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役員退職金の功績倍率とは?役職別の目安・計算例・税務リスクをわかりやすく解説

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役員退職金の功績倍率とは?役職別の目安・計算例・税務リスクをわかりやすく解説

「役員退職金の功績倍率は、どのように決めれば良いのか」
「役職ごとの倍率は、どのくらいが適正なのか」
「倍率を高く設定すると、税務上の問題が生じるのか」

功績倍率について、このような疑問を持つ経営者や法人担当者も多いのではないでしょうか。

功績倍率は、役員退職金の金額を左右する重要な要素です。

一般的に用いられる功績倍率方式では、退職時の報酬月額に勤続年数と功績倍率を掛けて、役員退職金を算定します。

ただし、功績倍率は自由に設定できるものではありません。

会社の規模や業績、役員の職責や貢献度などに照らして倍率が高すぎる場合は、税務上「不相当に高額」と判断され、退職金の一部が損金として認められない可能性があります。

一方で、倍率を低く設定しすぎると、長年にわたる役員の功績を十分に反映できないこともあります。

そのため、客観的な根拠に基づいて適正な倍率を設定することが重要です。

この記事では、功績倍率の意味や計算方法、役職別の目安、倍率を高く設定するリスク、税務調査に備えるための対策について解説します。

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この記事の監修者

持丸 雅士

ココザス株式会社|コンサルタント|FP

持丸 雅士

Masashi Mochimaru

突如起きた父親の入院・手術をきっかけにお金に対する不安を感じ、ファイナンシャル・プランナーの勉強を始める。
ファイナンシャルプランナー技能士2級及びAFP認定を取得後、お金に対する正しい知識・情報を世の中に伝えていきたいと思い、個人向け資産形成コンサルティング事業を展開しているココザス株式会社へ入社。
資産形成で不安を抱えているお客様の視点に立ち、年間800人以上の資産形成のサポートを行っている。
また現在はセミナー講師として講演会を行うなど、正しいお金の知識を広げる活動にも取り組んでいる。

役員退職金の基礎知識について

役員退職金の基礎知識について

功績倍率とは、役員退職金を計算する際に、退任する役員の会社への貢献度を数値で表す指標です。

設定する倍率によって役員退職金の金額が大きく変わるため、その意味や役割を正しく理解しておくことが重要です。

ここでは、功績倍率の基本的な考え方や必要とされる理由、ほかの計算方法との違いについて解説します。

(1)役員退職金における功績倍率の意味と役割
(2)役員退職金の計算に功績倍率が必要な理由
(3)功績倍率方式とほかの計算方法の違い

(1)役員退職金における功績倍率の意味と役割

功績倍率とは、役員退職金を「功績倍率方式」で計算する際に用いる倍率です。

退任する役員が会社にどの程度貢献したのかを、役員退職金の金額に反映させる役割があります。

功績倍率方式では、次の計算式を用いて役員退職金を算出します。

功績倍率方式における役員退職金の計算式

役員退職金 = 最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率

この3つの要素のうち、最終報酬月額と勤続年数は実際の報酬額や在任期間に基づいて決まります。

一方、功績倍率は、役職や在任中の功績、職責の重さ、同業他社の支給水準などを考慮して会社が設定する数値です。

功績倍率を高く設定するほど役員退職金も増えるため、どのような理由でその倍率を採用したのか、客観的に説明できる根拠を整えておくことが重要です。

例えば、最終報酬月額が80万円、勤続年数が25年、功績倍率が2.5倍の専務取締役を例に計算してみましょう。

最終報酬月額が80万円、勤続年数が25年、功績倍率が2.5倍の専務取締役の例

80万円 × 25年 × 2.5倍 = 5,000万円

この場合、功績倍率方式によって算出される役員退職金は5,000万円です。

功績倍率方式では、最終報酬月額が低くても勤続年数が長ければ、退職金はある程度の金額になります。

一方、勤続年数が短くても、最終報酬月額や功績倍率が高ければ、退職金額が大きくなることがあります。

このように、3つの要素の組み合わせによって支給額が変わる点が、功績倍率方式の特徴です。

(2)役員退職金の計算に功績倍率が必要な理由

功績倍率が必要とされるのは、役員によって会社への貢献度や職責の重さが異なり、一律の基準だけでは適切な退職金を算出しにくいためです。

例えば、代表取締役と取締役では、経営上の責任範囲や意思決定に関わる権限の大きさが異なります。

また、同じ役職であっても、新規事業の立ち上げや業績の向上などに大きく貢献した役員と、通常の職務を担った役員では、退職金の水準に差を設けることも考えられます。

功績倍率は、このような役員ごとの職責や貢献度の違いを退職金額に反映させるための調整係数です。

計算式に功績倍率を組み込むことで、それぞれの役員の功績に応じた退職金を設計しやすくなります。

(3)功績倍率方式とほかの計算方法の違い

役員退職金の計算方法には、功績倍率方式のほかに「1年あたり平均額法」や「報酬比例方式」があります。

1年あたり平均額法


1年あたり平均額法は、同業他社が支給した役員退職金を勤続年数で割り、1年あたりの平均額を算出したうえで、対象となる役員の勤続年数を掛けて計算する方法です。

同業他社の支給水準を直接反映しやすい一方で、比較対象となる企業の退職金データを収集することが難しいという課題があります。

報酬比例方式


報酬比例方式は、役員が在任中に受け取った役員報酬の累計額に、一定の割合を掛けて退職金を算出する方法です。

在任中の役員報酬が高いほど、退職金も大きくなる仕組みになっています。

功績倍率方式


功績倍率方式は、最終報酬月額や勤続年数、役職、会社への貢献度などをもとに役員退職金を算出する方法です。

計算式が明確で、支給額の根拠を示しやすいことから、役員退職金の算定方法として実務上広く用いられています。

役員退職金を計算する際の確認ポイント

役員退職金を計算する際の確認ポイント

功績倍率方式で役員退職金を算出する際は、最終報酬月額や勤続年数などを正しく確認することが重要です。

ここでは、最終報酬月額の確認方法と勤続年数の確認方法を紹介します。

(1)最終報酬月額の確認方法
(2)勤続年数の確認方法

(1)最終報酬月額の確認方法

最終報酬月額には、原則として役員が退任する直前に受け取っていた役員報酬の月額を用います。

退任直前の報酬月額は、役員報酬の変更を決議した議事録や源泉徴収票などから確認するのが一般的です。

注意が必要なのは、退任直前に役員報酬を不自然に引き上げている場合です。

例えば、退任の1~2年前に役員報酬を急激に増額し、その金額を基準に退職金を計算すると、税務署から「退職金を増やすために報酬を引き上げた」と判断される可能性があります。

その結果、役員退職金の一部が損金として認められないおそれもあります。

そのため、最終報酬月額は、役員の職務内容や会社の業績などを踏まえた、在任中の実態に即した金額であることが重要です。

(2)勤続年数の確認方法

勤続年数は、役員に就任した日から退任日までの期間をもとに計算します。

就任日や退任日は、株主総会・取締役会の議事録や登記事項証明書などで確認できます。

勤続年数を計算する際は、1年未満の端数をどのように扱うかを、役員退職金規程であらかじめ定めておくことが大切です。

例えば、次のような方法があります。

・1年未満の端数を切り捨てる
・月数に応じて按分する

どちらの方法を採用するかによって退職金額が変わる場合があるため、計算方法を明確にしておきましょう。

また、役員に就任する前に従業員として勤務していた期間を、勤続年数に含めるかどうかも規程で定めておく必要があります。

従業員としての勤務期間を含める場合は、役員期間とは異なる基準を設け、それぞれの期間を分けて計算するのが一般的です。

役職別の功績倍率の目安

役職別の功績倍率の目安

功績倍率の目安は、役職によって異なります。

適正な役員退職金を算定するためには、役職に応じた倍率を設定し、その根拠を明確にしておくことが重要です。

役職 功績倍率の目安
役職 2.0~3.0倍
功績倍率の目安 1.5~2.5倍
常務取締役 1.5~2.0倍
取締役 1.0~2.0倍
監査役 1.0~2.0倍

ここでは、役職別の功績倍率の一般的な目安を詳しく紹介します。

(1)代表取締役(社長)の功績倍率の目安
(2)専務・常務取締役の功績倍率の目安
(3)取締役の功績倍率の目安
(4)監査役の功績倍率の目安

(1)代表取締役(社長)の功績倍率の目安

代表取締役の功績倍率は、2.0~3.0倍程度が一般的な目安とされています。

代表取締役は、会社の経営全般を統括する最高責任者です。経営判断や業績に対して大きな責任を負うことから、役員のなかでも比較的高い功績倍率が設定される傾向があります。

ただし、功績倍率が3.0倍を超える場合は、税務調査で「不相当に高額」と判断される可能性に注意が必要です。

会社の業績や在任中の具体的な功績について、客観的な根拠を示すことが難しい場合は、一般的な目安の範囲内で設定することが重要です。

(2)専務・常務取締役の功績倍率の目安

専務取締役の功績倍率は1.5~2.5倍程度、常務取締役は1.5~2.0倍程度が一般的な目安とされています。

専務取締役や常務取締役は、代表取締役を補佐しながら、担当部門の業務執行において重要な責任を担う役職です。

一方で、会社全体の経営責任を負う代表取締役と比べると職責の範囲が異なるため、功績倍率の上限も低めに設定される傾向があります。

役員退職金規程に専務・常務取締役の功績倍率を定める際は、代表取締役との倍率の違いが、それぞれの職責の差を適切に反映したものになっているかを確認することが大切です。

(3)取締役の功績倍率の目安

取締役の功績倍率は、1.0~2.0倍程度が一般的な目安とされています。

取締役は、専務取締役や常務取締役と比べて、担当業務の範囲や会社の意思決定における影響力が限定的な場合があるため、功績倍率も低めに設定される傾向があります。

ただし、取締役であっても、担当業務や在任中の具体的な貢献度はそれぞれ異なります。

そのため、同じ取締役でも、功績に応じて倍率に差を設けることがあります。

例えば、新規事業の立ち上げなどを通じて会社の発展に大きく貢献した取締役には1.5~2.0倍、通常の業務を担った取締役には1.0~1.5倍といった形で区分する方法です。

このように倍率を細かく設定する場合は、どのような条件で倍率を決めるのか、判断基準を役員退職金規程に明記しておく必要があります。

(4)監査役の功績倍率の目安

監査役の功績倍率は、1.0~2.0倍程度が一般的な目安とされています。

監査役は、取締役の職務執行を監査する役割を担いますが、原則として会社の業務執行には直接関与しません。

そのため、取締役と比べて功績倍率が低めに設定されることがあります。

また、常勤監査役と非常勤監査役では、会社への関与度や職務の内容が異なります。

常勤監査役は、継続的に会社の状況を把握しながら監査業務を行う立場にあるため、非常勤監査役よりも高い倍率を設定することが考えられます。

監査役の功績倍率を決める際は、常勤・非常勤の違いや、実際の職務内容、会社への関与度などを踏まえて判断することが大切です。

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功績倍率を高く設定しすぎる税務上のリスク

功績倍率を高く設定しすぎる税務上のリスク

功績倍率を高く設定すると、役員退職金の支給額も大きくなります。

しかし、会社の規模や業績、役員の職責・功績に対して倍率が高すぎる場合は、税務上「不相当に高額」と判断される可能性があるため注意が必要です。

不相当に高額と認められた部分は損金に算入できず、法人の税負担が増えることもあります。

ここでは、功績倍率を高く設定しすぎる税務上のリスクを紹介します。

(1)役員退職金が不相当に高額と判断されるリスク
(2)同業他社との比較で損金算入が否認されるリスク
(3)追加の法人税や加算税が発生するリスク

(1)役員退職金が不相当に高額と判断されるリスク

法人税法では、役員退職給与のうち「不相当に高額な部分の金額」は、損金に算入できないと定められています。

ただし、どの程度の金額や功績倍率が「不相当に高額」にあたるのかについて、法律上の明確な数値基準はありません。

また、代表取締役の功績倍率が3.0倍を超える場合は、税務上の合理性について、より慎重に説明できるようにしておく必要があります。

3.0倍は法律上の上限ではなく、過去の裁判例や税務実務などをもとにした目安のひとつです。

3.0倍を超える功績倍率を設定する場合は、役員が在任中にどのような成果を上げ、会社へどの程度貢献したのかを、客観的な資料に基づいて説明できるようにしておくことが大切です。

(2)同業他社との比較で損金算入が否認されるリスク

過去の裁判例には、役員退職金が同業他社の支給水準と比べて高額であると判断され、一部の損金算入が認められなかった事例があります。

この事例では、勤続34年の代表取締役に対し、2億9,920万円の役員退職金が支給されました。

これに対して税務署は、類似する法人3社の支給状況をもとに算出した平均功績倍率1.06倍を用いて、適正額を算定しました。

その結果、適正な役員退職金は約3,964万円と判断され、約2億5,955万円が「不相当に高額な役員退職給与」にあたるとして、損金算入が認められませんでした。

この事例からも分かるように、役員退職金の適正性は、功績倍率だけで判断されるものではありません。

最終報酬月額や勤続年数、役員の職務内容、会社への具体的な貢献度に加え、同業他社の支給水準と比べて妥当な金額であるかどうかが総合的に判断されます。

そのため、客観的な根拠がないまま高額な退職金を設定すると、適正額を超える部分が損金として認められない可能性があります。

(3)追加の法人税や加算税が発生するリスク

役員退職金の損金算入が否認された場合、主に法人側の税負担が増えることになります。

法人側では、否認された金額を損金に算入できないため、その金額が課税所得に加算され、追加の法人税が発生します。

さらに、申告した税額が本来納めるべき税額より少なかった場合は、過少申告加算税や延滞税が課される可能性があります。

過少申告加算税は原則として10%で、一定額を超える部分には15%が適用される場合があります。

延滞税は、納付が遅れた期間などに応じて計算されます。

そのため、実際の追加負担は、否認された金額に対する法人税だけにとどまらないことがあります。

一方、役員退職金を受け取った本人への課税は、法人側で損金算入が否認されたからといって、原則として直ちに変わるものではありません。

ただし、法人側の税負担が増えた結果、会社と役員との間で退職金の返還や減額について検討が必要になるケースもあります。

功績倍率の設定は、法人と役員本人の双方に影響するため、一般的な目安だけで決めるのではなく、会社の実態や役員の功績に合った合理的な倍率を設定することが重要です。

功績倍率を適正に設定するための3つの方法

功績倍率を適正に設定するための3つの方法

功績倍率を適正に設定するためには、倍率の根拠を客観的に説明できるようにしておくことが重要です。

同業他社との比較や役員退職金規程の整備、株主総会での決議など、必要な手順を適切に進めることで、税務上のリスクを抑えながら合理的な役員退職金を設計しやすくなります。

ここでは、功績倍率を適正に設定するための方法について解説します。

(1)同業他社や同規模企業と比較して功績倍率を決める
(2)役員退職金規程に功績倍率の算定基準を明記する
(3)株主総会で役員退職金の支給を決議する

(1)同業他社や同規模企業と比較して功績倍率を決める

功績倍率を設定する際は、同業他社や同規模企業における役員退職金の支給水準と比較することが重要です。

税務上、役員退職金が「不相当に高額」であるかを判断する際は、同種の事業を営み、事業規模が類似する法人の役員退職給与の支給状況などが考慮されます。

そのため、自社の功績倍率や支給額が比較対象となる企業の水準から大きく離れていないかを確認し、その差を合理的に説明できる範囲に設定することが大切です。

比較する際は、業界団体が公表している経営指標や賃金統計、上場企業の有価証券報告書に記載された役員退職慰労金の情報などが参考になります。

ただし、自社と条件が近い企業のデータを集めることが難しい場合もあります。

その場合は、相続税や事業承継、法人税務に詳しい税理士へ相談し、業界水準や会社の実態を踏まえて検討すると良いでしょう。

(2)役員退職金規程に功績倍率の算定基準を明記する

功績倍率を役員退職金規程に明記する目的は、退職金の算定根拠を文書として残し、どのような基準で支給額を決めたのかを説明できるようにすることです。

規程がない場合、「なぜこの倍率を設定したのか」「その倍率が適正である根拠は何か」といった点を、支給後に説明することが難しくなる可能性があります。

役員退職金規程には、主に次の内容を記載します。

・役員退職金の計算式
・役職ごとの功績倍率
・功績倍率に幅を設ける場合の判断基準
・勤続年数や計算結果に生じる端数の取り扱い
・支給条件や決定手続き

例えば、役職ごとに倍率の範囲を設ける場合は、役員の職務内容や在任中の功績、会社への貢献度など、どのような基準で倍率を決めるのかも明確にしておくことが大切です。

規程は税理士などの専門家と相談しながら作成し、必要な社内手続きを経たうえで保管しておきましょう。

(3)株主総会で役員退職金の支給を決議する

功績倍率に基づいて役員退職金を算出した後は、会社として正式に支給を決定する必要があります。

株式会社では、役員退職慰労金の支給について、原則として株主総会の決議が必要です。

主な決議方法には、次の2つがあります。

・株主総会で具体的な退職金額を決議する
・株主総会で、退職金額の決定を取締役会へ一任する

取締役会へ一任する場合は、役員退職金規程などの一定の基準に基づいて支給額を決定することが重要です。

いずれの方法でも、決議の内容を議事録に正確に記録しなければなりません。

議事録には、決議日や出席者、退任する役員の氏名、支給額または取締役会へ一任する旨などを記載し、適切に保管しておきましょう。

功績倍率の設定根拠だけでなく、支給額を決定した手続きについても記録を残しておくことで、役員退職金の妥当性を説明しやすくなります。

功績倍率を適正に設定するための3つの方法

功績倍率方式で見る役職別の役員退職金シミュレーション

功績倍率方式で見る役職別の役員退職金シミュレーション

功績倍率方式を具体的なケースに当てはめることで、役員退職金の金額や課税対象となる退職所得の目安を把握しやすくなります。

ここでは、代表取締役と取締役の2つのケースを例に、役員退職金と退職所得の計算方法を紹介します。

(1)社長が勤続30年で退任する場合の計算例
(2)取締役が勤続20年で退任する場合の計算例

(1)社長が勤続30年で退任する場合の計算例

代表取締役が勤続30年で退任し、最終報酬月額100万円、功績倍率3.0倍で役員退職金を算定するケースを見てみましょう。

【シミュレーション条件】
項目 内容
役職 代表取締役(社長)
勤続年数 30年
最終報酬月額 100万円
功績倍率 3.0倍
1.役員退職金を計算する

役員退職金は、次の計算式で算出します。

役員退職金の計算式

役員退職金 = 最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率

今回のケースでは、最終報酬月額が100万円、勤続年数が30年、功績倍率が3.0倍であるため、次のとおりです。

100万円 × 30年 × 3.0倍 = 9,000万円

したがって、役員退職金は9,000万円となります。

2.退職所得控除額を計算する

勤続年数が20年を超える場合の退職所得控除額は、次の計算式で算出します。

勤続年数が20年を超える場合の退職所得控除額の計算式

退職所得控除額 = 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 – 20年)

今回のケースでは、勤続年数が30年であるため、次のとおりです。

800万円 + 70万円 ×(30年 − 20年)= 1,500万円

したがって、退職所得控除額は1,500万円となります。

3.課税対象となる退職所得を計算する

課税対象となる退職所得は、次の計算式で算出します。

課税対象となる退職所得の計算式

課税対象となる退職所得 = (役員退職金 − 退職所得控除額)÷ 2

今回のケースでは、役員退職金が9,000万円、退職所得控除額が1,500万円であるため、次のとおりです。

(9,000万円 − 1,500万円)÷ 2 = 3,750万円

したがって、課税対象となる退職所得は3,750万円となります。

【計算結果】
項目 金額
役員退職金 9,000万円
退職所得控除 1,500万円
課税対象となる退職所得 3,750万円

このケースでは、9,000万円の役員退職金に対して、課税対象となる退職所得は3,750万円です。

退職所得には退職所得控除が設けられており、一定の要件を満たす場合は、控除後の金額を2分の1にして計算します。

そのため、同額を給与として受け取る場合と比べて、課税対象となる金額を抑えられる可能性があります。

(2)取締役が勤続20年で退任する場合の計算例

続いて、取締役が勤続20年で退任し、最終報酬月額60万円、功績倍率2.0倍で役員退職金を算定するケースを見てみましょう。

【シミュレーション条件】
項目 内容
役職 取締役
勤続年数 20年
最終報酬月額 60万円
功績倍率 2.0倍
1.役員退職金を計算する

役員退職金は、次の計算式で算出します。

役員退職金の計算式

役員退職金 = 最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率

今回のケースでは、最終報酬月額が60万円、勤続年数が20年、功績倍率が2.0倍であるため、次のとおりです。

60万円 × 20年 × 2.0倍 = 2,400万円

したがって、役員退職金は2,400万円となります。

2.退職所得控除額を計算する

勤続年数が20年以下の場合の退職所得控除額は、次の計算式で算出します。

勤続年数が20年以下の場合の退職所得控除額の計算式

退職所得控除額 = 40万円 × 勤続年数

今回のケースでは、勤続年数が20年であるため、次のとおりです。

40万円 × 20年 = 800万円

したがって、退職所得控除額は800万円となります。

3.課税対象となる退職所得を計算する

課税対象となる退職所得は、次の計算式で算出します。

課税対象となる退職所得の計算式

課税対象となる退職所得 = (役員退職金 − 退職所得控除額)÷ 2

今回のケースでは、役員退職金が2,400万円、退職所得控除額が800万円であるため、次のとおりです。

(2,400万円 − 800万円)÷ 2 = 800万円

したがって、課税対象となる退職所得は800万円となります。

【計算結果】
項目 金額
役員退職金 2,400万円
退職所得控除 800万円
課税対象となる退職所得 800万円

このケースでは、2,400万円の役員退職金に対して、課税対象となる退職所得は800万円です。

功績倍率2.0倍は、取締役に設定される目安のひとつです。

ただし、この倍率を採用すれば必ず税務上妥当と認められるわけではありません。

実際に役員退職金を決定する際は、最終報酬月額や勤続年数だけでなく、会社の業績、役員の職務内容や貢献度、同業他社の支給水準なども踏まえて、総合的に判断することが重要です。

功績倍率と退職所得控除の関係から考える役員退職金の節税方法

功績倍率と退職所得控除の関係から考える役員退職金の節税方法

功績倍率方式で算定した役員退職金の手取り額を考える際は、退職所得控除との関係を理解しておくことが重要です。

功績倍率によって退職金額が変わる一方、課税対象となる退職所得は、勤続年数に応じた退職所得控除によって計算されます。

ここでは、功績倍率と退職所得控除の関係から考える役員退職金の節税方法について解説します。

(1)退職所得控除の計算方法を理解して税負担を抑える
(2)勤続年数に応じた控除額を把握して節税につなげる
(3)役員報酬と退職金のバランスを整えて節税効果を高める

(1)退職所得控除の計算方法を理解して税負担を抑える

退職所得控除額は、勤続年数に応じて次のように計算します。

勤続年数 退職所得控除額の計算式
20年以下 40万円 × 勤続年数 ※計算結果が80万円未満の場合は80万円
20年超 800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)

退職所得控除額は勤続年数が長いほど大きくなるため、退職金のうち課税対象となる金額を抑えられます。

また、一定の要件を満たす場合、退職所得は次の計算式で算出します。

退職所得の計算式

退職所得 =(退職金 – 退職所得控除額)÷ 2

退職所得控除を差し引いた後の金額が、原則として2分の1に圧縮されるため、同額を給与として受け取る場合と比べて、税負担を抑えられる可能性があります。

(2)勤続年数に応じた控除額を把握して節税につなげる

退職所得控除は、長期間にわたって勤務した人ほど控除額が大きくなる仕組みです。

勤続年数が20年以下の場合は、1年につき40万円ずつ控除額が増えます。

勤続年数が20年を超えると、20年を超えた部分については、1年につき70万円ずつ加算されます。

そのため、勤続年数が20年を超える役員は、それ以前と比べて退職所得控除額の増加幅が大きくなります。

功績倍率方式では、勤続年数が長くなるほど役員退職金の算定額も増える一方で、退職所得控除額も増加します。

そのため、長期間在任した役員は、退職所得控除による税負担の軽減を受けやすくなる場合があります。

(3)役員報酬と退職金のバランスを整えて節税効果を高める

役員報酬と役員退職金では、税務上の取り扱いが異なります

役員報酬は、毎年給与所得として所得税や住民税の課税対象になります。

一方、役員退職金は退職所得として扱われ、退職所得控除や原則として2分の1課税の仕組みが適用されます。

そのため、在任中の役員報酬を高く設定して毎年受け取る場合と比べて、役員報酬の一部を抑え、退任時に役員退職金として受け取るほうが、累計の税負担を抑えられるケースがあります。

ただし、役員報酬を低く設定しすぎると、功績倍率方式で用いる最終報酬月額も低くなり、算定される役員退職金の金額が小さくなる可能性があります。

また、役員報酬は法人税や所得税だけでなく、会社の資金繰りや役員本人の生活設計などにも影響します。

そのため、役員報酬と役員退職金のバランスは、在任期間や予定している退任時期、会社の業績や資金状況などを踏まえて、総合的に設計することが重要です。

法人保険と功績倍率を組み合わせた役員退職金の準備方法

法人保険と功績倍率を組み合わせた役員退職金の準備方法

法人保険を活用することで、功績倍率方式で算定した役員退職金の原資を計画的に準備できます。

ただし、法人保険を効果的に活用するためには、退職金の目標額や役員の退任時期をあらかじめ想定し、それに合った保険を選ぶことが重要です。

ここでは、法人保険と功績倍率を組み合わせた役員退職金の準備方法について解説します。

(1)法人保険を活用して役員退職金の原資を積み立てる
(2)解約返戻金の受取時期を役員の退任時期に合わせる
(3)功績倍率から退職金の目標額と必要資金を決める

(1)法人保険を活用して役員退職金の原資を積み立てる

法人保険を活用した退職金準備は、法人が毎年保険料を支払いながら、将来必要となる退職金の原資を計画的に確保する方法です。

一般的には、法人が契約者となり、役員を被保険者として生命保険に加入します。

支払った保険料の一部または全部は、保険の種類や契約内容によって、損金として計上できる場合があります。

そのため、法人税の負担を抑えながら、将来の退職金原資を準備できる可能性があります。

役員が退任する時期に保険を解約すると、法人は解約返戻金を受け取れます。

この解約返戻金を役員退職金の財源として活用すれば、退任時にまとまった資金を一度に用意する負担を抑えやすくなります。

ただし、保険料の全額を損金に算入できるとは限りません。

税務上の取り扱いは、保険の種類や契約時期、最高解約返戻率などによって異なるため、契約前に確認することが重要です。

(2)解約返戻金の受取時期を役員の退任時期に合わせる

法人保険を退職金の準備に活用する際は、役員の退任予定時期に合わせて解約返戻金を受け取れるように設計することが大切です。

法人保険のなかには、加入から一定期間が経過すると解約返戻率が高くなる商品があります。

解約返戻率が高くなる時期と役員の退任予定時期が重なるように、加入時期や保険期間を設定することで、解約返戻金を退職金の原資として活用しやすくなります。

一方、役員の退任時期が予定より早まったり遅れたりすると、解約返戻率が十分に高くない時期に解約することになる可能性があります。

そのため、退任計画に変更が生じた場合は、保険の解約時期や契約内容もあわせて見直すことが必要です。

また、複数の保険契約に分けて加入することで、退任時期の変更や必要資金の変化に対応しやすくなる場合があります。

解約時期を分散できるため、必要な金額に応じて段階的に資金を確保しやすくなります。

(3)功績倍率から退職金の目標額と必要資金を決める

法人保険を使って役員退職金を準備する場合は、先に功績倍率を検討し、退職金の目標額を算定しておくことが重要です。

功績倍率が決まると、最終報酬月額や勤続年数をもとに、将来必要となる退職金額の目安を計算できます。

目標額が明確になれば、必要な解約返戻金や保険料、加入期間なども検討しやすくなります。

一方、退職金額を決めないまま法人保険へ加入すると、退任時に解約返戻金が不足したり、反対に必要以上の資金を準備したりする可能性があります。

そのため、法人保険を活用する際は、次の順序で検討することが大切です。

法人保険を活用する際の順序
1
役員の退任予定時期を想定する
2
最終報酬月額や勤続年数を確認する
3
合理的な功績倍率を設定する
4
退職金の目標額を算定する
5
目標額に合わせて保険を選ぶ

税務上妥当な功績倍率と退職金額を検討したうえで、会社の資金状況に合った法人保険を選ぶことで、無理のない退職金準備につながります。

法人保険の税務上の取り扱いや適切な功績倍率は、会社の状況によって異なります。

税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家へ相談しながら進めることが大切です。
法人保険を活用する際の順序

功績倍率に関するよくある質問(Q&A)

功績倍率に関するよくある質問(Q&A)

功績倍率には、法律上の上限や分掌変更時の取り扱いなど、判断に迷いやすい点があります。

ここでは、功績倍率に関するよくある質問と回答を紹介します。

Q1. 功績倍率に上限の規定はある?
Q2. 分掌変更時に功績倍率はどう扱う?
Q3. 任期途中で退任した役員の功績倍率はどう決める?
Q4. 功績倍率は役員退職金の手取り額にどう影響する?

Q1. 功績倍率に上限の規定はある?

功績倍率に、法律上の明確な上限は定められていません。

法人税法では、役員退職金のうち「不相当に高額な部分」は損金に算入できないとされていますが、具体的に何倍まで認められるのかは示されていません。

ただし、実務上は、代表取締役の功績倍率が3.0倍を超える場合、税務調査でその合理性を詳しく確認される可能性があります。

なお、3.0倍は法律上の上限ではなく、過去の裁判例や税務実務をもとにした目安のひとつです。

3.0倍を超える功績倍率を設定する場合は、在任中にどのような成果を上げ、会社へどの程度貢献したのかを、客観的な資料とともに説明できるようにしておくことが重要です。

Q2. 分掌変更時に功績倍率はどう扱う?

分掌変更に伴って役員退職金を支給する場合は、役職名の変更だけでなく、実質的に退職したと認められるかどうかが重要です。

例えば、代表取締役を退任して取締役に就任し、役員報酬が大幅に減額されたうえ、経営上の権限や職務内容も明確に縮小している場合は、退職の実態があると判断される可能性があります。

このようなケースでは、退任前の役職や在任中の功績などを踏まえた功績倍率を用いて、役員退職金を算定することが一般的です。

一方、役職名だけが変わり、経営への関与や役員報酬、職務内容がほとんど変わっていない場合は、実質的に退職したとは認められない可能性があります。

その場合、役員退職金の損金算入が否認されるおそれがあります。

分掌変更に伴って役員退職金を支給する際は、変更前後の役割や権限、報酬水準などを整理し、退職の実態を説明できるようにしておくことが大切です。

Q3. 任期途中で退任した役員の功績倍率はどう決める?

任期途中で退任した役員の功績倍率は、退任理由や在任中の貢献度などを踏まえて決定します。

病気やケガなど、本人に責任のない理由で退任する場合は、通常と同程度の功績倍率を適用することがあります。

一方、自己都合で退任する場合は、通常より低い功績倍率を設定するケースもあります。

また、会社に損害を与えたことが退任理由となった場合は、役員退職金を支給しない、または減額して支給することも考えられます。

このように退任理由によって取り扱いを変える場合は、役員退職金規程に判断基準を明記しておくことが重要です。

あわせて、功績倍率や支給額を決定した理由を客観的に説明できるよう、退任の経緯や在任中の功績に関する資料を残しておきましょう。

Q4. 功績倍率は役員退職金の手取り額にどう影響する?

功績倍率の違いは役員退職金の総額に直接影響するため、最終的な手取り額も変わります。

功績倍率を1.0倍高くすると、役員退職金は次の金額だけ増加します。

最終報酬月額×勤続年数×1.0倍

例えば、最終報酬月額100万円、勤続年数30年の代表取締役の場合、功績倍率が2.0倍と3.0倍では、役員退職金に次の差が生じます。

100万円 × 30年 × 1.0倍 = 3,000万円

この場合、功績倍率3.0倍で算定した役員退職金は、2.0倍で算定した場合よりも3,000万円多くなります。

退職金のうち退職所得控除額を超えた部分は、一定の要件を満たす場合、原則として2分の1にした金額が課税対象です。

そのため、功績倍率を高くすれば受取額も増える一方で、課税対象となる退職所得も増え、所得税や住民税の負担が大きくなる可能性があります。

功績倍率を決める際は、役員退職金の総額だけでなく、退職所得控除や税負担を考慮した手取り額も確認することが大切です。

まとめ

まとめ

今回は、役員退職金の功績倍率の目安や計算方法、適正な倍率を設定する際のポイント、税務上の注意点について紹介しました。

役員退職金の功績倍率は、役職や勤続年数だけでなく、会社の規模や業績、役員の職務内容、会社への貢献度、同業他社の支給水準などを踏まえて設定することが重要です。

また、役員退職金を考える際は、税金だけでなく、退職後の生活資金や保有資産、今後の事業計画や事業承継なども含めて、総合的に検討する必要があります。

ココザスでは、経験豊富なファイナンシャルプランナーが、会社の状況や資産状況、今後のライフプランをもとに、役員退職金の準備や退職後を見据えた資産形成、資金計画をご提案しています。

「自社に適した功績倍率を知りたい」「役員退職金の原資をどのように準備すればよいか分からない」という方は、ぜひココザスの無料相談をご利用ください。

この記事の監修者

持丸 雅士

ココザス株式会社|コンサルタント|FP

持丸 雅士

Masashi Mochimaru

突如起きた父親の入院・手術をきっかけにお金に対する不安を感じ、ファイナンシャル・プランナーの勉強を始める。
ファイナンシャルプランナー技能士2級及びAFP認定を取得後、お金に対する正しい知識・情報を世の中に伝えていきたいと思い、個人向け資産形成コンサルティング事業を展開しているココザス株式会社へ入社。
資産形成で不安を抱えているお客様の視点に立ち、年間800人以上の資産形成のサポートを行っている。
また現在はセミナー講師として講演会を行うなど、正しいお金の知識を広げる活動にも取り組んでいる。

保有資格

AFP(日本FP協会認定)

2級ファイナンシャル・プランニング技能士

第一種証券外務員

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