老人扶養控除とは?
老人扶養控除とは、扶養者の所得税や住民税の節税効果を得られる扶養控除制度の1つです。
親や子供を扶養している人は、基本的に被扶養者の食費や生活費なども負担しており、金銭的負担を背負っています。
そのうえ、高齢者の被扶養者は、病院や介護などにもお金がかかることから、国は一定の金額を所得金額から控除し、金銭的負担を軽減させる取り組みを設けています。
これが老人扶養控除です。
なお要件を満たした扶養親族は、「老人扶養親族」と呼びます。
老人扶養控除を受けるメリット
老人扶養控除を受けるメリットは2点あげられます。
(1)扶養者が所得税の控除を受けられる
老人扶養控除を受けるメリットの一つ目は、扶養者が所得税の控除を受けられる点です。
老人扶養控除を受けることで扶養者は課税所得額から48万円が引かれます。
さらに老人扶養親族が「同居」の場合は、控除額が58万円に引き上げられるのです。
一般の控除対象扶養親族に対する所得税の控除額は38万円であるため、比較しても控除額が大きいという特徴があります。
(2)老人扶養親族の健康保険料の負担がなくなる
老人扶養親族の健康保険料の負担がなくなるメリットがあります。
75歳未満の老人扶養親族が定年後に働かない状況であったり、個人事業主やアルバイトとして働いている場合に扶養に入れば、国民健康保険料の支払いが免除されるという特徴があります。
老人扶養控除を受けるデメリット
一方で、老人扶養控除を受けるデメリットも2点あります。
(1)老人扶養親族の介護保険料が上がる
老人扶養親族の健康保険料の負担がなくなる一方で、介護保険料が上がる場合があります。
老人扶養親族となった方の介護保険料は、本人と世帯年収によって判定されます。
扶養者の年収が高くなるにつれて介護保険料も増額するため、場合によっては2倍以上の金額になるケースも少なくありません。
介護保険料は各自治体で定められているので、各自治体のホームページなどで確認し、事前に介護保険料と世帯年収からいくらになるのか想定しておきましょう。
(2)介護サービスの利用料が上がる可能性がある
老人扶養親族がすでに介護サービスを受けている場合、介護サービス利用料が上がる可能性があります。
老人扶養親族となった方の介護サービス利用料は、被扶養者と世帯年収に応じて変動するためです。
介護サービスの利用料が自己負担額の合計上限を超えると、超えた部分は払い戻しされる仕組みがあります。
しかし、自己負担額は世帯年収で計算されるため、払い戻しされず、そのままの金額を負担する可能性もあるため、十分注意が必要です。
老人扶養控除の条件
老人扶養控除を受けるためには、以下の4つの条件を満たす必要があります。
(2)年齢70歳以上であること
(3)老人扶養親族の所得が年間で48万円以下
(4)老人扶養親族が青色申告の事業専従者ではない
1つでも要件を満たさないと控除対象外となるため、1つずつ確認していきましょう。
(1)老人扶養親族と生計を一にしている
老人扶養親族と「生計が一緒」でなければ、老人扶養控除は受けられません。
ただし、ここでの生計が一緒とは、必ずしも同居を指しているわけではないのです。
別居の理由が勤務、修学、療養費等の都合であっても、帰省することが多かったり、生活費や療養費などの仕送りなどがある場合は、「生計を一にしていること」として取り扱われます。
つまり、親を施設などに入所させても、その療養費などを扶養者が負担している場合は認められます。
ただし、同居と別居では老人扶養控除額が変動するため注意してください。
(2)年齢70歳以上であること
被扶養者の年齢が70歳以上であることが条件です。
その年の12月31日現在の年齢が70歳以上であることを指します。
(3)老人扶養親族の所得が年間で48万円以下
老人扶養親族の所得金額が年間48万円以下である必要があります。
年金生活の被扶養者であれば、年金収入から公的年金等控除額を差し引いた金額が所得になります。
(4)老人扶養親族が青色申告の事業専従者ではない
老人扶養親族が青色申告の事業専従者ではないことが条件です。
青色申告の事業専従者となっていると、すでにその人の給与分を経費として見ていることになり、節税効果を得ています。
青色申告の節税効果は、老人扶養控除との併用ができないため注意が必要です。
老人扶養控除を受けるためには
老人扶養控除を受けるためには、年末調整や確定申告が必要です。
ここではそれぞれの方法について紹介します。
(1)年末調整で控除を受ける場合
会社員の方は、年末調整で老人扶養控除を受けます。
勤務先から配布される「給与所得者の扶養控除等申告書」に扶養親族の氏名等を記載し、勤務先に提出しましょう。
引用|《記載例》令和7年分 給与所得者の扶養控除等 (異動)申告書|国税庁
(2)確定申告で控除を受ける場合
個人事業主やフリーランスなどの方は、確定申告で扶養控除を適用します。
第二表の「配偶者や親族に関する事項」欄に、親族の名前等の情報を記載し、第一表に控除額を記載するだけです。
確定申告書が完成すれば、後は税務署に提出すれば控除が適用されます。
親を扶養の対象にする場合の注意点
ここでは親を扶養の対象にする場合の注意点を3点紹介します。
(2)兄弟で親を扶養に入れることはできない
(3)障害者控除に該当するかも確認する
1つずつ確認していきましょう。
(1)老人ホームへの入所も対象
被扶養者が老人ホームに入所している場合は、老人扶養控除の適用が受けられます。
ただし、被扶養者収入だけで入所費用を支払っている場合は適用外になります。
老人扶養控除はその療養費などを扶養者が負担している場合が認められるため、親が自立して生活をしていると「生計を一にする」に該当しなくなります。
また、老人ホームなどへ入所している場合には、その老人ホームが居所となり、「同居老親以外の者」として扱われ、控除額は48万円になります。
(2)兄弟で親を扶養に入れることはできない
兄弟で親を扶養に入れることはできないため注意が必要です。
老人扶養控除が使えるのは、一人だけです。
自分と兄で一人の親を扶養に入れることはできないため、兄弟がいる方はどちらが扶養にするか決めておきましょう。
(3)障害者控除に該当するかも確認する
扶養控除の対象になる親に障がいがある場合には、同時に障害者控除の対象になる可能性もあるため確認しておきましょう。
障害者控除は以下の3つに分かれ、同居している方が障害者であれば75万円控除されます。
障害者控除と扶養控除は併用できるため、最大133万円の所得控除を受けることができます。
被扶養者が障害者の場合はぜひ活用したい控除のため、確認しておきましょう。
まとめ
老人扶養控除とは、70歳以上の被扶養者がいる場合、58万円(同居老親以外の場合は48万円)の所得控除が受けられる制度です。
控除を受けるためには、老人扶養親族と生計を一にしていることや、年間所得が48万円以下など、さまざまな要件が設けられているため、事前に確認しておきましょう。
また、老人扶養控除の適用を受けるためには、年末調整や確定申告が必要です。
うっかり忘れる方も多いので、気を付けておきましょう、