ナスダック100は米国のハイテク企業に集中した指数

ナスダック100は、米国ナスダック市場に上場する企業のうち、金融業を除く時価総額上位100社で構成される株価指数です。
構成銘柄には、Apple・Microsoft・NVIDIAといった世界有数のテック企業が多く含まれており、IT・通信・ヘルスケアなどの成長が期待される分野に集中しているのが特徴です。
一般的な指数と比べると、製造・エネルギー・金融といった旧来型企業が含まれていないため、新しい技術やサービスが中心の構造となっています。
なお、名称が似ているため「ナスダック総合指数」と混同されることもあります。
ナスダック100は、時価総額の大きさや売上成長率などの基準に基づき選ばれた、主要企業で構成されています。
ナスダック100をおすすめしない5つの理由

ナスダック100は、成長性の高い指数として人気があります。
しかし、ネットやSNSでは「おすすめしない」との声もいくつかみられます。
なぜおすすめではないと言われるのか、その理由を以下で確認していきましょう。
(1)特定の銘柄・セクター依存で分散が効きにくい
ナスダック100は構成上、Apple・Microsoft・Amazon・Google(Alphabet)・Metaなど一部のテクノロジー企業への依存度が高く、全体の5割以上を上位10社が占めています。
そのため、仮にそのうち数社の業績や株価に悪影響が出た場合、指数全体が大きく揺さぶられるリスクがあります。
また、ITや通信など特定セクターに偏っているため、景気の悪化や金利の変動といった経済全体の動きが、セクター全体に一気に波及することも少なくありません。
S&P500のように多業種で構成される指数とは異なり、分散が効きにくいという弱点があることを理解しておく必要があります。
(2)為替変動でリターンがぶれやすい
ナスダック100は米ドル建て資産であるため、日本から投資する場合、常に為替の影響を受けます。
とくに円高局面では、米国株の価値が目減りし、せっかくの投資リターンが相殺されることもあります。
例えば、1ドル=150円で購入した商品が売却時に1ドル=130円になっていた場合、為替だけで約13%目減りする計算です。
加えて、ナスダック100では、為替変動の影響を抑える「為替ヘッジ」が付いていない商品が多く、為替レートの変動がそのまま損益に反映される仕組みです。
日本人投資家にとっては、「株価リスク」とは別に「通貨リスク」にも備える意識が求められます。
(3)価格変動が大きく、下落局面のダメージが大きい
ナスダック100の構成銘柄には、今後の成長が期待されるテクノロジー企業が多く含まれています。
こうした企業は将来性への期待が大きい分、投資家の思惑によって株価が上下しやすく、指数全体としても価格の変動幅(ボラティリティ)が大きくなりがちです。
過去にはITバブル崩壊、コロナショックや金利急上昇局面などで大幅な下落を経験しており、2022年には年間で約35%の下落となりました。

(2022年1月3日:16,501.77/2022年12月28日:10,679.34)
※仮に100万円を投資していた場合、1年で約65万円まで目減りする計算になります。
このような急激な値動きは、保有期間にかかわらず心理的な負担につながり、冷静な判断を妨げる原因にもなります。
引用|Yahoo!ファイナンス「NASDAQ‑100 (^NDX) 過去のデータ」
(4)配当が少なく、安定収益は期待しにくい
ナスダック100に含まれる企業の多くは、配当よりも利益を再投資に回す方針をとる成長志向です。
そのため、年間を通じて安定した配当収入(インカムゲイン)を期待するのは難しいのが現状です。
実際にQQQ(ナスダック100連動ETF)の配当利回りは0.49%で、S&P500連動型のVOO(1.17%)と比べても低水準です(2025年9月時点)。
高配当ETFや配当重視型のインデックスと比べると、ナスダック100は「定期的な現金収入を得たい」というニーズにはマッチしにくい側面があります。
(5)信託報酬が高めでコストパフォーマンスが落ちやすい
ナスダック100に連動する投資信託やETFは、他のインデックス商品と比較すると信託報酬(運用コスト)がやや高めに設定されている傾向があります。
例えば、ナスダック100連動型の「eMAXIS NASDAQ100(信託報酬0.2035%)」に対し、S&P500連動型の「eMAXIS Slim S&P500(0.0814%)」や全世界株式型の「オルカン(0.05775%)」は約3分の1〜4分の1程度と、コスト差が大きく開いています。
この差は、短期では気にならないかもしれません。
しかし、例えば元本300万円を年5%で20年間運用した場合、信託報酬0.2%の商品と0.1%の商品では、最終的な差額が約15万円になる試算もあります(概算)。
信託報酬の違いは、運用期間が長くなるほどリターンを押し下げる要因になりかねません。
引用|eMAXIS NASDAQ100、eMAXIS Slim S&P500、eMAXIS Slim 全世界株式(通称“オルカン”)
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ナスダック100が合う人・合わない人【タイプ別診断】

ナスダック100は高いリターンを期待できる指数ですが、すべての投資家に適しているとは限りません。
こちらでは、ナスダック100が「合う人」と「合わない人」の特徴を整理し、自分に向いているかどうかを判断するためのポイントを紹介します。
合う人|積極的にリターンを狙いたいタイプ
・長期投資で大きなリターンを狙いたい
・値動きがあっても冷静に判断できる
・他のインデックスと組み合わせて“攻め”の資産を持ちたい
・成長企業の成績に期待したい
ナスダック100にはAppleやNVIDIAをはじめ、世界的な成長企業が数多く含まれています。
短期的な上下動があっても慌てずに保有し続けられる人であれば、長期的なリターンを狙う手段として有効に機能します。
また、すでにS&P500や全世界株式などの「守り」の資産を持っている人が、「攻め」の要素を加える目的でも活用できます。
合わない人|安定や分散、計画性を重視するタイプ
・値動きが激しい商品にストレスを感じやすい
・幅広く分散された運用を重視したい
・安定した配当収入を得たい
・教育費や老後資金など、計画的に備えたい資金がある
ナスダック100はテクノロジー企業を中心に構成されており、特定セクターへの偏りが強いため、株価変動も大きくなりやすい傾向があります。
また、配当利回りは低めで、定期的な収入を得るのにはあまり適していません。
資産全体をバランスよく配分したい人や、元本の大きな減少に不安を感じやすい人には、他のインデックスのほうが合っている可能性があります。
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ナスダック100の代わりに検討したい投資商品3選

ナスダック100が自分に合わないと感じた方でも、投資そのものを諦める必要はありません。
自分の投資スタイルに合わせて、より適した方法を考えることで、無理なく資産形成を続けられます。
こちらでは、ナスダック100の代替として検討できる代表的な投資商品を3つ紹介します。
(1)分散性と安定性で選ぶならS&P500連動型
ナスダック100のようなテクノロジー偏重ではなく、情報技術・金融・ヘルスケア・消費財など幅広い業種が含まれているため、1つのセクターの不調による影響を受けにくい特徴があります。
また、一定の配当が見込める上に、商品によっては信託報酬(手数料)も低く抑えられているため、長期的に安定した運用を目指す人に向いています。
代表的な商品には「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」があり、低コストかつ人気の高いファンドとして知られています。
成長と安定のバランスを重視する方にとって、選択肢の1つとなるでしょう。
(2)世界経済の成長を取り込みたいなら全世界株式(オルカン)
特定の国やセクターに依存せず、各地域の経済規模や市場動向に応じて比率が調整されるため、世界全体の株式市場の動きにバランスよく対応できます。
代表的な商品には「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」があり、信託報酬が低く、長期投資の定番として人気です。
1本で地理的な分散ができ、一部の国や地域が不調でも全体でバランスを取りながら運用できるため、値動きが極端になりにくいのも特徴です。
こうした特性から、初心者から中級者まで幅広く選ばれています。
(3)安定収入を得たいなら高配当ETF
例えばVYM(バンガード米国高配当株式ETF)は配当利回り約2.5%、HDV(iシェアーズ高配当ETF)は約3.3%といった水準で、定期的な収入が見込める商品として人気があります。
引用|stockanalysis.com(2025年9月時点)
値動きの大きい商品は不安だが、投資をしながら現金収入も得たい人には、高配当ETFが適しています。
まとめ|ナスダック100は自分の投資スタイルで判断を

ナスダック100は成長株が中心の株価指数ですが、銘柄の偏りや値動きの大きさなど、好みが分かれる面もあります。
「リスクを取ってでもリターンを狙いたい人」には魅力的な一方、安定性を重視する人には他の商品が合っているかもしれません。
大切なのは、流行に流されず、自分の運用スタイルや目的に照らして冷静に判断することが大切です。
本記事が皆さまの判断の助けとなれば幸いです。