退職金は一時金と年金どっちがお得?

退職金の受け取り方を決める際、「一時金と年金のどちらがお得なのか」と迷う方も多いのではないでしょうか。
どちらが有利になるかは、退職金の金額や勤続年数、公的年金の受給額、退職後の生活設計などによって異なります。
そのため、すべての人に共通する答えはないものの、それぞれの特徴を理解し、自分の状況に合った受け取り方を選ぶことが大切です。
ここでは、一時金と年金がそれぞれどのような人に向いているのかを解説します。
(2)年金が向いている人|退職後の安定収入を確保したい人
(3)迷った場合は組み合わせ受け取りも選択肢
(1)一時金が向いている人|退職所得控除を活用したい人
一時金での受け取りは、退職所得控除を活用しやすい人や、受け取った資金を自分で管理・運用したい人に向いています。
退職所得控除は、勤続年数が長いほど控除額も大きくなる仕組みです。
退職金が控除額の範囲内に収まる場合は、税負担がほとんど生じないこともあります。
例えば、同じ会社に30年以上勤務した会社員や公務員など、長年勤務してまとまった退職金を受け取る方は、退職所得控除額も大きくなるため、一時金で受け取るメリットを得やすい傾向があります。
また、一時金として受け取ると、まとまった資金を手元に確保できます。
そのため、受け取った後の資産運用など、資金の使い方を自分で選びやすい点もメリットです。
このように、長期間勤務した方は、一時金受け取りの税制上の優遇を受けやすい傾向があります。
(2)年金が向いている人|退職後の安定収入を確保したい人
年金での受け取りは、退職後も定期的な収入を確保したい人や、公的年金だけでは生活費が不足することに不安がある人、まとまった資金を一度に受け取ることに抵抗がある人に向いています。
年金受け取りでは、毎年または毎月一定額を受け取れるため、退職後の生活費を計画しやすくなります。また、まとまった資金を短期間で使いすぎてしまうリスクも抑えやすいでしょう。
一時金で受け取る場合は、受け取った資金をどのように管理・運用するかを自分で判断する必要があります。
一方、年金であれば、一定期間に分けて計画的に受け取れるため、まとまった資金を管理する負担を軽減できます。
(3)迷った場合は組み合わせ受け取りも選択肢
一時金と年金のどちらを選ぶか迷った場合は、両方を組み合わせる「併用受け取り」も選択肢のひとつです。
併用受け取りとは、退職金の一部を一時金として受け取り、残りを年金形式で受け取る方法です。
退職所得控除を活用しながら、退職後の定期的な収入も確保できます。
ただし、年金として受け取る部分は雑所得として毎年課税されます。公的年金と合算されることで、所得税や住民税の負担が増える可能性もあるため注意が必要です。
退職金を一時金または年金で受け取る場合の仕組みと違い

退職金の受け取り方を選ぶ際は、まず一時金と年金、それぞれの基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。
ここでは、一時金受け取りと年金受け取りの仕組み、両方を組み合わせて受け取る方法について解説します。
(2)退職金を年金で受け取る場合
(3)一時金と年金を組み合わせて受け取る場合
(1)退職金を一時金で受け取る場合
退職金を一時金として受け取る場合は、「退職所得」として扱われます。
課税対象となる退職所得は、原則として次の計算式で算出します。
退職所得 =(退職金-退職所得控除額)×1/2
一時金受け取りの大きなメリットは、退職所得控除や原則として課税対象額を2分の1とする仕組み を利用できる点です。
また、退職所得は給与所得や事業所得などとは分けて税額を計算する「分離課税」の対象となります。
そのため、ほかの所得と合算されることで、退職金に適用される税率が上がることはありません。
退職金を一度に受け取れるため、受取後の資金の使い道や資産配分を自分で決めやすい点も特徴です。
(2)退職金を年金で受け取る場合
年金受け取りは、退職金を一定の期間にわたり、毎年または毎月に分けて受け取る方法です。
多くの企業年金では、年金として受け取った金額は「公的年金等に係る雑所得」として課税されます。
受取期間や年間の受取額は、勤務先の退職金制度や企業年金制度によって異なり、制度によっては受け取りを開始する際に、受取期間や年間の金額を選べる場合もあります。
年金受け取りでは所得税が源泉徴収されることがあり、ほかの所得の状況によっては確定申告が必要になる場合もあります。
一方で年間の受取額が少ない場合は、公的年金等控除によって課税対象額が小さくなり、税負担がほとんど生じないこともあります。
(3)一時金と年金を組み合わせて受け取る場合
勤務先の制度によっては、退職金の一部を一時金で受け取り、残りを年金として受け取ることもできます。
例えば、退職金の50%を退職時に一時金として受け取り、残りの50%を10年間に分けて年金として受け取る方法です。
制度によっては、一時金として受け取る割合や、年金の受取期間を複数の選択肢から選べる場合もあります。
ただし、一時金と年金の併用受け取りを利用できるかどうかや、選べる割合は、勤務先の退職金制度や企業年金制度によって異なります。
併用受け取りを検討する際は、勤務先の退職金規程や企業年金制度の内容を事前に確認しておきましょう。
退職金を一時金で受け取る場合の税金と退職所得控除

退職金を一時金で受け取る場合、税金の仕組みを正しく理解しておくことで、受取後の手取り額を試算しやすくなります。
ここでは、退職金を一時金で受け取る場合の税金と退職所得控除について解説します。
(2)退職所得控除額は勤続年数に応じて決まる
(3)勤続年数を踏まえた税額シミュレーション
(1)一時金で受け取る退職金は「退職所得」として課税される
退職金を一時金で受け取る場合は、「退職所得」として分離課税の対象になります。
分離課税とは、給与所得や事業所得などのほかの所得とは分けて、税額を計算する仕組みです。
例えば、退職した年に給与収入や副業収入があった場合でも、退職金はそれらの所得と切り離して税額を計算します。
そのため、給与などの所得が多い方でも、退職金にかかる税負担が必要以上に大きくなりにくい仕組みです。
退職所得は、原則として次の計算式で算出します。
退職所得=(退職金の収入金額-退職所得控除額)×1/2
この金額に所得税・復興特別所得税・住民税の税率を適用し、最終的な税額を計算します。
退職金から退職所得控除額を差し引き、さらに残額を2分の1にして課税対象額を計算するため、同額を給与として受け取る場合と比べて、税負担を抑えられる傾向があります。
(2)退職所得控除額は勤続年数に応じて決まる
退職所得控除額は、勤続年数によって計算方法が異なります。
| 勤続年数 | 退職所得控除額の計算式 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数 ※計算結果が80万円未満の場合は80万円 |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 ×(勤続年数-20年) |
勤続年数ごとの退職所得控除額の目安は、以下のとおりです。
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 5年 | 200万円 |
| 10年 | 400万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 25年 | 1,150万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
| 35年 | 1,850万円 |
| 40年 | 2,200万円 |
勤続年数が20年を超える場合は、20年までの控除額800万円に加え、20年を超えた年数1年につき70万円ずつ控除額が増えていきます。
そのため、勤続年数が長い方ほど退職所得控除額も大きくなり、退職金にかかる税負担を抑えやすくなります。
なお、退職金の総額が退職所得控除額以下であれば、課税対象となる退職所得は0円です。
その場合、原則として所得税・復興特別所得税・住民税は課税されません。
(3)退職金を一時金で受け取る場合の税額シミュレーション
ここでは、勤続年数30年の方が、退職金2,000万円を一時金で受け取るケースを見てみましょう。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 勤続年数 | 30年 |
| 退職金の収入金額 | 2,000万円 |
| 退職所得控除額 | 1,500万円 |
まず、退職金2,000万円から退職所得控除額1,500万円を差し引き、残額を2分の1にして課税退職所得を計算します。
| 計算項目 | 計算式 | 金額 |
|---|---|---|
| 退職所得控除額 | 800万円 + 70万円 ×(30年-20年) | 1,500万円 |
| 課税退職所得 | (2,000万円-1,500万円)× 1/2 | 250万円 |
課税退職所得250万円に対する税額の内訳は、次のとおりです。
| 税金の種類 | 計算式 | 税額 |
|---|---|---|
| 所得税 | 250万円 × 10%-97,500円 | 15万2,500円 |
| 復興特別所得税 | 15万2,500円 × 2.1% | 3,202円 |
| 住民税 | 250万円 × 10% | 25万円 |
| 税額合計 | - | 40万5,702円 |
※退職金の全額に税率がかかるのではなく、退職所得控除を差し引いたうえで課税対象額を計算するため、実際の税負担は退職金の金額だけでなく、勤続年数によっても大きく異なります。
このケースでは、退職金2,000万円に対する税額の合計は40万5,702円となります。
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退職金を年金で受け取る場合の税金と公的年金等控除

退職金を年金形式で受け取る場合、税金の仕組みは一時金で受け取る場合と大きく異なります。
年金は受け取る年ごとに税額が計算されるため、公的年金やその他の収入との関係も踏まえて考えることが大切です。
ここでは、退職金を年金で受け取る場合の税金と公的年金等控除について解説します。
(2)年齢と年金収入に応じて公的年金等控除額を計算する
(3)公的年金やその他の所得との合算による税負担に注意する
(4)退職金を年金で受け取る場合の税額シミュレーション
(1)年金で受け取った退職金は雑所得として課税される
退職金を年金形式で受け取った場合、毎年受け取る金額は、一般的に「公的年金等に係る雑所得」として課税されます。
雑所得は、給与所得や事業所得、不動産所得などと合算して税額を計算する「総合課税」の対象です。
一時金で受け取る場合とは異なり、退職所得控除や原則2分の1課税は適用されません。
年金として受け取った金額から公的年金等控除を差し引き、残った金額が課税対象となります。
例えば、公的年金を年間250万円受け取っている方が、退職金を年金形式で年間100万円受け取る場合、年金収入の合計は350万円です。
この合計額をもとに公的年金等控除を差し引いて雑所得を計算するため、公的年金だけを受け取る場合と比べて課税対象額が増え、所得税や住民税の負担が大きくなる可能性があります。
(2)年齢と年金収入に応じて公的年金等控除額を計算する
公的年金等控除とは、年金にかかる雑所得を計算する際に、年金収入から差し引ける控除です。
控除額は、年金収入の総額や、受け取る方が65歳未満か65歳以上かによって異なります。
| 年齢 | 年金収入 | 公的年金等控除額 |
|---|---|---|
| 65歳未満 | 130万円以下 | 60万円 |
| 65歳以上 | 330万円以下 | 110万円 |
※主な控除額のみ掲載しています。
退職金の年金受け取り分と、国民年金や厚生年金などの公的年金を合算し、そこから公的年金等控除を差し引いた金額が雑所得となります。
公的年金等控除は退職所得控除と比べて控除額が小さいため、一般的には、年金受け取りのほうが一時金受け取りよりも税負担が大きくなりやすい傾向があります。
ただし、実際にどちらが有利になるかは、年金の受取額やその他の所得によって異なります。
(3)公的年金やその他の所得との合算による税負担に注意する
年金受け取りは総合課税の対象となるため、公的年金や不動産収入など、その他の所得がある方は注意が必要です。
年金による雑所得がその他の所得と合算されることで課税所得が増え、適用される所得税率が高くなる場合があります。
例えば、公的年金を年間200万円受け取っている方が、退職金を年金形式で年間100万円受け取る場合、年金収入の合計は300万円です。
この場合、公的年金等控除110万円を差し引いた190万円が雑所得となり、その他の所得と合算して所得税や住民税が計算されます。
そのため、年金受け取りを選ぶ際は、公的年金だけでなく、給与や不動産所得なども含めた年間の税負担を確認することが大切です。
一時金で受け取った場合とも比較しながら、自分の収入状況や生活設計に合った受け取り方を検討しましょう。

(4)退職金を年金で受け取る場合の税額シミュレーション
退職金2,000万円を10年間の年金として受け取る場合を例に、課税対象となる雑所得を試算してみましょう。
今回は、65歳以上で、公的年金を年間130万円受け取っているケースを想定します。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 公的年金 | 130万円 |
| 退職金の年金受取額 | 200万円 |
| 年金収入合計 | 330万円 |
| 公的年金等控除 | 110万円 |
| 課税対象となる雑所得 | 220万円 |
※公的年金等控除を用いた簡易的な試算です。実際の雑所得額は、年齢や年金収入の総額などに応じた計算式を用いて算出されます。
算出した雑所得は、給与所得や不動産所得などのほかの所得と合算され、その合計額をもとに所得税や住民税が計算されます。
そのため、ほかの所得が多い方ほど、適用される所得税率が高くなり、一時金で受け取る場合よりも税負担が大きくなる可能性があります。
退職金を一時金または年金で受け取る場合のリスクを比較

一時金と年金のどちらを選ぶ場合でも、それぞれに異なるリスクがあります。
受け取り方を決める際は、税金や手取り額だけでなく、資金管理のしやすさや将来の使い方も含めて検討することが大切です。
ここでは、一時金受け取りと年金受け取りの主なリスクについて解説します。
(2)年金受け取りのリスクについて
(3)一時金と年金を組み合わせてリスクを分散する
(1)一時金受け取りのリスクについて
一時金受け取りの主なリスクは、まとまった資金を一度に受け取ることで、計画的な管理が難しくなる点です。
退職金は、退職後の生活費として長期間にわたって使うことが想定される資金です。
しかし、一度に大きな金額を受け取ると、短期間で使いすぎてしまう可能性があります。
また、受け取った資金を運用する場合は、自分で運用方法を判断しなければなりません。
運用方針や商品選びを誤ると、資産が減少するリスクもあります。
特に、投資経験が少ない方や、値動きに影響されやすい方は、まとまった資金を適切に管理することが難しくなる場合があります。
さらに、まとまった退職金を受け取ったことで、投資詐欺や不審な勧誘の対象になりやすくなる点にも注意が必要です。
(2)年金受け取りのリスクについて
年金受け取りには、制度の内容によって受取額が変動したり、将来の制度変更の影響を受けたりする可能性があります。
企業年金には、主に次の2つがあります。
企業型確定拠出年金(企業型DC):運用実績によって受取額が変動する
自分が加入している制度がわからない場合は、勤務先から配布された退職金制度の案内や企業年金の規約を確認しましょう。
不明な点は、人事・総務部門へ問い合わせることでも確認できます。
企業型DCでは、運用成績によって将来の受取額が変動します。
そのため、定期的に運用状況を確認し、必要に応じて運用商品の見直しを検討することが大切です。
一方、確定給付企業年金では、制度に基づいて受給額が定められています。
ただし、制度変更などによって、将来の給付内容が見直される可能性もあるため、事前に制度内容を確認しておきましょう。
また、年金受け取りには、まとまった資金をすぐに使いにくいというリスクもあります。
例えば、急な医療費や住宅の修繕費、家族のためのまとまった支出が必要になった場合でも、年金受け取りでは残額を一括で引き出せないことがあります。
受取期間が長くなるほど、企業や年金基金の財務状況、制度変更などの影響を受ける期間も長くなります。
そのため、年金受け取りを選ぶ際は、税負担だけでなく、必要なときに資金を使えるかどうかや、加入している制度の内容もあわせて確認することが重要です。
(3)一時金と年金を組み合わせてリスクを分散する
一時金と年金を組み合わせて受け取ることで、双方のリスクを分散できる場合があります。
一時金として受け取る部分は、退職所得控除を活用しながら、老後の予備資金やまとまった支出に備える資金として手元に確保できます。
一方、年金として受け取る部分は、毎月または毎年の安定した収入として、生活費に充てることが可能です。
例えば、退職金3,000万円のうち1,500万円を一時金として受け取り、残りの1,500万円を年間150万円ずつ10年間の年金として受け取る方法があります。
一時金部分に利用できる退職所得控除額が1,500万円以上であれば、その一時金部分については、原則として所得税や住民税は課税されません。
年金部分については、毎年の公的年金等控除を利用しながら受け取ることになります。

ただし、実際の税務上の取り扱いは、同じ年や過去に受け取った退職金、その他の年金収入などによって異なる場合があります。
一時金と年金をどのような割合で組み合わせるかは、退職所得控除額や公的年金の受給額、退職後の生活費などをもとに、あらかじめシミュレーションしておくことが大切です。
退職金の受け取り方を決める前に確認したい注意点

退職金の受け取り方によって、税負担や受取後の生活設計は異なります。
手取り額だけで判断せず、iDeCoや公的年金の受給時期、勤務先の制度、世帯収入への影響なども含めて検討することが大切です。
ここでは、退職金の受け取り方を決める際に注意したい5つのポイントを紹介します。
(2)公的年金と退職金の受給タイミングを調整する
(3)配偶者の扶養や世帯全体への影響を確認する
(4)勤務先で選べる退職金の受け取り方を確認する
(5)選択後に受け取り方を変更できるか確認する
(1)iDeCoと退職所得控除の重複による税負担に注意する
iDeCoと会社の退職金を近い時期に一時金で受け取る場合は、退職所得控除を十分に活用できず、税負担が増える可能性があるため注意が必要です。
iDeCoを一時金で受け取る場合も、会社の退職金と同様に退職所得控除が適用されます。
ただし、両方を一定期間内に受け取ると、勤続期間や加入期間の重複に応じて、退職所得控除額が調整されることがあります。
例えば、会社の退職金を先に一時金で受け取り、その後一定期間内にiDeCoの一時金を受け取る場合です。
適用される期間や計算方法は受け取り時期などによって異なりますが、現行制度では、会社の退職金を先に受け取った場合、原則として10年以内に受け取るiDeCoの一時金が調整の対象となります。
そのため、受け取る順番や時期によっては、利用できる退職所得控除額が少なくなり、税負担が増える可能性があります。
(2)公的年金と退職金の受給タイミングを調整する
退職金を年金形式で受け取る場合は、公的年金との受給時期を調整することで、税負担を抑えられる可能性があります。
退職金の年金と公的年金を同じ時期に受け取ると、年金収入の合計額が増えます。
公的年金等控除を差し引いた後の雑所得が増えることで、所得税や住民税の負担が大きくなる場合があります。
例えば、退職金の年金受け取りを60~64歳に開始し、公的年金を65歳から受け取ることで、両方の年金を同時に受け取る期間を短くできる場合があります。
また、公的年金を66歳以降に繰り下げ、退職金の年金受け取りが終了した後に受給を開始することで、年金収入が重なる期間を減らせるケースもあります。
ただし、受給開始時期を自由に変更できるかどうかは、勤務先の退職金制度や企業年金制度によって異なります。
(3)配偶者の扶養や世帯全体への影響を確認する
退職金を年金形式で受け取る場合は、配偶者の健康保険の扶養条件や、世帯全体の税負担への影響も確認しておくことが大切です。
年金形式で受け取った退職金は毎年の収入となるため、退職後に配偶者の扶養へ入る予定がある場合は、扶養の認定基準を超えないか確認する必要があります。
健康保険の扶養基準は、加入している健康保険組合などによって異なります。
不明な場合は、配偶者の勤務先や健康保険組合へ問い合わせておきましょう。
一方、一時金として受け取る退職金は、退職所得として分離課税の対象になります。
そのため、扶養への影響という点では、年金受け取りよりも影響を受けにくい傾向があります。
(4)勤務先で選べる退職金の受け取り方を確認する
退職金の受け取り方を検討する前に、勤務先でどの方法を選べるのかを確認しましょう。
会社によっては一時金のみを選べる場合もあれば、年金受け取りや、一時金と年金の併用受け取りを選べる場合もあります。
まずは、退職金規程や企業年金制度の案内を確認し、自分が利用できる受け取り方を把握することが大切です。不明な点がある場合は、人事部門や総務部門へ問い合わせましょう。
また、企業年金には、確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(企業型DC)などがあり、制度によって受け取り方や受給開始時期のルールが異なります。
iDeCoに加入している場合は、iDeCoの受け取り方法や時期もあわせて確認しておきましょう。
(5)選択後に受け取り方を変更できるか確認する
退職金の受け取り方は、一度選択すると変更できない制度が多いため、決定前に変更の可否を確認しておくことが重要です。
例えば、年金受け取りを開始した後に一時金へ変更したい場合や、一時金を選んだ後に年金へ変更したい場合でも、認められないことがあります。
退職日が近づいてから慌てて判断するのではなく、退職の1年ほど前から数カ月前までを目安に、制度の確認や税負担のシミュレーションを進めておきましょう。
退職金を一時金と年金のどちらで受け取るかを決める4つの判断基準

一時金と年金のどちらを選ぶべきかは、退職金の金額や税負担、退職後の生活設計などによって異なります。
それぞれの特徴を踏まえ、自分の状況に合った受け取り方を選ぶことが大切です。
ここでは、状況別に一時金と年金のどちらが向いているのか、判断する際の目安を紹介します。
(2)公的年金の受給額が少ない人|年金がおすすめ
(3)資産運用が得意な人|一時金がおすすめ
(4)老後の生活費を安定させたい人|年金 or 併用受け取りがおすすめ
(1)退職金額が大きい人|一時金がおすすめ
退職金額が大きい方は、一時金で受け取るほうが税務上有利になる場合があります。
一時金で受け取る退職金には、退職所得控除が適用されます。
また、控除後の金額は、原則として2分の1にして課税対象額を計算します。
そのため、退職金の総額が退職所得控除額を大きく上回る場合でも、同額を給与として受け取る場合と比べて、税負担を抑えられる可能性があります。
ただし、実際にどちらが有利になるかは、勤続年数や退職金額、iDeCoの受取時期などによって異なります。
受け取り方を決める前に税額をシミュレーションし、自分の状況に合った方法を選ぶことが大切です。
(2)公的年金の受給額が少ない人|年金がおすすめ
公的年金の受給額が少なく、退職後の生活費を補いたい方には、年金での受け取りが向いています。
退職金を年金形式で受け取ると、毎月または毎年一定額を受け取れるため、老後の生活費を安定して確保しやすくなります。
まとまった資金を一度に管理することに不安がある方にとっても、計画的に受け取れる点はメリットです。
ただし、退職金を年金で受け取る場合は、公的年金と合算して課税対象額を計算します。
そのため、受取額が増えると、所得税や住民税の負担が大きくなる可能性があります。
公的年金の受給額や退職後の生活費を確認し、必要な金額をシミュレーションしたうえで受け取り方を決めましょう。
(3)資産運用が得意な人|一時金がおすすめ
資産運用の知識や経験があり、退職後も自分で資産を管理できる方には、一時金での受け取りが向いています。
一時金で受け取れば、まとまった資金をNISAや投資信託など、自分に合った方法で運用できます。
長期的に安定した運用ができれば、年金形式で受け取る場合よりも資産を増やせる可能性があります。
一方、年金受け取りでは、毎年決められた金額を受け取るため、一時金のようにまとまった資金を自由に運用することはできません。
ただし、資産運用には元本割れのリスクがあります。運用経験が少ない方や、大きな値動きに不安を感じる方は、年金受け取りや、一時金と年金の併用受け取りも含めて検討するとよいでしょう。
(4)老後の生活費を安定させたい人|年金 or 併用受け取りがおすすめ
老後の生活費を安定させたい方には、年金受け取りや、一時金と年金を組み合わせる併用受け取りが向いています。
年金形式で受け取ると、毎月または毎年一定額の収入を確保できるため、退職後の生活費を計画しやすくなります。
また、まとまった資金を一度に使いすぎてしまうことが心配な方にとっても、計画的に受け取れる点はメリットです。
例えば、60歳で退職し、公的年金の受給開始まで収入がない期間がある場合は、その間の生活費として退職金を年金形式で受け取る方法もあります。
税負担は一時金で受け取る場合より大きくなることがありますが、毎月の安定した収入を優先したい方にとっては、年金受け取りや併用受け取りが適した選択肢となるでしょう。
まとめ

今回は、退職金を一時金で受け取る場合と年金で受け取る場合の違いや、それぞれの税金の仕組み、メリット・デメリットについて紹介しました。
一時金で受け取る場合は、退職所得控除や2分の1課税が適用されるため、税負担を抑えやすい点が特徴です。
一方、年金で受け取る場合は、毎月安定した収入を確保しやすく、老後の生活費を計画的に管理しやすいというメリットがあります。
ただし、どちらの受け取り方が有利かは、退職金の金額や勤続年数、公的年金の受給額、その他の収入、iDeCoの受け取り時期などによって異なります。
そのため、税金だけでなく、老後の生活費や保有資産、今後のライフプランまで含めて比較することが重要です。
ココザスでは、経験豊富なファイナンシャルプランナーが、収入や資産状況、退職後の生活設計をもとに、退職金の受け取り方や老後の資産計画をご提案しています。
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