米国債は買ってはいけないと言われる理由
米国債は買ってはいけないと言われる理由には、以下のリスクやデメリットが挙げられるためです。
(2)金利変動リスクがある
(3)為替変動リスクがある
(4)信用リスクがある
(5)インフレに弱い
(6)株式と比較して利回りが低い
1つずつ紹介します。
(1)価格変動リスクがある
米国債には、債券を途中で売却した場合、売却可能金額が購入金額を下回る価格変動リスクが生じます。
償還前に売却しようとすると、その時の金利情勢によって債券価格は変動するため、場合によっては元本割れする可能性があるということです。
債券は市場金利が上昇すると価格が下落し、市場金利が下落すると価格が上がる傾向にあります。
つまり金利が上昇すると、償還までの期間が長いほど影響を受けやすくなるということです。
ただし債券は償還時に100%で償還されるため、満期償還が近づくにつれて利益は安定します。
(2)金利変動リスクがある
債券価格は金利に大きく密接な関係にあるため、金利が上下することにより価値も大きく変わる金利変動リスクが伴います。
米国の金利はさまざまな要因で変動しますが、最も大きな影響を与えるのは1年間で8回行われるFOMC(連邦公開市場委員会)で決定されるFF(フェデラル・ファンド)レートです。
FFレートが引き上げられれば市場金利は上昇し、米国債の価格は下落する可能性が高まります。
その他にもGDPやCPI(消費者物価指数)などの指標、中東情勢の緊迫状態など、さまざまな要因によって金利は左右されます。
これらのファンダメンタルを分析する能力が求められるため、初心者の方には難易度が高いことから米国債は買ってはいけないという方もいらっしゃいます。
(3)為替変動リスクがある
為替変動リスクとは、日本円と外国の為替相場の変動に伴って、資産の価値も変動することです。
米国債に投資する際は、日本円を米ドルに交換しなければいけません。
2011年の時は1ドル78円でしたが、2024年10月現在では、1ドル148円と二倍近い円安が続いています。
つまり100ドル分の米国債を購入する場合、78,000円だったものが、現在では148,000円も必要であるということです。
償還時には10ドルの利益が出ていたとしても、1ドル100円になっていた場合は以下のとおり損失が発生します。
・償還時(1ドル100円):100ドル+10ドル=110ドル=110,000円
・損失:110,000円-148,000円=380,000円
このように、米国債の投資では、為替リスクがあることに注意しましょう。
(4)信用リスクがある
米国債は、日本国債と比較して信用リスクが低いです。
信用リスクとは、債券を発行する国や企業の信用度が低下した際、利子や元本の償還が受け取れなくなるリスクのことです。
日本より信用格付けは高いですが、米国債の利金、償還金の支払に危機を及ぼす事象が近年良く見受けられます。
これらの要因としては、米国の法律で債務上限の法案が通らないと、新たな米国債を発行することができないことが挙げられます。
特に2024年11月には、アメリカ大統領選が控えています。
民主党と共和党の争いにより、債務上限法案の成立が遅れると、一時的に利金、償還金の支払が止まる恐れがあります。
(5)インフレに弱い
米国債はインフレに弱いという特徴があります。
インフレ(インフレーション)とは物の値段が上がることです。
インフレが発生する米国では、お金を手元に置いているだけでは実質的に目減りすることになります。
米国のインフレは、2024年時点で平均約3%です。
つまり100ドルで購入できた商品が、1年後に103ドル必要になるということです。
金利よりインフレ率の方が高くなるケースも少なくないため、米国債の利益が増えても、実質的には目減りすることも多いです。
(6)株式と比較して利回りが低い
米国債は株式と比較して利回りが低いです。
安全資産として投資家からの信頼度も高いですが、さまざまなリスクがあるうえ、利回りも4%前後が平均です。
一方株式であれば、ハイリスクな投資であるものの10%以上の利回り銘柄も多く、大きなリターンが見込めます。
そのため米国債を購入するより、米国株に投資していたほうが良いと考える人も少なくありません。
米国債券の魅力は?
米国債は買ってはいけないという意見がありますが、もちろん米国債ならではの魅力もあります。
ここでは以下の3点について紹介します。
(2)格付け機関による信用格付けが高い
(3)流動性が高い
米国債への投資をするか悩んでいる方は、1つずつ確認しておきましょう。
(1)日本国債より金利が高い
米国債は日本国債より金利が高いという特徴があります。
以下の表は、各国の10年国債の金利をまとめたものです。(2024年10月時点)
日本国債は各国と比較して金利が低いことがわかります。
米国債は日本国債と比較して4倍近い金利差があるため、収益性においては大きなメリットでもあります。
(2)格付け機関による信用格付けが高い
米国債は、格付け機関による信用格付けが高い傾向にあります。
信用格付けとは、債券を発行する国や企業の信用力や支払能力などを総合的に分析してランク付けしたものです。
格付けするのは民間の企業ですが、投資する際の信用リスクを図る指標として、多くの投資家が着目している項目でもあります。
AAA | 債務を履行する能力が極めて高い |
AA | 債務を履行する能力が非常に高い |
A | 債務を履行する能力は高いが、事業環境や経済状況の悪化の影響をやや受けやすい |
BBB | 務を履行する能力は十分であるが、事業環境や経済状況の悪化の影響を受けやすい |
BB | 債務者は短期的により低い格付けの債務者ほど脆弱ではないが、債務履行能力が不十分になるリスクがある |
B | 事業環境や経済環境の悪化で、債務履行能力が不十分となる可能性が高い |
CCC | 債務不履行となる可能性を持ち、債務履行能力は財務経済状況に依存 |
CC | 債務不履行となる可能性が非常に高い |
C | 現在、破産法に基づく申請中だが、債務に基づく支払いは継続中 |
R | 財務上の問題が理由で規制当局の監督下に置かれている債務者に付与される格付け |
SD・D | 債務不履行に陥っている |
※AAからCCCまでの格付けには、プラス(+)記号またはマイナス(-)記号が付与されることがあり、各格付けの中での相対的な強さを表します。
米国債には、S&P「AA+」、Moody’s「Aaa」と信用度が高い評価が得られているため、安心して運用することができます。
Moody’sによると、Aaaの発行体が10年後に債務不履行になる確率は0.01%と発表しています。
もちろん0%ではないものの、非常に低い確率であることから、償還時まで保有した場合は元本割れする可能性は低いということがわかります。
なお、信用格付けのランクは各社によって評価が異なります。
投資対象としてはBBB以上が適格とされているため、銘柄を選定する際は各社の信用格付けをチェックしてみましょう。
(3)流動性が高い
米国債は流動性が高いため、国内の証券会社で取りそろえている商品の数が多いという特徴があります。
日本国内でも売買することが容易です。
信用度が低い新興国の債券は、金利が高い分債務不履行になるリスクも高いため、売りたくても購入者が見つからないリスクが伴います。
一方米国債は、需要と供給が均衡しているため、流動性が高く価格変動も穏やかという特徴もあることから、基軸通貨でドル資産を持ちたいという投資家に向いています。
米国債に向いている人は
米国債を買ってはいけないという意見と、米国債の魅力を紹介しましたが、結局どのような人が向いているのでしょうか。
ここでは米国債に向いている人の特徴を3つ紹介します。
(2)安定した利回りを求める人
(3)多少リスクがあっても利益を狙いたい人
特徴に該当しているかチェックしてみましょう。
(1)安全性の高い資産を持ちたい人
米国債は信用格付けも高く、元本割れする可能性も低いことから安全性のある資産を持ちたい方におすすめです。
日本国債より米国債の方が信用格付けも高位置にあるため、安全性が高いという特徴があります。
保有する資産の安全性を重視する人に、米国債はおすすめです。
(2)安定した利回りを求める人
米国債は安定した利回りを求める人におすすめです。
先程もお伝えしたとおり、世界各国と比較しても金利が高いため、利益も安定します。
もちろん米国債であっても金利は大きく変動するため、大きな利益にすることができるとは限りません。
しかし、金利4%の米国債を購入すれば、半年ごとに2%の利息が得られ、償還時まで保有しておけば、元本も戻ってきます。
途中売却する予定がない方には、安定性のある運用ができることでしょう。
(3)多少リスクがあっても利益を狙いたい人
米国債には価格変動リスクや為替変動リスクなどがありますが、それらのリスクを踏まえても利益を狙いたい人におすすめです。
米国債は安全性が高く、収益性も大きく寝られます。
しかし、金利情勢や為替によって、大きな利益につながらない可能性もあることでしょう。
もちろん償還時まで保有すれば元本割れする可能性は低くなりますが、円安時に購入したものの、円高になった場合は資産目減りなどが発生する場合があります。
それらを加味しても利益を狙いたい人は、米国債は向いている投資先の1つです。
米国債はいつのタイミングで買うのがベスト?
米国債を購入するタイミングは以下の4項目に注目しましょう。
(2)政治・経済が不安定の時
(3)インフレ率が低いとき
(4)ドル安・円高
1つずつ紹介します。
(1)金利が低い時期、もしくは下落する局面
金利が低ければ債券価格は上昇する動きになります。
そのため金利が低い時や下落する時は購入する1つのタイミングです。
(2)政治・経済が不安定の時
政治的な不確実性が現れた時や経済が不安定な時は、米国債の購入タイミングです。
米国債は値崩れしない安全資産のため、他の投資家が米国債を購入する可能性が高まるためです。
(3)インフレ率が低いとき
インフレが加速すると、実質的なリターンが低下することになるため、インフレ率が低いときに購入するのがおすすめです。
(4)ドル安・円高
為替レートも米国債の買い時に影響を与えるため、ドル安・円高の状態は米国債を購入するタイミングです。
日米金利差が縮小すると、ドル安・円高になる傾向にあるため、金融政策などをチェックしておきましょう。
米国債への投資方法
ここでは米国債の投資方法について紹介します。
投資方法は、大きく分けて2種類あります。
(1)証券会社や銀行から既発債券を買う
最も一般的なのは、証券会社や銀行などの金融機関を通じて、既発債券を購入する方法です。
米国債を取り扱っている証券会社や銀行などで口座開設し、資金を入金して既に発行されている既存債権を購入する流れです。
既存債権とは真逆で新しく発行された債権を新発債と呼びます。
どちらが優位というわけではありませんが、米国債で新発債はほとんど市場に出回らないため、既存債券から選んでいきましょう。
(2)証券会社や銀行から投資信託で買う
証券会社や銀行から投資信託で購入して始める方法もあります。
もちろん米国債を取り扱っている証券会社や銀行で口座開設しなければいけません。
しかし、投資信託であればプロのファンドマネージャーが選定した銘柄へ投資することでき、運用を一任することが可能です。
米国債初心者の方は、まずは投資信託から始めてみると良いでしょう。
まとめ
米国債を買ってはいけないという理由には、価格変動リスクや為替変動リスク、インフレに弱いなど、円を扱う日本人には馴染みのないリスクが伴うためです。
しかし、日本国債より利回りも良く、信用格付けも高いことから安定した収益を得られる投資方法でもあります。
とはいえ、米国債を始めたからと言って必ず利益が出るとは言い切れません。
運用を始める前に、米国債を含めた投資戦略などを決めておくことが大切です。
投資信託で専門家に任せるといっても、元本が保証されているわけではないため、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談するところから始めましょう。
ココザスは、ファイナンシャルプランナーとして投資や資産運用を始める方のサポートを行っております。
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相談料も何度でも無料なため、これから米国債を始めようと検討している方や、資産運用でうまくいっていない方は、ぜひ一度ご相談くださいませ。