最近の楽天の動きをおさらい
社長、ここ最近「楽天グループ」の株価が大幅に下がっているようで…
これはどうしてなの?大丈夫なの?と、結構心配になっています…
最近決算発表があったり、楽天グループ全体で色々なニュースが毎日のようにポジティブ・ネガティブ含めて連日報道されていますね。
今回は楽天グループの話をしていきましょう。
「楽天はどうして株価が下がっているの?」という質問に対しての回答をする前に…
最近の楽天の動きを少し解説していきます。
まだ皆さんの記憶にも新しいと思いますが、ネット銀行の楽天銀行。
楽天銀行は楽天グループの100%子会社でした。
その楽天銀行を100%子会社から分離させて上場させると。
要は、親会社の楽天グループ株式会社が上場している中で100%子会社がいっぱいぶら下がってるのです。
その中の1つを上場させて30%ぐらいの株を市場に買ってもらう。
これは「親子上場(おやこじょうじょう)」と言われます。
東京証券取引所というか…世界的にでしょうか。
この「親子上場はよくないよね」という流れになっているんです。
それはどうしてですか…?
なぜかというと、楽天グループ株式会社がまだ70%の議決権、株式を保有しているわけです。
となると、その会社の30%を買った株主は少数株主と言われてしまいます。
株式を51%以上を握ってたら基本、株主が全て決められます。
つまり結局は楽天グループが全て決められる状態になっているのです。
その30%の株主は「楽天銀行の経営をこういう風にしてくださいよ!」と言ったとしても、全ての議決権を持っている楽天グループが「いやいや、そんなことはしない」と。
全て楽天グループ、もっと言うと三木谷さんの思惑通りにしかならないわけなのです。
結局「少数株主の保護に繋がらないよね」というので、親子上場は止めていこうというのが時代のトレンドなのです。
にもかかわらず…
そんな状況を分かっている三木谷さんが上場させなければいけなかったのはナゼか?
どうして上場させたのか?
楽天モバイル(携帯電話の事業)がものすごく赤字を掘っているのです。
楽天グループ全体で4,000億円ぐらいの赤字になったのが前期の決算です。
4期連続で上場企業が赤字を出すというのは、もうとてつもないことなのです。
正直、次の期も赤字になったらもう許されないと思います。
そんな中、キャッシュが足りてないわけで。
なので自分が持っている100%子会社の一部を市場に売って資金を調達した。
楽天銀行は4月21日に証券取引所プライムに上場しました。
初値 1,856円ということで、公開価格1,400円を33%上回ったという話みたいなのですが…
その上場に伴って親会社の楽天グループには700億円以上のキャッシュが入りました。
700億円というのは、すごい額に見えるじゃないですか?
ただ、今の楽天グループにとっては「はした金」なのです。
700億円では赤字を賄えないという話ですか…?
まあ、そうですね。
単純に前期4,000億円の赤字を出してたので、そこに700億円の子会社の売却益が上がったとしても、赤字ですよね。
今期の会計においてね、となってくるし…
動画で確認したい方はこちら
楽天の支払いがヤバイ…?
それ以外に今どっちかというと、会計・損益計算書PLの話をしてますが…
会社にとっての血液。
これが今どうなってるかというと、色々なところで騒がれていますが、楽天はこれから2年半の間(つまり2025年の年末まで)に、合計で9,000億円の社債の返還をしなければいけないのです。
投資家さんにお金を返さないといけないのですね。
9,000億円の社債権者がいるのです。
社債を発行するということは、個人投資家からお金を借りています。
2023年残りの半年だけで780億円。
つまり楽天銀行という、もう虎の子の超優良企業を市場に売ったお金が今年の社債の償還金にまるまる充当される。
2024年は3,300億円、2025年には5,000億円近くいきそうです。
そこだけ聞くとやっぱり「大丈夫?」というか…心配になりますね…
心配になるんですよ…
でね、こういう話をするとYouTubeのコメント欄に「前期の決算書を見ました。楽天グループ株式会社は4.7兆円も現金持ってるじゃないですか?安藤は何もわかってない。」など、また叩かれるわけですよ。
しかし、そんなことないと。
4.7兆円の現金を持っているのは確かなのです。
そして、4.7兆円あったら、9,000億円の社債の償還ができそうですよね。
でも楽天グループ、というか三木谷さんは…
それはどうしてでしょうか?
会社のお金ですよね?
会社の口座に4.7兆円あります。
決算書にも載ってますが、使えないのです。
楽天グループという会社は、まさに銀行だったりカードや、証券など色々な会社を持っています。
金融系の会社は預金という形で我々一般消費者からお金を預かっていますよね?
このお金がいっぱい貯まってます。
でも、このお金は使ってはいけませんよね?
4.7兆円は皆さんのお金ということですか?
具体的に言うと、楽天銀行の預金が3.7兆円。
楽天カードが0.5兆円、楽天証券が0.3兆円、楽天の生保・損保が0.04億円なので、400億円。
ということで、ほとんどがフィンテック事業という言い方を彼らはしていますが、金融系のサービスの預金なんです。
これはほとんどが預り金、預り金は使ってはいけません。
では実質使える現金はどれぐらいなの?と言うと、2022年12月期の決算で言うと900億円ないぐらい。
900億円ない会社がこれから2年半の間に9,000億円を返さなければいけません。
どうしたんだ!というところで、子会社を上場させていって、楽天銀行でも700億円を調達したのです。
僕の予想だと楽天グループが次にどんな打ち手を使うのかというと、楽天証券の上場です。
この証券の上場は、実は2022年の間に1回申請までやっていたのですが、2022年は世界的にマーケットが落ちていたのです。
値段がつきづらかった。
高値で上場させないと持株を売った時のキャッシュインが少ないですよね?
なので1回上場を見送りました。
この楽天証券をどこかで上場させると思うのです。
そして楽天カードの上場です。
国内のカードの発行枚数トップです。
楽天証券も楽天カードもそれぞれ素晴らしい会社なんですよ。
なので、三木谷さんはこれらを分離上場させていくのかな?と思っていたら…ですよ?
3,000億円の公募増資とは?
すごく前置きが長くなっちゃいましたが…いよいよ本題です。
社債の返済はエンドレスで続くわけです。
これに対してどういう打ち手を打つかな?と思ったら。
この話をしているのは、2023年5月16日ですが、その前日5月15日の引け前。
つまり15時の直前にとある情報がリークされてしまったのです。
公募増資というのは、具体的にどういったことですか?
新たに新株を発行して、3,000億円の調達をするということです。
でも3,000億円ということは、その分キャッシュが入るということですよね?
いい打ち手なのかなと思ったのですが…
まあまあまあ…
3,000億円のキャッシュが入るという、そこはもちろんポジティブです。
しかし「公募増資(こうぼぞうし)」とは何なのか?という話なのですが…。
増資をするということは、先ほど言ったように新株、新しい株を発行するのです。
そうなると、どうなるかというと…
楽天はもともと時価総額、つまり会社をまるまる買えるお金が1兆円ぐらいの会社です。
この時価総額が1兆円の会社が3,000億円分の新株を発行するとどうなるか?
単純に1兆3000億円の会社になる?
会社まるまるの価値自体は変わりませんよ!
分かりやすく、数字を出しますね。
例えば楽天グループの発行済み株式総数、全ての株が1万株あったとします。
そして、細川さんが1,000株を持っていたとしましょう。
10%ですね。
そうですね。
細川さんは10%株主なのです。
この状態で1万株から、1万3,000株に3000株新株を発行して増資しました。
1万3,000株のうち1,000株を持っている細川さんはどうなりますか?
7%ぐらいになってくるのでしょうか…
13,000分の1,000なので、7.69%ですね。
僕としては割合が薄まったということですね…
そうなのです。
過去に細川さんが投資した金額があるわけですが、それで会社の10%保有できていた。
しかし、とある日を境に「あなたの持分は7.7%です」と言われるのです。
持ってる株数は変わらないから問題ないのかな?と思うのですが…
いやいや!
単純にその会社の価値が変わらない中で、7.7%しか保有してない方にされちゃったわけですよ?
先ほど社長が言った1兆円の価値は変わらないっていうのがそこなのですね。
そうです。
時価総額は変わらない中で発行済み株式数が…
もっと分かりやすく、2倍になったら細川さんの持ち株比率は5%になってしまうんですよ?
つまり、株式の言葉で言うと希薄化(ダイリューション)と言いますが…
要は、株の価値がどんどんどんどん薄くなっていくのです。
では、薄くなると誰にとって損失があるのか?というと、既存株主なのです。
5月15日の株価がスゴイことに…
今回の件で、2023年5月15日、1日で株価が10%くらい下がりました。
16日、いま話している時点で、更に5%ぐらい下がってます。
すでに15%下がっている。
どこまで下がるかの目安が…
13,000が1万になっているので、23%の希薄化を起こしてます。
つまり株価は理論上、23%まで下がる可能性があるという事になります。
では少し話を変えて、この薄めるための増資をやっていいタイミングはどんな時だと思いますか?
やっても株主が喜ぶ時と考えると?
それこそ、会社の価値がどんどん上がっていくときでしょうか?
その通りです。
株価がどんどんどんどん上がっていて、そもそも細川さんが投資した時よりも3倍に株価が上がっているとしましょう。
時価総額も上がってますよね?3倍の価値になってるんですよ?
このタイミングで仮に株が半分に希薄化したとしても、最初からすると1.5倍になっているのです。
こういう時は許されます。
それどころかノリに乗ってる会社が増資をして資金を調達して、また投資して、そしてまた株価上げて…
これをやり続けてるのがアメリカのGAFAM です。
向こうのハイテク企業はうまく資金調達をしながら、ここまでやってきました。
キャッシュがあるので、最近は全く新株発行はやっていませんがね。
これは 既存株主への裏切り行為!
成長途上の時はどんどんどんどん株式を発行して会社の価値を上げていく。
今の楽天の株価はどうでした?という話なんですよ。
いやこれは、ちょっと…がっかりしましたね…
社長は三木谷さんを信じているので、良い打ち手を打つはずだ!というようなお話を以前してましたものね。
そうですね。
モバイルは途中で、こんなところで売るなんてことは絶対ないと思っていますし。
起業家なのでやり切れるのではないか?と、思っていたのですが、これはダメですね。
バカにしています。
だって今まで株を売らずにこれだけ叩かれてる中…
4期連続大赤字の中でも売らずに持ってくれた個人株主がたくさんいるわけですよ?
赤字の中持っているという事は、どこかで戻すだろうと…
三木谷さんのことを信じていたのですよ。
そう信じていた三木谷さんに、株をある日突然、薄められるのですよ?
これはね、本当にやっちゃいけない。
彼らが持っているフィンテックの会社はどれも絶好調です。
大元の祖業であるEC「楽天市場」も好調で、コロナのバブルは終わりましたが、それでも増収しています。
これらだけをやっているのであれば、楽天っていい会社だったのです。
しかし、そこに楽天モバイルを突っ込んだ。
それによって大赤字に突入してるわけですが…
やり切ってくれるかなと思っていましたが、さすがに資金がきつそうだなというのが現状ですね。
とはいえ、会社を潰してしまって株主の細川さんの持分10%の価値が0円になるよりは、7.7%まで下がっちゃったけども株価を上げてくれたら、20数%上げてくれたらいいのですよ。
そしたら変な話、元通りですからね。
時価総額が20数%上がってくれたら、持ち分は7.7%まで下がっちゃったけども当時の株価の時の10%と結局一緒。
三木谷さんも、こんな批判をされるのは分かっていると思います。
金融も、ものすごく強いはずなので当然分かっている。
その上でもあれを決断したということは、何か策があるんじゃないかな?とは思うので…
結論として、私は最終的には三木谷さん、楽天グループを応援したいなと思っています。
そして、いつ株価が戻るかな?と…
ただまだね15%しか下がっていませんから、もう少し下がるんじゃないかな?というのが今の予想です。
最近KDDIのローミングの契約がありましたよね?
そうすると今まで建物の中だと電波が通じないなど、色々なことがありましたが、それも全部クリアして、人口カバー率99%までいくのです。
こういう良い打ち手も打っているのです。
なので、少し様子を見ながらどこかのタイミングで三木谷さんの決算発表を見てみると、結構分かりやすいですよ。
いつも自信満々なのですが、最近は少しふわっとした発言が多い。
「必ずやるんだ!」というような話ばかりで、そこが本当に論理的でかつ強気な三木谷さんに戻ったぐらいのタイミングで株を買えばある程度、戻すのではないかな?と思います。
今回は世間で騒がれている「楽天の株価が最近動きまくってる件」について解説しました。
ありがとうございました。