役員社宅で節税できる3つの理由

役員社宅が節税対策として活用されるのは、一定の要件を満たすことで、会社が負担する家賃の一部を役員への給与として扱わずに済むためです。
制度の仕組みを理解しておくことで、法人と役員個人のそれぞれに、どのような負担軽減が期待できるのかを把握しやすくなります。
ここでは、役員社宅で節税できる3つの理由について紹介します。
(2)法人が負担する家賃を損金算入できるため
(3)役員報酬を抑えて所得税や社会保険料を軽減できるため
(1)一定の要件を満たせば家賃負担分が給与課税されないため
役員社宅で節税できる理由のひとつは、会社が提供する住居が一定の条件を満たせば、役員への給与ではなく社宅として扱われるためです。
通常、役員に現金で報酬を支給すると、その金額は所得税・住民税・社会保険料の計算対象になります。
一方、会社が法人名義で住居を借り上げて役員へ提供し、役員が国税庁の基準に基づいて算出した賃貸料相当額を負担していれば、会社が負担した家賃部分は原則として給与課税の対象になりません。
つまり、役員へ同程度の経済的な利益を提供する場合でも、現金で役員報酬を支給するより、社宅として住居を提供するほうが税負担を抑えられる可能性があります。
(2)法人が負担する家賃を損金算入できるため
役員社宅では、一定の要件を満たすことで、会社が負担した家賃を法人の損金として処理できます。
一般的には、会社が物件の家賃を貸主へ支払い、役員から国税庁の基準に基づいて算出した賃貸料相当額を徴収します。
会社が支払った家賃から、役員が負担した賃貸料相当額を差し引いた部分が、実質的な法人負担となります。
この法人負担分は、適切に役員社宅として運用されていれば、法人の損金として計上することが可能です。
その結果、法人の課税所得が抑えられ、法人税の負担軽減につながる場合があります。
ただし、会社が家賃を支払えば、どのような場合でも損金として認められるわけではありません。
(3)役員報酬を抑えて所得税や社会保険料を軽減できるため
役員社宅を導入することで、役員報酬の一部を住居の提供へ置き換え、役員個人の税負担を抑えられる場合があります。
例えば、月額100万円の役員報酬を80万円へ減額し、その代わりに会社が月額20万円の社宅家賃を負担するケースを考えてみましょう。
役員が負担する賃貸料相当額が月額2万~3万円程度であれば、一定の要件を満たすことで、会社が負担する残りの家賃部分は給与課税の対象になりません。
そのため、現金で役員報酬を受け取って家賃を支払う場合と比べて、所得税や住民税の負担を抑えながら住居の提供を受けられる可能性があります。
所得税は所得が高くなるほど税率も高くなるため、役員報酬が高い人ほど、報酬を適切に見直すことによる効果が大きくなる場合があります。
また、社会保険料は標準報酬月額を基に計算されるため、役員報酬の減額によって標準報酬月額が下がれば、役員個人と法人の双方で社会保険料の負担が軽減される可能性もあります。
このように、役員社宅は法人税だけでなく、役員個人の所得税・住民税や、法人と個人が負担する社会保険料を含めて、総合的な負担軽減が期待できる制度です。

役員社宅の仕組みと一般社宅との違い

役員社宅による節税効果を適切に活用するためには、まず制度の基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。
ここでは、役員社宅の仕組みと一般社宅との違いについて紹介します。
(2)一般従業員向けの社宅との違いについて
(1)役員社宅の基本的な仕組みについて
役員社宅とは、会社が役員のために賃貸物件を借り上げたり、会社が所有する物件を提供したりして、役員の住居として利用させる制度です。
賃貸物件を利用する場合は、会社が貸主と賃貸借契約を結び、家賃を支払います。
その後、会社から役員へ物件を貸し出す形で利用するのが一般的です。
一方、会社が物件を所有している場合は、その物件を役員へ直接貸し出します。
ただし、役員社宅を利用するからといって、役員が家賃をまったく負担しなくてよいわけではありません。
会社が負担した家賃が役員への給与として課税されないようにするためには、役員が国税庁の定める方法で算出した「賃貸料相当額」を会社へ支払う必要があります。
例えば、実際の家賃が月額20万円で、賃貸料相当額が月額3万円だったとします。
この場合、役員が会社へ3万円を支払い、残りの17万円を会社が負担します。
一定の要件を満たして適切に運用されていれば、会社負担分は原則として役員への給与課税の対象にならず、法人側では経費として処理できます。
この仕組みによって、役員個人と法人の双方で税負担の軽減が期待できます。
なお、役員が負担する賃貸料相当額は、実際の家賃に一定の割合を掛けて決めるものではありません。
住宅の床面積や建物・土地の固定資産税課税標準額などをもとに、国税庁の定める計算方法で算出します。
そのため、役員の負担額は物件ごとに異なります。
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(2)一般従業員向けの社宅との違いについて
役員社宅と一般従業員向けの社宅は、いずれも会社が住居を提供する制度ですが、税務上の取り扱いが異なります。
一般従業員向けの社宅では、従業員から一定額以上の家賃を徴収していれば、会社が負担する家賃について給与課税されないのが一般的です。
一方、役員社宅では、国税庁の定める計算方法に基づいて「賃貸料相当額」を算出し、その金額を役員から徴収する必要があります。
役員社宅は、一般従業員向け社宅よりも賃料の計算方法が複雑であり、適正な負担額を設定することが重要です。
役員から徴収する家賃が賃貸料相当額を下回っている場合は、その差額や会社負担分が役員への給与とみなされ、所得税などが課される可能性があります。
そのため、役員社宅を導入する際は、一般従業員向け社宅と同じ基準で運用するのではなく、役員社宅に適用されるルールに沿って賃料を設定しましょう。
役員社宅で役員が負担する家賃の計算方法

役員社宅を活用する際は、役員が会社へ支払う「賃貸料相当額」を適切に設定することが重要です。
役員から徴収する家賃が税務上必要とされる金額を下回ると、その差額が役員給与として課税され、想定していた節税効果を得られない可能性があります。
賃貸料相当額の計算方法は、住宅の規模や設備、会社の所有物件か借り上げ物件かなどによって異なります。
ここでは、役員社宅で役員が負担する家賃の計算方法について解説します。
(2)小規模住宅以外の賃貸料相当額を計算する
(3)豪華社宅は市場家賃を基準に賃料を設定する
(1)小規模住宅の賃貸料相当額を計算する
小規模な住宅とは、法定耐用年数が30年以下の建物では床面積132㎡以下、法定耐用年数が30年を超える建物では床面積99㎡以下の住宅を指します。
一般的なマンションやアパートの多くは、小規模な住宅に該当します。
小規模な住宅の賃貸料相当額は、次の3つを合計して計算します。
1. 建物の固定資産税課税標準額 × 0.2%
2. 12円 × 建物の総床面積(㎡)÷ 3.3㎡
3. 敷地の固定資産税課税標準額 × 0.22%
参考|国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」
固定資産税課税標準額とは、固定資産税を計算する際の基準となる金額です。
実際の購入価格や現在の市場価格ではなく、固定資産課税台帳に登録された価格をもとにしています。
会社が賃貸マンションを借り上げている場合は、貸主や管理会社に、固定資産税課税標準額がわかる資料について確認する必要があります。
例えば、次の条件で賃貸料相当額を計算してみましょう。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 建物の固定資産税課税標準額 | 500万円 |
| 敷地の固定資産税課税標準額 | 1,000万円 |
| 床面積 | 60㎡ |
それぞれの金額は、次のように計算します。
・建物:500万円 × 0.2% = 10,000円
・床面積:12円 × 60㎡ ÷ 3.3㎡ = 約218円
・土地:1,000万円 × 0.22% = 22,000円
合計額は、次のとおりです。
したがって、役員が負担する賃貸料相当額は、月額約3万2,000円となります。
実際の家賃が月額15万円であれば、役員が約3万2,000円を会社へ支払い、残りを会社が負担する形です。
一定の要件を満たして適切に運用されていれば、役員が賃貸料相当額を負担することで、会社負担分は原則として給与課税の対象になりません。
なお、賃貸料相当額は、建物や敷地の固定資産税課税標準額、床面積によって異なります。
物件ごとに必要な資料をそろえ、個別に計算しましょう。
(2)小規模住宅以外の賃貸料相当額を計算する
小規模な住宅に該当しない場合は、会社が所有する物件か、ほかから借り受けた物件かによって計算方法が異なります。
会社所有の社宅では、次の金額を合計し、12で割った金額が1カ月当たりの賃貸料相当額となります。
・建物の固定資産税課税標準額 × 12%
・敷地の固定資産税課税標準額 × 6%
ただし、法定耐用年数が30年を超える建物については、建物の固定資産税課税標準額に掛ける割合が12%ではなく10%となります。
計算式は、次のとおりです。
(建物の固定資産税課税標準額 × 12%または10% + 敷地の固定資産税課税標準額 × 6%) ÷ 12
会社が他者から借りた住宅を役員へ貸与する場合は、次の2つを比較し、高いほうの金額が賃貸料相当額となります。
会社所有の社宅として計算した賃貸料相当額
会社が貸主へ支払う家賃の50%
例えば、会社所有の社宅として計算した賃貸料相当額が月額5万円、会社が支払っている家賃が月額16万円だったとします。
・会社所有の社宅として計算した金額:5万円
・実際の家賃16万円 × 50%:8万円
この場合は、高いほうの8万円が、役員が負担すべき賃貸料相当額となります。
小規模な住宅以外では、会社が物件を所有しているか借り上げているかによって計算方法が変わるため、契約形態を確認してから計算することが大切です。
(3)豪華社宅は市場家賃を基準に賃料を設定する
豪華社宅に該当するかどうかは、床面積だけで決まるものではなく、次のような要素を総合的に考慮して判断されます。
・物件の取得価額
・会社が支払っている家賃
・建物の内装や外装
・設備の内容
床面積が240㎡を超える住宅については、これらの要素を踏まえて、社会通念上一般的な社宅と認められるかが判断されます。
また、床面積が240㎡以下であっても、プールなど一般的な社宅にはない設備や、役員個人の好みを強く反映した設備がある場合は、豪華社宅に該当する可能性があります。
豪華社宅に該当した場合、役員が負担する家賃は「通常支払うべき使用料に相当する額」を基準に設定します。
つまり、近隣にある同程度の物件の賃料などを参考に、市場家賃に相当する金額を算定することになります。
例えば、同程度の住宅が市場で月80万円で貸し出されている場合は、その80万円程度が適正な家賃と判断されます。
そのため、役員も市場家賃に近い金額を負担する必要があり、会社が負担できる家賃はほとんどありません。
このように、豪華社宅は一般的な役員社宅のように低い賃貸料相当額が認められないため、節税効果は限定的です。
役員社宅による節税を目的とする場合は、物件が豪華社宅に該当しないか事前に確認しておくことが重要です。
役員社宅の節税効果をシミュレーション

役員社宅を導入すると、役員報酬の一部を社宅家賃に置き換えることで、所得税・住民税や社会保険料の負担を抑えられる可能性があります。
ただし、実際の効果を確認するためには、役員個人の負担だけでなく、役員報酬の減額や会社が負担する家賃、法人税への影響まで含めて比較することが重要です。
ここでは、役員報酬の一部を社宅家賃に置き換えたケースをもとに、役員個人と法人にどのような負担の変化が生じるのかをシミュレーションします。
(2)所得税と住民税と社会保険料の軽減額を試算する
(3)法人の損金算入による節税効果を試算する
(1)役員報酬の一部を社宅家賃に振り替えた場合の効果
役員報酬を月額120万円から100万円へ引き下げ、その代わりに会社が月額20万円の社宅家賃を負担するケースを考えてみましょう。
役員が会社へ支払う賃貸料相当額を月額3万円とすると、役員の実質的な住宅費負担は3万円です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 役員報酬の減額 | 月額20万円 |
| 会社が支払う社宅家賃 | 月額20万円 |
| 役員が負担する賃貸料相当額 | 月額3万円 |
| 会社の実質的な家賃負担 | 月額17万円 |
このケースでは、役員報酬が月額20万円減る一方で、役員は月額3万円の負担で、家賃20万円の住宅を利用できます。
一定の要件を満たして適切に運用されていれば、会社が実質的に負担する17万円は、原則として役員への給与課税の対象になりません。
そのため、役員が現金で報酬を受け取り、その中から家賃を支払う場合と比べて、所得税・住民税・社会保険料の負担を抑えられる可能性があります。
(2)所得税と住民税と社会保険料の軽減額を試算する
役員報酬を月額120万円から100万円へ引き下げた場合、年間報酬は次のように変わります。
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 月額役員報酬 | 120万円 | 100万円 |
| 年間役員報酬 | 1,440万円 | 1,200万円 |
| 年間報酬の差額 | ― | 240万円減少 |
年間の役員報酬が240万円減少するため、所得税や住民税の計算対象となる給与収入も減ります。
仮に、所得税と住民税を合わせた税率を30%として単純計算すると、負担軽減額の目安は次のとおりです。
税率を40%とした場合は、次のようになります。
この例では、年間で約72万~96万円の所得税・住民税負担が軽減される計算です。
ただし、実際の税額は、所得控除や扶養状況、ほかの所得、適用される所得税率などによって異なります。
そのため、上記の金額はあくまで単純計算による目安です。
また、社会保険料は標準報酬月額をもとに計算されます。
役員報酬の見直しによって標準報酬月額が下がれば、社会保険料の負担も軽減される可能性があります。
社会保険料は役員個人と会社の双方が負担するため、標準報酬月額が下がった場合は、それぞれの負担軽減につながることがあります。
(3)法人の損金算入による節税効果を試算する
役員社宅を適切に運用している場合、会社が支払う家賃は損金として計上できます。
例えば、会社が月額20万円の社宅を借り上げ、役員から賃貸料相当額として月額3万円を徴収するケースを考えてみましょう。
| 項目 | 月額 |
|---|---|
| 会社が支払う家賃 | 20万円 |
| 役員から受け取る賃貸料相当額 | 3万円 |
| 会社の実質的な負担 | 17万円 |
会社の実質的な家賃負担は月額17万円となり、年間では次の金額になります。
この204万円を損金として計上した場合の法人税負担への影響について、実効税率を23.2%として単純計算すると、次のとおりです。
社宅家賃の支出だけを取り出して考えると、約47万円の法人税負担を抑える効果が見込まれます。
ただし、役員社宅の導入に伴って役員報酬を減額した場合は、その分だけ役員報酬として計上していた損金も減少します。
今回の例では、役員報酬を年間240万円減額する一方で、会社の実質的な家賃負担は年間204万円です。
そのため、社宅家賃の204万円だけを見て「法人税が約47万円安くなる」と判断することはできません。
役員社宅の導入効果を確認する際は、次の項目を総合的に比較することが大切です。
・会社が負担する社宅家賃
・役員から徴収する賃貸料相当額
・法人税
・所得税・住民税
・法人と役員が負担する社会保険料
役員社宅は、法人税だけを抑える制度ではなく、法人と役員個人を合わせた全体の税金・社会保険料負担を見直す仕組みです。
実際にどの程度の効果が見込めるかは、会社の利益や役員報酬、社宅の家賃、役員の所得状況などによって異なります。
導入前に税理士へ相談し、法人と個人の負担をまとめてシミュレーションしておくと安心です。
役員社宅を導入する3つのステップ

役員社宅を適切に導入するためには、必要な手続きを順番に進めることが大切です。
ここでは、役員社宅を導入する3つのステップについて紹介します。
(2)役員社宅規程を整備して運用ルールを明確にする
(3)役員から賃貸料相当額を毎月徴収する
(1)物件の賃貸借契約を法人名義で締結する
役員社宅を導入する際は、物件の賃貸借契約を法人名義で締結する必要があります。
役員社宅として税制上の取り扱いを受けるためには、会社が契約者となり、役員へ社宅として貸し出すことが前提です。
一方、役員個人が契約した物件の家賃を会社が補助する場合は、役員社宅ではなく住宅手当として扱われることがあります。
その場合、会社が負担した家賃が給与として課税される可能性があるため、注意が必要です。
物件を探す際は、法人契約に対応しているかを事前に確認しましょう。
また、法人契約では、登記事項証明書や法人の印鑑証明書、決算書などの提出を求められる場合があります。
必要書類は貸主や管理会社によって異なるため、契約前に確認しておくと安心です。
(2)役員社宅規程を整備して運用ルールを明確にする
役員社宅を適切に運用するためには、社宅規程または役員社宅規程を作成しておくことが重要です。
規程を整備することで、役員社宅の運用ルールを明確にできるほか、税務調査の際にも制度を適切に運用していることを説明しやすくなります。
役員社宅規程には、一般的に次のような内容を定めます。
・賃貸料相当額の計算方法
・役員から家賃を徴収する方法
・退任・退職時の取り扱い
・転勤や役職変更があった場合の取り扱い
例えば、「役員が退任した場合は、退任日から〇カ月以内に社宅を明け渡す」といったルールを定めておけば、退任時のトラブルを防ぎやすくなります。
また、役員社宅規程は作成するだけでなく、必要に応じて取締役会などの承認を受けたうえで保管しておくことが大切です。
税制改正や社内制度の変更があった場合は、規程の内容を見直し、必要に応じて改訂しましょう。
規程の作成に不安がある場合は、税理士や社会保険労務士などの専門家へ相談しながら進めると安心です。
(3)役員から賃貸料相当額を毎月徴収する
役員社宅では、国税庁が定める方法で算出した賃貸料相当額を、役員から毎月徴収する必要があります。
適正な家賃を継続して徴収することで、役員社宅として税制上の取り扱いを受けられます。
一方、役員から家賃を徴収していなかったり、賃貸料相当額よりも少ない金額しか徴収していなかったりすると、不足分が役員への給与とみなされる場合があります。
その結果、所得税や住民税の課税対象となる可能性があるため、注意しましょう。
家賃の徴収方法としては、毎月の役員報酬から賃貸料相当額を差し引く方法が一般的です。
給与明細に「社宅使用料」などの項目を設けておくと、毎月の徴収状況を記録として残しやすくなります。
また、賃貸料相当額は、固定資産税課税標準額などをもとに計算します。
固定資産税評価額や課税標準額が変更される場合もあるため、最新の情報を確認し、必要に応じて徴収額を見直しましょう。
役員社宅の節税で押さえたい税務上の注意点

役員社宅は、一定の要件を満たして適切に運用することで、法人と役員個人の税負担を抑えられる可能性があります。
一方で、役員から徴収する家賃や契約名義、物件の内容が税務上のルールに沿っていない場合、会社が負担した家賃が役員給与として課税されたり、税務調査で指摘を受けたりすることがあります。
役員社宅の節税効果を正しく得るためには、制度を導入する前に税務上の取り扱いを確認し、適切な形で運用することが重要です。
ここでは、役員社宅を活用する際に押さえておきたい3つの注意点について解説します。
(2)豪華社宅と判定されると時価家賃が適用される
(3)個人名義の物件では会社負担分が給与とみなされる
(1)賃貸料相当額を下回ると不足分が給与課税される
役員から徴収する家賃が、国税庁の定める賃貸料相当額を下回っている場合は、その不足分が役員への給与として扱われる可能性があります。
例えば、賃貸料相当額が月額3万円であるにもかかわらず、役員から月額1万円しか徴収していない場合、不足する2万円が給与とみなされることがあります。
その結果、役員には所得税や住民税などが課されるほか、法人側でも税務上の修正を求められる可能性があります。
こうしたリスクを避けるためには、算出した賃貸料相当額を毎月確実に徴収することが重要です。
また、賃貸料相当額の計算に用いる固定資産税課税標準額は、評価替えなどによって変更されることがあります。
定期的に計算内容を確認し、必要に応じて役員から徴収する家賃を見直しましょう。
(2)豪華社宅と判定されると時価家賃が適用される
役員社宅が豪華社宅に該当すると、一般的な役員社宅に用いる賃貸料相当額の計算式は適用されません。
豪華社宅の場合は、市場で通常支払われると考えられる家賃、いわゆる時価家賃を基準に役員の負担額を決めます。
そのため、役員が負担する家賃は一般的な役員社宅よりも高くなり、想定していた節税効果を得られない可能性があります。
豪華社宅に該当するかどうかは、床面積だけで判断されるわけではありません。
物件の取得価額や家賃、内装、外装、設備などを含めて総合的に判断されます。
高額な住宅や広い物件、特殊な設備を備えた住宅を役員社宅として利用する場合は、契約前に税理士へ相談し、豪華社宅に該当する可能性がないか確認しておくことが大切です。
(3)個人名義の物件では会社負担分が給与とみなされる
役員が個人名義で契約している賃貸物件は、役員社宅として認められない場合があります。
個人契約の物件について会社が家賃を負担すると、役員社宅ではなく住宅手当などとして扱われ、その負担額が役員への給与として課税される可能性があります。
役員社宅として税務上の取り扱いを受けるためには、原則として会社が物件の契約者となり、役員へ社宅として貸し出す形にすることが必要です。
すでに役員個人の名義で契約している物件を社宅として利用したい場合は、法人名義へ変更できるか、貸主や管理会社へ確認しましょう。
物件や契約内容によっては名義変更に対応していない場合もあるため、役員社宅として利用できるかを事前に確認しておくことが大切です。
役員社宅が税務調査で否認されやすいケースと防止策

役員社宅は、適切に運用していないと、税務調査で役員社宅としての取り扱いを否認される可能性があります。
想定外の給与課税を避けるためにも、問題になりやすいケースを事前に把握し、必要な書類や記録を整えておくことが大切です。
ここでは、役員社宅が税務調査で否認されるケースと対策について紹介します。
(2)契約書や賃料徴収記録を整えて適正な運用を証明する
(3)導入前後に税理士へ相談して税務リスクを抑える
(1)税務調査で問題になりやすい役員社宅の運用例を確認する
税務調査で役員社宅が問題になりやすいケースには、次のようなものがあります。
・物件の契約名義が役員個人になっている
・社宅規程が整備されていない
・役員本人ではなく、家族だけが居住している
・物件の家賃が市場相場と比べて著しく高い
特に、役員の配偶者や子供だけが居住し、役員本人は別の場所で生活している場合は、役員社宅としての実態がないと判断される可能性があります。
その結果、会社が負担した家賃の全額が役員への給与とみなされ、課税されるおそれがあるため注意が必要です。
また、物件の家賃が周辺の相場と比べて著しく高い場合も、過度な節税を目的とした取引ではないかと疑われる可能性があります。
役員社宅を導入する際は、契約形態や居住実態、家賃の水準などを確認し、制度の趣旨に沿って運用することが大切です。
(2)契約書や賃料徴収記録を整えて適正な運用を証明する
役員社宅を適切に運用していることを説明するためには、関連する書類や記録を整理し、保管しておくことが重要です。
税務調査では、物件の契約内容や賃貸料相当額の計算根拠、役員から実際に家賃を徴収しているかなどを確認される場合があります。
主に、次のような書類を保管しておきましょう。
・会社が毎月の家賃を支払ったことがわかる振込明細
・役員から賃貸料相当額を徴収した記録
・社宅使用料が記載された給与明細
・固定資産税課税標準額がわかる資料
・賃貸料相当額の計算書
・役員社宅規程
・社宅制度の導入や規程の承認に関する取締役会議事録
これらの資料を日頃から整理しておけば、税務調査の際にも、役員社宅を適切なルールに基づいて運用していることを説明しやすくなります。
書類を作成するだけでなく、書類の内容と、実際の家賃の支払いや役員からの徴収状況が一致していることも重要です。
(3)導入前後に税理士へ相談して税務リスクを抑える
役員社宅は、物件の選び方や契約方法、役員が負担する家賃の設定を誤ると、想定していた節税効果を得られない可能性があります。
場合によっては、会社が負担した家賃が役員への給与とみなされ、追加で税金を納めなければならないこともあります。
そのため、役員社宅を導入する前に、顧問税理士へ相談しておくことが大切です。
例えば、次のような項目は、専門的な確認が必要になる場合があります。
・固定資産税課税標準額の確認方法
・役員社宅規程の内容
・法人名義で契約する際の手続き
・物件が豪華社宅に該当するかどうか
特に、豪華社宅に該当するかどうかは、床面積だけでなく、家賃や設備、内装などを含めて個別に判断されます。高額な物件を検討している場合は、契約前に確認しておくと安心です。
また、導入後も、固定資産税課税標準額の変更に合わせた賃貸料相当額の見直しや、制度を適切に運用できているかを定期的に確認してもらうことで、税務上のリスクを抑えやすくなります。
役員社宅制度を活用する際によくある質問(Q&A)

役員社宅の導入を検討する際は、持ち家や中古マンションでも利用できるのか、家族も一緒に住めるのかなど、さまざまな疑問が生じるでしょう。
ここでは、役員社宅制度についてのよくある質問に回答します。
Q2. 中古マンションでも役員社宅にできる?
Q3. 役員社宅には家族も住める?
Q4. 借り上げ社宅と会社所有社宅の違いは?
Q1. 持ち家でも役員社宅を利用できる?
役員社宅として扱うためには、原則として会社が物件を所有するか、法人名義で借りた物件を役員へ貸し出す必要があります。
持ち家を役員社宅として活用する方法としては、役員から会社へ物件を売却し、その後、会社から役員へ貸し出す形が考えられます。
ただし、役員が会社へ持ち家を売却すると、譲渡所得税が発生する可能性があります。
会社側にも、不動産取得税や登録免許税、物件の購入費用、維持管理費などの負担が生じます。
そのため、持ち家を会社へ売却して役員社宅にする方法が、必ずしもすべてのケースで有利になるとは限りません。
税務や法務上の検討事項も多いため、導入前に税理士などの専門家へ相談し、メリットとデメリットを十分に確認することが大切です。
Q2. 中古マンションでも役員社宅にできる?
中古マンションは、新築時と比べて建物の固定資産税課税標準額が低くなっている場合があります。その結果、役員が負担する賃貸料相当額も低くなるケースがあります。
ただし、賃貸料相当額は建物の固定資産税課税標準額だけで決まるわけではありません。
土地の固定資産税課税標準額や床面積なども用いて、物件ごとに計算する必要があります。
賃貸料相当額を算出する際は、固定資産税課税標準額がわかる資料を準備しましょう。
必要な書類や入手方法は物件や契約形態によって異なるため、不動産会社や貸主、税理士へ確認しながら進めると安心です。
Q3. 役員社宅には家族も住める?
役員本人が主な居住者として実際に住んでおり、その家族が同居する形であれば、基本的に問題ありません。
一方で、役員本人が別の場所で暮らしており、家族だけが社宅に居住している場合は注意が必要です。
このようなケースでは、役員本人の居住用住宅としての実態がないと判断され、会社が負担した家賃が役員への給与として課税される可能性があります。
役員社宅は、あくまでも役員本人の居住用住宅として提供する制度です。役員本人が実際に居住していることが前提となります。
Q4. 借り上げ社宅と会社所有社宅の違いは?
両者の主な違いは、会社が物件を借りるか、購入して所有するかという点です。
借り上げ社宅は、会社が物件を購入する必要がないため、会社所有社宅と比べて初期費用を抑えやすいという特徴があります。
また、転勤や家族構成の変化などに応じて住み替えやすく、柔軟に運用できる点もメリットです。
一方で、物件を利用している間は毎月の家賃が発生するため、継続的な支出が必要になります。
会社所有社宅は、会社が物件を購入して役員へ貸し出す方法です。導入時にはまとまった購入資金が必要になります。
ただし、建物については減価償却費を経費として計上できるほか、不動産を会社の資産として保有できる点が特徴です。

借り上げ社宅と会社所有社宅のどちらが適しているかは、会社の資金状況や利用予定期間、役員の住み替え予定などによって異なります。
それぞれの初期費用や維持費、運用のしやすさを比較したうえで、自社に合った方法を選びましょう。
まとめ

今回は、役員社宅の仕組みや節税効果、役員が負担する賃貸料相当額の計算方法、導入時の手続き、税務上の注意点について紹介しました。
役員社宅の効果は、役員報酬や家賃、会社の利益、適用される税率などによって異なります。
そのため、法人税だけでなく、役員個人の税金や社会保険料も含めて、法人と個人の負担を総合的に比較することが大切です。
ココザスでは、経験豊富なファイナンシャルプランナーが、法人と個人の収入・資産状況や今後のライフプランを踏まえ、役員社宅の活用を含めた資金計画や資産対策をご提案しています。
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