再度の利上げが行われる?
しかし、その後の貸出金利には大きな変化はありませんでした。
不動産購入に際しての変動金利、固定金利においても多少上昇はありましたが、「誤差」程度に留まりました。
しかし、このところ再び消費者物価指数も上昇する気配を見せはじめており、また企業物価指数もしばらく落ち着いたところから上昇のキザシとなっています。
つまり、24年の半ば以降は「もう一段のインフレ」がおこりそうな状況となってきました。
そして、報道などによれば、賃金の上昇や物価の上昇などを受けて日銀が年内に再度利上げの可能性を示唆している、とされており、年内にもう1・2度の利上げ=金利の上昇がありそうなムードになってきました。
利上げが行われると、景気が悪くなるかもとの警戒感が広がります。
実際に、年開けからのJREITや不動産株の価格は振るわなかったのですが、3月19日の金融緩和政策の変更が、「金利上昇幅は大きくなかった」との安堵感から、不動産株・建築株、そしてJREITも上昇しました。
このように市場では、「大きな利上げがあれば、影響は大きいかもしれない」との警戒感と共に、「多少の金利上昇なら問題ない」とみていると考えてよいでしょう。
利上げすれば、景気は悪化するのか?
そもそも、利上げは、「行き過ぎたインフレを抑える」ために、「需要を抑えるように仕向ける」という政策です。
しかし、その際に程よく、減速すればいいのですが、仮に需要が一気に減少しすぎると景気悪化につながります。
過去の日本では、幾度かこのように、「一気に停滞」した経験がありました。
そのため、「インフレを抑えるために、利上げをすると、景気は一気に悪くなる」というある種の迷信みたいなものが、我が国にはあります。
しかし、近年のアメリカの状況をみてもそうですが、「利上げをおこなっても、インフレはそう簡単に止まらない」ということはよく知られたことです。
政策金利を一気に、そして大幅に上げても、需要を抑える効果が少なく、アメリカCPIは高止まりが続いています。
そのため、市場の動向を探りながら、ゆっくりとした利上げを行えば、「一気に景気悪化」という事態にはならないものと思います。
家賃の上昇可能性がいっそう高まる
日銀による利上げの判断材料として、「2%以上の安定した物価上昇見通し」が見えてきた後に、最後まで数字に注目していたとされるのが、賃金の動向です。
24年の春闘では賃金上昇率(ベアと定期昇給合計)が5%を超え、中小企業においても4%を超えている状況です。
物価上昇と賃金上昇が顕著となれば、少し遅れて家賃の上昇の可能性が高まります。
「家賃は物価上昇に遅れて上昇する」ことはよく知られたことです。
また、賃金が上がれば、家賃に回すお金が増え、家賃上昇に耐えうる状況となり、好循環が生まれます。
不動産投資はどうなる?
最後に、最後に賃貸住宅投資がどうなるのかを考えてみます。
政策金利上昇は、短期プライムレート上昇につながり、ローン金利における変動金利上昇可能性があります。
すでに、4月の半ばに、一部の銀行では短期プライムレートの引き上げを発表しています。
変動金利は、この先、多少は上昇すると思っておいた方がいいかもしれません。
また、YCC撤廃に伴い、仮に長期国債金利が上がれば、固定金利が上昇します。ただ、こちらは過度に上昇すれば日銀が買い入れを行うことを明言していますし、アメリカ国債の金利が高止まりしていますので、しばらくあまり変動はないものと思われます。
その一方で、すでに家賃上昇傾向は顕著になってきていますが、かなりの確率でもう一段の上昇可能性があるものと思われます。
このように考えれば、再度の利上げがあっても、その幅が大きなものでなければ、不動産投資にはネガティブ要因にはならないものと思われます。