資産形成・人生設計

金がインフレに強い3つの理由|簡単に始められる方法と持つべき割合も解説

  • #金投資

給料は上がらないのに、モノの値段が上がり続ける中「ただ銀行に預けているだけ」で、本当にお金を守れるのでしょうか?

物価高への備えとして、守りの資産「金(ゴールド)」が再び注目されています。
なぜ金がインフレに強いのか、その理由から具体的な始め方までを詳しく解説していきます。

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この記事の監修者

持丸 雅士

ココザス株式会社|コンサルタント|FP

持丸 雅士

Masashi Mochimaru

突如起きた父親の入院・手術をきっかけにお金に対する不安を感じ、ファイナンシャル・プランナーの勉強を始める。
ファイナンシャルプランナー技能士2級及びAFP認定を取得後、お金に対する正しい知識・情報を世の中に伝えていきたいと思い、個人向け資産形成コンサルティング事業を展開しているココザス株式会社へ入社。
資産形成で不安を抱えているお客様の視点に立ち、年間800人以上の資産形成のサポートを行っている。
また現在はセミナー講師として講演会を行うなど、正しいお金の知識を広げる活動にも取り組んでいる。

金がインフレに強い3つの理由

金には、他の資産とは異なる独自の性質があります。

こちらでは、金がインフレに強いとされる3つのポイントを紹介します。

(1)供給量が限られ価値が保たれる

金は自然界に限られた量しか存在せず、人の手で増やすことができません。

一方で、法定通貨は中央銀行の判断で発行量が増やせるため、過剰に供給されると価値が下がります。

通貨の量が増えてモノの値段が上がるのがインフレです。

このとき、金の絶対量は変わらないため、お金の価値が下がると、同じ量の金を買うためにより多くの通貨が必要になり、結果的に金の価格は上昇します。

(例:昨日まで1万円で買えた金が、円の価値が下がった今日は1万1千円出さないと買えない、など)

このように金の「希少性」がインフレから資産を守る「防波堤」の役割を果たすのです。

(2)世界中で実物資産として認められている

金は、特定の国や会社が後ろ盾となっているわけではなく、それ自体に価値が認められている「実物資産」です。

だからこそ歴史的に、戦争が起きたり経済危機に陥ったりして、国や通貨への信頼が揺らいだときでも、金は「最後の砦」として価値を保ち続けてきました。

また、国や文化を問わず世界中でその価値が共通認識となっているため、グローバルに通用する資産でもあります。

こうした普遍性が、インフレ時の安全資産としての地位を支えています。

(3)各国の中央銀行も保有している

金は個人だけでなく、世界各国の中央銀行も資産の一部として保有しています。

通貨を発行・管理する中央銀行が金を持つのは、自国や他国の通貨の価値がインフレで下がってしまうリスクに備えるためです。

つまり金は、「通貨の信用が揺らぐときにこそ、その真価を発揮する資産」として、国家レベルで認められているのです。

この「国のお墨付き」は、私たち個人がインフレから資産を守る上で、金が信頼できる選択肢であることの強力な裏付けとなります。

インフレだけではない!金は円安にも強い

金は国際的にドルで取引されているため、円安が進むと円建てでの価格は上昇します。

(例:1ドル150円のときに30万円だった金は、1ドル160円の円安になると、金のドル価格が同じでも32万円に値上がりする)

これは、米国株やドル預金といった海外資産と同様の性質を持っています。

円安は輸入品などの値段を押し上げるため、円の預金だけでは買えるモノが実質的に減ってしまいます。

そのため、資産の一部に金を加えておけば、インフレと円安の両方に備える「ダブルヘッジ」として機能し、大切な資産を守る有効な手段となります。

【実例で検証】金はインフレから資産をどう守るか

「金はインフレに強い」というのは本当なのでしょうか。

過去に世界や日本を襲った3つの危機を例に、当時の金の価格がどう動いたのかを検証していきます。

1970年代:オイルショック期

1970年代のアメリカは、第一次・第二次オイルショックの影響でインフレ率が年10%を超える異常事態にありました。

この期間、金価格は1971年に1オンス(約31.1グラムの金の国際的な取引単位)35ドルだったものが1980年には一時850ドル台近くまで上がり、名目で20倍以上の価格上昇を記録しています。

現金の購買力が急落する中、金を保有していた人は資産を守れただけでなく、実質的な価値を高めた例として知られています。

引用|内閣府「昭和55年度 世界経済白書」FRED「Consumer Price Index for All Urban Consumers」みずほ証券「ニクソン・ショック(ドル・ショック)」

2000年代:リーマンショック後〜世界金融危機

2008年のリーマンショックでは、世界的な株安と金融不安が広がる中で、金は「安全資産」としての地位が再確認されました。

同年秋に株価が急落したのち、金価格は2008年の約800ドル台から2011年には1,900ドル台まで上昇し、実質的に2倍以上の値上がりを記録しています。

株式などのリスク資産が下落する局面でも、金を保有していたことで資産全体のバランスが維持された好例といえます。

引用|Yahoo Finance(S&P500チャート)World Gold Council(金価格の長期推移)

2020年代:コロナ・円安局面(日本)

コロナ禍とロシア・ウクライナ情勢を背景に、2020年以降の日本では円安と物価上昇が同時に進行しました。

2022年以降、円建ての金価格は上昇を続け、2024年には1グラムあたり1万3,000円台に乗せるなど、史上最高値を更新し続けています(日本では金が「グラム」単位で取引されるため、ここでは円建ての価格で見ています)。

円預金の価値が実質的に目減りする中、金を一部でも保有していた場合、資産価値の維持に大きく役立ったことが分かります。

引用|田中貴金属工業(金価格の推移)

金投資のメリットと期待できる効果

金をポートフォリオに加えるのは、値上がり益のためというより、資産全体の安定性を高めるのが主な目的です。

具体的に期待できる、金の3つのメリット・効果を確認していきましょう。

(1)他の資産と違う値動きで、資産全体のリスクを低減

これまで見てきたように、金はインフレや円安、経済危機といった他の金融資産(株式や債券など)が値下がりしやすい局面で、価格が上がる傾向にあります。

この「他の資産とは異なる値動き」は、金の大きなメリットです。

ポートフォリオの一部に金を加えておけば、株価が暴落した際にも金が資産全体の価値を下支えしてくれる可能性があります。

金は資産を守る「保険」のような役割を果たしてくれるのです。

(2)劣化しにくく、資産価値を長期で保てる

金は、鉄のように錆びたり、銀のように変色したりする心配がほとんどありません。

物質的に劣化しない特性が、金が長期保有に適している大きな理由です。

例えば、建物や自動車といった他の実物資産は時間と共に老朽化し、状態をキープするためには修繕・管理の費用がかかります。

一方、金は物質的な劣化や維持コストが基本的にないため、その本質的な価値が損なわれにくいのです。

(3)世界中で通用し、いつでも現金化できる

金は世界中のどこでも換金できる流動性の高さが大きな魅力です。

不動産や美術品などと違い、売却に時間がかかったり、買い手を探したりする必要がほとんどありません。

国際的に価格が公表されているため、国内外を問わず、その時々の時価で速やかに現金に換えることが可能です。

例えば、病気や失業といった不測の事態で急に現金が必要になっても、金を売却してすぐにお金を用意できる可能性があります。

また、他の投資対象に好機が生まれた際には、タイミングを逃さず資金を移すことも容易となります。

(4)保有中は税金がかからず、運用効率が良い

金を保有しているだけでは、固定資産税や所得税といった税金がかかりません

株式の配当のように利益がでるたびに課税される資産と違い、売却して利益が確定するまで、課税が繰り延べられます。

つまり、税金として支払うはずだったお金も元本の一部として運用され続けるため、複利効果を最大限に活かしやすいのです。

長期的な資産形成を考える上で、この税制上のメリットは無視できないポイントと言えるでしょう。

(5)相続資産として、公平に分配しやすい

金の延べ棒(金地金)や金貨といったように、金はさまざまな重さや形状で保有できるため、相続財産として扱いやすいのが特徴です。

例えば、家や土地といった不動産は物理的に分けるのが難しく、相続トラブルの原因になることも少なくありません。

その点、金は必要な分だけを分け与えることができるため、複数の相続人に対して公平な分配がしやすくなります。

現物を直接引き渡せる点が、円満な資産承継に役立ちます。

金投資のデメリットと注意点

金はインフレ対策として有効ですが、他の資産と同様にリスクや短所も存在します。

こちらでは、金投資を検討する際に知っておくべき注意点を紹介します。

(1)配当がなく、価格が上がらなければ利益が出ない

金は株式のように配当金が出ないため、保有しているだけでは利益(インカムゲイン)が得られません。

価格が上がったときに売却して初めて利益が確定する「キャピタルゲイン頼み」の資産です。

そのため、相場が横ばいのままだと、定期的に利益を生む株式や債券と比べて資産が増えるスピードは劣る可能性があります。

資産を「増やす」ことを主な目的にするのではなく、金はあくまで資産を「守る」目的でポートフォリオの一部に活用するのが賢明です。

(2)短期的な価格変動で損失のリスクがある

金は安全資産とされますが、短期的には大きく値動きすることがあります。

リーマンショック時や米国の利上げ局面では、一時的に価格が急落する場面も見られました。

金には世界的な経済ニュースに価格が反応したり、大口の投資家による売買で需要と供給のバランスが変化したりする側面を持っています。

そのため、「安定している」という印象だけで全資産を金に預けるのは避けるべきでしょう。

特に短期での売買を考えている場合は、ボラティリティの高さも考慮する必要があります。

(3)保管や購入手段によってコストや盗難の不安がある

金地金や金貨といった現物の金は、保管方法を考える必要があります。

自宅保管には盗難リスクがともない、銀行の貸金庫を利用すれば安全ですが、年間の保管料がかかります。

また、純金積立や金ETFなど現物以外の方法でも、購入時の手数料や信託報酬といったコストは避けられません。

こうしたコストを事前に確認せずに始めると、せっかく利益が出ても手数料分が差し引かれ、思ったより手残りが少なくなる可能性があります。

【インフレ対策】金投資の3つの方法

金投資を始める方法は1つではありません。

現物で持つ方法から、投資信託などを利用する方法まで、いくつかの選択肢があります。

ご自身の目的や予算に合わせて最適な方法が選べるよう、初心者でも始めやすい代表的な3つのアプローチを解説します。

(1)現物(金地金・金貨)として保有する

金の延べ棒(金地金、インゴット)や金貨など、実物そのものを購入して保有する方法です。

田中貴金属工業三菱マテリアルといった地金商の直営店やオンラインストア、一部の証券会社などで当日の小売価格を基にグラム単位または枚数単位で購入できます。

手元に実物として資産を置いておきたい方や、金融システムの破綻といった万一の事態にも備えたい方に適しています。

(2)金ETF・投資信託で間接的に運用する

金そのものを直接保有するのではなく、金の価格に連動して価値が変動する投資信託(金ETFを含む)を売買する方法です。

普段お使いの証券会社の口座で、株式と同じように手軽に購入できるのが大きな特徴です。

数千円程度の少額から始められるほか、リアルタイムでの売買も可能なため、柔軟な取引ができます。

また、為替変動のリスクを避けたい方向けに為替ヘッジありの商品が選べるのも、現物にはない利点です。

普段の株式投資と同じような感覚で、少額から手軽に金投資を始めたい方や、状況に応じてスムーズに売買したい方に適した方法です。

(3)純金積立で毎月コツコツ積み立てる

田中貴金属工業などの地金商や、楽天証券・SBI証券といったネット証券が提供する、毎月決まった金額(1,000円など)で金を自動的に買い付けていくサービスです。

ETFや投資信託が「好きなタイミングでまとめて売買する」のに対し、純金積立は「決まった金額で、自動で買い続ける(積み立てる)」のが根本的な違いです。

これにより、価格が高い日には少なく、安い日には多く買う「ドルコスト平均法」が自然に実践でき、高値掴みのリスクを抑えられます。

また、積み立てた金が一定量に達すると、金地金や金貨といった現物と交換できる場合があるのも、ETFにはない大きな特徴です。

手数料はETFなどより割高な傾向があるため、長期的な視点でコツコツ資産形成をしたい方や、将来的に現物で金を手に入れたいと考える方に適しています。

インフレに強い金は資産の5〜10%が目安

金への投資は、総資産の5〜10%がバランスの取れた目安とされます。

その理由を具体的な数字を使ったシミュレーションで見ていきましょう。

仮に、総資産1,000万円のポートフォリオがあるとします。

ここで、株価が30%暴落し、代わりに金の価格が15%上昇したと仮定します。

※ここではあえて、極端な比率での運用例を示しています。

金の比率が10%(100万円)の場合

  • 株式:900万円 → 630万円(-270万円)
  • 金:100万円 → 115万円(+15万円)
  • 合計:1,000万円 → 745万円(-25.5%の下落)

株式単体では-30%の大きな下落でしたが、金が下支えしたことで、資産全体の下落を-25.5%に抑えられました。

金額にすると、何もしない場合(株式のみ保有)と比べて45万円分の資産を守れた計算になります。

これが金の「守り」の効果です。

「5〜10%」という比率が重要なのは、少なすぎれば守りの効果が薄れ、多すぎれば資産全体の成長の足かせになってしまうからです。

もし金の比率が少なすぎると…(例:2%)

  • 同じ状況でも、資産全体の下落率は-29.1%となり、ポートフォリオを守る効果はほとんどありません。

もし金の比率が多すぎると…(例:30%)

  • 平時の株価上昇局面で、利益を生まない金の割合が多すぎるため、資産全体の成長スピードが大きく鈍化してしまいます。

以上の点から、守りの効果を十分に発揮しつつ、全体の成長の足かせにもなりにくい「5〜10%」が、資産運用においてバランスの取れた割合とされています。

まとめ|インフレに強い金を資産の一部として取り入れよう

金は、その量に限りがあり、簡単には増やせないという『希少性』に基づき、特定の国や会社に依存しない「実物資産」としての強みから、インフレや円安の局面で価値を保ちやすい特徴があります。

過去の経済危機でも資産を守ってきた実績があり、ポートフォリオの「守り」を固めるうえで有効な資産です。

ただし、配当を生まない点や短期的な価格変動リスクといった側面も持つため、資産の5〜10%を目安に、他の金融商品と組み合わせて保有するのが現実的です。

インフレや円安に備えるための最初の一歩として、ご自身の資産に金を加えてみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

持丸 雅士

ココザス株式会社|コンサルタント|FP

持丸 雅士

Masashi Mochimaru

突如起きた父親の入院・手術をきっかけにお金に対する不安を感じ、ファイナンシャル・プランナーの勉強を始める。
ファイナンシャルプランナー技能士2級及びAFP認定を取得後、お金に対する正しい知識・情報を世の中に伝えていきたいと思い、個人向け資産形成コンサルティング事業を展開しているココザス株式会社へ入社。
資産形成で不安を抱えているお客様の視点に立ち、年間800人以上の資産形成のサポートを行っている。
また現在はセミナー講師として講演会を行うなど、正しいお金の知識を広げる活動にも取り組んでいる。

保有資格

AFP(日本FP協会認定)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

第一種証券外務員

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