投資信託がマイナスになっても焦らないで

投資信託は、価格の変動を前提として設計された商品です。
長く積み立てを続けるスタイルであれば、評価額が一時的に下がる場面は避けられません。
過去には経済的なショックによって、市場が大きく落ち込んだこともあります。
しかし多くは、時間の経過とともに回復してきました。
また、積立投資では価格が下がったときに多く買い付けられるため、平均購入価格を引き下げやすいという特長もあります。
焦って売却してしまうと、本来得られたかもしれない利益を逃してしまう可能性があります。
迷ったときほど、目の前の価格ではなく、運用の目的や投資期間を振り返って判断することが大切です。
投資信託マイナスでも「放置」が有効なケースと注意点

損が出ている状態で何もしないのは、不安に感じるかもしれません。
ただ、一定の条件を満たしていれば、あえて動かないほうが良いケースもあります。
こちらでは、「放置」が有効といえる具体的な状況と、注意すべき例外パターンを紹介します。
積立型(NISA等)は基本放置でOK
NISA(つみたて投資枠)などの積立型投資は、長期的な運用を前提とした制度です。
毎月一定額を投資する方法では、価格が高いときに少なく、安いときに多く買い付ける「ドルコスト平均法」の効果が得られます。
購入単価を平均化できる仕組みによって、相場の変動にとらわれず投資を継続しやすくなる点が特徴です。
さらに、NISAは金融庁が選定したファンドが中心となっており、投資対象や運用方針の大きな変更も起こりにくい傾向があります。
内容に信頼がおけるファンドを選んでいれば、評価額の一時的な下落があっても慌てる必要はありません。
日々の値動きに振り回されず、定期的な確認だけで対応できる点は、初心者にとっても安心材料になります。
積立の内容や目的に問題がなく、生活に支障のない範囲で運用できているなら、しばらくは状況を見ながら放置する判断も十分に妥当です。
ただし以下のケースでは見直しが必要
すべてのケースに「放置」が当てはまるわけではありません。
運用環境やファンドの内容が変化している場合、マイナスを放置することで損失が広がる可能性もあります。
判断に迷うときは、次のようなチェックポイントを参考にして、継続するか見直すかを冷静に考えてみましょう。
ファンドの運用方針が変更された
ファンドは、運用会社の方針によって中身が変わる場合があります。
たとえば、安定運用を目指していたファンドが急にリスクを取りにいくようになった場合、当初の目的とズレが生じるかもしれません。
定期的に運用レポートや目論見書を確認して、投資対象や運用スタンスに変更がないかをチェックすることが大切です。
気づかないうちに、自分の想定とは異なる方向へ資金が運用されているケースもあるため注意が必要です。
経費率(信託報酬など)が割高
投資信託を保有している間は、信託報酬などの運用コストがかかります。
ファンドによっては、内容が似ていても信託報酬に大きな差が出る場合があります。
年0.5%と1.5%では、長期的に見て大きなコスト差です。
費用対効果が見合っていないと感じたら、低コストの同種ファンドに乗り換える選択も視野に入れるとよいでしょう。
無理に放置せず、コスト面でも納得できるかを確認することが重要です。
投資対象が根本的に変わった
ファンド名が同じでも、投資している国や業種が大きく変わっている場合があります。
たとえば「世界株式型」とされていても、以前はアメリカ中心だったのに、今は新興国の割合が増えているなどの変化があります。
構成比率の変更によってリスクの方向性が変わってしまうと、思っていた動きと違う結果になりかねません。
定期的にファンドの中身を確認し、投資先の変化がないかチェックすることが大切です。
投資信託がマイナス…売るべき判断のポイント

投資信託を売却すべきかどうかは、目的や状況によって判断が分かれます。
こちらでは、売却を前向きに検討すべきケースを紹介します。
目的が変わった/必要な資金がある
投資の目的が変わった場合や資金が必要なときは、損が出ていても売却して問題ありません。
たとえば、教育費や住宅購入など、今すぐ現金が必要な場面では投資よりも優先すべき支出があります。
また、「老後資金のために積み立てていたけれど、事情が変わって5年以内に使う予定ができた」など、運用期間が短くなった場合も同様です。
運用の継続が目的から外れているなら、無理に持ち続ける必要はありません。
「投資は目的ありき」という原則に立ち返り、自分の状況に合った選択を優先しましょう。
大幅に資産配分が崩れている
資産全体のバランスが大きく崩れている場合は、一部を売却して調整する必要があります。
たとえば、株式の割合が当初よりも大きく増え、リスクが偏っている状態では下落時のダメージも大きくなりやすいです。
想定していた配分から外れたまま運用を続けると、自分のリスク許容度を超える恐れがあります。
リスクが偏った状態を改善するためには、資産の一部を売却し、債券や現金などに振り分ける対応が有効です。
運用の目的だけでなく、全体の構成にも目を向けることで、ブレの少ない投資が続けやすくなります。
感情的な判断で「損切り」しないためのチェックリスト
一時的な下落で不安になったときは、売る前に次の3点を確認してください。
・使う予定のない余裕資金で運用しているか
・下落が想定の範囲内か
上記を満たしていれば、損失が出ていても売る必要はありません。
逆に、これらを確認せずに「怖いから売る」となると、将来的に後悔する可能性が高くなります。
感情ではなく、目的と設計をもとに判断することが、長期投資ではとても重要です。
投資信託がマイナスでも冷静に続けるための3つの視点

売却が必要ではないと判断できても、評価額が下がったままでは不安がぬぐいきれないという人もいるでしょう。
こちらでは、積立投資を続ける際、気持ちを整理するための3つの視点を紹介します。
(1)「今ではなく10年後」を見る
長期で積み立てていく投資信託は、10年後の成長を目標にしています。
短期の値動きに反応して売却してしまうと、本来得られるはずだった利益を逃すかもしれません。
「今どうか」ではなく「この判断が10年後にどう影響するか」で考えると、見える景色が変わってきます。
積立投資の強みは、時間を味方につけられる点にあります。
評価額の変動を長期の流れの一部として受け入れることで、冷静に続けやすくなるはずです。
(2)市場は繰り返し回復してきた実績
過去の相場も、下がったまま終わったケースはほとんどありません。
リーマンショック、コロナショックといった急落も、数年で回復した実例があります。
ずっと右肩上がりではないにせよ、長期で見れば成長を続けているのが市場の特徴です。
一時的なマイナスに振り回されるより「これまでどう動いてきたか」を知ることが、安心材料になります。
目の前の数字だけで判断せず、背景にある実績にも目を向けてみましょう。
(3)定期的なリバランスで不安をコントロール
価格の変動が続いていると、不安が積もってくることもあるでしょう。
そんなときは、資産の配分を見直すだけでも気持ちが落ち着きやすくなります。
年に1回などのタイミングでリスクの偏りがないか確認し、必要に応じて調整するのがリバランスです。
配分を整えることで、判断に迷いが生まれにくくなり、運用にも前向きな感覚を持ちやすくなります。
Q&A|投資信託マイナス時によくある不安とその答え

まとめ

投資信託がマイナスになっても、すぐに売却を検討する必要はありません。
放置が有効な場面もあり、長期的な視点を持つことがポイントです。
ただし、「何もしない」ことが最善とは限らず、見直しや売却が必要になるケースもあります。
目的やリスク、運用状況をあらためて振り返り、自分に合った運用スタイルを整えてみてください。
不安に振り回されず、自分のペースで資産づくりを続けていきましょう。