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第12回【最新】2023年基準地価を読み解く|不動産エコノミストが語る、不動産投資COCOだけの話

2023年の都道府県地価調査結果が9月19日に公表されました。

全国紙各紙が、毎年1面で取り上げ、日本経済新聞などでは、別刷り(第2部)で、詳細な価格を掲載するなどして、国民の大きな関心が集まる結果と言えるでしょう。
ここでは、最新(23年分)の都道府県地価調査結果について、その概要と、ざっくりとした全国の状況を俯瞰してみましょう。

この記事の取材協力者

吉崎 誠二

不動産エコノミスト

吉崎 誠二

SEIJI YOSHIZAKI

不動産エコノミスト、不動産企業コンサルタント、CREビジネスコンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーション、CREコンサルティング、などを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。
また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

・レギュラー出演
 ラジオNIKKEI:5時から“誠”論(月~水:17時~)
 ラジオNIKKEI:吉崎誠二のウォームアップ 830(月:8時30分~)
 テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

URL: https://www.yoshizakiseiji.com/

都道府県地価調査の概要

都道府県地価調査の概要

都道府県地価調査は、都道府県が調査主体となって行われ、21,381の「基準地」の地価を1人の不動産鑑定士が鑑定を行います
この調査結果により公表される地価は、「基準地」の地価ということで、「基準地価」とも呼ばれます。

3月に公表される地価公示と9月に公表される都道府県地価調査は、全国の地価状況が分かる2つの大きな土地価格調査です
また、それぞれ価格時点が1月1日と7月1日であることから、互いに中間点の状況が分かります。
ちなみに、地価公示の調査地点は約26,000地点で、地価公示は2人の不動産鑑定士が鑑定を行います。
地価公示における地価(公示地価)は、たとえば、道路が通るなどする場合の土地収用の際の規準となります。


23年都道府県地価調査の全国俯瞰

22年都道府県地価調査の全国俯瞰

23年都道府県地価調査では、全国平均で、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇、すべて昨年を上回る上昇率となりました。

全国平均では、全用途平均は1.0%の上昇(昨年はプラス0.3%)、住宅地は0.7%の上昇(昨年はプラス0.1%)、商業地は1.5%の上昇(昨年はプラス0.5%)となりました。

今年の基準地価では、全用途平均・住宅地・商業地とも、新型コロナウイルスの影響前の19年の時の上昇率を上回ったことが、特徴的でした

住宅地地価の状況

ここからは、住宅地と商業地に分けて解説します。
まずは、住宅地の状況です。

全国的に住宅地の地価上昇(あるいは回復基調)が顕著となっており、三大都市圏はプラス2.2%(昨年はプラス1.0%)、このうち東京圏はプラス2.6%(昨年はプラス1.2%)、大阪圏はプラス1.1%(昨年はプラス0.4%)、名古屋圏はプラス2.2%(昨年はプラス1.6%)となっています。

地方圏全体ではプラス0.1%、このうち地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)はプラス7.5%(11年連続でプラス、かつ上昇幅は20年以降最高値)、その他地方圏ではマイナス0.2%(過去15年で最も低いマイナス)となりました。

▲国土交通省「住宅地の変動率(地図)」より抜粋
特にマンション価格は高騰

大都市部や地方主要都市では住宅需要が堅調で、特にマンション価格は高騰を続けており、基準地価上昇が続いています
また、中心部の地価上昇、住宅価格の上昇にともない、その周辺地域へ地価上昇の波が派生しています

とくに、地方四市は10年を超える高い上昇率を伴う地価上昇が続いているため、その周辺部の市町へ需要が波及し、こうした地域ではかなり高い上昇率となっています。
また、半導体など大型工場建設が決まっている地域では、住宅需要が伸びることが確実な事から、こうした状況に拍車がかかっています。

住宅地の変動率ベスト10をみれば、そのうち9つは、千歳から札幌にかけての地点となっています。

商業地地価の状況

次に商業地について解説します。
商業地においても昨年を上回る上昇となっています。とくに、地方四市を除く「その他地方」において32年ぶりの上昇(プラス0.1%)となったことが注目を集めました。

三大都市圏はプラス4%(昨年はプラス4.0%)、このうち東京圏はプラス4.3%(昨年はプラス2.0%、11年連続でプラス)、大阪圏はプラス3.6%(昨年はプラス1.5%)、名古屋圏はプラス3.4%(昨年はプラス2.3%)となっています。
地方圏全体ではプラス0.5%(昨年はマイナス0.1%)、このうち地方四市はプラス9.0%(昨年はプラス6.9%、11年連続でプラス、かつ上昇幅は20年以降最高値)、その他地方圏ではプラス0.1%(32年ぶりのプラス)となりました。

▲国土交通省「商業地の変動率(地図)」より抜粋

上昇の背景にある大きな要因としては、以下の2つです。

まず、第5類移行に伴いオフィス需要が回復し、国内外の観光需要・出張需要の回復、店舗需要の回復が大きく寄与したと思われます

そして、マンション需要堅調、マンション価格上昇が続いており、マンション用地需要との競合により、商業地地価上昇に繋がっています
また、再開発事業が、首都圏だけでなく全国の主要都市で盛んに行われており、利便性・繁華性向上の期待感から地価上昇がつづいています。
再開発周辺地には多くのマンションが建設され、こうした流れも商業地地価上昇に拍車をかけています。

24年への展望

24年への展望

固定金利が上昇基調にあるものの、政策金利に変更はなく、全体的に低金利が続いています
投資マンション、実需の分譲マンションとも需要が旺盛な事に加えて、海外投資マネーの流入などが顕著で23年の基準地価は大きく上昇しました。

24年の見通しとしては、金利上昇の可能性が高まってきたこと、また地価上昇のための好材料の多くが出尽くした状況にあること、などから考えると、24年も地価上昇が続くものの、大都市部での上昇率の伸びは、今年並みにとどまる可能性が高いと思われます。

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吉崎 誠二

不動産エコノミスト

吉崎 誠二

SEIJI YOSHIZAKI

不動産エコノミスト、不動産企業コンサルタント、CREビジネスコンサルタント
社団法人 住宅・不動産総合研究所 理事長

不動産・住宅分野におけるデータ分析、市場予測、企業向けコンサルテーション、CREコンサルティング、などを行うかたわら、テレビ、ラジオのレギュラー番組に出演。
また全国新聞社をはじめ主要メディアでの招聘講演を毎年多数行う。

・レギュラー出演
 ラジオNIKKEI:5時から“誠”論(月~水:17時~)
 ラジオNIKKEI:吉崎誠二のウォームアップ 830(月:8時30分~)
 テレビ番組:BS11や日経CNBCなどの多数の番組に出演

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