はじめに|昔のNISA口座、ほったらかしにしていませんか?

制度開始から数年が経ち、旧NISAで購入した商品をそのまま保有し続けている方もいるのではないでしょうか。
NISAには非課税期間が設定されており、期限を過ぎると自動的に課税口座に移される仕組みです。
今後の資産運用に影響を及ぼす可能性があるため、一度状況を確認しておくことが重要です。
次の章では、旧NISAを放置した場合に生じるリスクを整理していきます。
旧NISAを買い直さないとどうなる?そのままだと損をする理由

旧NISAには非課税期間が設定されており、期限を過ぎると資産は課税対象となる「特定口座」へ自動的に移されます。
特定口座では、売却益や配当に対して約20%の税金が発生するため、非課税のメリットはなくなります。
たとえば、10万円の売却益が出た場合、約2万円が税金として引かれる計算です。
そのため、特定口座では思ったより少ない金額しか手元に残らないケースもあります。
さらに、非課税期間の終了に気づかず放置していると、本来なら新NISAで再投資することで得られたはずの節税メリットを逃してしまう恐れもあります。
新NISA買い直しの前に確認したい

旧NISAの非課税期間は、一般NISAは5年、つみたてNISAは20年です。
たとえば、2019年に一般NISAで購入した商品は2023年末、2020年なら2024年末に非課税が終了します。
保有している商品の購入年によって期限が異なるため、自分がいつ買ったかを今のうちに確認しておくことが大切です。
期限を正確に把握しておけば、買い直しのタイミングも見極めやすくなるでしょう。
参照|SBI証券「旧NISA放置にご注意!実践編」
旧NISAのままでOKなケースと買い直しを検討すべきケース

旧NISAの非課税期間が終了に近づく中で、保有資産をそのまま継続すべきか、新NISAで買い直すべきかの判断が求められます。
すべてのケースで買い直しが有利とは限らず、資産の状態や今後の方針によって選択は分かれます。
こちらでは、旧NISAのままでも問題ないケースと、新NISAでの買い直しを検討すべきケースを紹介します。
旧NISAのままで問題ないケース
以下のような条件に当てはまる場合は、無理に売却や買い直しをする必要はないと考えられます。
・含み益が小さい、または含み損の状態にある
・非課税期間が2年以上残っている
・新NISAで別の商品に投資する計画がある
含み益がわずかだったり損が出ていたりする場合、NISAにおける節税効果があまり期待できません。
一方、非課税期間が十分に残っていれば、将来値上がりしたときにも税金を抑えられます。
現時点で慌てて動く必要がなければ、しばらく静観するのも一つの選択肢です。
買い直しを検討したほうがよいケース
次のような条件に該当する場合は、新NISAでの買い直しを前向きに検討する価値があります。
・非課税期間が1年以内に終了する
・含み益が大きく、利益確定による節税効果が見込める
・将来的に値上がりが期待できる商品を保有している
非課税のうちに売却して利益を確定すれば、移管後に約20%の税金を引かれるのを避けられ、手元に残る金額を増やせます。
また、値上がりが見込まれる商品を新NISAの非課税枠で保有することにより、今後の運用効率が高まる可能性もあります。
条件がそろっているなら、非課税のメリットを逃さないよう早めに行動を検討したいところです。
新NISA買い直しする際の注意点|コストとタイミングに要注意

新NISAへの買い直しにはメリットだけでなく、思わぬリスクも潜んでいます。
「非課税になるならすぐ買い直そう」と考える前に、コストとタイミングを冷静に見直すことが重要です。
こちらでは、見落としやすい費用面の注意点と、売買のタイミングによるリスクを紹介します。
買い直しにかかるコストに注意
買い直しを検討するときは、コスト面での確認が欠かせません。
前述の通り、非課税期間を過ぎた資産を売却すれば課税が発生し、利益が目減りする可能性があります。
また、買い直し先の商品によっては、信託報酬などの維持コストが高くなる場合もあります。
同じインデックスファンドでも運用会社によって手数料が異なるため、長期保有を前提に選ぶなら事前の比較が必要です。
タイミングを間違えると損をすることも
買い直しでは、売却と購入のタイミングによって思わぬ損をする可能性があります。
たとえば、旧NISA口座で売却した直後に相場が上がれば、買い直す際に高値で購入することになりかねません。
逆に、買った直後に相場が下がると、しばらく含み損を抱える状態が続く可能性もあります。
ただし、短期的な値動きを読むのは、初心者にとって簡単なことではありません。
そのため、焦って判断するよりも、非課税期間や投資の目的に合わせて冷静に対応することが大切です。
新NISA買い直し先におすすめの投資先

新NISAでどの商品に買い直すかによって、その後の運用成績が大きく変わる可能性があります。
つみたて投資枠では低コストのインデックスファンド、成長投資枠では高配当やテーマ型商品が選ばれる傾向があります。
こちらでは、それぞれの枠でよく活用されている代表的な商品を紹介します。
つみたて投資枠で選ばれているインデックスファンド
つみたて投資枠は、長期・分散・低コストが重視される枠です。
以下のようなインデックスファンドが特に人気を集めています。
・eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
・eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
・SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
これらは、信託報酬が低く、世界経済や米国市場の成長を効率よく取り込める点が魅力です。
将来に向けて安定的に資産形成を図りたい場合、つみたて投資枠ではこのようなインデックスファンドが堅実な選択肢といえるでしょう。
成長投資枠で活用できる商品
成長投資枠では、よりリターンを重視した商品を選ぶことができます。
代表的な選択肢としては、以下のようなETFやテーマ型ファンドがあります。
・高配当ETF(例:VYM、HDV、SPYD)
・テーマ型ファンド(AI、半導体、脱炭素など)
高配当ETFは、定期的な配当収入が期待できる点が魅力です。
テーマ型ファンドは、特定の成長分野に集中投資することで、大きな値上がりを狙える可能性があります。
ただし、どちらも価格の変動が大きくなりやすいため、資産全体のバランスを意識しながら選ぶことが大切です。
新NISA買い直しするときの投資戦略の見直し

新NISAへ買い直すタイミングは、これまでの投資方針を一度立ち止まって見直すチャンスでもあります。
つみたて投資枠と成長投資枠、それぞれの特徴を活かすには、目的や資金計画に応じた使い分けが重要です。
こちらでは、各枠の活用にあたって意識しておきたい戦略の考え方を紹介します。
つみたて投資枠はどう使う?
つみたて投資枠は、長期での資産形成を目的に、毎月少額から積み立てていく枠です。
つみたて投資枠を活用する上で意識したいポイントは次のとおりです。
・毎月一定額を積み立て、時間を分散してリスクを抑える
・生活費や将来の出費を考慮して、無理のない金額に設定する
・値動きに一喜一憂せず、継続前提で構える
過去に一括購入をしていた人も、積立型に切り替えると、相場に左右されにくい投資スタイルに変えられます。
特に「老後資金」や「教育費」などの目的が明確な人ほど、毎月の積み立て額を生活と両立できる水準に見直してみましょう。
「続けやすさ」と「分散効果」を意識するのが、つみたて投資枠の戦略の基本です。
成長投資枠で攻めるなら?
成長投資枠は、つみたて投資枠とは異なり、より柔軟で積極的な運用が可能です。
ただし、自由度が高い分、戦略も慎重に立てる必要があります。
・投資の目的(値上がり益か、配当か)を明確にする
・価格変動リスクをどこまで許容できるかを決めておく
・全体の資産配分の中で、この枠に“どれだけ振り分けるか”を考える
たとえば、すべてを成長投資枠に寄せると、相場下落時に大きなダメージを受けるリスクがあります。
一方、余剰資金で運用するなど、資金の目的ごとにリスクを分けることで、安定性と成長性を両立させやすくなります。
「使い方の自由度」が高いからこそ、先に「どこまで攻めるか」を自分で決めておくことが大切です。
まとめ

旧NISAは、非課税期間が終了すると課税口座に移され、利益に税金がかかるようになります。
状況によっては、新NISAで買い直すことにより、節税や運用効率の向上が見込める場合もあるでしょう。
ただし、すべてのケースで買い直しが得になるとは限りません。
保有している商品の特性や非課税期間の残り年数、これからの投資方針などを踏まえ、自分にとって適切な対応を考えることが大切です。
非課税のメリットを無駄にしないためにも、一度立ち止まって、NISAの使い方を見直すきっかけにしてみてください。