「長期」「積立」「分散」とは?

投資の基本としてよく耳にする「長期」「積立」「分散」という3つのキーワード。これは、投資を安定的に続けていくための「三原則」とも言える考え方です。
投資経験がない方でも、この3つを意識することで、大きなリスクを避けながら資産を育てることができます。ここでは、それぞれの意味と特徴について詳しく解説します。
長期投資とは
長期投資とは、株式や投資信託などの金融商品を10年や20年といった長期間にわたって保有する投資スタイルのことです。
短期的な値動きには一喜一憂せず、企業の成長や経済の拡大による資産価値の上昇をゆっくりと待つという考え方です。
長期で保有することで、複利の効果(利益が利益を生む仕組み)を最大限に活かすことができるため、時間を味方にした堅実な資産形成が可能になります。
積立投資とは
積立投資とは、毎月決まった金額を定期的に投資する方法です。例えば、毎月1万円ずつ投資信託を購入するようなスタイルがこれに当たります。
この方法の大きなメリットは、「ドルコスト平均法」を自然に活用できることです。
ドルコスト平均法とは、株式や投資信託、外貨預金などのように価格変動がある商品を毎月同じ時期に(定期的に)、一定金額分ずつ購入する投資方法です。例えば1年に1度、100万円を一括で投資するより、12回に分けて投資するということです。
価格が高いときには少なく、価格が安いときには多く買うことになるため、購入価格が平均化され、高値づかみのリスクを抑えることができます。また、少額からでも始められるため、投資初心者にとって非常に始めやすい方法です。
分散投資とは
分散投資とは、投資対象を一つに絞らず、複数の資産に分けて投資する方法です。
例えば、国内株式・外国株式・債券・不動産・金(ゴールド)など、異なる性質の資産を組み合わせることで、特定の市場や銘柄の影響を受けにくくなります。
分散投資はリスクを「一点集中」させずに「分ける」ことによって、全体としての損失を抑えるというものです。
たとえ一部の投資先が下がっても、他の投資先がカバーしてくれることがあるため、資産全体の安定性が高まる特徴があります。
なぜ投資の三原則が必要なのか

投資をする上で三原則を守ることは必須です。ここでは三原則が必要と言われている3つの理由を解説します。
三原則が必要と言われる3つの理由
- リスクを最小限にするため
- 堅実に増やすため
- 値動きに一喜一憂しないため
これらを理解することでより良い投資をスタートすることができるので、ひとつずつ確認しておきましょう。
リスクを最小限にするため
投資の三原則が必要な理由の一つとしては、リスクを最小限にするためです。
投資には、価格の変動リスク(値下がり)、為替リスク、金利リスクなど、さまざまなリスクが存在します。
しかし、「分散投資」によって投資先を複数に分ければ、一つの資産が大きく値下がりしても、他の資産でカバーできる可能性が高くなります。
また、「長期投資」を意識することで、一時的な下落に慌てる必要がなくなり、時間の経過とともに価格が回復するチャンスも得られます。これにより、リスクをコントロールしながら安定した運用ができるため必要と考えられています。
堅実に増やすため
資金を堅実に増やすために、投資の三原則が必要と考えられています。
FXや仮想通貨など、短期間で大きな利益を狙うような投資は、その分リスクも高くなります。
一方で、三原則を守った投資は、増えるまで時間を要するケースが多いため、大きな利益は狙いにくいかもしれません。
しかし、長期的に見れば安定して資産を増やしていける可能性が高いです。
積立投資では毎月決まった金額を投資するため、生活に無理のない範囲で続けやすく、複利の力を活かすことで、コツコツと堅実な資産形成ができます。
投資はいかに資産を守りながら増やしていくかが大切なため、投資の三原則を考慮して運用する必要があります。
値動きに一喜一憂しないため
日々の値動きに一喜一憂しないため、投資の三原則が必要です。
投資を始めたばかりの頃は、価格の上下に敏感になってしまいがちです。資産が増えれば当然うれしいですが、もちろん減る可能性も0ではありません。
日々の値動きに一喜一憂していると、精神的なストレスが大きくなり、冷静な判断ができなくなってしまいます。
「長期」「積立」「分散」を意識した投資スタイルであれば、短期的な上下に振り回されにくくなり、感情に左右されず、落ち着いて投資を続けることが可能になります。結果として、投資の継続がしやすくなり、将来の資産形成にもつながるのです。
長期投資のメリット

長く持ち続けることで、時間を味方につけるのが「長期投資」です。
すぐに利益を出そうと焦るのではなく、じっくりと資産を育てるスタイルだからこそ得られるメリットがあります。ここでは、長期投資がもたらす代表的な3つの効果を紹介します。
長期投資がもたらす3つの効果
- 複利の効果が得られる
- 一時的な値動きに左右されにくい
- 心理的なストレスが少なくなる
ひとつずつ確認しておきましょう。
複利の効果が得られる
長期投資は複利の効果が得られるメリットがあります。
複利とは、「利益が利益を生む仕組み」のことです。例えば100万円を年利5%で運用した場合、1年後には105万円になります。さらに翌年はこの105万円に対して5%の利息がつくため、増える金額も大きくなっていきます。
この複利を長い期間続けることで、最初に投資した金額よりも大きな資産が育っていくのです。特に10年、20年というスパンで投資を続けたときに、資産を大きく増やすことが可能です。
一時的な値動きに左右されにくい
あらかじめ長い目で運用しておけば一時的な値動きに左右されず、精神的にも安定します。
市場には短期的な価格変動がつきものです。株価や為替レートは、数日〜数か月の間に大きく動くこともあります。とはいえ、長期で見ると経済は成長する傾向があり、価格も回復しやすいのが一般的です。
長期投資をしていると、そうした一時的な下落に対して過度に反応せず、冷静に運用を続けることができます。
心理的なストレスが少なくなる
長期投資は心理的なストレスを抑えることができます。
短期トレードでは、常に相場をチェックして売買のタイミングを考える必要があり、精神的なプレッシャーが大きくなりがちです。
しかし長期投資は「基本的に放置しておくだけ」なので、日々の値動きに一喜一憂せずに済みます。感情に左右されにくくなり、投資に対するストレスも軽減されます。
もちろん資金が大きくマイナスになると、いくら長期投資でもストレスや不安を抱くことにもなりかねないので、無理のない資金で運用することもポイントです。
積立投資のメリット

毎月コツコツと一定額を投資していく「積立投資」は、初心者に特におすすめの方法です。
無理なく始められ、習慣化しやすいのが最大の魅力でありますが、その他にもメリットが3点挙げられます。
積立投資のメリット
- ドルコスト平均法で高値づかみを防げる
- 少額から始められて、続けやすい
- 感情に左右されにくくなる
ひとつずつ紹介します。
ドルコスト平均法で高値づかみを防げる
積立投資にはドルコスト平均法によって高値づかみを防げるメリットがあります。
価格が高いときは少ない口数しか買えませんが、価格が安いときには多くの口数を購入できます。これにより、購入単価が平準化され、結果としてリスクを抑えることが可能です。
少額から始められて、続けやすい
積立投資の多くは、月1,000円や5,000円といった少額から始められます。証券会社によっては100円から始められるケースも多くなりました。
まとまった資金が不要なので、収入が少ない方や投資初心者でも無理なくスタートできます。
しかも銀行口座から自動引き落としが設定できることが多く、手間をかけずに継続できる点が大きなメリットです。
感情に左右されにくくなる
積立投資は感情に左右されにくくなるメリットがあります。「今は上がってるから買わない方がいいかも」「今下がってるけどどうしよう」など、投資では感情が判断を狂わせがちです。
しかし積立投資では、自動で買い付けが行われるため、自分の感情や相場のノイズに左右されずに続けることができるのです。
分散投資のメリット

投資は「ひとつに集中しない」のが基本であり、リスクを抑えるためには「分散」がカギになります。
そんな分散投資がなぜ重要なのか、その理由を紹介します。
分散投資のメリット
- リスクを抑えられる
- 安定したリターンが期待できる
- どんな相場でも対応しやすくなる
ひとつずつ確認しておきましょう。
リスクを抑えられる
分散投資は損失リスクを最小限に抑えることができます。
1つの資産に集中して投資してしまうと、その市場が大きく下がったときに資産全体が大きく目減りしてしまいます。
しかし、株・債券・不動産・外国資産などに分けて投資することで、リスクを分散させることができるため、全体としての損失額を抑えることができます。
安定したリターンが期待できる
分散投資は損失リスクを抑えるだけでなく、安定したリターンにも期待できるメリットがあります。
例えば、株式市場が不調なときでも債券が好調だったり、国内市場が下落していても海外市場が好調なこともあります。
このように異なる値動きをする資産を組み合わせることで、トータルでは比較的安定した収益が見込めるのです。資産全体でのブレを小さくし、計画的な運用がしやすくなります。
どんな相場でも対応しやすくなる
景気が良い時期・悪い時期、インフレ・デフレなど、経済状況によって強い資産は異なりますが分散投資をしておけば、どんな相場環境でも一部の資産が補ってくれるため、柔軟に対応できます。
もちろん適材適所に対処が求められることもありますが、分散投資で長期で資産を守り、増やすために非常に効果的な戦略となるでしょう。
長期・積立・分散に向いている投資方法は?
長期・積立・分散に向いている投資方法を気になる方も多いことでしょう。ここでは代表的な3つの投資方法を紹介します。
代表的な3つの投資方法
- NISA
- iDeCo
- 投資信託
ひとつずつ確認しておきましょう。
NISA
NISA(少額投資非課税制度)は、投資初心者にもやさしい制度として多くの支持を集めています。
通常、上場株式や投資信託から生じた譲渡益・分配金には約20.315%(所得税・住民税含む)の税金が課されますが、NISA口座内での取引であれば、この税負担が完全に免除されます。
これは長期的に資産を形成するうえで、複利効果を最大化する大きな要因となります。利益を再投資することで得られる追加リターンを、税金によって目減りさせることなく維持できるからです。
NISAでは、毎月定額で投資を行う積立形式を採用することができ、ドルコスト平均法を取り入れることが可能です。価格変動のリスクを平準化し、高値づかみを防ぎながら、着実に資産を積み上げていけるのです。
また、長期保有によって一時的な相場変動リスクを低減することができるため、短期的なノイズに振り回されにくく、安定した運用が期待できます。
実際に、金融庁が平成29年に発表した資料では、「つみたてNISAについて」を20年間運用した場合、年利2〜8%程度に収束するというデータが示されており、長期的に見れば安定したリターンが期待できるとされています。
さらに、長期投資には時間を味方につける効果もあります。運用期間が長くなるほど、短期的な価格の上下が平均化されるため、元本割れのリスクが大幅に下がるのです。
加えて、複数の資産に分散投資することで、さらなるリスクの軽減もできるでしょう。
現在のNISAでは、「つみたて投資枠(年間120万円)」と「成長投資枠(年間240万円)」の2種類の非課税投資枠が用意されており、合計で年間360万円まで非課税投資が可能です。
つまり投資スタイルや資金力に応じて柔軟な資産運用戦略を組むことができます。
iDeCo
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、個人が自分で掛金を拠出し、老後資金を積み立てるための年金制度です。
自分自身で毎月掛金を積み立てて老後資金を準備するための年金制度です。加入は任意で、国が用意した私的年金制度の一つです。
毎月の掛金は全額が所得控除の対象となるため、運用することで節税効果が得られる点が魅力です。また、NISAと同様に運用益も非課税となります。
iDeCoの掛金には、職業や勤務形態によって上限が設定されています。以下に、職業ごとの掛金上限をまとめました。

会社員・公務員の方であれば、月々最大23,000円まで掛金を拠出できるため、投資の手段として活用しやすいです。
また、企業年金連合会が発表した確定拠出年金に関する実態調査|統計資料によると以下の画像のとおり2022年度の利回りは1.8%が平均となります。
上記の図を見て分かるとおり、元本割れ(0%以下)している割合は4.2%ほどであるため、比較的リスクを抑えて始められる資産形成方法でもあります。
ただし、iDeCoは原則として60歳まで引き出しができないため、途中で現金化できないという制約があるため、「緊急の資金ニーズには使えない」という点は理解しておく必要があるでしょう。
ただし、現金化できないからこそ、老後のために確実に積み立てることも可能という特徴が挙げられます。
投資信託
投資信託(ファンド)は、複数の投資家から集めたお金を専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券などに分散投資し、運用してくれる金融商品です。
自分で個別の株を選んだり、経済動向を分析したりすることなく、プロに運用を任せられる特徴があります。
投資信託は証券会社によっては異なりますが、100円から投資可能な商品もあり、「投資は初めて」という方でも無理なくスタートできます。
投資信託は「積立投資」と非常に相性が良いです。毎月一定額を自動で購入していくことで、ドルコスト平均法が働き、購入価格の平準化が期待できます。実際の資産運用はプロの運用会社が担当してくれるため、初心者にとっては安心できるでしょう。
ただし、投資信託も元本保証ではなく、市場の変動リスクがあり、「専門家に任せているから損はしない」と思い込みすぎるのは危険です。
公務員として堅実に資産を増やしていくためにも、リスクを理解したうえで、分散投資や長期目線での運用を心がけることが大切です。
投資の三原則の正しい知識を身に付けための注意点

投資の三原則は正しい知識で身に付けなければいけません。どれか一つでも誤って理解しておくと、後々大きな損失にもつながりかねないことでしょう。
ここでは、投資の三原則の正しい知識を身に付ける際の注意点を3つ紹介します。
3つの注意点
- 独学では捉え方が変わる可能性もある
- 三原則の他にも資金管理が必要
- 専門家に相談してから投資を始める
ひとつずつ確認して正しい知識を身に付けましょう。
独学では捉え方が変わる可能性もある
投資の三原則を独学で学ぼうとすると捉え方が変わる可能性もあるため注意しなければいけません。
ネットで簡単に調べられる時代である一方で、投資は情報が多岐にわたり、内容も日々変化します。独学で学ぶ場合、情報源や解釈の違いにより三原則の捉え方が偏ったり誤解を招くこともあるでしょう。
例えば、「長期投資」といってもどのくらいの期間を指すかは人によって異なり、積立のペースや分散の範囲についても考え方が分かれます。
正しい知識を身につけるためには、信頼できる書籍や専門家の意見を参照し、常に情報のアップデートを心がけることが重要です。
三原則の他にも資金管理が必要
投資の三原則以外にも資金管理を理解しておく必要があります。
投資における資金管理とは、「運用できる資金」と「許容できる損失額」のことを管理することです。
資金管理を怠ると、無理な金額で運用して多額の損失が生じたり、生活に支障をきたすなど思わぬ損失で資産形成が破綻するリスクが高まります。
三原則はあくまで「どう運用するか」の枠組みであり、資金の入口から出口までトータルに計画を立てることが不可欠なため、無理のない金額であるか常にチェックして運用しましょう。
専門家に相談してから投資を始める
特に投資初心者や自信がない方は、独断で判断せずファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめします。
投資の三原則を理解したつもりでも、実際に投資を始めてみると値動きに翻弄されたり、すぐに利益確定される方も多く見受けられます。
投資はリスクを伴うため、十分な理解を深めないまま始めると、すぐに資金が無くなり投資の世界から退場することにもなるでしょう。
さらに投資に自信がないと投資詐欺などの被害に遭うことにもなりかねないため、独学で学ぶのではなく、専門家に相談してから始めることが大切です。
ココザスはファイナンシャルプランナーとして投資や資産運用のサポートを行っております。また、お客様の資産状況や家族構成、将来的なライフプランから適切な投資計画のアドバイスもしています。
さらに余剰金作りのための、家計の見直しから保険やローンなどについての相談も承っておりますので、ぜひ一度ご相談下さいませ。
まとめ

投資の三原則である「長期・積立・分散」は、資産を無理なく着実に増やすための基本かつ重要な考え方です。
これらを意識した運用を続けることで、リスクを抑えながら安定的に資産形成が可能となり、短期的な値動きに惑わされず冷静な判断ができるようになります。
将来の豊かな生活を目指すなら、まずはこの三原則を理解し、実践することから始めましょう。
ただし、誤った知識を身に付けてしまうと、投資の入口から失敗してしまうことにもなりかねないため、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してから始めることをおすすめします。

この記事の監修者

ココザス株式会社|コンサルタント|FP
持丸 雅士
Masashi Mochimaru
突如起きた父親の入院・手術をきっかけにお金に対する不安を感じ、ファイナンシャル・プランナーの勉強を始める。
ファイナンシャルプランナー技能士2級及びAFP認定を取得後、お金に対する正しい知識・情報を世の中に伝えていきたいと思い、個人向け資産形成コンサルティング事業を展開しているココザス株式会社へ入社。
資産形成で不安を抱えているお客様の視点に立ち、年間800人以上の資産形成のサポートを行っている。
また現在はセミナー講師として講演会を行うなど、正しいお金の知識を広げる活動にも取り組んでいる。