する時代だったようです

勘から、データ基準に変わった株式投資

勘から、データ基準に変わった株式投資

株式投資における評論家やアナリストのコメントや執筆記事などを見ていると、「この銘柄」や「このセクター」の「買い・売り」の判断基準(=そう推奨する論拠)は、「ファンダメンタルズデータから」、あるいは「テクニカル分析」に依る事が多いようです

しかし、中には、大ベテランの伝説の相場師のような方が、「この銘柄が何となくきそうだ」と予言者のような発言をしたり、「株式投資で儲けるにはテクニックがある」と言いながら、そのテクニックは創設者の「長年の勘」によるところが多かったりします

大量のデータから法則を見つけ出す

大量のデータから法則を見つけ出す

公開株(上所株)取引が中心の株式投資では、広く公開される情報(データ)、つまり情報の非対称性がないことを前提に取引が行われます。
そのため、ネット社会となり、情報拡散スピードが速くなった現在では、「勘」だけで儲けることは、非常に難しいものです。

企業業績を推し量る様々な指標(例えば、PER、PBR、EPS、BPS・・・)を見ながら、比較対象銘柄の株価などと照らし合わせて、投資銘柄を決めるたり、テクニカル分析と呼ばれる手法で銘柄を選んだり、アノマリーに従い投資をしたりと、「勘」の要素が駆逐されました。

大量のデータ収集・分析から、法則を見つけ出し、ファイナンス理論の基づく証券投資理論が確立されています
この理論に基づいて投資を行うのが一般的です
もちろん、「勘」がゼロになったとは言いませんし、「伝説の相場師」的な大ベテランもいらっしゃいます。
 
では、不動産投資ではどうでしょう。

不動産投資理論の体系化はなぜできないのか

不動産投資理論の体系化はなぜできないのか

不動産投資においては、主に2つの要因から、株式投資のように法則を見つけて理論化した投資を行うことができていません。

一つ目の要因は、成約価格が分からないことです
主に中古物件では、公募価格(売り出し価格)は概ね分かりますが、成約価格は分からないことが多いようです。
成約価格のレインズへの入力が、「努力義務」であることが要因だと思われます(売り手買い手とも知られたくないという思いも大きい)。
新築物件においても、値引きして売られた物件の成約価格は基本的に非公開です。

二つ目は、不動産は、一物一価と言われるように、個別性が強く、また中古物件では使われ方により減価が異なります
そのため、価格形成における「法則化」がしづらいのです

不動産投資においても、キャップレートなどの指標やインデックスなどは存在しますが、公開データが少ないため、法則を見つけ出して理論化しにくく、「不動産投資論」という域に達していません。

理論に基づくのがいいのか?成功体験か?

理論に基づくのがいいのか?成功体験か?

このような状況下で、「不動産投資」における「理論」はどこまで役に立つのか?

ご存知のとおり、株式投資において、理論を体系化した大家(教授)は、概して儲けていないのではないか、という声はいつも言われることです。
一方で、「私は元手100万から株式資産3億円を築き上げた」という方が行うセミナーには多くの方が参加しているようです。
理論よりも結果です

体系化された理論が未成熟な不動産投資の世界では、なおさら「これまで100戸のワンルームを購入して、いまやFIRE生活です」というような実例セミナーは人気があります。

しかし、不動産投資での成功体験は、過去に購入した物件であり、これから購入する物件でも成り立つのか?
また、現在は好調かもしれませんが、この先はどうなるのか?という疑問もあります。

成功体験を追随する投資方法

個人の成功体験、個人の感覚をなぞる感覚で不動産投資を行うことはリスクがありすぎると思われます。
不動産投資においては、市況、信用背景、融資状況、その他異なる要因が多いので、「そのとき上手くいっても」、いつもうまくいくとは限らないのが、成功体験を追随する投資方法です

こうしたことから、まずは未完とは言えある程度理論化されている「不動産投資の理論」に基づいた投資が、初心者の方には良いと思います。

個人の理論・個人の経験に基づくのはある種のアートです
一方、理論に基づくのはサイエンスと言ってもいいと思います

この記事の取材協力者

吉崎 誠二

不動産エコノミスト

吉崎 誠二

SEIJI YOSHIZAKI

不動産エコノミスト、不動産企業コンサルタント、CREビジネスコンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーション、CREコンサルティング、などを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。
また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

・レギュラー出演
 ラジオNIKKEI:5時から“誠”論(月~水:17時~)
 ラジオNIKKEI:吉崎誠二のウォームアップ 830(月:8時30分~)
 テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

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