相続税対策で資産管理会社が注目される理由

資産管理会社が相続税対策として有効とされる背景には、個人で資産を保有する場合と、法人で資産を保有する場合の税制上の違いがあります。
ここでは、相続税対策に資産管理会社が有効とされる主な理由を4つ紹介します。
(2)家族への役員報酬で所得を分散できる
(3)個人の所得税率と法人税率の差を活用できる
(4)株式を段階的に移転して次世代へ承継しやすい
(1)個人保有より法人保有の方が相続税評価額を抑えやすい
個人で資産を保有するよりも、法人で保有する方が相続税を抑えやすい理由は、法人が保有する資産は被相続人の個人財産に直接含まれないためです。
個人で保有している不動産は、そのまま相続財産となりますが、資産管理会社が不動産を保有している場合は、不動産そのものではなく会社株式が相続財産となります。
そのため、株式評価の方法によっては、相続税評価額を抑えられるケースがあります。
法人の株式評価額は、実際の資産の時価よりも低く評価される場合もあります。
その結果、相続税の課税対象額を圧縮する効果が期待できるのです。
(2)家族への役員報酬で所得を分散できる
資産管理会社を設立して家族を役員に加えることで、会社の収益を役員報酬として家族に分配できます。
これにより、所得を家族に分散させることが可能です。
個人で賃料収入を受け取る場合、所得税は累進課税となるため、所得が多いほど高い税率が課されます。
しかし、法人を通じて配偶者や子供に役員報酬を支払うことで、1人ひとりの課税所得を抑えながら所得を分散できます。
また、役員報酬は法人の損金として算入できるため、法人税負担の軽減にもつながります。
(3)個人の所得税率と法人税率の差を活用できる
法人税率と個人の所得税率の差を活用できることも、資産管理会社が節税に有効とされる理由のひとつです。
個人の所得税は超過累進課税であり、課税所得が900万円を超えると税率は33%以上となります。
さらに、4,000万円を超えると45%が適用されます。
一方、中小法人(資本金1億円以下)の法人税の実効税率は、概ね20~30%程度です。

そのため、賃料収入や配当収入が多く、個人の所得税率が高い方ほど、法人を通じて収益を受け取ることで税負担を下げる効果が大きくなるでしょう。
(4)株式を段階的に移転して次世代へ承継しやすい
資産管理会社の株式を少しずつ後継者に移転することで、財産を段階的に引き継ぐことができます。
また、評価額を抑えながら移転しやすい点も特徴です。
不動産や現金を直接贈与する場合は、原則として時価で評価されます。
一方、法人の株式を移転する場合には、純資産価額方式や類似業種比準方式による評価が適用されます。
法人内部の内部留保が少ない段階や、法人保険を活用して純資産を圧縮している場合は、株式の評価額が下がることがあります。
その結果、低い評価額で後継者に移転しやすくなる効果が期待できるのです。
資産管理会社の基本的な仕組みとは

資産管理会社を相続税対策として活用するためには、基本的な仕組みと種類を正確に理解しておくことが前提となります。
ここでは、資産管理会社の基本的な仕組みについて紹介します。
(2)資産管理会社の主な種類
(3)資産管理会社に移転できる財産
(4)個人保有と法人保有の課税の違い
(1)資産管理会社の法人形態
資産管理会社とは、個人が保有する不動産や有価証券などの資産を管理・保有するために設立する法人のことです。
一般的には「プライベートカンパニー」とも呼ばれ、事業会社とは異なり、主に自己の資産管理を目的としています。
法人形態は、株式会社または合同会社が一般的です。
株式会社は、設立費用や維持コストがやや高いものの、株式を活用した事業承継や相続対策を行いやすい点が特徴です。
一方、合同会社は設立費用を抑えられ、決算公告義務もありません。
そのため、シンプルな資産管理を目的とする場合に選ばれることがあります。
| 項目 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 設立費用 | 約20万~25万円 | 約6万~10万円 |
| 決算公告義務 | あり | なし |
| 所有者の呼称 | 株主 | 社員(出資者) |
| 経営の意思決定 | 株主総会・取締役会など | 出資者が直接決定 |
| 持分の承継・移転 | 株式譲渡で比較的容易 | 他社員の同意が必要な場合が多い |
| 社会的な知名度 | 高い | 株式会社より低い |
| 相続対策での活用 | 株式の承継がしやすい | 維持コストを抑えやすい |
(2)資産管理会社の主な種類
資産管理会社は、その主な目的によっておおよそ3つのタイプに分けられます。
持株会社は、事業会社の株式を保有することを目的とした法人です。
事業承継と相続税対策を組み合わせる場面で活用されます。
事業会社の株式を持株会社に移転することで、後継者への経営権の承継と、相続税負担の軽減を同時に図ることができます。
不動産管理会社は、個人が保有する賃貸物件の管理業務を受託し、管理料収入を法人に移転する形態です。
これにより、不動産収入の一部を法人で受け取ることができます。
資産保有会社は、不動産や有価証券を法人名義で直接保有する形態です。
資産の評価額を抑えながら、法人税率の適用を受けることを主な目的としています。
| 種類 | 主な保有・管理対象 | 主な目的 | 活用されるケース |
|---|---|---|---|
| 持株会社 | 事業会社の株式 | 事業承継・相続対策 | オーナー企業の後継者へ経営権を承継したい場合 |
| 不動産管理会社 | 賃貸不動産の管理業務 | 所得分散・節税 | 個人所有のアパートやマンションの管理料を法人で受け取りたい場合 |
| 資産保有会社 | 不動産・有価証券などの資産 | 資産管理・相続対策・法人税活用 | 不動産や金融資産を法人名義で保有したい場合 |
(3)資産管理会社に移転できる財産
資産管理会社に移転できる財産の種類は、不動産、有価証券、現金・預金などが主なものです。
不動産では、賃貸マンションやアパート、駐車場、土地などが対象となります。
有価証券では、株式や投資信託などを法人名義で保有することが可能です。
また、現金や預金を出資金として会社に移したり、会社への貸付金として管理したりする方法もあります。
ただし、財産の種類によって、移転手続きや税務上の取扱いは異なります。
不動産の移転には、登録免許税や不動産取得税が発生します。
そのため、事前に費用対効果を確認しておくことが重要です。
(4)個人保有と法人保有の課税の違い
個人と法人では、適用される税金の種類や税率、経費として認められる範囲などに違いがあります。
主な違いは以下のとおりです。
| 項目 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 主な税金 | 所得税・住民税 | 法人税・法人住民税・法人事業税 |
| 税率 | 5~45%の超過累進課税 | 実効税率は概ね20~30% |
| 税率の特徴 | 所得が増えるほど税率が上昇 | 所得による税率上昇が緩やか |
| 経費の範囲 | 必要経費として認められる範囲が限定的 | 役員報酬や退職金など損金算入できる項目がある |
| 所得分散 | 原則できない | 家族への役員報酬などで可能 |
個人の所得税は、5%から45%の超過累進税率です。
一方、法人税は中小法人の場合、課税所得800万円以下は15%、2025年4月1日以降に開始する事業年度は19%予定、800万円超は23.2%が適用されます。
これに法人住民税や法人事業税を加えた実効税率は、概ね20~30%程度です。
また、個人では必要経費として認められない支出であっても、法人では損金として計上できる場合があります。
役員報酬や退職金制度の活用に加え、一定の要件を満たす交際費や保険料などを経費化できるケースもあります。
その結果、課税所得の圧縮につながることがあるでしょう。
このように、収益規模や資産状況によっては、法人化することで税負担を軽減できる場合があります。
資産管理会社を使った主な相続税対策

資産管理会社を活用した相続税対策には、複数の方法があります。
そのため、自分の資産構成に合った手法を選ぶことが重要です。
ここでは、資産管理会社を使った代表的な相続税対策の方法について紹介します。
(2)役員報酬で生前に家族へ財産を分散する
(3)株式を活用して事業承継と相続対策を進める
(4)法人保険を活用して納税資金を準備する
(1)不動産を法人に移転して相続税評価額を抑える
不動産を資産管理会社に移転すると、不動産そのものではなく法人株式が相続財産となります。
そのため、株式評価の方法によっては、相続税評価額を抑えられる場合があります。
ただし、資産管理会社を活用すれば必ず相続税が軽減されるわけではありません。
相続税の圧縮のみを主な目的とした不自然な取引と判断された場合には、税務署から否認される可能性もあります。
そのため、実際に導入する際は、事業上・資産管理上の合理的な目的を備えたうえで検討することが重要です。
また、法人が賃貸不動産を保有する場合、その不動産から生じる賃料収入は法人の収益となります。
そのため、個人の所得税ではなく法人税が適用されます。
個人の所得税率が高い方にとっては、法人税率との差額が節税効果として現れることがあるでしょう。
ただし、不動産取得税や登録免許税などの移転コストが発生します。
事前に費用対効果を検証しておくことが重要です。
(2)役員報酬で生前に家族へ財産を分散する
資産管理会社を設立して配偶者や子供を役員に就任させ、役員報酬を支払うことで、生前に財産を分散させることができます。
役員報酬は法人の経費として算入されるため、法人の課税所得を下げながら、家族への財産移転を進められます。
もちろん、役員報酬を受け取る家族は、それぞれ給与所得として課税されます。
しかし、1人ひとりの所得が下がることで、累進課税の税率も下がります。
また、給与所得控除が適用されるため、実質的な手取りが増える効果も期待できるでしょう。
ただし、役員報酬は「定期同額給与」などの税務上の要件を満たさないと、損金算入が認められません。
そのため、形式要件を正確に守ることが必要です。
(3)株式を活用して事業承継と相続対策を進める
事業を営んでいる方にとって、資産管理会社の株式を活用した事業承継は、相続税対策と一体的に取り組める手法です。
事業用資産を持株会社に移転し、後継者に持株会社の株式を段階的に贈与または売却することで、相続税の課税対象額を抑えながら事業の引き継ぎを進めることができます。
「事業承継税制(特例措置)」では、非上場株式の贈与税・相続税の納税猶予や免除を受けられます。
ただし、2027年9月30日までに特例承継計画を提出することが条件のひとつです。
そのため、事業を引き継ぐ予定がある方は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
(4)法人保険を活用して納税資金を準備する
法人保険を活用すると、将来の相続税の納税資金を計画的に準備できる場合があります。
資産管理会社を通じて法人名義で生命保険に加入すると、保険料を支払いながら解約返戻金を積み立てることができます。
保険商品によっては、保険料の一部または全部を損金として計上できるため、法人の税負担を抑えながら資金を準備できるのです。
また、法人オーナーが亡くなった際には、法人から遺族へ死亡退職金を支給することが可能です。
死亡退職金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられているため、相続税の負担軽減につながることでしょう。
ただし、保険商品によって税務上の取扱いや返戻率は異なります。
加入前に専門家へ相談しながら検討することをおすすめします。
資産管理会社の設立手順と費用

資産管理会社を実際に設立するためには、準備から登記完了まで、一定の手順を踏む必要があります。
ここでは、資産管理会社の設立手順と費用について紹介します。
(2)会社設立の流れと必要書類
(3)株式会社・合同会社の設立費用の目安
(4)設立後に必要な手続きと維持コスト
(1)設立前に決めておくべき基本事項
資産管理会社を設立する前には、会社設立に必要な基本事項をあらかじめ整理しておく必要があります。
設立前に決めておくべき主な事項は、会社の形態(株式会社または合同会社)、商号(会社名)、本店所在地、事業目的、資本金の額、役員構成、決算月です。
事業目的は、不動産の賃貸・管理、有価証券の保有・管理などを記載します。
また、将来の事業展開も見据えて、ある程度広めに記載しておくことが望ましいといえます。
ただし、事業の信頼性や取引先との関係を考慮すると、100万円~300万円程度に設定するケースが多く見られます。
役員は、家族を含む形で構成することが一般的です。
将来的に役員報酬による所得分散を実現できるよう、体制を整えておくことが重要です。
(2)会社設立の流れと必要書類
会社設立は、以下の流れで進めます。
1. 定款の作成・認証(株式会社の場合)
2. 法務局への設立登記申請
3. 税務署・都道府県・市区町村への設立届出
4. 社会保険の加入手続き(従業員がいる場合)
また、設立手続きでは次のような書類が必要になります。
・登記申請書
・払込証明書
・発起人の印鑑証明書
・役員の就任承諾書
・印鑑届出書
株式会社の場合は、作成した定款を公証役場で認証した後、法務局へ設立登記を申請します。
必要書類をそろえて登記が完了すると、会社が成立します。
その後、税務署などへ各種届出を行います。
手続きは複雑なため、司法書士や行政書士へ依頼するのも選択肢の1つです。
(3)株式会社・合同会社の設立費用の目安
資産管理会社の設立費用は、株式会社で約25万~30万円、合同会社で約10万~15万円が目安です。
| 項目 | 株式会社の場合 | 合同会社の場合 |
|---|---|---|
| 定款認証 | 公証人手数料:約5万円 | 不要 |
| 定款の印紙税 | 4万円(電子定款は不要) | 4万円(電子定款は不要) |
| 登録免許税 | 15万円または資本金の0.7%のいずれか高い額 | 6万円または資本金の0.7%のいずれか高い額 |
| その他の諸費用 | あり | あり |
なお、司法書士へ設立手続きを依頼する場合は、別途10万~15万円程度の報酬が発生するのが一般的です。
(4)設立後に必要な手続きと維持コスト
資産管理会社を設立した後は、毎年の税務申告や決算対応に加え、継続的な維持コストが発生します。
法人は毎事業年度ごとに決算を行い、法人税の確定申告をしなければなりません。
また、株主総会議事録などの書類作成・保管も必要です。
これらの業務を税理士に依頼する場合は、顧問料と決算申告報酬を合わせて、年間30万~100万円程度の費用がかかることがあります。
さらに、法人住民税の均等割は、赤字であっても課税されます。
そのため、利益がでていない場合でも、一定の税負担が発生します。
加えて、役員報酬を支払う場合には社会保険料の負担が生じます。
役員変更や本店移転などの登記事項変更を行う際には、登録免許税も必要です。
そのため、節税効果とのバランスを考慮したうえで活用することが重要です。
資産管理会社の活用で期待できる節税シミュレーション

資産管理会社の節税効果を具体的な数字で確認することで、設立の費用対効果を判断する材料になります。
ここでは、資産管理会社の活用で期待できる節税シミュレーションについて紹介します。
(2)役員報酬による所得分散の効果をシミュレーション
(3)個人保有と法人保有の税負担をシミュレーション
(1)不動産を法人へ移転した場合のシミュレーション
不動産を資産管理会社へ移転することで、株式評価の仕組みによって相続税評価額が下がり、相続税を軽減できる場合があります。
例えば、時価1億円の賃貸マンションを個人で保有している場合、土地は路線価評価(時価の約80%)、建物は固定資産税評価額(時価の約50~70%)で相続税評価額が算出されます。
そのため、評価額は約7,000万~8,000万円程度となることが一般的です。
一方、資産管理会社が同じ不動産を保有している場合、相続財産は不動産そのものではなく法人株式となります。
株式の評価額は純資産価額などを基に算定されるため、状況によっては個人保有の場合より評価額が低くなり、相続税負担を軽減できる可能性があります。

ただし、評価額が必ず下がるわけではなく、不動産の内容や法人の財務状況によって、結果は異なります。
また、相続税の圧縮のみを目的とした不自然な取引は、税務上問題となる可能性があります。
そのため、専門家へ相談しながら検討しましょう。
(2)役員報酬による所得分散の効果をシミュレーション
家族へ役員報酬を支払って所得を分散することで、世帯全体の税負担を軽減できる場合があります。
給与所得として扱われるため、給与所得控除を活用できる点も大きな特徴です。
また、不動産収入を個人で受け取る場合は、特定の人に所得が集中しやすくなります。
しかし、法人化して家族が実際に経営や事務作業に携わることで、貢献度に応じた報酬を支給できるようになります。
さらに、将来的な相続対策としても活用できます。
資産所有者に収益を集中させるのではなく、家族へ資金を移転していくことで、相続時の財産圧縮につながる場合があります。
ただし、役員報酬として認められるためには、実際に業務へ従事していることや、報酬額に合理性があることが必要です。
業務実態に見合わない高額な報酬は、損金として認められない可能性があります。
そのため、税理士などの専門家と相談しながら設定することが重要です。
(3)個人保有と法人保有の税負担をシミュレーション
個人保有と法人保有を比較すると、収益規模によっては法人保有の方が税負担を抑えられる場合があります。
例えば、年間賃貸収入が1,000万円、必要経費が400万円で課税所得が600万円となるケースを比較すると、次のようになります。
| 項目 | 個人保有 | 法人保有 |
|---|---|---|
| 年間賃貸収入 | 1,000万円 | 1,000万円 |
| 必要経費 | 400万円 | 400万円 |
| 課税所得 | 600万円 | 600万円 |
| 適用税率 | 所得税・住民税 約33% | 法人税等 約25% |
| 税額 | 約200万円 | 約150万円 |
| 年間の税負担差額 | ― | 約50万円軽減 |
もちろん、税率や税額は家族構成や所得状況、法人の規模などによって異なります。
しかし、このケースでは、法人保有にすることで年間約50万円の税負担軽減が期待できるでしょう。
資産管理会社の維持コストが年間50万円程度であれば、収益規模によっては費用対効果がプラスになるのです。
資産管理会社を設立するメリット

資産管理会社の設立には、メリットだけでなく、コストやリスクを伴うデメリットもあります。
ここでは、資産管理会社設立のメリットについて紹介します。
(2)資産の管理を一元化しやすくなる
(3)株式を活用して承継を進めやすい
(1)相続税・所得税の節税効果が期待できる
資産管理会社を活用すると、相続税評価額の圧縮や所得分散によって、税負担を軽減できる可能性があります。
相続税の面では、法人株式の評価を活用することで、相続税評価額を抑えられる場合があります。
また、所得税の面では、法人税率の適用や家族への役員報酬による所得分散が可能です。
(2)資産の管理を一元化しやすくなる
資産管理会社を活用すると、不動産や有価証券などの資産を法人単位で管理しやすくなります。
個人の財産を法人に集約することで、不動産の賃貸管理や収支の記録、税務申告などをまとめて行いやすくなります。
その結果、資産全体の状況を把握しやすくなり、管理業務の効率化につながるでしょう。
(3)株式を活用して承継を進めやすい
資産管理会社を設立すると、相続時に不動産や有価証券などを個別に分割するのではなく、法人の株式を承継する形で対応できるケースがあります。
そのため、資産の分散を防ぎながら、後継者へ計画的に財産を引き継ぎやすくなります。
また、株式を少しずつ贈与・移転することで、生前から段階的に承継を進めることも可能です。
将来的な相続トラブルを防ぎたい方や、後継者へ計画的に資産を移したい方にとっては、有効な方法のひとつと言えるでしょう。
資産管理会社を活用する際のリスクと注意点

資産管理会社を活用する際には、税務上のリスクや法律的な注意点を正確に理解しておくことが大切です。
ここでは、資産管理会社を活用する際の主なリスクと注意点について紹介します。
(2)税務調査の対象になりやすい
(3)資産移転や承継のタイミングを誤ると逆効果になる
(1)設立・維持にコストがかかる
資産管理会社は、設立時や設立後に継続的な費用負担が発生します。
会社設立時には、登録免許税や定款作成費用などが必要になり、設立後も毎年の決算申告、税理士報酬、法人住民税の均等割、社会保険料などの維持コストがかかります。
収益規模が小さい場合は、節税効果よりも維持コストが上回る可能性があります。
(2)税務調査の対象になりやすい
資産管理会社を設立すると、取引内容や節税手法によっては、税務調査で詳細な確認を受ける可能性があります。
特に、実質的な業務を行わず名義上だけ資産を保有している場合や、家族への役員報酬が業務実態に見合っていない場合は、租税回避とみなされるリスクがあります。
また、同族会社の行為計算否認によって、節税効果が認められなくなる可能性にも注意が必要です。
あわせて、取締役会や株主総会の議事録を作成・保管し、法人としての実態を示せるようにしておきましょう。
(3)資産移転や承継のタイミングを誤ると逆効果になる
資産管理会社への移転タイミングを誤ると、節税効果よりも税負担が大きくなる場合があります。
例えば、含み益が大きい不動産を法人へ移転する場合、個人から法人への売却時に譲渡所得税が発生します。
そのため、移転コストが大きくなる可能性があります。
また、相続直前に不動産を法人へ移転しても、相続税評価額の計算上、期待した効果が得られないケースがあります。
さらに、後継者がいない場合は、将来的な会社の清算や資産承継が負担となる可能性もあります。
資産管理会社と組み合わせたい相続税対策

資産管理会社は単独で使うよりも、他の相続税対策と組み合わせることで、より大きな節税効果が期待できます。
ここでは、資産管理会社と組み合わせると効果的な対策について紹介します。
(2)家族信託と組み合わせて認知症による資産凍結に備える
(3)生命保険と組み合わせて納税資金を準備する
(1)生前贈与と組み合わせて計画的に資産を移転する
資産管理会社は、生前贈与と組み合わせることで、将来の相続財産を計画的に減らしやすくなります。
資産管理会社の株式を毎年少しずつ後継者へ贈与することで、贈与税の基礎控除を活用しながら、段階的に資産を移転できます。
現金や不動産そのものを移転する場合と比べて、株式を活用することで柔軟な承継を行いやすい点が特徴です。
また、株式の評価額が低い段階から贈与を始めることで、贈与税の負担を抑えながら、将来の値上がり益を後継者へ移転できる可能性があります。
法人の業績や保有資産の状況によって株式評価額は変動します。
そのため、贈与のタイミングを検討することも重要です。
(2)家族信託と組み合わせて認知症による資産凍結に備える
家族信託を活用すると、オーナーの認知症などによる資産凍結リスクに備えながら、資産管理会社の運営を継続しやすくなります。
通常、オーナーが認知症になると、株主総会の決議など、法人の重要な意思決定が難しくなる可能性があります。
しかし、家族信託を活用しておけば、あらかじめ指定した受託者が株主としての権限を行使できます。
そのため、資産管理会社の運営を継続しやすくなります。
このように、家族信託と資産管理会社を組み合わせることで、認知症による資産凍結リスクに備えられます。
また、将来の資産承継を円滑に進める体制を構築しやすくなります。
(3)生命保険と組み合わせて納税資金を準備する
生命保険を併用することで、相続税の納税資金を計画的に準備しながら、節税効果を高められる場合があります。
資産管理会社が法人名義で生命保険に加入すると、保険商品によっては、保険料の一部を損金として計上しながら、将来の資金を積み立てることができます。
また、法人が受け取った死亡保険金を死亡退職金として遺族へ支給することで、死亡退職金の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を活用できるでしょう。
さらに、個人名義の生命保険と組み合わせることで、相続発生時の納税資金を確保しやすくなります。
このように、法人と個人の両方で生命保険を活用することで、資産承継や相続税対策をより計画的に進めることが可能です。
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資産管理会社の設立に向いている人と向いていない人

資産管理会社は、すべての方に適した対策ではありません。
資産規模や状況によって、向き不向きがあります。
ここでは、資産管理会社の設立に向いている人と向いていない人の特徴について紹介します。
(2)資産管理会社の設立に向いていない人
(1)資産管理会社の設立に向いている人
資産管理会社の設立に向いているのは、法人化による節税効果が設立・維持コストを上回る可能性が高い人です。
具体的には、不動産収入や配当収入が多く、個人の所得税率が高い方が挙げられます。
また、複数の賃貸物件を保有している方や、家族への所得分散を検討している方にも向いています。
事業承継や相続対策を見据えて、計画的に資産を移転したい方にも適しているでしょう。
さらに、長期的な視点で相続税や所得税の負担軽減を図りたい方にとっても、有効な選択肢となります。
資産管理を法人に集約し、承継を円滑に進めたい場合にも活用しやすい方法です。
(2)資産管理会社の設立に向いていない人
資産管理会社の設立に向いていないのは、法人化によるメリットよりも、設立・維持コストの負担が大きくなる可能性が高い人です。
例えば、年間の不動産収入や運用収益が少ない場合は、節税効果だけでは維持コストを回収できないことがあります。
この場合、法人化のメリットを十分に得られない可能性があります。
また、後継者がいない方や、高齢で長期的な法人運営が難しいと考えられる方も、慎重な検討が必要です。
さらに、経理業務や税務申告などの事務負担を避けたい方にも、資産管理会社の設立は適しているとは言えません。
法人運営に手間をかけたくない方も、慎重に判断した方がよいでしょう。
資産管理会社の設立・活用を専門家に相談すべき理由

資産管理会社の設立・活用は、税務、法務、資産運用が複合的に関わるため、適切な専門家に相談することが、安全に進めるための前提となります。
ここでは、資産管理会社の設立・活用を専門家に相談すべき理由について紹介します。
(2)相続税対策の実績がある専門家を選ぶ必要があるため
(3)早めに相談することで設立や資産移転の選択肢が広がるため
(1)税理士・司法書士・FPで確認すべき内容が異なるため
税理士、司法書士、ファイナンシャルプランナー(FP)はそれぞれ専門領域が異なります。
| 専門家 | 主な役割 | 対応内容 |
|---|---|---|
| 税理士 | 法人化の節税効果の試算 |
税務申告 会計処理 税務調査対応 |
| 司法書士 | 会社設立登記 |
定款作成支援 役員変更登記 不動産登記 |
| FP(ファイナンシャルプランナー) | 家計・資産全体の分析 |
相続対策の方向性検討 ライフプラン設計 |
税理士は法人設立後の税務申告や節税対策を担当する専門家であり、資産管理会社の活用を検討する際には最も重要な相談先のひとつです。
そのため、設立前のシミュレーション段階から相談することで、法人化の費用対効果を確認できます。
司法書士は会社設立登記や不動産登記などの法的手続きを担当します。
設立時だけでなく、役員変更や本店移転などの登記事項変更が発生した際にもサポートを受けることができます。
FPは相続対策だけでなく、老後資金や資産運用なども含めた家計全体の視点からアドバイスを行います。
資産管理会社の設立が家族の財務計画に与える影響を総合的に判断したい場合に役立ちます。
相続財産が多いケースや事業承継を伴うケースでは、税理士・司法書士・FPが連携しながら対応することで、より効果的な対策を進めやすくなります。
(2)相続税対策の実績がある専門家を選ぶ必要があるため
相続税に強い専門家を選ぶ際は、相続税対策や資産管理会社の活用に関する実績と経験を重視することが重要です。
具体的には、資産管理会社の設立支援実績があるか、相続税申告をどの程度取り扱っているかを確認すると良いでしょう。
また、事業承継や資産承継に関する提案経験が豊富かどうかも、確認しておきたいポイントです。
特に、相続税や事業承継を専門分野としている税理士は、一般的な税務顧問よりも高度な対策に対応できる場合があります。
また、専門家によって提案内容や費用は異なります。
そのため、1人だけでなく複数の専門家へ相談して、比較検討することも大切です。
初回相談を無料で実施している事務所も多いため、事前に相性や対応力を確認できます。
資産管理会社は、設立後も長期間にわたって運営が続きます。
そのため、目先の費用だけで判断するのではなく、継続的なサポートを受けられる信頼関係を築けるかどうかも、重要な選定ポイントとなります。
(3)早めに相談することで設立や資産移転の選択肢が広がるため
早めに専門家へ相談することで、活用できる相続対策の選択肢が増え、より効果的な対策を検討しやすくなります。
資産管理会社を活用した節税効果は、設立後すぐに大きな成果がでるものではありません。
長期間の運用を通じて、少しずつ積み上がっていくことが一般的です。
そのため、相談や設立の時期が遅くなるほど、節税効果を得られる期間は短くなります。
また、不動産の法人移転や生前贈与などは、資産の評価額や含み益の状況によって、効果やコストが変わります。
早い段階から準備を進めることで、状況に応じた最適なタイミングを選択しやすくなります。
さらに、認知症などによって判断能力が低下すると、資産管理会社の設立や家族信託の設定などが難しくなる可能性があります。
将来の選択肢を確保するためにも、元気なうちから専門家へ相談し、計画的に対策を進めることが重要です。
まとめ

今回は、資産管理会社が相続税対策に有効とされる理由や基本的な仕組み、具体的な活用方法、設立手順、メリット・デメリット、注意点について紹介しました。
資産管理会社の設立を検討すべき目安としては、不動産などの収益性資産が1億円以上ある場合や、個人の年間所得が900万円を超える場合などが挙げられます。
また、毎年の賃料収入が500万円を超える場合も、法人化による費用対効果をシミュレーションする価値があるでしょう。
ただし、資産規模が基準を下回る場合は、資産管理会社の設立にこだわる必要はありません。
生前贈与や生命保険の非課税枠の活用など、よりシンプルな相続対策から検討した方が良いケースもあります。
「自分の資産規模で法人化する意味があるのか知りたい」「資産管理会社を設立した場合の節税効果を確認したい」と考えている方は、まず専門家に相談することをおすすめします。
ココザスでは、経験豊富なファイナンシャルプランナーによる無料相談を受け付けています。
資産管理会社の活用や相続税対策についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
