住宅賃料データについて
住宅賃料(=家賃)の詳細な動向が分かるデータは多くありません。
多くの物件を管理するハウスメーカー系管理会社やアパート建築系管理会社、その他賃貸住宅を管理する会社が、自社管理物件の詳細な賃料データを公表している例はほとんどありません。
また賃貸ポータルサイトなどでは、公募家賃は掲載されていますが成約家賃は分かりません。
ワンルーム・コンパクトタイプは公募家賃=成約家賃の場合が多いですが、大きいサイズの物件はそうとも限らないので、正確な数字が分かりません。
公的なデータでは、総務省が公表している民営家賃のサンプル調査の結果がありますが、5年ごとに調査対象者が変わるようで、5年間はほぼ横ばいで、対象が変わるごとに大きく変化しており、あまり使えるデータとはいいがたいものです。
シンクタンクが公表しているデータとしては、(財)日本不動産研究所が年2回、上期と下期に分けて集計・分析・公表している「住宅マーケットインデックス」があります(データはアットホーム社、ケン・コーポレーション社が提供)。
この調査は東京23区のデータのみです。
他のデータとしては、上場している不動産ファンドであるJREITのレジデンス系銘柄のIR資料も参考になります。
東京証券取引所に上昇している銘柄ですので、該当銘柄のサイトを見れば、保有する資産の運用状況を誰でも入手して知る事ができます(決算資料、資産運用報告書など)。
保有資産(運用資産)のほぼ100%が賃貸住宅である「レジデンス系REIT銘柄」は4つあります。
そのうち3銘柄は、都心物件が中心で、もう1つは地方主要都市中心の銘柄です。
この資料も都心物件が中心ですが、住宅賃料の動向が分かります。
JREITのIR資料からの都心の住宅賃料動向を読み解く
まず、一つ目のJREIT銘柄は、三井不動産系の日本アコモデーションファンド(3226)です。
このREITには都内でよく見る高級賃貸マンション「パークアクシス」が多数組み込まれています(23年8月現在 賃貸住宅比率95%、東京23区比率88.5%、シングル・コンパクト比率83.4%)。
この投資法人の23年8月期(現時点で最新。次期は24年2月期)決算説明資料によれば、入れ替え時賃料変動率は、23年8月期では都心3区物件は7.1%の上昇、他23区は3.5%の上昇、となっています。
前期(23年2月期)は、都心3区では6.8%の上昇、他23区は2.6%の上昇となっています。
前々期(22年8月期)は都心3区が4.3%の上昇、他23区が1.3%の上昇ですから、この1年間で大きく伸びていることが分かります。
次に、賃貸住宅100%のREITであるコンフォリア・レジデンシャル投資法人(3282)の資産運用報告書(最新の23年7月期。次回は24年1月期)をみてみましょう。
このREITの保有賃貸住宅は東京23区内が90,7%、部屋はほとんどがワンルームかコンパクトタイプとなっています。
報告書によれば、入れ替え時賃料変動率は、23年7月期で4.6%の上昇でした、前期(23年1月期)が2.5%の上昇、前々期(22年7月期)が0.8%の上昇ですから、この1年間で大きく伸びていることが分かります。
一方、更新時賃料変動率は、23年7月期は0.5%の上昇、前期(23年1月期)は0.3%の上昇、前々期(22年7月期)が0.3%の上昇でしたので、継続賃料には上昇率に大きな変化が見られませんが、確実に賃料は上がっていることになります。
都心5区のマンション賃料
次に(財)日本不動産研究所が23年9月27日に公表した「住宅マーケットインデックス」の調査結果を見てみれば、都心5区のマンション賃料は新築・中古の全タイプで上昇しました。
特に大きなサイズの部屋では調査開始以来最高値となったようです。
新築・中古ともタイプによりますが、22年下期比で1.4%~2.2%の増、22年上期比では1.8%~2.6%増となっており、上昇が続いていることが分かります。
24年の賃料は上昇確実か?
冒頭でお伝えしたように、すでにかなり賃料が高騰しているファミリータイプを追うように、ワンルームやコンパクトタイプの賃料も上昇しています。
単身向け物件の入れ替え年数は概ね3年程度のようですから、物価上昇が22年から始まってすでに丸2年が経過、そして24年は3年目ということになります。
こうした状況から考えると、家賃が物価上昇に連動し上昇がより顕著になる可能性が高いと思われます。