大学進学から結婚までの住まい
実家から離れて大学などに進学する場合、進学する学校が決まれば、多くの方は近隣の賃貸住宅に住むことになります。
キャンパスが郊外の場合は大学の近隣に学生向け(仕様や賃料)の賃貸住宅が多くありますが、都心などにキャンパスがある場合は、電車などで通うことを前提に賃貸住宅探しを行います。
卒業後も同地域の企業に就職する場合は、学生時代に住んでいた賃貸住宅に住み続ける方も多いようですが、何年か経ち所得が増えると、単身用でも少し広めの部屋へ、そして通勤しやすい場所へ、引っ越しをされる方が増えます。
そして、平均初婚年齢である30歳を過ぎるころには結婚し、ここで2人の新居となる住宅(たいていは賃貸住宅)へ引越しとなります。
高校卒業時(17歳・18歳)に両親の元を離れて、つまり単独世帯となって、だいたい12年間の一人暮らしを経て再び、家族での暮らしが始まります。
一人暮らしの12年間で平均的な転居階数は3回(学生時代は1つの部屋に4年、就職後に2度)のイメージです。
この3回の一人暮らしを経て、2人での暮らしが始まりますが、たとえば2011年くらいに大学入学した方が、いま30前後ですが、結婚しての新居探しでの賃料高騰には驚くことでしょう。
2つの住宅賃料
長年同じ賃貸住宅に住んでおられた方が、例えば結婚を機に引っ越しを考えて新しい賃貸住宅を探していると、「かなり賃料が高くなっているな」と感じることでしょう。
「物価も上がっているし、仕方ないか」と思われるかもしれません。
たしかに、住宅賃料(民営賃貸住宅)は、物価上昇に対して、少し遅れて(賃料の遅行性といいます)連動して動きます。
しかし、久しぶりの引っ越しで「賃料がかなり上がったと感じる」のは、賃料上昇期においては、新規賃料と継続賃料の差によるところが大きく影響しています。
新規賃料は、入れ替え時賃料とも言われ、それまでに住んでいた方が出られて、新たに募集する際の賃料です。
新規賃料は周辺の賃料相場や不動産市況などを鑑みて決まります。
入れ替え時には、少なくとも補修・修繕・メンテンナンスなどを行いますが、最近では、加えて多少費用がかかっても水廻り設備を入れ替えたり、リノベーション工事を行ったりした「リノベ物件」として、賃料を大幅に上げる例も見られます。
新規賃料は需給のバランスで決まりますので、とくに昨今ではファミリータイプで需要>供給の状況ですから、新規賃料は上昇が顕著になっています。
継続賃料は、更新賃料とも言われ、普通借家契約を結んでいた際に、例えば2年ごとの更新という期間を定めます。
この更新の際に提示される賃料です。
継続賃料は、更新賃料とも言われ、普通借家契約を結んでいた際に、例えば2年ごとの更新という期間を定めます。
この更新の際に提示される賃料です。
更新時賃料は、値上げする場合は、「相応の理由がある」ことが求められ、「双方の合意に基づくこと」が必要となります。
そのため、貸し手の要求にたいして、賃借人の同意が得られない場合もあることから、賃料上昇基調時においても、上昇幅は小さくなる傾向にあります。
また、たとえばレジデンス系JREIT銘柄の開示資料を見れば、このところの住宅賃料上昇において、ワンルームやコンパクトタイプ(=主に単身用)よりファミリータイプの賃料上昇幅が大きくなっています。
指数でみるマンション価格の状況
マンション価格上昇を指数でみれば、2011年頃を100とすれば、24年5月時点では、首都圏の区分マンション指数は190を超えています。
この10数年で都心だけでなく首都圏全体で2倍近くなっていることになります。
ちなみに、同じ指数で戸建て住宅は120~130程度となっており、大きな差があります。
区分マンション価格指数は早晩200を超えるでしょう。
マンション価格が上昇しているということは、マンション需要が旺盛であるということです。
価格が上がっても、購入意欲が旺盛な状況が続いています。
2013年ごろからマンション価格は上昇しましたが、上昇が5年くらい続いた頃には、「そのうち下がるだろうから、もうしばらく待とう」あるいは、「ここまで高くなったら、手を出せないな」などと買い控える気配もありました。
しかし、20年春~夏期の新型コロナウイルスの影響が大きかったころを除いて、マンション価格は一貫して上昇を続けています。
所得も上昇しており、また金利も安いことから、「買うなら、いまかな」と考える方が増え、加えて「まだ、マンション価格は上昇しそうだ」の思惑の方が勝っているのが現状のようです。
マンション価格上昇により、マンション賃料も22年頃から上昇が顕著となりました。
物件価格が上昇すれば、賃料も連動して(やや遅れて)上昇するのは必然です。
マンション価格の上昇は持ち家比率を押し上げる?
このような流れで、マンション価格が上昇をつづけ、賃料が上昇基調になると、「賃料を払うのはもったいない」と考える方が増えてきます。
とくに、若年層にとっては、「いまのうちに買う方が得策」と考える方も増えているようです。
こうして、持ち家比率は今後今以上に上昇する可能性が高いと思われます。