いま買い時かは、投資家しだい?
「買い時」とはどんな時なのでしょう。
この「買い時」を見定めるのは、とても難しいものです。
後述するように、不動産市況にサイクルがあると考えるならば、下げ切った底で物件購入をして価格に天井感が出たタイミングで売却したいと誰もが思います。
しかし、①タイミングを見定める難しさ ②タイミングが分かっても、その時に購入あるいは売却の行動をとれるか の2点は、なかなかできるものではありません。
とくに、②は、一般の不動産投資家には、ハードルが高いことでしょう。
市況全体が冷え切っている時に、「いまは買いだ」と行動に移す、市況が熱狂的になっているタイミングで、「これから売ろう」と行動に移すことができるような強いハートをもっているならば、不動産投資家として適格者と言えるでしょう。
底や天井のタイミングを見定めることについては、もっと難しいことです。
「バブル」は、「そのさなかは、いまがバブルとは分かりえない」という格言があります。
不動産市況におけるバブルは、「崩壊した時」つまり、「価格下落が顕著になった時」になってわかります。
1980年代後半のバブル期、2005年から数年間のミニバブル期にも、あとから分析して、「あの頃が転換点だった」という時期に、「いまが転換点だ」と認識していた業界の方は少なかったと思います。
このように考えると、不動産投資家にとっての「買い時」は、ある程度の市況を読みつつも、結果的には、「自分が買いたいと思った時」、「ある程度の自己資金がある時」、「金融機関の融資が降りやすい(市況、個人の信用)時」ということになります。
言われてみれば、当然ですが、「いま、不動産市況が底だ」と思っても、金融機関の融資が降りなかったり、自己資金がほとんどなかったりすれば、購入することはできません。
いつか下がるかもしれないという謎の信仰
不動産価格は1950年代からジワジワ上昇し、1990年ごろまでは概ね右肩上がりで上昇していました。
このころまでは「不動産は必ず上がる」ものとして捉えられていました。
その背景には、①人口が増えていたこと②農村部(地方)から都市部への人口移動が起こったこと③住宅をはじめとして不動産所有意識が高かったこと などがあげられます。
それまでは誰もが、「不動産価格は下がらない」と信じていました。
しかし、1990年ごろをピークに大きく下がりました。
「バブル崩壊」と言われたこの時は、急激に上昇した不動産価格がその反動で大きく下がった、つまり大きな価格調整が起こっており、落ち着きを取り戻せば再びゆるやかな上昇基調になるものと思われていました。
つまり、「一時的な下落」と思われていたのです。
不動産価格の下落は1997年頃までは著しく、その後は緩やかな停滞期を経て、2000年~2001年のITバブル期、2005年~2008年頃のミニバブル期に上昇がみられました。
しかし、それぞれのピークを過ぎた後は下落することになりました。
こうした経験から、不動産価格は、「右肩上がりで上がる」から「サイクルがあって、価格が上昇するとその後価格調整で値下がりする」へという見方に変わりました。
リーマンショックでの落ち込みを経て、2012年の終わりごろから日本の不動産価格は上昇を続け、23年春現在も市況は好調です。
しかし、バブル崩壊、リーマンショックで大きな痛みを負った日本では、「不動産価格上昇が続いているけれど、そのうち下がるかもしれない」という思いが充満しているようです。
不動産投資においては、波がある=サイクルがあり、そのサイクルを読み解くこと、が不動産投資の重要ポイントと考える方が多いようです。
海外ファンドの不動産投資の思考
一方、アメリカの各都市やロンドン、パリなどでは、かつての日本のように「不動産価格は上昇を続けるもの」との認識が強いようです。
これは株式市場においても同様で、「基本的に株価は上昇を続ける」という認識で、もしも下がるとすれば、リーマンショック(フィナンシャルクライシス)やブラックマンデーのように、大きなショックが起きて、大きく下がるけれど、再び上昇するという思考です。
アメリカやヨーロッパ、香港、シンガポールのファンドが、2023年に入っても積極的に日本の不動産を購入しています。
オフィス、レジデンス、商業施設など、どの領域も問わず積極的に購入しています。
ファンドにお金が集まり、低金利で、円安基調だから、と解釈されていますが、要は「まだ価格が上がりそう」で、「お金があるから(ファンドに集まる・金融機関から借りられる)」ということです。
かなり、値段の上がったと言われる日本の不動産ですが、こうしたファンドの考えでは、「いまは買い時」と判断しているわけです。