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太陽光発電が普及した理由とは
太陽光発電とは、太陽の光がシリコン半導体に当たることで電気を生み出す性質を利用した発電方法です。
太陽光発電は、火力発電とは異なり、温室効果ガスを発生させない再生可能エネルギーの1つです。
そのため、気候変動問題解決に向け、世界的に普及が推進されている発電方法です。
日本政府も、太陽光発電の普及を推進しており、その理由は大きく2つあります。
(1)地球温暖化防止
日本政府は2020年に菅総理が「2050年カーボンニュートラル宣言」を掲げて以来、再生可能エネルギーの比率を上げることを目標にしています。
具体的には、2030年度に再生可能エネルギー比率を22〜24%にすることを目標としています。
風力発電や地熱発電などと比較したとき、再生可能エネルギー内で太陽光発電が占める割合は最も大きくなっています。
そのため、目標達成のため、今後も重要な発電方法になると見込まれます。
(2)エネルギー政策
二つ目の理由は、エネルギー政策のためです。
日本は、発電の約80%を担う火力発電に必要な石油や石炭などの化石燃料を海外からの輸入に依存しています。
そのため、エネルギー自給率はアメリカやドイツといった他の先進国と比べても低く、おおよそ10%程度です。
もし、国際的な戦争や災害で石油や石炭の値段が上がると、私たちの生活に大きな影響が出る可能性が高いです。
一方、太陽光発電であれば、日光から発電でき、石油燃料は不要です。
そのため、仮に海外からの資源の調達に問題があったとしても、安定して電力を供給できます。
このように、エネルギー政策的な観点からも太陽光発電の普及が求められているのです。
しかし、太陽光発電を普及させることは簡単ではありませんでした。
なぜなら、既存の火力発電と比較すると、発電コストが高かったためです。
そのため、太陽光発電の普及に向け、政府の介入が求められました。
FIT制度の紹介
FIT制度とは何か?
太陽光発電を普及させるため、2012年7月に欧州の制度を参考にスタートしたのがFIT制度です。
FITとは、Feed-in Tariffの略称です。
Feed-inは“入れる、送る”、Tariffは“関税”という意味で、日本語では「固定価格買取制度(こていかかくかいとりせいど)」と呼ばれています。
再生可能エネルギーで発電された電気を、決められた固定価格で電力会社に買い取ることを義務付けた制度です。
この制度の導入により、太陽光発電の設備投資が推進されました。
思い返せば、2010年代から、ソーラーパネルが並んでいる光景をよく見るようになったという方も多いのではないでしょうか?
技術革新による太陽光発電の発電コストの減少に合わせて、価格決定方法の見直しや発電事業者の事業計画の確認を追加するなど、微調整も行われました。
こうして、10年近くの期間、FIT制度は国内の太陽光発電推進に貢献してきました。
FIT制度の課題
太陽光発電の普及に貢献したFIT制度でしたが、大きく2つの課題が浮き彫りになってきました。
(2)電気の需給バランスが反映されない
(1)電気を使う国民の負担が大きくなってしまう
FIT制度における、電力会社が太陽光発電事業者から買い取る際のコストの一部は、“再エネ賦課金”として電気料金に上乗せされています。つまり、私たちの家計の負担に寄せられているということです。
この金額は年々大きくなっており、2021年には、総額2.7兆円の負担になると試算されています。
このような、消費者への金銭的負担が大きくなってきていることが課題の1つです。
(2)電気の需給バランスが反映されない
FIT制度では、太陽光発電した電気の買取り価格は一定です。
つまり、電力の市場における需給と価格決定が切り離されているということです。
本来であれば、夏の暑い日や冬の寒い日のように、クーラーや暖房で電力需要が増え、火力発電だけでは電力が不足する時、太陽光発電から電力を供給することが求められます。
しかし、電力の需給と価格決定が関係ないFIT制度では、事業者側に電力の実需に応じた発電をするインセンティブが生まれません。
こういった、電力の実需と太陽光発電の乖離が二つ目の課題です。
このように、国民への金銭的な負担が大きくなってきた、適切な市場原理が働かず、電気の需要がある際に発電するメリットがないということがFIT制度の課題でした。
これから新しく始まるFIP制度とは?
FIP制度とは何か?
上述のような状況を踏まえ、2022年4月から新しく始まるのが「FIP制度」です。
FIP制度は、すでに欧州でスタートしている制度で、FIPとは、Feed-in Premiumの略称です。
Premiumとは、プレミアムサービスなどの言葉があるように、“割増”を意味しています。
上述の通り、FIT制度は、決められた固定価格で買取ることで、参入コストが高い太陽光発電事業者に対する補助金のような役割を果たすという制度でした。
それに対して、FIP制度では電気を売った時の補助額(プレミアム)が一定になります。
具体的には、再生可能エネルギーの普及に必要なコストに基づいて設定される“基準価格”と電気の市場価格に連動して機械的に決定される“参照価格”の差によって補助額が決まります。
つまり、これまでは一定だったのが買取り価格ですが、これからは補助額が一定になるということです。
その結果、太陽光発電事業者の収入は、実際に“発電した電気を売った時の金額“+”補助額“になります。
なぜ、FIP制度はFIT制度の問題点を解決できるか?
では、どうしてこのFIP制度によって、FIT制度の二つの問題点を解決できると予想されているのでしょうか?
順番に解説していきます。
引用|経済産業省資源エネルギー庁HP「再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート」を参考に弊社作成
課題1:国民の金銭的負担が大きいという問題
特に、FIT制度上では、上図の通り、市場価格が低い時にも固定価格で買い取る必要があります。
国民は、本来は需要がない時にも高い賦課金を払わなければならず、負担が大きくなってしまいます。
しかし、FIP制度上では、プレミアム価格が一定で賦課されるようになります。
そのため、本当に再生可能エネルギーの推進に必要な分の金額だけの負担で済むようになります。
課題2:電気の実需に合わせた発電をするインセンティブが発電事業者に生まれないこと
FIP制度下での太陽光発電事業者の収入は、実際に“発電した電気を売った時の金額“+”補助額“になります。
補助額は一定なので、太陽光発電事業者は、収入を上げるためには、発電した電気をなるべく高く買ってもらう方法を取るようになると考えられます。
その結果、需要が大きく、電気の値段が高い時に発電するインセンティブが生まれると考えられます。
この方法では、電気料金が高くなってしまうのではないか?という懸念を持つ方もいるかもしれません。
しかし、実際には、複数の発電事業者による競争が発生します。
そのため、市場原理が働き、適切な価格になると推測されます。
このように、市場原理が働くことで、FIP制度は、太陽光発電事業者・電気の使用者の双方にとってよりよい電気供給を実現できると考えられています。
FIP制度の今後の展望、新しいビジネスの創出に関して
FIP制度の下で、政府が期待しているビジネスとして“アグリゲーション・ビジネス”が挙げられます。
こちらについて解説します。
まず、FIP制度下で太陽光発電事業者に対して新しく要求される “バランシング”について説明します。
バランシングとは、発電事業者が、事前に作成した発電計画と実績値を一致させるように電力の供給をコントロールすることです。
計画値と実績値で差が発生した場合には、発電事業者は、その差額分の費用を負担しなければなりません。
このバランシングは、従来のFIT制度下では、太陽光発電事業者には免除されていました。
しかし、FIP制度下では、他の発電事業者同様に太陽光発電事業者も支払わなければならなくなります。
引用|経済産業省資源エネルギー庁HPを参考に弊社作成
ただ、大規模な発電事業者と比較すると、太陽光発電事業主のような小口の発電事業者に発電のコントロールは困難です。
そこで、期待されているのがアグリゲーターの登場です。
アグリゲーターは、小規模な発電事業者をまとめ、需給バランスを調整、市場取引を行います。
実際に、このアグリゲーションの領域に電気事業者に加え、コンビニエンスストアやビルメンテナンスなどの色々な事業者が参入に向けた検証を始めています。
このように、発電する事業者と、需給のコントロールをする事業者を別々に存在させることで、補助金に頼らなくても、再生可能エネルギーが事業として成立する世界の実現が期待されています。
まとめ
固定価格での買取りを定めたFIT制度に変わり、上乗せする補助額を一定にするFIP制度が新しく始まります。
FIP制度は、市場原理が働くことで、太陽光発電の事業者と、電気の消費者である我々国民の双方にメリットが生まれると考えられます。
現在、SDGsに伴い、太陽光発電を始めとする再生可能エネルギーに関わるビジネスが盛り上がりを見せています。
そのため、環境問題に関わるビジネスや投資を始める絶好のチャンスです。
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