最新の人口移動報告
24年1月30日に、総務省統計局から住民基本台帳の基づく23年年間の「人口移動報告」が公表されました。
これによれば、2023年1年間に都道府県を跨ぐ移動をした方(日本人+外国人)は、254万4639人で前年からは-0.3%減りました。
人口の増減は、自然増減(出生数と死亡数の差)と社会増減(移動による出入りの差=転入者数と転出者数の差)により決まりますが、このうち社会増減の状況を示したのがこの「人口移動報告」です。
転入者が多いのは圧倒的に首都圏
23年の1年間に転入者が最も多かったのは東京都で45万4133人、次に神奈川県23万6543人、以下、埼玉県、大阪府、千葉県、愛知県、福岡県と続きます。
この7都府県が10万人以上の転入者数で、全国の転入数の56.9%をしめています。
転入者数は10都府県で増加、増加数では東京都がトップ、増加率では沖縄県が+4.5%でトップでした。
トップ7に首都圏(一都三県)全てが入り、首都圏への人口集中の様子がうかがえます。
人口に対する転入者の割合では、東京都の23年11月1日時点の人口は約1,411万人でしたので、転入者割合は3.2%となっており、神奈川県、埼玉県、千葉県を含めて首都圏では概ね2%台、つまり都県内人口の2%以上はその年に移動してきた転入者ということになります。
東京都の編入超過数は昨年の1.8倍!
次に、転入者から転出者を引いた転入超過数(引き算がプラスの場合は転入超過、マイナスの場合は転出超過です)について見てみましょう。
23年の年間で転入超過だったのは、全国47都道府県のうち、東京都・神奈川県・大阪府・埼玉県・千葉県・滋賀県・福岡県の7都府県で、これは昨年と同数でした。
このうち、東京都、神奈川県、大阪府では、転入超過数が増え、東京都では6万8,285人の転入超過、昨年よりも3万262人増、これは1.8倍になっています。転入超過数はコロナ禍で、一時減少しましたが、22年にはコロナ禍前に戻り、23年は超える水準となりました。
振り返れば、コロナ禍でリモートワークが進み、都市部から地方・郊外への移住がちょっとしたブームとなり、21年には東京23区では比較可能な2014年以降初めて転出超過(転入者―転出者がマイナス)になりましたが、22年にはコロナ禍前の状況に戻りました。
地方移住は短期間のブームだったと言えそうです。
移動の理由は就職と進学
移動者を5歳刻みの階級別で見れば、20~24歳が58万2,420人で最も多く、つぎに25~29歳が52万7960人、30~34歳が31万518人となっています。
最も移動が少ないのは、中学・高校生の年代で、その後20代・30代がピークとなり、その後はなだらかに減少し、65歳を超えるとかなりその数は少なくなります。
こうしてみれば、都道府県を跨ぐ移動は、進学や就職、転職での移動が大半だと思われます。
3大都市圏は全て転入超過か?
3大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)全体では10万7,635人の転入超過となり昨年よりも2万6,681人増えています。
大都市圏に人口が集中しているように見えますが、各圏別でみれば、転入超過は東京圏だけで、大阪圏、名古屋圏はともに転出超過となっています。
東京圏は12万6615人の転入超過(前年比+2万6,996人)、大阪圏は559人の転出超過(前年比-1,788人)、名古屋圏は1万8,321人の転出超過(前年比+2103人)となっており、東京圏(≒首都圏)だけに集中していることが分かります。
長期的な傾向をみれば、昭和30年代、40年代(1955年~75年)は都市への人口流入が進み、地方農村部から都市部への人口移動が進みました。
この時代は、3大都市圏全てが、同じような傾向で転入超過が続いていました。
しかし、この傾向はオイルショック前後からなくなり、大都市部の中でもとりわけ東京圏への人口移動に集中する傾向が続いています。
特に1990年代後半からは、地方圏から大阪圏や名古屋圏の流入もありますが、それ以上に大阪圏や名古屋圏から東京圏への転出が増えている、ということが3大都市圏の中で東京圏だけに集中している要因でしょう。
まとめ
就職や進学により都道府県を跨いだ移動を行う場合、これらの方々の多くは移動先では賃貸住宅に住みます。
こうしたことから、人口移動の状況は、賃貸住宅需要動向がよく分かるデータと言えるでしょう。