都道府県地価調査の概要
都道府県地価調査は、都道府県が調査主体となって行われ、21,381の「基準地」の地価を1人の不動産鑑定士が鑑定を行います。
この調査結果により公表される地価は、「基準地」の地価ということで、「基準地価」とも呼ばれます。
3月に公表される地価公示と9月に公表される都道府県地価調査は、全国の地価状況が分かる2つの大きな土地価格調査です。
また、それぞれ価格時点が1月1日と7月1日であることから、互いに中間点の状況が分かります。
ちなみに、地価公示の調査地点は約26,000地点で、地価公示は2人の不動産鑑定士が鑑定を行います。
地価公示における地価(公示地価)は、たとえば、道路が通るなどする場合の土地収用の際の規準となります。
地価公示:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000043.html
都道府県地価調査:https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000044.html
23年都道府県地価調査の全国俯瞰
23年都道府県地価調査では、全国平均で、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも2年連続で上昇、すべて昨年を上回る上昇率となりました。
全国平均では、全用途平均は1.0%の上昇(昨年はプラス0.3%)、住宅地は0.7%の上昇(昨年はプラス0.1%)、商業地は1.5%の上昇(昨年はプラス0.5%)となりました。
今年の基準地価では、全用途平均・住宅地・商業地とも、新型コロナウイルスの影響前の19年の時の上昇率を上回ったことが、特徴的でした。
住宅地地価の状況
ここからは、住宅地と商業地に分けて解説します。
まずは、住宅地の状況です。
全国的に住宅地の地価上昇(あるいは回復基調)が顕著となっており、三大都市圏はプラス2.2%(昨年はプラス1.0%)、このうち東京圏はプラス2.6%(昨年はプラス1.2%)、大阪圏はプラス1.1%(昨年はプラス0.4%)、名古屋圏はプラス2.2%(昨年はプラス1.6%)となっています。
地方圏全体ではプラス0.1%、このうち地方四市(札幌・仙台・広島・福岡)はプラス7.5%(11年連続でプラス、かつ上昇幅は20年以降最高値)、その他地方圏ではマイナス0.2%(過去15年で最も低いマイナス)となりました。
大都市部や地方主要都市では住宅需要が堅調で、特にマンション価格は高騰を続けており、基準地価上昇が続いています。
また、中心部の地価上昇、住宅価格の上昇にともない、その周辺地域へ地価上昇の波が派生しています。
とくに、地方四市は10年を超える高い上昇率を伴う地価上昇が続いているため、その周辺部の市町へ需要が波及し、こうした地域ではかなり高い上昇率となっています。
また、半導体など大型工場建設が決まっている地域では、住宅需要が伸びることが確実な事から、こうした状況に拍車がかかっています。
住宅地の変動率ベスト10をみれば、そのうち9つは、千歳から札幌にかけての地点となっています。
商業地地価の状況
次に商業地について解説します。
商業地においても昨年を上回る上昇となっています。とくに、地方四市を除く「その他地方」において32年ぶりの上昇(プラス0.1%)となったことが注目を集めました。
三大都市圏はプラス4%(昨年はプラス4.0%)、このうち東京圏はプラス4.3%(昨年はプラス2.0%、11年連続でプラス)、大阪圏はプラス3.6%(昨年はプラス1.5%)、名古屋圏はプラス3.4%(昨年はプラス2.3%)となっています。
地方圏全体ではプラス0.5%(昨年はマイナス0.1%)、このうち地方四市はプラス9.0%(昨年はプラス6.9%、11年連続でプラス、かつ上昇幅は20年以降最高値)、その他地方圏ではプラス0.1%(32年ぶりのプラス)となりました。
上昇の背景にある大きな要因としては、以下の2つです。
まず、第5類移行に伴いオフィス需要が回復し、国内外の観光需要・出張需要の回復、店舗需要の回復が大きく寄与したと思われます。
そして、マンション需要堅調、マンション価格上昇が続いており、マンション用地需要との競合により、商業地地価上昇に繋がっています。
また、再開発事業が、首都圏だけでなく全国の主要都市で盛んに行われており、利便性・繁華性向上の期待感から地価上昇がつづいています。
再開発周辺地には多くのマンションが建設され、こうした流れも商業地地価上昇に拍車をかけています。
24年への展望
固定金利が上昇基調にあるものの、政策金利に変更はなく、全体的に低金利が続いています。
投資マンション、実需の分譲マンションとも需要が旺盛な事に加えて、海外投資マネーの流入などが顕著で23年の基準地価は大きく上昇しました。
24年の見通しとしては、金利上昇の可能性が高まってきたこと、また地価上昇のための好材料の多くが出尽くした状況にあること、などから考えると、24年も地価上昇が続くものの、大都市部での上昇率の伸びは、今年並みにとどまる可能性が高いと思われます。