リスク選好と選好の変化

個々の投資における判断基準を突き詰めれば、リスクをどれだけ許容できるか(=どれだけ大きなリターンを求めるか)に帰着します。
これはファイナンス用語では、「リスク選好」と呼ばれるものです。
国債投資はローリスクローリターン、株式投資において小型株はハイリスクハイリターン、大型株はローリスクローリターン、そして実物不動産投資はミドルリスクミドルリターン、などと一般的に言われます。
ザックリとはそうかもしれませんが「個々により異なる」というのが実際でしょう。
リスク中立的な立場に立てばリスクとリターンの関係は線形のグラフ(Y=aX)となりますが、リスク愛好型の場合はY=aX2型のグラフとなり、リスク回避型の場合はその逆となります。

投資家のリスク許容度は様々状況で変化しますが、一般的には初期はリスク回避型の方が多く、多少のリターンを得ることができれば、次第にリスク許容度は大きくなる傾向にあります。
このようなリスク選好と投資経験値により、どんな商品に投資をするかが決まってきます。
もちろん、ステディに「いつも同じ」という投資家もいます。
しかし、誰もがリスクを最小限にして大きなリターンを得たいと考えるのは自然のことです。
そこで、「どうすれば、それが実現できるか」の答えの1つがポートフォリオ戦略です。
ポートフォリオ理論

ポートフォリオ(Portfolio)とは、株式や債券などの資産の組み合わせのことを指します。
そして、複数の資産を組み合わせた分散化されたポートフォリオを作成することによって、「より低いリスクで高いリターンが期待できる」、これがポートフォリオ理論「Modern Portfolio Theory(MPT)」と呼ばれるものです。
MPTは、アメリカの経済学者マーコウィツ氏(1990年:ノーベル経済学賞)が1950~60年代に論文で発表した分散投資理論がベースとなっています。
J-REITにポートフォリオ理論があてはまるのか?

ポートフォリオ理論は不動産投資にもあてはまるのか?は議論の分かれるところです。
各J-REIT銘柄は相当数の物件を保有しており、その意味では分散が効いています。
しかし、J-REIT銘柄にはオフィスのみ、レジデンスのみ、物流施設のみ、ホテルのみといったシングルアセットクラスタイプもあります。
一方で、これらのうち2つを組み合わせた複合型、あるいは多くのアセットクラスを組み合わせた総合型があります。

ポートフォリオ理論に基づけば、シングルアセットタイプよりも総合型の方が「分散が効いている」ということになり、投資のパフォーマンスが上がることになりますが、現実には、「そうとも言えない場合もある」という状況になっています。
J-REITは、保有する資産を主にメインスポンサー関連企業のアセットマネジメント会社が運用します。
その収益が配当原資となります。
不動産の運用は専門性が高く、とくにホテルや物流施設などのオペレーショナルアセットでは高い専門性が求められます。
シングルアセットクラスの場合はアセットクラスの分散は聞いていませんが、一方で、その専門性を活かして、高いパフォーマンスを上げているということもあり一概には言えない、という状況です。