セミリタイアの必要額はいくら?全額を貯蓄でまかなう場合の目安

セミリタイアに必要な金額は、「毎月の生活費」と「何歳まで暮らすか」の掛け算でおおまかに把握できます。
以下の表は、年齢別に「働かずに暮らした場合の80歳までに必要な資金」をシミュレーションしたものになります。
これはあくまで”働かない期間を全額貯蓄でまかなう場合”の上限額です。

年齢が若いほど残りの生活期間が長くなり、必要資金も大きくなります。
ただし、セミリタイアでは収入を得ながら生活するのが前提となるため、この額すべてを準備する必要はありません。
年間240万円(=月20万円)かかる生活でも、年間60万円の収入があるなら、実際に必要なのは残りの180万円×年数です。
収入の見通しに応じて、目標額を柔軟に調整していくことが重要です。
セミリタイア後にかかる支出とは?見落としやすい費用に注意

セミリタイア後も、生活費のほかに継続的にかかる費用や、想定しにくい支出が発生します。
こちらでは、見落としやすい代表的な支出を紹介します。
年金・健康保険・住民税などの固定支出
セミリタイア後も、国民年金や健康保険、住民税といった公的な支出は継続して発生します。
たとえ働いていなくても、これらは「前年の所得」や「地域の均等割(所得ゼロでも発生する定額部分)」などをもとに請求される仕組みです。
とくに注意したいのが、「無職=無課税」という誤解です。
実際には前年の給与や退職金があると、翌年の住民税や健康保険料が高額になるケースもあります。
住宅維持費・医療費・突発的な支出
住まいにかかる費用は、賃貸・持ち家を問わずセミリタイア後も続きます。
賃貸であれば、家賃が定期的に必要です。
また、持ち家の場合であっても、修繕費や固定資産税などの維持コストはかかり続けます。
さらに、突然のケガや病気による医療費、自然災害による損害、家電の故障なども予測が難しい出費に含まれるでしょう。
セミリタイア後の暮らし方|生活スタイルと収入確保の例

セミリタイア後は、資金面の準備だけでなく「どう過ごすか」も重要なテーマになります。
こちらでは、生活スタイルや収入を確保する方法の実例を紹介します。
地方移住・海外生活など生活コストを抑えるスタイル
生活費を抑えたい場合は、都市部を離れて地方で暮らす方法があります。
たとえば、人口が少ないエリアでは家賃が低く、地元のスーパーや直売所で食材を安く手に入れられる環境があります。
自炊を中心にすれば、出費を抑えた生活が可能となるでしょう。
また、海外に拠点を移すケースもあります。
物価が低めの国を選び、日本の業務をリモートで継続することで、生活拠点を移しつつ収入を維持する形です。
インターネット環境が整った地域であれば、これまでと同じ働き方を続けながら、支出を抑えることができます。
趣味やスモールビジネスで収入を得る暮らし方
セミリタイア後に「完全に働かない」のではなく、自分のペースで働きながら生活を支えるスタイルです。
たとえば、週に数回だけ働く、趣味を生かした教室を開く、ブログやハンドメイド販売などのスモールビジネスで収入を得るといった方法です。
このような働き方は、収入面の補填だけでなく、生活のリズムや社会とのつながりを保つ
意味でもメリットがあります。
セミリタイアに向いている人の特徴

セミリタイアが合うかどうかは、資産額だけで判断できるものではありません。
性格や価値観によって、向き・不向きは大きく分かれます。
ここでは、セミリタイアに適した人の特徴を紹介します。
お金を計画的に使える/管理できる人
毎月何にどれだけかかっているかを把握し、収入に応じて支出を調整できる人は、セミリタイア後の生活にも適応しやすくなります。
たとえば、コンビニ利用やサブスクの契約など、小さな出費を見直さずに放置していると、ひと月に何万円も無駄にするケースがあるでしょう。
支出の積み重ねによって、セミリタイア後の生活資金が予定より早く底を突くことも考えられます。
孤独に強く、自由を楽しめる
自分の時間を主体的に使える人は、セミリタイア後の生活にもなじみやすい傾向があります。
セミリタイアを始めると、職場を離れることで人との接点が減ったり、社会的な役割から離れたりする場面が増えてきます。
そんな中でも、一人の時間に価値を見出せるタイプであれば、自分のペースで毎日を充実させられるでしょう。
「誰かに予定を決めてもらうほうが楽」と感じるタイプより「日々の過ごし方を自分で決めたい」と考える人にセミリタイアは向いています。
セミリタイアを実現するために準備しておきたい3つの基盤

セミリタイアを目指すには、事前の段取りが欠かせません。
ここでは「生活費の管理」「無理なく得られる収入の確保」「公的制度の活用」といった3つの基盤に分けて、セミリタイアに向けたポイントを整理します。
1.生活費を管理し、家計を引き締める
まずは支出の整理から始めましょう。
とくに通信費や家賃、サブスクなどの固定費は、一度見直せば毎月の支出を自動的に減らせるようになり、その効果が継続します。
具体例としては、次のようなものがあります。
- スマホを格安SIMに変える
- 家賃の高い部屋から住み替える
- 使っていないサブスクを解約する
あわせて、家計簿アプリなどを使って支出の内訳を記録することもおすすめです。
お金の流れがスムーズに把握できるため、無駄な出費にも気づきやすくなるでしょう。
「何に、どれくらい使っているか」がわかる状態をつくっておくと、収入に見合った生活を続けやすくなります。
2.収入を無理なく得られる形にしておく
セミリタイア後の働き方は人それぞれです。
「どれくらいの作業量なら日常に取り入れられるか」を考えながら収入の形を決めておくことが大切です。
たとえば次のような方法があります。
- 年間配当を見込んだ長期投資
- noteや広告など、更新頻度が少なくても続けられる副業
- 週に数回だけ請ける業務委託や単発ワーク
働き方のイメージを持っておくと、資金の見通しも立てやすくなるでしょう。
3.iDeCo・NISAなどを資産形成に組み込む
資産を効率よく育てるには、税制優遇のある制度を積極的に活用しましょう。
たとえばiDeCoは掛金が所得控除の対象となるため、節税しながら老後資金を準備できます。
一方、NISAは運用益が非課税で、必要なときに資金を引き出せる柔軟さが魅力です。
目的に応じて使い分けると効果的です。
- じっくり老後資金をつくりたい → iDeCo
- 必要に応じて途中で引き出したい → NISA
投資に慣れていない方でも、少額から始められる制度です。
毎月の積立に組み込んでおくと、セミリタイア後の資金計画にもゆとりが生まれるでしょう。
セミリタイアがうまくいかない理由|よくある行き詰まりのパターン

セミリタイアは自由な生き方を目指せる一方で、油断すると計画が崩れる場面も出てきます。
理想だけで突き進むのではなく、陥りやすいリスクも把握しておくことが大切です。
実際にどのような場面でつまずきやすいのか、代表的なケースを紹介します。
1.支出の見積もりが甘いケース
支出を過小に見積もっていると、セミリタイア後の生活は想定より早く行き詰まる恐れがあります。
たとえば、インフレによる物価の上昇に加え、家電の買い替えや思わぬ医療費など突発的な支出が重なれば、計画通りに資金を維持するのは難しくなります。
さらに、節約生活を前提にしていた場合でも、我慢が続かずストレスから出費が増えるケースもあるでしょう。
こうした「想定外」に備えるには、余裕を持った予算設定が欠かせません。
2.収入源の組み立てが不十分で生活が不安定になるケース
収入の内容や働き方を明確にしないまま退職すると、早い段階で資産に頼らざるを得なくなる可能性があります。
とくに時給や業務量に左右される働き方では、体調や求人状況の変化によって収入が不安定になるおそれがあります。
セミリタイアを安定して続けるには、支出と照らし合わせた収入の見通しを事前に立てておくことが重要です。
3.孤立や目的喪失でメンタルに支障をきたすケース
生活費に余裕があっても、日々に張り合いがなければ、セミリタイア生活の継続は難しくなります。
仕事を辞めたことで人とのつながりが減ったり、朝起きて何をするかが決まっていなかったりすると、時間を持て余しやすくなるでしょう。
「働かない自由」を得た直後は、しばらくのあいだ解放感を味わえるかもしれません。
しかし数ヶ月、あるいは数年と経つうちに、ふとした瞬間に空しさを感じる人もいます。
セミリタイア後の生活を続けていくには、「毎日どんなふうに過ごしたいか」を事前にイメージしておくことが重要です。
セミリタイアとは?完全リタイア・FIREとの違い

セミリタイアとは、仕事量を調整しながら、自由な時間を確保する生き方の一つです。
フルリタイアやFIRE、サイドFIREと混同されがちですが、それぞれの違いを以下に簡単に整理しました。

仕事をしながら生活する点で、セミリタイアはFIREとは異なるアプローチです。
労働収入を活かすことで、FIREよりも少ない資金で実現しやすくなっています。
【まとめ】セミリタイアできるかどうかは「いくら」より「どう暮らすか」

月20万円の生活を40年間続けるとすれば、必要資金は約9,600万円です。
ただし、労働収入を得る前提なら、必要額は6,000万円程度まで抑えられるかもしれません。
支出を見直せばさらに少なくて済むでしょう。
つまり、「いつまでに・どんな暮らしをするか」が決まれば、必要な金額は自ずと見えてきます。
まずは生活費を見積もり、何にいくらかかるかを把握することから始めてみましょう。
