自社株の評価を下げる7つの方法

自社株の評価を下げる方法はいくつかありますが、すべての会社に同じ対策が適しているわけではありません。
会社の規模や財務状況、適用される株式評価方式、事業承継の時期などを踏まえ、自社に合った方法を選ぶことが大切です。
ここでは、自社株の評価を下げる主な方法について紹介します。
(2)含み損のある資産を売却して損失を計上する
(3)不動産を購入して純資産価額を圧縮する
(4)生命保険を活用して利益と純資産を圧縮する
(5)持株会社を活用して自社株評価を抑える
(6)株主構成を見直して評価方式の変更を検討する
(7)配当を見直して類似業種比準価額を抑える
(1)役員退職金を支給して純資産を圧縮する
役員退職金を支給すると会社の純資産が減少するため、自社株評価額の引き下げにつながる場合があります。
特に、純資産価額方式によって株式を評価する会社では、純資産が減るほど、自社株の評価額も低くなる仕組みです。
また、適正な金額の役員退職金は、法人の損金として計上できます。
そのため、利益を圧縮すると同時に、純資産を減らす効果も期待できます。
こうした理由から、事業承継を予定している経営者が退任するタイミングで、役員退職金を活用するケースがあります。
一方、支給額が不相当に高額と判断された場合は、その一部または全部について損金算入が認められない可能性があります。
代表取締役の功績倍率は、2.0~3.0倍程度が目安とされることがあります。
ただし、適正な金額は役員としての功績や在任期間、会社の規模、同業他社の支給水準などによって異なります。
税務上のリスクを抑えるためにも、客観的な根拠に基づいて、適正な支給額を設定することが重要です。
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(2)含み損のある資産を売却して損失を計上する
含み損のある資産を売却し、損失を確定させることで、自社株評価額を引き下げられる場合があります。
含み損のある資産とは、帳簿上の金額よりも現在の時価が低くなっている資産です。
例えば、含み損のある有価証券や不動産、設備などを売却すると、それまで確定していなかった損失が売却損として計上されます。
売却損を損金として計上できれば、会社の利益や純資産が減少し、自社株評価額の圧縮につながる可能性があります。
ただし、純資産価額方式では、資産を相続税評価額などに置き換えて評価します。
そのため、資産の含み損がすでに株式評価へ反映されている場合もあります。

この方法を検討する際は、自社株評価を下げることだけを目的にするのではなく、不要な資産の整理や事業内容の見直しなども含めて判断することが大切です。
また、資産を売却すると、将来の収益や会社の資金繰りに影響する可能性があります。
市場環境や税務上の取り扱いも確認し、税理士などの専門家へ相談しながら進めましょう。
(3)不動産を購入して純資産価額を圧縮する
会社が保有する現金を不動産へ組み替えることで、自社株評価額を引き下げられる場合があります。
現金は、原則として額面どおりの金額で評価されます。
一方、不動産は土地であれば路線価、建物であれば固定資産税評価額など、相続税評価額を基に評価されます。
一般的に、相続税評価額は実際の取引価格よりも低くなることがあります。
そのため、現金で不動産を購入すると、会社全体の評価額が下がり、純資産価額方式による自社株評価額の圧縮につながる可能性があります。
ただし、不動産は現金と比べて換金しにくく、購入後には維持管理費や固定資産税、修繕費などが発生します。
賃貸用不動産では、空室や家賃下落のリスクも考慮しなければなりません。
また、2024年1月1日以後に相続・贈与によって取得したタワーマンションなどの区分所有財産については、評価方法が見直されています。
不動産を利用した自社株対策を行う際は、評価額の引き下げ効果だけでなく、事業計画や資金計画、不動産としての収益性も踏まえて判断することが大切です。
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(4)生命保険を活用して利益と純資産を圧縮する
法人が生命保険へ加入すると、契約内容によっては、支払った保険料の一部または全部を損金として計上できる場合があります。
損金に算入した保険料は会社の利益や純資産を減少させるため、純資産価額方式による自社株評価額の引き下げにつながる可能性があります。
以前は、解約返戻率の高い法人向け生命保険を活用した節税対策が広く行われていました。
しかし、2019年の法人税基本通達の改正によって、解約返戻率が高い保険ほど、損金算入できる割合が制限されるようになりました。
そのため、以前と比べて大きな節税効果を得にくい商品もあります。
保険料の支払いは会社の資金繰りにも影響するため、評価額の引き下げだけを目的とせず、保障内容や将来の資金計画も含めて検討することが大切です。
(5)持株会社を活用して自社株評価を抑える
持株会社を設立し、事業会社の株式を持株会社へ移したうえで、持株会社の株式を後継者へ承継する方法があります。
持株会社とは、事業会社の株式を保有し、グループ全体を管理する会社です。
一定の条件を満たす場合、事業会社の株式を直接後継者へ承継するよりも、持株会社の株式として承継するほうが、評価額を抑えられることがあります。
持株会社の株式は、保有している資産を基に評価されますが、一定の場合には、法人税等相当額の37%を控除して評価されます。
そのため、事業会社の株式を直接評価する場合よりも、持株会社の株式評価額が低くなるケースがあります。
また、会社の規模や株主構成などによっては、持株会社の評価に類似業種比準方式が適用され、評価額をさらに抑えられる場合もあります。

ただし、持株会社の設立や株式移転を伴う組織再編には、税務・法務上の要件が多くあります。
設立費用や毎年の維持費も発生するため、自社株評価への効果だけでなく、グループ経営や事業承継全体の方針を踏まえて慎重に検討しましょう。
(6)株主構成を見直して評価方式の変更を検討する
自社株の評価方法は、会社の規模だけでなく、株式を取得する人の属性や持株割合によっても変わることがあります。
そのため、株主構成を見直すことで、自社株の評価方法が変わり、評価額を抑えられる場合があります。
例えば、同族株主以外の少数株主が取得する株式については、「配当還元方式」が適用されることがあります。
純資産価額方式や類似業種比準方式と比べて、評価額が低くなる傾向があります。
一定の条件を満たせば、相続税や贈与税の負担軽減につながる可能性があります。
ただし、名義だけを変更した名義株や、自社株評価を下げることだけを目的とした不自然な株式分散は、税務上問題になるおそれがあります。
株主構成を見直す際は、実際の出資関係や議決権、配当を受け取る権利など、株主としての実態が伴っていることが重要です。
事業承継や経営権の移転という明確な目的のもとで、慎重に進めましょう。
(7)配当を見直して類似業種比準価額を抑える
会社の配当方針を見直すことで、類似業種比準方式による自社株評価額を引き下げられる場合があります。
類似業種比準方式では、主に次の3つの要素を基に、自社株の評価額を計算します。
・利益金額
・純資産価額
このうち、配当金額が小さくなると、類似業種比準価額も低くなる傾向があります。
例えば、配当額を減らしたり無配にしたりすることで、配当要素が小さくなり、自社株評価額を抑えられる可能性があります。
一方、配当の減額や無配は、株主への利益還元を減らすことになります。
既存株主との関係や会社の財務方針に影響する可能性もあるため、慎重な判断が必要です。
自社株評価を下げることだけを目的に配当を変更するのではなく、会社の利益水準や資金需要、今後の事業計画なども踏まえて、総合的に判断しましょう。
自社株評価の引き下げが事業承継・相続税対策になる理由

自社株評価の引き下げが、なぜ事業承継や相続税対策につながるのかを理解しておくことで、対策の必要性や期待できる効果を判断しやすくなります。
ここでは、自社株評価の引き下げが重要とされる理由について解説します。
(2)自社株評価額が相続税・贈与税の負担に影響するため
(1)事業承継では自社株の引き継ぎが必要になるため
事業承継では、後継者へ自社株を引き継ぐことが欠かせません。
自社株は、会社の所有権や議決権を表すものです。
後継者が安定して経営を行うためには、議決権の過半数を保有し、場合によっては3分の2以上の株式を集約することが重要になります。
自社株を後継者へ移す主な方法は、次の3つです。
・売買
・相続
いずれの方法を選ぶ場合でも、自社株の評価額が高いほど、贈与税や相続税、株式の購入資金などの負担が大きくなります。
その結果、後継者が株式を十分に取得できず、経営権を安定させられないなど、事業承継の妨げになる可能性があります。
そのため、自社株評価額を適切な方法で引き下げておくことは、後継者の負担を軽減し、円滑な事業承継につなげるための重要な対策です。
(2)自社株評価額が相続税・贈与税の負担に影響するため
自社株の評価額が高くなるほど、相続税や贈与税の負担も大きくなります。
自社株を相続または贈与によって取得した場合は、その時点の自社株評価額をもとに課税額が計算されます。
そのため、評価額が高いほど課税対象となる金額も増え、後継者の税負担が重くなる仕組みです。
特に、業績が好調で利益や内部留保が積み上がっている中小企業では、自社株評価額が数億円から数十億円規模になる場合があります。
その場合、株式の承継に伴う相続税や贈与税が、数千万円から数億円規模になることもあります。
後継者が納税資金を用意できなければ、株式の承継を進められなかったり、納税資金を確保するために会社の資産や株式を売却したりする可能性もあります。
自社株評価額を引き下げられれば、後継者が負担する相続税や贈与税を抑え、事業承継を進めやすくなる可能性があります。
自社株の評価方法と評価額が決まる仕組み

自社株の評価額は、事業承継や相続の際に発生する税負担を大きく左右します。
適切な対策を検討するためには、まず自社株がどのような基準で評価されるのかを把握しておくことが重要です。
会社の規模や業種、資産状況などによって適用される評価方式が異なり、株価に影響する要素や有効な対策も変わります。
ここでは、自社株を評価する際に用いられる主な2つの方法について解説します。
(2)純資産価額方式で会社の資産と負債から評価する
(1)類似業種比準方式で配当と利益と純資産を比較する
類似業種比準方式とは、評価対象となる会社と事業内容が類似する上場企業を基準に、自社株の評価額を算定する方法です。
主に、次の3つの要素を上場企業の数値と比較して評価します。
・1株当たりの利益金額
・1株当たりの純資産価額
これらの数値と、類似する上場企業の株価水準をもとに、自社株の評価額を算定します。
類似業種比準方式は、主に大会社の株式評価に用いられ、中会社では純資産価額方式と組み合わせて評価されるのが一般的です。
会社の保有資産だけでなく、上場企業の株価水準も反映されるため、純資産価額方式だけで評価する場合よりも、自社株評価額が低くなるケースがあります。
類似業種比準方式が適用される会社では、配当金額・利益金額・純資産価額を見直すことが、自社株評価額の引き下げにつながる可能性があります。
例えば、役員退職金を支給すると、会社の利益と純資産が減少するため、類似業種比準価額を抑えられる場合があります。
ただし、配当や利益を意図的に減らすと、会社の財務状況や株主との関係に影響する可能性もあります。
株価対策だけでなく、今後の経営計画も踏まえて判断することが大切です。
(2)純資産価額方式で会社の資産と負債から評価する
純資産価額方式とは、会社が保有する資産を相続税評価額に置き換え、そこから負債などを差し引いた純資産をもとに、自社株の評価額を算定する方法です。
主に小会社の株式評価に用いられます。
純資産価額方式では、会社が保有する資産の価値が高いほど、自社株評価額も高くなる傾向があります。
純資産価額方式では、次のような対策によって自社株評価額を引き下げられる場合があります。
・含み損のある資産を売却する
・現金を不動産へ組み替える
・生命保険を活用する
ただし、資産の売却や不動産の購入、役員退職金の支給などは、会社の資金繰りや将来の収益にも影響します。
自社株評価額を下げることだけを目的とせず、会社の財務状況や事業承継後の経営も踏まえて検討しましょう。
役員退職金を活用して自社株の評価を引き下げる方法

役員退職金の支給は、会社の利益や純資産を減らし、自社株評価額の引き下げにつなげる方法のひとつです。
ただし、支給額や支給時期によって効果が異なるほか、不相当に高額な退職金は税務上の問題につながる可能性があります。
ここでは、役員退職金を活用して自社株の評価を引き下げる方法について解説します。
(2)適正な退職金額と支給時期を設定する
(1)役員退職金の支給で純資産と利益を圧縮する
役員退職金を支給すると会社から資金が流出し、純資産が減少するため、自社株評価額を引き下げられる場合があります。
適正な役員退職金は、一定の要件を満たせば法人の損金として計上できます。
損金に算入した分だけ会社の利益が減少し、純資産価額方式による自社株評価額の引き下げにつながる可能性があります。
例えば、純資産が5億円ある会社で、代表取締役へ2億円の役員退職金を支給したとします。
税金などの影響を考慮せず単純化すると、退職金の支給によって純資産が3億円となり、純資産価額方式による自社株評価額も支給前より低くなることが期待できます。
また、役員退職金の支給によって、その事業年度の利益も減少します。

そのため、類似業種比準方式が適用される会社では、利益金額の低下を通じて自社株評価額が下がる場合があります。
このように役員退職金は、純資産価額方式では純資産の減少、類似業種比準方式では利益金額の減少を通じて、自社株評価額に影響を与える可能性があります。
ただし、実際の効果は会社の評価方式や財務状況によって異なるため、支給前に自社株評価額を試算しておくことが大切です。
(2)適正な退職金額と支給時期を設定する
役員退職金を活用する際は、税務上適正と認められる金額に設定する必要があります。
退職金額の算定には、一般的に次の要素を用いる「功績倍率方式」があります。
・役員としての勤続年数
・役職や功績に応じた功績倍率
計算式は、次のとおりです
役員退職金 = 最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率
代表取締役の功績倍率は、2.0~3.0倍程度がひとつの目安とされることがあります。
ただし、この倍率を使用すれば必ず適正と認められるわけではありません。
会社の規模や業績、役員の職務内容、在任期間、同業他社の支給水準などを踏まえて判断する必要があります。
同業他社や同規模の企業と比べて不相当に高額な退職金を支給した場合は、適正額を超える部分について損金算入が認められない可能性があります。
また、自社株評価額の引き下げを目的とする場合は、退職金を支給する時期も重要です。
自社株は、原則として相続や贈与が行われた時点の会社の状況をもとに評価されます。
相続や贈与が行われた後に退職金を支給しても、すでに発生した株式の評価には反映されません。
そのため、事業承継の予定時期を見据えながら、退職時期や退職金の支給時期を計画的に検討することが大切です。
持株会社を活用して自社株の評価を引き下げる方法

持株会社(ホールディングス)を設立し、事業会社の株式を移転することで、自社株評価を抑えながら事業承継を進める方法があります。
ここでは、持株会社を活用して自社株の評価を引き下げる方法について紹介します。
(2)持株会社の設立コストと税務上のリスクを確認する
(1)事業会社の株式を持株会社へ移転して評価額を抑える
持株会社を活用した自社株評価対策では、事業会社の株式を持株会社へ移転することで、株式の評価額を抑えられる場合があります。
持株会社の株式は、保有している資産をもとに評価されます。
事業会社の株式を評価する際には、一定の場合に法人税等相当額の37%を控除して評価するため、事業会社の株式を直接保有する場合よりも、持株会社の株式評価額が低くなるケースがあります。
また、持株会社の規模や株主構成などの条件によっては、類似業種比準方式が適用され、評価額をさらに抑えられる場合もあります。
このように、持株会社を通じて後継者へ株式を承継することで、事業会社の株式を直接承継する場合よりも、税負担を抑えながら事業承継を進められる可能性があります。
(2)持株会社の設立コストと税務上のリスクを確認する
持株会社を活用する際は、設立コストと節税効果のバランスを事前にシミュレーションすることが大切です。
持株会社の設立には、登記費用や税理士報酬などがかかります。
さらに、設立後も毎年の税務申告費用や法人住民税の均等割など、継続的な維持コストが発生します。
そのため、これらの費用を上回る効果が見込めるかどうかをあらかじめ試算したうえで、導入を判断しましょう。
また、事業会社の株式を持株会社へ移転する際には、「同族会社の行為計算否認制度」が適用される可能性があります。
経済的な合理性が乏しい取引や、節税だけを目的とした株式移転は、税務上否認されるおそれがあるため注意が必要です。
持株会社を設立・活用する際は、経営の効率化やグループ管理の一元化など、明確な事業上の目的を持つことが重要です。
さらに、株式を移転する方法によっては、贈与税や所得税などが発生する場合があります。
売買や現物出資など、それぞれの方法の特徴や税務上の影響を確認し、自社の状況に合った手法を選ぶことが大切です。
生命保険を活用して自社株の評価を引き下げる方法

法人が生命保険に加入すると、契約内容によっては保険料を損金として計上できるため、利益や純資産の圧縮につながる場合があります。
ただし、保険の種類によって税務上の取り扱いが異なるため、加入前に内容を十分に確認することが大切です。
ここでは、生命保険を活用して自社株の評価を引き下げる方法について紹介します。
(2)損金算入割合と解約返戻金を確認して保険を選ぶ
(1)法人保険の保険料を損金計上して純資産を圧縮する
法人向けの生命保険を活用すると、支払った保険料の一部または全部を損金として計上できる場合があります。
損金に算入した保険料は、法人の利益や純資産を減少させるため、純資産価額方式による自社株評価額の引き下げにつながる可能性があります。
また、解約返戻金のある保険を活用すれば、将来支給する役員退職金の原資を計画的に準備できる点もメリットです。
例えば、役員が退任するタイミングで保険を解約し、その解約返戻金を役員退職金の支給に充てる方法があります。
役員退職金を支給することで会社の純資産が減少し、自社株評価額をさらに抑えられる場合があります。
このように、生命保険は万が一に備えるための保障だけでなく、自社株評価対策や事業承継に必要な資金の準備にも活用できる方法のひとつです。
(2)損金算入割合と解約返戻金を確認して保険を選ぶ
生命保険を選ぶ際は、保険料の損金算入割合や解約返戻金のピークを迎える時期、保険料総額と期待できる効果のバランスを確認することが重要です。
保険の種類や契約内容によって税務上の取り扱いが異なるため、保障や退職金の準備など、自社の目的に合った商品を選ぶ必要があります。
また、2019年の法人税基本通達の改正により、解約返戻率が高い保険ほど、損金算入できる割合が制限されるようになりました。
そのため、商品によっては以前のような大きな節税効果を期待できない場合があります。
加入前に、現在の税制に基づいた損金算入割合や経理処理を確認しておきましょう。
さらに、生命保険へ加入すると、一定期間にわたって保険料を支払い続ける必要があります。
保険料の負担が大きすぎると、会社の資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。
節税効果や自社株評価額の引き下げだけで判断するのではなく、会社の財務状況や将来の資金計画を踏まえ、無理のない範囲で活用することが大切です。
自社株評価を引き下げる際に確認したい3つの注意点

自社株評価の引き下げは、相続税や贈与税の負担を抑えるための有効な対策です。
一方で、進め方を誤ると、税務調査で取引の妥当性を問われたり、会社の資金繰りや経営権に影響が及んだりする可能性があります。
自社株評価を引き下げる際に注意したい主なポイントは、次の3つです。
(2)会社の資金繰りや経営権への影響を確認する
(3)節税効果だけでなく事業承継全体を踏まえて判断する
このような取引は、実態や経済的な合理性がないと判断された場合、税務上の効果が認められないおそれがあります。
そのため、自社株評価対策は、節税だけを目的として進めるのではなく、事業承継や組織再編、経営の効率化など、明確な事業上の目的を持つことが重要です。
取引の目的や必要性を説明できるよう、株価算定資料や議事録、事業計画書など、根拠となる資料もあわせて整えておきましょう。
(1)租税回避や行為計算否認と判断されるリスクに注意する
自社株評価を引き下げる際は、税負担を不当に減らすことを目的とした取引と判断されないよう注意が必要です。
法人税法第132条の「同族会社等の行為又は計算の否認」では、同族会社が法人税の負担を不当に減少させる目的で行った取引や計算について、税務署が否認できると定められています。
例えば、次のような対策は税務上問題となる可能性があります。
・実際の功績に見合わない高額な役員退職金を支給する
・節税だけを目的として形式的に持株会社を設立する
そのため、自社株評価対策は、節税だけを目的として進めるのではなく、事業承継や組織再編、経営の効率化など、明確な事業上の目的を持つことが重要です。
取引の目的や必要性を説明できるよう、株価算定資料や議事録、事業計画書など、根拠となる資料もあわせて整えておきましょう。
(2)会社の資金繰りや経営権への影響を確認する
自社株評価を引き下げる際は、期待できる節税効果だけでなく、会社の資金繰りや経営権への影響も確認する必要があります。
例えば、役員退職金の支給や不動産の購入には、多額の資金が必要になる場合があります。
自社株評価額を下げられたとしても、手元資金が大きく減少すれば、運転資金が不足したり、設備投資や新規事業への投資が難しくなったりする可能性があります。
また、持株会社への株式移転や第三者への株式譲渡などによって株主構成を変更すると、経営権にも影響が及ぶ可能性があります。
後継者が経営に必要な議決権を確保できるか、株式の分散によって意思決定が複雑にならないかを確認しておきましょう。
従業員や取引先などの関係者への影響にも配慮しながら、慎重に進めることが重要です。
(3)節税効果だけでなく事業承継全体を踏まえて判断する
自社株評価額の引き下げは有効な相続税・事業承継対策ですが、自社株評価額を下げることだけを目的として、対策を進めるべきではありません。
例えば、自社株評価額を下げるために過度な資産売却や利益圧縮を行うと、会社の財務基盤や将来の成長に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、経営上の合理性を欠く対策は、税務上のリスクにつながるおそれもあります。
そのため、自社株評価額の引き下げは節税だけを目的とするのではなく、事業承継後の経営や企業価値も見据えながら、自社に適した方法を選択することが重要です。
自社株評価の引き下げを進める3つの手順

自社株評価の引き下げを進める際は、現在の評価額を把握したうえで、自社に適した方法を選び、段階的に実行することが重要です。
ここでは、自社株評価の引き下げを進める3つの手順を紹介します。
(2)会社の状況に合った評価引き下げ対策を選ぶ
(3)税理士などの専門家と連携して対策を実行する
(1)現在の自社株評価額を確認する
自社株評価の引き下げを検討する際は、まず、現在の自社株評価額を正確に把握することが大切です。
現在の評価額がわからなければ、どの対策が有効なのか、実施によってどの程度の効果が見込めるのかを判断できません。
自社株評価額は、主に次のような資料をもとに算定します。
・法人税申告書
・株主名簿
・不動産や有価証券などの資産に関する資料
会社が保有する不動産や有価証券などは、帳簿価額ではなく、相続税評価額や時価をもとに評価される場合があります。
そのため、保有資産についても最新の評価額を確認しておく必要があります。
また、自社株の評価方法は、会社の規模や株主構成などによって異なります。
類似業種比準方式と純資産価額方式のどちらが適用されるのか、または両方を組み合わせて評価するのかを確認したうえで、現在の評価額を試算しましょう。
あわせて、将来の相続や贈与を想定した場合に、どの程度の税負担が発生する可能性があるのかも把握しておくことが大切です。
(2)会社の状況に合った評価引き下げ対策を選ぶ
現在の自社株評価額を把握したら、会社の状況に合った評価引き下げ対策を検討します。
対策を選ぶ際は、適用される評価方式だけでなく、会社の業績や財務状況、資金繰り、事業承継の予定時期なども踏まえて判断することが重要です。
例えば、類似業種比準方式が適用される会社では、次のような対策が有効な場合があります。
・配当方針を見直す
一方、純資産価額方式が適用される会社では、次のような純資産を圧縮する対策が中心となります。
・生命保険を活用する
・現金を不動産へ組み替える
・含み損のある資産を売却する
ただし、1つの方法だけで十分な効果が得られるとは限りません。
会社の状況によっては、複数の対策を組み合わせることで、より効果的に自社株評価額を引き下げられる場合があります。
それぞれの対策が、会社の資金繰りや経営に与える影響も確認したうえで、自社に適した方法を選びましょう。
(3)税理士などの専門家と連携して対策を実行する
自社株評価の引き下げ対策は、税理士などの専門家へ相談しながら進めることが重要です。
自社株の評価方法や税務上の取り扱いは複雑であり、対策によっては会社の資金繰りや株主構成、経営権にも影響する可能性があります。
自己判断で実行すると、想定していた効果が得られないだけでなく、税務調査で取引を否認されたり、予期しない税金が発生したりするおそれもあります。
特に、事業承継に詳しい税理士であれば、次のような対策を含めて総合的な助言を受けられます。
・自社株評価の引き下げ対策
・事業承継税制の活用
・役員退職金の設計
・生命保険の活用
・持株会社の設立や組織再編
対策を実施する際は、税理士などの専門家と打ち合わせを重ねながら、税務上のリスクや会社経営への影響を確認し、段階的に進めましょう。
まとめ

今回は、自社株の評価方法や、評価額を引き下げるための主な対策、実施する際の注意点について紹介しました。
自社株対策は、会社の資産だけでなく、後継者への承継方法や経営者個人の資産、将来のライフプランにも関係します。
そのため、税理士などの専門家と連携しながら、早めに準備を進めることが重要です。
ココザスでは、経験豊富なファイナンシャルプランナーが、会社や個人の資産状況、今後の事業承継やライフプランを踏まえ、資金計画や資産対策をご提案しています。
「自社株の評価額や事業承継に向けた資金計画を整理したい」「会社と個人の資産についてまとめて相談したい」という方は、ぜひココザスの無料相談をご利用ください。
