投資用不動産の価格形成要因
投資用不動産の価格は2つの考え方の下で価格が決定されます。
特に、①の要因が投資用物件では強く影響を受けます。
②需給バランスによるもの
投資用不動産のうち、新築ワンルームマンションなどは、用地価格と建築費、そして販売コストを加味した積算法での価格形成の側面もありますが、投資用物件ですから積算価格に加えて、上記①の理論を加味して価格決定されます。
また、同じエリアに同じような中古物件が売りに出ている時などは、②の需給バランスが価格形成に影響を与えます。
需要>供給、ならば価格は上昇、その逆ならば価格は下落します。
不動産投資における資本収益率の考え方
の理論に基づけば、投資用物件の価格形成において、r(資本収益率)=Cap rate (投資家の期待利回り率)」が上下すれば投資用物件価格は上下します。
キャップレートの詳細解説は後ほどしますが、まず下記のグラフを見てください。
これは、主要都市における賃貸用ワンルーム物件とファミリー用物件のキャップレート(期待利回り)の推移を表しています(最新分は2022年10月調査データ)。
グラフをみると、リーマンショック前(2006~8年)には低くなっていましたが、その後リーマンショックにより急反発(キャップレートが高くなり)し、そして2012年以降下がり続けていることが分かります。
とくに2015年夏以降、東京においては、キャップレートが大きく低下したミニバブル期(2005年~2007年)の最低値(つまり価格的には最高値)よりも低くなっていることが分かります。
それを追いかけるように、全国的に低くなり、2023年1月現在の東京(城南)の本調査におけるキャップレートは4%を下回っています。
収益還元法による価格の算定
収益をあげるための不動産である投資用不動産の価格算定では、収益還元法を用いるのが一般的です。
不動産価格算定の収益還元法では
不動産価格(p)=収益(賃料―経費)(a)÷還元利回り(r)で計算します。
ここで、物件の賃料や経費(a)における賃料は、中古物件の場合は現状の賃料を、新築物件の場合は周辺の賃料を参考にして多少新築プレミアムを上乗せして計算します。
再度解説!これだけは、理解しておきたい!キャップレートについて
上記式における、還元利回り(r)は、何を用いればいいのでしょうか。
ここで、用いられるのがキャップレートと呼ばれるものです。
キャップレート(Capitalization Rate)とは、不動産投資における利回りの指標の一つで、期待利回り、還元利回りのことを指します。
このキャップレートは、不動産投資家(あるいは企業)がどれくらいの利回りを期待しているかを集計して算出したもので、利回りの基準として用いることが多い指標です。
上記式の左辺と右辺を逆にすれば、以下の公式が導けます。
キャップレートはエリア(立地)や投資不動産の種類(オフィスビル、ワンルームマンション、ファミリーマンション、商業施設など)によって変わってきます。
期待利回りの差は不動産投資におけるリスクの差
先ほどのグラフをもう一度見てください。
概ね同一条件だとして広島の物件に投資するならば、ファミリー物件で6.0%前後、ワンルームでは5.5%程度の利回りが欲しいと投資家が思っていることが分かります。
一方、東京(城南)ではワンルーム、ファミリーともに4.0%を下回る値となっています。
この状況は、投資家にとっては、たとえ利回りが低くても東京(城南)の物件を購入したいと思っているということであり、考え方を変えれば「東京(城南)の物件の方が、リスクが低いと思っている」とも言えます。
キャップレートの高い物件を購入し不動産投資すれば高い利回りを期待できそうですが、キャップレートが高いということはつまりリスクも高いということなのです。
利回りが低くても投資したい(あるいは高くても不動産を買いたい)と思っている人が増加していることをこのデータは示しています。
首都圏への区分マンション投資は、地方の富裕層の購入も多いのが現状です。
地価下落が止まりそうにない地方都市の不動産所有者が、それを手放しの資産の組み換えを行う目的で、都心の不動産を購入しているのです。
さらに、アジア各国の富裕層も参戦しており、こうしたことも不動産投資ブームに拍車をかけています。
期待利回りの推移を見ることで、現在の不動産投資市場の過熱感がよく分かります。
投資用不動産価格の判断基準を持とう
今回は、投資用不動産の価格形成について解説しました。
その中で特に、重要な役割を担うキャップレートについて解説しました。
投資用不動産の価格は、賃料と還元利回りで決まります。
この還元利回りに用いられる値がキャップレートです。
キャップレートが動けば価格が動く、つまり、キャップレートは「価格の判断基準となり得る」ということになります。
では、そのキャップレートはどのような要因で動くのか?については、かなりマニアックな内容も含みますので、別の回に解説することにしましょう。