米国債をポートフォリオに入れる理由とは?

投資の世界では「分散」が成功のポイントと言われます。
1つの銘柄だけに投資すると、万が一暴落した際は大きな損失にもつながりかねないためです。
その中で、米国債は安定性と信頼性を兼ね備えた資産として注目されており、分散投資先としてポートフォリオに組み入れる投資家も多いです。
ここでは、米国債をポートフォリオに組み込む3つの主な理由を解説します。
・株式やリスク資産との相関性の低さ
・インフレ・金利環境での役割の違い
1つずつ確認しておきましょう。
安全資産としての役割
米国債の発行元であるアメリカは、世界最大の経済規模を持ち、デフォルト(債務不履行)のリスクが極めて低いため、経済危機や市場の混乱時にも資金が米国債に流入します。
リーマンショックやコロナショックの際も、投資家は株式などのリスク資産から米国債へ資金を移し、安全を確保しました。
このように、米国債は市場の不確実性が高まる局面で、資産を守る避難先として機能します。
資産全体のリスクを下げ、ポートフォリオの安定性を高める効果があるため、長期投資において欠かせない存在です。
株式やリスク資産との相関性の低さ
米国債の魅力の1つは、株式やリスク資産との相関性が低い点です。
相関性とは、異なる資産が同じ方向に動くかどうかを示す指標で、米国債と株式は多くの場合、逆の値動きをします。
つまり、株式市場が下落したときに、米国債の価格は上昇する傾向があるのです。
この特性により、ポートフォリオ全体の価格変動を抑え、安定した運用を実現できます。
特に不況期や金利低下局面では、リスク資産が下がっても米国債が支えとなるため、トータルでの損失を軽減できます。
分散投資の観点から見ても、米国債を一定割合保有することで、資産のバランスが大きく改善するため、投資家から高い支持を得ています。
インフレ・金利環境での役割の違い
金利が低下する局面では、既存の高金利の米国債価格が上昇し、キャピタルゲイン(値上がり益)を得るチャンスとなります。
一方、金利が上昇する局面では、価格は下落するものの、新たに高利回りの債券を購入できるため、長期的にはリターン向上につながります。
また、インフレが進行する場合は米国債の1つである物価連動国債(TIPS)を組み入れることで、実質的な購買力を維持することが可能です。
このように、米国債は経済環境に応じて柔軟に役割を変える資産であり、リスクヘッジと安定運用の両面からポートフォリオを支える存在といえます。
では、次の項では米国債の種類をポートフォリオに含めた際の活用法と一緒に紹介します。
米国債の種類とポートフォリオでの活用法

米国債には、期間や特性によって複数の種類が存在します。
短期・中期・長期、そして物価連動型といった債券を組み合わせることで、景気や金利変動に左右されにくい堅実なポートフォリオを構築できます。
ここでは、4つの特徴と投資ポートフォリオへの効果的な組み入れ方を詳しく解説します。
| 種類 | 償還期間 | 利息の有無 | 活用目的 |
|---|---|---|---|
| 短期国債(T-Bill) | 1年以内 | なし(割引発行) |
・キャッシュ代替 ・短期運用 ・リスク分散 |
| 中期国債(T-Note) | 2〜10年 | 半年ごとに支払い |
・バランス型ポートフォリオ ・安定収益確保 |
| 長期国債(T-Bond) | 20〜30年 | 半年ごとに支払い |
・長期利回り確保 ・株式との逆相関によるヘッジ |
| 物価連動国債(TIPS) | 5・10・30年 | 半年ごとに支払い(物価連動) |
・インフレ対策 ・実質資産価値の保全 |
短期国債(T-Bill):流動性確保とリスク分散
利息は支払われず、割引発行によって償還時に元本との差益を得る仕組みであり、いつでも現金化しやすい特徴があります。
市場環境が不安定なときや、急な資金需要が発生した場合でも、価格変動が小さいため、比較的容易に現金化できます。
短期国債(T-Bill)をポートフォリオでは、キャッシュポジションの一部として組み入れることで、リスク分散と資金の柔軟性を両立可能です。
特に、株式市場のボラティリティ(変動性)が高い時期に備えて、一定割合を短期国債で保有しておくと、全体の安定性が高まることでしょう。
中期国債(T-Note):バランス型ポートフォリオ向き
短期国債よりも高い利回りを得られ、長期国債ほど価格変動が大きくないため、リスクとリターンの中間を取る資産として最適です。
ポートフォリオにおいては、安定した利息収入を確保しながら、市場金利の変化にもある程度対応できる点が強みです。
特に、金利上昇局面では短期債よりも高利回りを維持しやすく、金利低下時には価格上昇も狙えるため、柔軟な運用が可能です。
「リスクを抑えつつ収益を確保したい」という長期投資家や、安定運用を目指すポートフォリオ構築には欠かせない存在といえるでしょう。
長期国債(T-Bond):リスクヘッジや利回り確保
金利変動の影響を受けやすいため価格変動リスクはありますが、その分高い利回りを享受できます。
ポートフォリオでは、主に「リスクヘッジ」や「長期利回り確保」の役割を果たします。
特に株式市場が下落した際には、長期金利が低下して債券価格が上昇する傾向があるため、株式との逆相関がリスク分散に寄与します。
長期的にインカムゲインを狙いたい投資家や、退職後資金の安定収益源としても有効です。
短期・中期債と組み合わせることで、より強固な分散効果を発揮するでしょう。
物価連動国債(TIPS):インフレ対策
インフレが進むと元本と利息の支払い額が増加し、実質的な購買力を守ることができます。
通常の固定金利債券は、インフレが進むと実質利回りが低下しますが、TIPSはその影響を最小限に抑えます。
そのため、物価上昇が懸念される局面では、ポートフォリオのリスクヘッジとして効果的です。
特に、株式や不動産などの資産価格がインフレに伴って変動する時期でも、TIPSを一定割合組み入れることで、全体の実質価値を安定的に維持できます。
長期的な資産防衛を考える投資家には、必須の選択肢といえるでしょう。
米国債を含むポートフォリオの具体例

米国債をポートフォリオに組み入れることで、リスクを抑えながら安定したリターンを狙うことが可能になります。
特に株式や他の資産と組み合わせることで、相場変動への耐性を高める効果があります。
ここでは、投資目的やリスク許容度に応じた3つのポートフォリオ例を紹介します。
・株式比率高め+短期国債
・債券中心型ポートフォリオ
1つずつ確認しておきましょう。
| タイプ | 資産配分の目安 | 特徴 | リターン | リスク | 向いている人 |
|---|---|---|---|---|---|
| バランス型 | 株式50%/米国債50% | 安定と成長の両立。株式下落時に債券がカバー。 | 中程度 | やや低い | 安定運用を目指す人 |
| 株式比率高め型 | 株式70〜80%/短期国債20〜30% | 成長重視。短期債で流動性と安全性を確保。 | 高め | 中程度 | リスクを取ってリターンを狙う人 |
| 債券中心型 | 米国債70〜80%/株式20〜30% | 安定収益重視。価格変動を抑えたい方向け。 | やや低い | 低い | 退職後の資産運用や初心者向け |
株式+米国債のバランス型
例えば「株式50%+米国債50%」の構成は、株式市場の上昇局面ではリターンを得つつ、下落局面では米国債が価格上昇して損失を緩和する効果があります。
米国債は株式と逆相関の傾向が強いため、全体の値動きを安定化させる役割を果たすのです。
また、中期国債(T-Note)や一部の長期国債(T-Bond)を組み入れると、金利変動にも強い構成にすることが可能です。
長期的な資産形成を目指す人や、退職後の安定収入を得たい人におすすめなポートフォリオです。
株式比率高め+短期国債
短期国債(T-Bill)は安全性が高く流動性にも優れているため、株式市場が不安定な時期に現金化して再投資する戦略を取りやすいのが特徴です。
この構成では、米国債がリスクヘッジの役割を果たし、急激な株価下落時のダメージを抑える目的に組み入れられます。
また、短期国債の金利上昇局面では、より高い利回りの債券に乗り換える柔軟性もあるのです。
特に中長期で成長株やハイテク株への投資を重視する場合、短期国債を組み合わせることでポートフォリオ全体のボラティリティを抑え、安定的にリスクコントロールを行うことができます。
債券中心型ポートフォリオ
特に金利が高い局面では、債券部分からの安定した利息収入を得やすく、株式市場の下落リスクを最小限に抑えることができます。
このタイプでは、長期国債(T-Bond)や中期国債(T-Note)を中心に構成し、インフレリスクを意識してTIPS(物価連動国債)を一部組み込むと効果的です。
定期的な利息収入を得ながら、価格変動を抑えて資産を守りたい方や、リタイア後の生活資金運用に向いています。
市場の変動に左右されにくいため、リスク許容度が低い人でも安心して長期保有できる堅実なポートフォリオと言えるでしょう。
米国債投資と他資産との組み合わせ方

米国債は単体でも安定した投資先ですが、他の資産と組み合わせることで分散効果を最大限に発揮します。
ここでは、主要な資産との組み合わせ方とそのメリットを解説します。
日本国債や国内債券との違い
米国債と日本国債はどちらも安全資産とされますが、性質とリターンには明確な違いがあります。
| 比較項目 | 米国債 | 日本国債(国内債券) |
|---|---|---|
| 通貨建て | 米ドル建て | 円建て |
| 利回り水準 | 高い(3〜5%前後) | 低い(0〜1%前後) |
| 為替リスク | あり(円高で損・円安で得) | なし |
| 安全性 | 高い(世界基準の信用力) | 非常に高い(自国通貨建て) |
| 流動性 | 非常に高い(世界中で取引) | 高い(国内中心) |
| 主なメリット | 高利回り・通貨分散効果 | 為替リスクなし・安定運用 |
| 主なデメリット | 為替変動リスク | 利回りが低い |
日本国債は超低金利が続いており、利回りはほぼゼロに近い水準です。
一方、米国債は世界的な基準金利を反映しており、同じ安全資産でもより高い利回りを得られるのが魅力です。
また、米ドル建てで運用されるため、為替変動による利益も期待できる特徴がある一方で、円高局面では為替損のリスクがある点には注意が必要です。
そのため、ポートフォリオ内で「円建て債券(日本国債)」と「ドル建て債券(米国債)」を一定割合ずつ組み合わせると、為替の影響を相殺しつつ、安定した利回りを得ることができます。
つまり、両者を補完的に活用することで、通貨分散+金利差による利回り向上が可能になるのです。
株式・REITとの組み合わせ効果
REIT(Real Estate Investment Trust:不動産投資信託)は、投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設、マンションなどの不動産を購入・運用し、その賃料収入や売却益を分配する仕組みの投資商品です。
株式のように証券取引所で売買でき、比較的少額から不動産投資が可能な点が特徴です。
一般的に、株式やREITは景気拡大期に上昇する一方、景気後退期には下落しやすい性質を持っています。
対して米国債は、不況時や金利低下局面で価格が上昇する傾向があり、株式とは逆の値動きをする資産として機能します。
そのため、株式が下落しても債券価格が上昇することで損失を相殺し、資産全体のボラティリティ(変動リスク)を下げる効果があります。
特にインカム狙いの投資家にとっては、REITからの配当と米国債の利息を組み合わせることで、安定したキャッシュフローを確保できる点も魅力です。
リスクとリターンのバランスを重視するなら、株式・REITと米国債の組み合わせは最も基本かつ強力な戦略といえるでしょう。
金やコモディティとの分散戦略
金やコモディティは、インフレや地政学的リスクに強い実物資産として知られています。
金は通貨価値が下がるインフレ局面で上昇しやすく、米国債はデフレや景気後退局面で価格が上昇する傾向があるのです。
つまり、景気のどの局面でも一方が資産を支える構造を作ることができます。
また、原油や商品ETFを少量組み入れることで、インフレが進んだときの資産価値低下を補う効果もあります。
米国債を軸として保有しつつ、金やコモディティを変動リスクのヘッジとして活用することで、長期的にバランスの取れた資産形成が可能になります。
米国債ポートフォリオはどんな投資家に向いている?

ここでは、米国債ポートフォリオが向いている3タイプの投資家像を紹介します。
・長期投資でリスク分散したい人
・老後資金を堅実に守りたい人
該当しているか確認しておきましょう。
安定運用を重視する人
株式市場の値動きが激しいと不安になる人や、資産の増減に一喜一憂したくない人など、安定運用を重視する人は米国債がおすすめです。
米国債はアメリカ政府が発行する国債で、デフォルトリスクが極めて低く安全性が高い資産です。
さらに、定期的に利息を受け取れるため、安定したインカム収入を確保できます。
ドル建てで保有する場合、円安局面では為替差益も期待可能なので、短期的な大きな利益よりも、安全にコツコツ資産を増やしたい投資家に向いています。
長期投資でリスク分散したい人
米国債は長期的に資産を守りながら増やしたい投資家に最適です。
株式やREITなどのリスク資産は高リターンが期待できる一方、景気後退や金利上昇時には大きく値下がりする可能性があります。
米国債はこうした局面で価格が上昇する傾向があり、他の資産の下落を緩和する働きがあります。
時間を味方することで、リスクを抑えつつ長期的に資産を形成したい人に向いています。
老後資金を堅実に守りたい人
老後資金など生活に必要な資産をリスクにさらしたくない人にとって、米国債は有効です。
米国債は、値動きが比較的小さく、利息を得ながら資産を維持できます。
特に、長期国債やTIPS(物価連動国債)を活用すれば、インフレによる資産目減りを防ぎつつ安定した利回りを確保可能です。
さらに、為替ヘッジ付き米国債ファンドを選ぶことで円換算のリスクも抑えられます。
元本を守りつつ老後資金を堅実に運用したい投資家に最適な選択肢です。
米国債をポートフォリオに組み入れる際の注意点

米国債は安全性が高く安定した利息収入を得られる資産ですが、注意点を理解せずに運用すると、思わぬ損失につながることがあります。
ここでは、米国債を組み入れる際に押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
・金利上昇局面での債券価格下落に注意する
・投資期間と目的に応じた銘柄を選ぶ
1つずつ確認しておきましょう。
為替リスクとヘッジの有無を確認する
米国債を保有する際、最も注意すべきリスクの1つが為替リスクです。
米ドル建てで運用する場合、円高が進むとドル建て資産の円換算額が減少するため、為替差損が発生し、逆に円安の場合は利益になります。
そのため、自分の資産が円換算でどのくらい変動するかを把握しておかなければいけません。
また、投資信託やETFを通じて米国債を購入する場合は、為替ヘッジの有無を確認することが重要です。
ヘッジ付き商品は為替変動リスクを抑えられる一方で、コストがかかる場合があります。
自分の投資目的やリスク許容度に合わせて、ヘッジの有無を判断することが、安定した運用の第一歩となるでしょう。
金利上昇局面での債券価格下落に注意する
市場金利が上昇すると、既発行の債券の利回りは相対的に低くなるため、価格は下落します。
そのため、長期国債ほど金利変動の影響を受けやすく、短期債や中期債を組み合わせることで価格変動リスクを抑える工夫が必要です。
また、金利上昇局面では、新たに発行される債券の利回りが高くなるため、短期国債で柔軟に乗り換える戦略も有効です。
金利環境を把握したうえで、ポートフォリオ全体の債券構成を調整するようにしましょう。
投資期間と目的に応じた銘柄を選択する
短期的な資金運用なら流動性の高い短期国債(T-Bill)、中長期で安定した収益を狙う場合は中期国債(T-Note)や長期国債(T-Bond)、インフレヘッジを重視する場合はTIPS(物価連動国債)が適しています。
投資期間やリスク許容度、目的に応じて最適な債券を組み合わせることで、期待リターンを確保しつつリスクを抑えた運用が可能になります。
銘柄選びは、米国債投資の成果を左右する重要なポイントです。
ただし、米国債初心者には難易度が高いので、迷った場合はファイナンシャルプランナーへ相談しましょう。
まとめ

米国債は、安全性の高さと利回り、株式や他資産との相関の低さから、ポートフォリオに組み入れることでリスク分散や安定運用に大きく貢献します。
短期・中期・長期・物価連動型の債券を組み合わせることで、景気や金利変動にも強いポートフォリオを構築可能です。
また、株式やREIT、金など他資産と組み合わせることで、さらに分散効果を高めることができます。
ただし、為替リスクや金利変動、投資期間に応じた銘柄選択など、初心者には判断が難しい要素も多くあります。
迷った場合は、リスク許容度や目的に応じた最適な債券選びのために、ファイナンシャルプランナーへ相談することをおすすめします。
ココザスはファイナンシャルプランナーとして米国債を始めとした、投資や資産運用のサポートを行っております。
また、お客様の資産状況や家族構成、将来的なライフプランから適切な投資計画のアドバイスを行います。
さらに税金アドバイスや余剰金作りのための家計の見直し、保険やローンなどについての相談も承っておりますので、ぜひ一度ご相談ください。
