ソフトバンクGが過去最高益を達成!でも実際は…

社長が大好きなソフトバンクグループのニュースで、NVIDIAの株を売却して「何千億の利益」というような記事を見たんですけど、もちろん社長もご存知ですよね。
そうなんですよ。すごいですよね。
9,000億でしたっけ。
うーん、そこまでは行っていなかったかな。売却益としては数千億で、売った金額が円換算で9,000億円くらいになるんですよね。取得原価もあるので。
はい。
今回ソフトバンクグループの半期決算、半年決算でしたが、純利益が2.9兆円でした。この半年の成績としては、創業来最高の業績でした。

引用|日本経済新聞(2025年11月11日)
え、創業以来最高なんですか。
最高です。
最高収益の内訳はほぼOpenAI社の株式価格とNVIDIA株の売却益?

その2.9兆円のうち、数千億円がNVIDIA株のキャピタルゲインです。残り2.2兆円相当が、ChatGPTのOpenAI社の株式価値が上がったことによる利益なんです。
ああ、やっぱり投資会社ですね。
そう、投資会社です。でも、これ本当に危ういなと思うのは、「価値が上がっただけ」であって、実際に確定したわけではないという点です。
ああ、そういうことですね。
しかも、NVIDIAやARM(英国の半導体設計会社)は上場しているから、市場が株価を常に付けています。
だから評価損益が明確に出せるんですが、投資会社という性質上、そうした評価額の上下をそのまま利益に取り込みますね。
はい…。
現金は全く入ってきていません。ただOpenAIの株を持っているので、評価が上がると利益が計上され、下がると損失が計上されます。
最初の投資額は変わらないので、正直、こうした評価益に一喜一憂しても意味はありません。
そうですよね。ソフトバンクが順調かどうかも分からないですもんね。
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OpenAI株は“実態のない評価額”未上場企業に巨額投資するリスク

さらにOpenAIの問題点は、「未上場企業」であることです。
やっぱりそこがNVIDIAなどと比べて怖いんですかね。
怖いというより、未上場企業の株価って、どうやって決めますか?という話です。
市場に出ていないから、株価という“指標”が存在しません。
分単位で変わる市場価格がないんですね。
そう。じゃあ、どういうタイミングで株価が決まったかというと、OpenAIの創業初期の社員たちが保有していた株を外部に売り出した時なんです。
はい。
従業員にとっては利益確定ですね。その売り出しを、ソフトバンクが一部買いました。
その瞬間に「この取引価格が今のOpenAIの株価だよね」という評価が行われました。
外に売った時点で株価が決まるってことですね。
そうです。その時の企業価値が5000億ドル(約75兆円)です。もう、よく分からない数字ですよ。

確かに…。
で、そこが、しかも第三者が評価して値段が付いているのであれば良いのですが、ソフトバンクグループ自身が「その金額で買うよ」と言って買ったわけですよね。
自分たちで株価を決めているようなものです。
じゃあ、それがそのまま業績にヒットしているということですね。
そうなんです。だから、正直よく分からないというか、ある意味危うい状態ではあるんですけど…。
今回は決算解説の記事ではないので簡潔に言うと、ソフトバンクの2.9兆円の利益のカラクリはそこです。
2.2兆円はOpenAIの未実現益です。
実際に利益を確定したわけではなく、あくまで「評価益」です。
そしてさらに、その評価額は自分たちの取引によって付いた株価です。
で、残りが他にも色々ありますが、数千億円がNVIDIAの売却益です。
はい。
これはすごいですよね。数千億円ですよ。これは「実現益」です。
これはキャッシュが入ったということで、もう利確したということですか?
利確しました。素晴らしい。
ソフトバンクGのNVIDIA株の売却が大失敗と言われる理由

でも、どうなんですか。NVIDIAといえば、これからAIが伸びていく中で売却というのは、孫さんなりの狙いがあったのだと思いますが、どうなんですか?
まず前提として、ソフトバンクグループの孫さんは投資が上手いです。
Yahoo!やアリババなど、実績は多くあります。
日本のソフトバンクだって、買収して巨大企業に育てたわけですし。
最近でいえば英国の半導体企業ARMにも投資していて、単体で何兆円も当てています。
ただし、NVIDIAに関しては本当に取引をミスしたと言えるでしょう。
もう、大失敗です。
え、こんな金額になっているのにですか?
今回の数千億円の利益は出ていますが、それでも“大失敗”なんです。というのも、元々孫さんは2017年の5月頃にNVIDIAの株を持っていたんです。
え、もう8年前とかですね。
そう。まだAIだなんだと誰も騒いでいない頃です。ちょっと株価を見てみましょう。

いくらぐらいなんですか、これ。
2017年は低い位置だったんですけど今は60数倍になっています。
おお…。
そのとき、ちゃんと持っていたんです。
え、それなら大成功じゃないですか?
しかしですね。2019年に、当時持っていた株を3,000億円くらいで全部売ってしまったのです。
え、そこで一度全部手放しているんですか。
そうです。そこで利確してしまった。
え、じゃあ、さっき言っていた「大失敗」っていう意味は…。
例えばの話ですが、3ドルで買った株を5ドルで売ったとします。利確です。キャピタルゲインを取りました。
はい。
これは、喜ばしいことですか?今持っていたらどうなっていますか?
ま、まあ…そうですね。
つまり、孫さんとしては珍しく「売るのが早すぎた」銘柄なんです。
本当にこの銘柄だけと言っていいぐらいです。
NVIDIAぐらいなんですよ。
アリババなんて十数年持ち続けて、確か数百億円の投資が8兆円くらいになったんです。
長く持つことで有名なんですよ。
Yahoo!Japanだってまだ持っています。
おお…。それがなければ、さらに…。
いや、本当に売っていなかったらとんでもないことになっていました。
だって一時期、ソフトバンクはNVIDIAの5%を持っていたんですよ。
上場企業で5%というのは大株主です。
おお…。
アメリカ企業ってそんな感じで、創業者でさえ3%を持っていないことも多い。
でも3%持っていたら、細川さん並みにお金持ちですよ。
いやいや、僕なんて全く届かない、もう見えないレベルですよ。
NVIDIAの時価総額いくらでしたっけ。5兆…5兆ドルとかだったかな。

5兆ドルですか?
多分、単位が分からなくなるほどなんですけど、5兆と言われるともう現実的な話じゃなくなりますよね。
NVIDIAの時価総額をちょっと検索すると、5兆ドルだから…750兆円ぐらいか。
すごくないですか。
それの5%を持っていたということですよね。
そうそう、そういうことです。だから40兆円弱になっていたんです。
ほお…。
しかも1兆円すら投資していないんですよ。
分かりやすく、じゃあ1兆円でも良いです。
1兆円が40兆円になって、39兆円のキャピタルゲインを得たはずなのに、今回の利確はわずか数千億円です。
しかも大きく2回に分けて利確していて、2019年も数千億円前半くらいの利益を出しています。
合わせても1兆円すら出していないので、超絶損しているわけです。
数千億円出しても大失敗なんですね。
大失敗です。本当に今なら30数兆円ぐらいになっていましたからね。
おお…。孫さん的には「仕方ない」となっているんですかね。すごく悔しいのか、そうでもないのか…。
まあ、悔しいですよ。
NVIDIAを売ってOpenAIに巨額投資することは正解なのか?

先ほどいただいた質問に答えると、NVIDIAはこれから伸びるAIのど真ん中の企業なわけです。
ただし、短期的にものすごく上がっている。
さっきの株価チャートを見たら分かりますよね。
はい。すごいですね。本当にドーンと。
で、これからソフトバンクグループが何をしなければならないか。どこに投資しなければならないかというと、OpenAIなんですね。
はい。
もうOpenAIと契約を結んでいます。年末に向けて2〜3兆円くらい払わなきゃいけない契約をしているんです。
すごいですね…。
そして、OpenAI社の11%くらいを保有する大株主になるということは契約で決まっています。 その払い込みを数回に分けて数千億単位でしていかなければならないのです
このお金が足りないということで、今回NVIDIAで約1兆円ほど現金化した、という背景です。
ああ、じゃあ目的があって売却したんですね。
そうです。OpenAIに全ツッパするためです。
OpenAIは、これからAI革命が起こる中で、ど真ん中の企業です。
そして、そのAIを動かすために必要なのが半導体です。
それをつくっているのがNVIDIAです。
NVIDIAは“メーカー”なんです。
そのNVIDIAのチップ・半導体を使ってAIサービスをつくっているのが、まさに我々が毎日使っているChatGPTですよ。
そうですね。
だから、本当なら全部に投資したいけれども、お金には限りがある。だから今回、すべてをOpenAIに寄せるという判断なんです。
ソフトバンクGの今後の見通しを安藤が予測

うーん…。投資で言えば、分散ではなく“一点集中”みたいな感じですね。
そうです。上場企業なのに、とてつもない一点集中です。
だって今回は NVIDIA だけでなく、Tモバイルも売っています。
Tモバイルというと…。
アメリカの大手通信会社ですね。
2012年頃、孫さんはアメリカのSprint(スプリント)という携帯会社を買収しました。
当時アメリカの携帯キャリアの第3位でした。
その後、第4位だったTモバイルに抜かれてしまい、トップを取りたかったのですが、色々あってうまくいきませんでした。
ただ、そのTモバイルとSprintを合併させて、合併した新しい新Tモバイルの株式をソフトバンクグループは受け取っていました。
なるほど。
つまり、日本の携帯だけでなくアメリカの携帯事業からも利益を吸い上げていたわけです。
なるほど。
でも、その通信事業も売ってしまった。で、今後どうなるか。私は日本のソフトバンクを売っちゃう可能性もあるのではと少し思っています。
ああ…。社長的には、そうなる可能性があると感じているんですか?
少しずつ切り売りはあるんじゃないかな、と。
ああ、はい。
ソフトバンク(=モバイルの方の会社)は、まあ横ばいですよね。徐々にじわじわ、安定しています。
配当利回りも素晴らしく高いです。
この会社を持っているわけですが、配当利回り4%ぐらい出していますね。

で、時価総額11兆円のこの会社のうち、多分まだ35%くらい持っているはずです。
うーん。
40%持っていますね。ということは、ここだけで4兆円じゃないですか。

はい。
ということですよ。もう本当、例えばですが、売却して持株比率を40%から30%に下げて、1兆円資金調達する、とかが普通にあり得ます。
とにかく集めたお金をOpenAIに入れていく
そして、孫さんもまだ70歳にはなっていませんが、もう引退に向けて動いているわけです。
だから今、焦っていて、「OpenAIと共にどうなるか分からない」という、人生最大のギャンブルをしている状態です。
それだけ聞くと、すごい怖いですけど。
そうなんですよ。なので、これからどうなるかは分かりませんが…。まあ、そんな感じですね。
NVIDIA売却はAIバブル警戒の“シグナル”か?

今までの実績がありますから、まあ希望もあると思いますけど…。
NVIDIA を全部売ったということが、私は1つの「シグナル」になっている気がしています。
はい。
どういうことかと言うと、「じゃあNVIDIAの株価ってこれ以上上がらないの?」という話なんですよ。
うーん。そういうわけではないですよね。
いやいや、AI革命の“ど真ん中の投資家”であるソフトバンクグループが売ったとなれば、「そういうことなのでは?」という見方ができちゃいますよね。
ああ、さっき言っていたOpenAIにフルベットするからという。
だけど、まだ上がると本当に思っているなら、他から調達すればいいじゃないですか。
まあまあ、そうですね。
例えば1年後にさらに2倍になっている可能性があるなら、今1兆円を別の場所から調達して、来年売れば2兆円になるわけです。
まあ、そうですね。
つまり、その自信はないということなんでしょうね。
おお…。
そう考えると、しばらくこのAIバブルは明らかに高騰していますから、AI関連銘柄の株価がどう動くのかは、注視した方が良いと思います。
そうですね。
株式投資は“出来事”ではなく“意図”を読む──ソフトバンクの判断から学ぶ本質

今日も個人投資家の方がたくさん見てくださっていると思いますが、例えば「上場企業の社長が株を売る」としますよね。
はい。
もし仮にココザスが上場していて、時価総額が100億円だとしましょう。
はい。
私が50%、つまり50億円分の株を持っていたとします。で、そのうち10%を売ったとしましょう。個人として 10億円を現金で一旦手にしたわけです。
はい。
これって市場や社員、取引先、お客様にどう映りますか?
10%ならまだ…という気もしますけど、増えれば増えるほど「今後、社長は会社に興味ないのかな」と思われますね。
そう。というか、「そんな株価で売ったということは、これから先株価が伸びないと思っている」ということじゃないですか。
まあ、そうですね。
だって「安いな、納得いかないな」と思ったら売らないですよね。
もっと伸ばしてから売りますね。
そうです。
例えば会社が1,000億円まで10倍成長して、利益も10倍でるようになれば、時価総額も伸びます。
その状態で50%を40%に下げて売れば、100億円になりますね。
なるほど。
10億円より100億円の方が良いですよね。だから、主要株主が株を売るというのはネガティブ要素でしかないです。自分の未来を信じられていないということですから。
まあ、そうですね。
それで言うと、NVIDIAの株を孫さんが売ったというのは、OpenAIのためのお金が必要だったという理由もあるが、それにしてもポジティブには見られないと私は思います。
たしかに。
今回のソフトバンクグループの決算については「最高の利益だ、2.99兆円で創業来最高だ」と言われていますが、その翌日の株価がどれくらい下がったか知っていますか?
え、下がったんですか?
10%落ちています。
あ、そうなんですか。
今30兆円くらいの時価総額の会社ですから、3日で3兆円の価値が消えたわけです。
へぇ…。
というぐらい、NVIDIAを売ったこと、そして利益のほとんどがOpenAIの未実現益であること、さらにOpenAIにこれから数兆円投じると決めていること――この複合的事実を市場は非常に懐疑的に見ているということです。
なるほど。
はい。なので、また3ヶ月後にソフトバンクグループの決算発表とAI関連銘柄がどう動いたか、また追っていきましょう。
この記事では難しい会計の話ではなく、「こういう事象があると株価はこう動くんだな」という大枠で株式を学んでいただければ嬉しいです。
はい。
ということで、また別の記事でお会いしましょう。ありがとうございました。
はい、ありがとうございました。
