企業年金は一時金と年金どっちがお得?

企業年金の受け取り方を考える際は、まず一時金と年金がそれぞれどのようなケースに向いているのかを把握しておくことが大切です。
ここでは、一時金と年金それぞれが有利になりやすいケースと、両方を併用する場合の考え方について紹介します。
(2)老後の安定収入を重視するなら年金受取
(3)一時金と年金の併用が有利になるケースもある
(1)税金を抑えやすいのは一時金受取
税金をできるだけ抑えたい場合は、一時金で受け取るほうが有利になるケースが多いです。
企業年金を一時金で受け取る場合、原則として「退職所得」として扱われます。
退職所得には「退職所得控除」が適用され、控除額を超えた部分についても、原則として2分の1が課税対象となるため、税負担を抑えやすい仕組みになっています。
特に、勤続年数が長いほど退職所得控除額も大きくなるため、長期間勤務した方ほど一時金受取のメリットを受けやすいでしょう。
一方、年金として受け取る場合は、原則として「雑所得」として毎年課税されます。
公的年金などの収入と合算して計算されるため、受給額によっては税負担が大きくなる可能性があります。
(2)老後の安定収入を重視するなら年金受取
老後の生活費を安定して確保したい場合は、年金での受け取りが向いています。
年金として受け取れば、定期的に一定額が振り込まれるため、毎月の生活費を計画しやすくなります。
特に、公的年金だけでは生活費が不足する方や、まとまった資金を自分で管理することに不安がある方にとっては、年金受取のメリットを感じやすいでしょう。
ただし、企業年金を年金として受け取る場合は、原則として雑所得として毎年課税されます。
公的年金と企業年金を合わせた収入が増えるほど、所得税や住民税などの負担が大きくなる可能性があります。
そのため、年金受取を選ぶ際は、「毎月いくら受け取れるか」だけでなく、公的年金と合わせた場合の税負担まで確認しておくことが大切です。
(3)一時金と年金の併用が有利になるケースもある
税金を抑えつつ、老後の安定収入も確保したい場合は、一時金と年金を併用する方法もあります。
例えば、退職所得控除が1,500万円で、企業年金が3,000万円ある場合、1,500万円を一時金として受け取り、残りの1,500万円を年金として受け取る方法が考えられます。
一時金として受け取る部分には退職所得控除を活用し、残りを年金として受け取ることで、一時金による税負担の軽減と、年金による安定した収入の両方を期待できます。
ただし、一時金と年金を併用できるかどうかや、選択できる受取割合は、企業年金の制度によって異なります。
併用を検討する場合は、まず勤務先の企業年金制度を確認しましょう。
企業年金とは?仕組みと退職金との違い

企業年金の受け取り方を適切に判断するためには、まず制度の基本的な仕組みを理解しておくことが大切です。
ここでは、企業年金の仕組みや退職金との違いについて紹介します。
(2)企業年金と退職金の違い
(3)企業年金の種類について
(1)企業年金の仕組み
企業年金とは、企業が従業員の老後の生活を支えるために設ける、公的年金に上乗せする年金制度です。
国民年金や厚生年金などの公的年金に加えて給付されることから、「第3の年金」と呼ばれることもあります。
企業年金の原資は、企業が拠出する掛金などによって形成されます。
制度によっては、従業員自身も掛金を拠出する仕組みです。
また、掛金を誰が負担するのか、どのように運用するのか、どのような方法で受け取るのかといった点も制度ごとに異なります。
公的年金との大きな違いは、すべての会社に企業年金の導入が義務付けられているわけではない点です。
勤務先によって導入している制度は異なるため、自分が企業年金に加入しているかどうかは、就業規則や会社から交付される資料、人事・総務部門などで確認できます。
(2)企業年金と退職金の違い
退職金は、退職時に一時金として受け取る形が一般的なのに対し、企業年金は退職後に年金として受け取ることを基本とする制度です。
退職金では、退職時にまとまった金額を受け取る「退職一時金」が代表的です。
一方、企業年金は老後の生活を支えることを目的としており、退職後に一定期間にわたって年金形式で給付されます。
ただし、企業年金であっても、制度によっては一時金としてまとめて受け取ったり、一時金と年金を組み合わせて受け取ったりできる場合があります。
| 比較項目 | 退職金 | 企業年金 |
|---|---|---|
| 支給時期 | 退職時 | 退職後など |
| 支給形式 | 一時金が一般的 | 一時金・年金など |
| 税務上の扱い | 原則として退職所得 | 一時金:退職所得、年金:雑所得 |
| 制度の根拠 | 就業規則・退職金規程など | 企業年金制度の規約など |
| 導入状況 | 会社によって異なる | 会社によって異なる |
なお、退職金と企業年金の一時金を受け取る場合は、それぞれの受取時期によって、退職所得控除の計算に影響することがあるため注意が必要です。
特に、同じ年に退職金と企業年金の一時金を受け取る場合は、退職所得控除がどのように計算されるのか確認しておきましょう。
受取時期によって税負担が変わる可能性もあるため、事前に勤務先や税理士などへ確認しておくと安心です。
(3)企業年金の種類について
企業年金は大きく「確定給付企業年金(DB)」と「企業型確定拠出年金(DC)」があります。
DBは、将来受け取る給付額の算定方法があらかじめ決められている制度です。
運用については企業側が責任を負うため、加入者自身が運用商品を選ぶ必要は基本的にありません。
一方、DCは企業が拠出した掛金をもとに、加入者自身が運用商品を選んで運用する制度です。
運用結果によって将来の受取額が変わるため、運用リスクは加入者本人が負うことになります。
| 比較項目 | 確定給付企業年金(DB) | 企業型確定拠出年金(DC) |
|---|---|---|
| 給付額 | 給付算定方法があらかじめ定められている | 運用実績によって変動 |
| 運用リスク | 原則として企業側が負担 | 加入者本人が負担 |
| 運用商品の選択 | 原則として不要 | 加入者自身が選択 |
| 受け取り方 | 制度の規約によって異なる | 一時金・年金など |
| 受け取り開始時期 | 制度の規約によって異なる | 原則60歳から75歳までの間 |
DBは給付額の算定方法が決まっているため、老後の資金計画を立てやすい点が特徴です。
一方、DCは自分で運用商品を選ぶ必要がありますが、運用成果によっては受取額が増える可能性もあります。
企業年金の受け取り方を検討する際は、まず自分がDBとDCのどちらに加入しているのかを確認することが大切です。
加入している制度によって、選択できる受け取り方や税金の扱いが異なるためです。
企業年金の一時金・年金・併用の受け取り方

企業年金には、一時金・年金・併用の3つの受け取り方があります。
ただし、選択できる方法や税金の扱いは制度によって異なります。
ここでは、企業年金の一時金・年金・併用の受け取り方を紹介します。
(2)企業年金を年金で受け取る仕組み
(3)一時金と年金を併用して受け取る仕組み
(1)企業年金を一時金で受け取る仕組み
企業年金を一時金で受け取る場合、退職に伴って支払われる一時金などは、原則として退職所得として扱われます。
受け取るタイミングは制度によって異なり、退職時に受け取るケースもあれば、一定の年齢に達した時点で受け取るケースもあります。
退職所得に該当する企業年金の一時金には、原則として退職所得控除が適用されます。
退職所得控除を差し引き、残った金額の2分の1が課税対象となるため、税負担を抑えやすい点が特徴です。
また、一度にまとまった資金を受け取れるため、住宅ローンの返済や大きな支出に充てたり、NISAなどを活用して自分で運用したりすることもできます。
一方で、まとまった資金を自分で管理する必要があるため、老後の生活費として計画的に使うことが大切です。
(2)企業年金を年金で受け取る仕組み
企業年金を年金で受け取る場合は、積み立てた資金を一定期間にわたって分割して受け取ります。
受取期間は制度によって異なり、5年・10年・15年・20年などに設定されている場合があります。
毎月または毎年、一定額を受け取れるため、老後の生活費を安定して確保しやすい点が特徴です。
企業年金を年金として受け取る場合は、原則として「公的年金等に係る雑所得」として毎年課税されます。
公的年金などの収入と合算して所得税などを計算するため、受給額によっては税負担が大きくなる可能性があります。
ただし、一度にまとまった資金を受け取らず、定期的に受給できるため、老後の生活費を計画的に確保しやすい点は年金受取のメリットです。
(3)一時金と年金を併用して受け取る仕組み
一時金と年金の併用とは、制度で認められている場合に、企業年金の一部を一時金で受け取り、残りを年金として受け取る方法です。
例えば、制度で認められていれば、「企業年金の50%を一時金で受け取り、残りの50%を10年間の年金として受け取る」といった方法を選べます。
一時金として受け取った部分は原則として退職所得、年金として受け取った部分は原則として公的年金等に係る雑所得として扱われます。
一時金と年金を組み合わせることで、まとまった資金を確保しながら、年金による安定した収入も得られる点が特徴です。
ただし、一時金と年金をどのような割合で受け取れるかは、企業年金の規約によって異なります。
なかには併用そのものができない制度もあるため、検討する際は、まず勤務先の制度でどのような受け取り方を選べるのか確認しましょう。
企業年金を一時金で受け取る場合について

企業年金を一時金で受け取る場合は、原則として退職所得として扱われ、退職所得控除を活用することで税負担を抑えられます。
ここでは、企業年金を一時金で受け取る場合の税金について解説します。
(2)退職所得控除の仕組みと計算方法
(3)勤続年数・加入期間による退職所得控除額の違い
(1)企業年金の一時金にかかる税金
企業年金を一時金で受け取った場合は、原則として退職所得として課税されます。
退職所得には「退職所得控除」が適用され、控除額を差し引いた残額の2分の1が課税対象となります。
さらに、給与所得などとは分けて税額を計算する「分離課税」が適用されるため、一般的な所得と比べて税負担を抑えやすい仕組みです。
退職所得は、次の計算式で求めます。
(一時金の受取額-退職所得控除額)× 1/2 = 課税対象となる退職所得
この金額をもとに、所得税や住民税が計算されます。
例えば、一時金の受取額が退職所得控除額以下であれば、原則として課税対象となる退職所得はゼロです。
そのため、加入期間が長く、退職所得控除額が大きい方ほど、一時金受取の税制上のメリットを受けやすくなります。
(2)退職所得控除の仕組みと計算方法
退職所得控除は、退職所得控除の計算上の勤続年数が20年以下か、20年を超えるかによって計算方法が異なります。
企業年金の一時金について退職所得控除を計算する際は、まず退職所得に該当するかを確認したうえで、退職所得控除の計算上の勤続年数などを確認します。
| 加入期間 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 10年 | 400万円 |
| 15年 | 600万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 25年 | 1,150万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
| 35年 | 1,850万円 |
例えば、勤続年数が25年の場合は「800万円+70万円×5年=1,150万円」、35年の場合は「800万円+70万円×15年=1,850万円」が退職所得控除額となります。
一時金の受取額が退職所得控除額以下であれば、原則として課税対象となる退職所得はゼロになります。
(3)勤続年数・加入期間による退職所得控除額の違い
勤続年数や加入期間が長いほど退職所得控除額は大きくなるため、長期間加入している方ほど、一時金受取時の税負担を抑えやすくなります。
特に加入期間が20年を超えると、20年を超えた部分については1年あたり70万円ずつ控除額が増えていきます。
| 加入期間 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 10年 | 400万円 |
| 15年 | 600万円 |
| 20年 | 800万円 |
| 25年 | 1,150万円 |
| 30年 | 1,500万円 |
| 35年 | 1,850万円 |
なお、退職金と企業年金の一時金を受け取る場合は、受取時期やそれぞれの加入期間などによって、退職所得控除の計算が調整されることがあります。
そのため、退職金と企業年金の両方を受け取る予定がある場合、それぞれで退職所得控除を単純に別々に利用できるとは限りません。
受取時期によって税額が変わる可能性もあるため、事前に確認しておくことが大切です。
企業年金を年金で受け取る場合について

企業年金を年金として受け取る場合は、原則として「公的年金等に係る雑所得」として毎年課税されます。
そのため、公的年金など、ほかの収入と合わせて税負担を考えることが大切です。
ここでは、年金で受け取る場合の税金の仕組みや、公的年金等控除について解説します。
(2)公的年金等控除の仕組みと計算方法
(3)企業年金と公的年金を合算する際の注意点
(1)企業年金を年金で受け取る場合の課税の仕組み
企業年金を年金形式で受け取ると、原則として「公的年金等に係る雑所得」として毎年課税されます。
企業年金は、公的年金などの収入と合わせて所得を計算します。
年金収入から公的年金等控除を差し引いた金額が雑所得となり、給与所得や不動産所得などがある場合は、それらも含めて所得税などを計算します。
一時金のように、退職所得控除を適用したうえで残額の2分の1を課税対象とする仕組みではありません。
そのため、受け取る年金額やほかの収入によっては、税負担が大きくなる可能性があります。
特に、定年退職後も働いている方や、不動産収入などがある方は、企業年金を受け取ることで所得が増えるため、事前に税負担を確認しておくことが大切です。
(2)公的年金等控除の仕組みと計算方法
公的年金等控除は、年金収入から一定額を差し引き、課税対象となる雑所得を減らすための控除です。
ただし、公的年金等控除の金額は、受け取る方の年齢や公的年金等の収入金額などによって異なります。
例えば、65歳以上で公的年金等の収入が一定額以下の場合は、110万円の公的年金等控除が適用されます。
ただし、控除額は年金収入の金額やその他の所得などによって変わるため、「110万円までは必ず税金がかからない」というわけではありません。
企業年金を年金として受け取る場合は、公的年金との合計額を確認したうえで、実際の税負担を計算することが重要です。
例えば、65歳以上の方が公的年金を年間200万円、企業年金を年間100万円受け取る場合、年金収入の合計は300万円です。
このケースで公的年金等控除110万円を差し引くと、公的年金等に係る雑所得は190万円となります。
この190万円に、給与所得や不動産所得などがあればそれらを合算し、さらに基礎控除などの所得控除を差し引いて課税所得を計算します。
そのため、企業年金の受け取り方を検討する際は、企業年金だけを見るのではなく、「年金収入全体」で税負担をシミュレーションすることが大切です。
(3)企業年金と公的年金を合算する際の注意点
企業年金を年金で受け取る場合は、公的年金と合算して所得を計算するため、年金収入の合計額が大きくなるほど税負担にも注意が必要です。
例えば、65歳以上の方が公的年金を年間200万円、企業年金を年間100万円受け取る場合、公的年金等の収入は合計300万円になります。
この合計額から公的年金等控除などを差し引いて雑所得を計算し、給与所得や不動産所得など、ほかの所得があれば、それらも含めて所得税などを計算します。
そのため、企業年金を年金として受け取るかどうかを判断する際は、企業年金だけの税額ではなく、公的年金やその他の収入を含めた年間の所得全体で考えることが大切です。
なお、実際の税額は、年齢や年金収入、その他の所得、各種控除などによって異なります。
受け取る前に複数のケースをシミュレーションしておくと、一時金と年金のどちらが自分に合っているのかを判断しやすくなるでしょう。
企業年金の受け取り方による税金・手取り額の違い

企業年金は、同じ金額を受け取る場合でも、一時金・年金・併用のどれを選ぶかによって税負担が異なり、最終的な手取り額にも差が出ます。
ここでは、加入期間30年・企業年金2,000万円のケースを例に、それぞれの受け取り方を比較します。
(2)年金で受け取る場合の税金・手取り額
(3)一時金と年金を併用する場合の税金・手取り額
(1)一時金で受け取る場合の税金・手取り額
加入期間30年で企業年金2,000万円を一時金として受け取る場合、退職所得控除を利用できるため、税負担を大きく抑えられる可能性があります。
退職所得控除の計算上の勤続年数が30年の場合、退職所得控除額は1,500万円です。
企業年金2,000万円から退職所得控除1,500万円を差し引き、残った500万円の2分の1にあたる250万円が課税対象となります。
| 計算項目 | 金額 |
|---|---|
| 一時金受取額 | 2,000万円 |
| 退職所得控除額(加入30年) | 1,500万円 |
| 課税対象となる退職所得 | (2,000万円-1,500万円)×1/2=250万円 |
| 所得税・復興特別所得税・住民税 | 約42万円※ |
| 手取り額 | 約1,958万円※ |
※他の退職所得等がなく、退職所得控除1,500万円を全額適用できるものとして計算した概算です。
実際の税額は受取時期や他の退職所得等によって異なります。
この条件では、2,000万円の一時金に対する税負担は約42万円となり、受取額に対する税負担を比較的低く抑えられます。
ただし、実際の税額は、ほかの退職金の有無や受取時期などによって変わるため、個別に確認することが大切です。
(2)年金で受け取る場合の税金・手取り額
同じ2,000万円を20年間の年金として受け取る場合は、毎年の年金収入に対して課税されるため、一時金よりも税負担が大きくなる可能性があります。
ここでは、65歳以上で公的年金を年間200万円受け取っており、企業年金2,000万円を20年間にわたり、年間100万円ずつ受け取るケースを考えます。
企業年金100万円と公的年金200万円を合わせると、年間の年金収入は300万円です。
ここから公的年金等控除などを差し引いて、雑所得を計算します。
| 計算項目 | 年間 | 20年合計 |
|---|---|---|
| 企業年金受取額 | 100万円 | 2,000万円 |
| 公的年金受取額 | 200万円 | 4,000万円 |
| 年金収入合計 | 300万円 | ― |
| 公的年金等控除(例) | 110万円 | ― |
| 公的年金等に係る雑所得(概算) | 190万円 | ― |
| 税負担 | 約285,000円※ | 約570万円※ |
※公的年金等に係る雑所得の計算例です。
実際の所得税・住民税は、基礎控除、配偶者控除、社会保険料控除などの所得控除や、その他の所得によって異なります。
この試算では、企業年金を20年間受け取ることで、毎年税負担が発生します。
そのため、単純に手取り額を比較すると、一時金よりも税負担が大きくなる可能性があります。
一方、年金受取には、毎月または毎年一定額を受け取れるため、老後の生活費を安定して確保しやすいというメリットがあります。
(3)一時金と年金を併用する場合の税金・手取り額
一時金と年金を併用すると、まとまった資金を確保しながら、年金による安定した収入も得られます。
ここでは、企業年金2,000万円のうち1,500万円を一時金として受け取り、残りの500万円を10年間の年金として受け取るケースを考えます。
加入期間30年の退職所得控除額は1,500万円です。
そのため、一時金1,500万円が控除額の範囲内に収まると仮定すれば、一時金部分の課税対象となる退職所得はゼロになります。
残りの500万円は、10年間にわたり年間50万円ずつ年金として受け取ります。
公的年金が年間200万円の場合、年間の年金収入は250万円となる計算です。
| 受け取り方 | 税額合計(概算) | 手取り合計(概算) |
|---|---|---|
| 一時金のみ | 約42万円 | 約1,958万円 |
| 年金のみ(20年) | 約570万円 | 約1,430万円 |
| 併用(一時金1,500万円+年金500万円) | 約210万円 | 約1,790万円 |
この条件で単純に比較すると、一時金で受け取る場合の税負担が最も小さくなる結果です。
ただし、実際の税負担は、所得控除やほかの退職所得等によって変わります。
年金受取には、まとまった資金を使い切るリスクを抑えながら、定期的な収入を確保できるメリットがあります。
また、併用であれば、一時金と年金それぞれのメリットを取り入れることができます。
そのため、企業年金の受け取り方は「税金がいくらになるか」だけで決めるのではなく、老後に必要な生活費や資産の使い方も含めて判断することが大切です。
企業年金の受け取り方を決める際の注意点

企業年金の受け取り方を決める際は、税金以外にも確認しておきたいポイントがあります。
見落としやすい点を事前に把握しておくことで、想定外の税負担やトラブルを防ぎやすくなります。
ここでは、企業年金の受け取り方を決める際の注意点を紹介します。
(2)公的年金・社会保険料・扶養への影響を確認する
(3)受け取り方を後から変更できるか確認する
(1)退職金・企業型DC・iDeCoの受取時期を確認する
退職金・企業型DC・iDeCoなどを一時金で受け取る場合は、それぞれの受取時期と退職所得控除への影響を確認しておきましょう。
複数の制度から一時金を受け取る場合、受取時期や勤続期間・加入期間の重複によって、退職所得控除の計算が調整されることがあります。
同じ年に複数の退職所得を受け取る場合も、それぞれの制度で退職所得控除を単純に利用できるとは限りません。
また、2026年1月1日以後に受け取る確定拠出年金の老齢給付金の一時金については、過去に受け取った退職手当等との重複期間に応じて、退職所得控除の計算が調整される場合があります。
そのため、退職金・企業型DC・iDeCoなど複数の制度を利用している方は、「どの制度を、いつ、どの方法で受け取るのか」をまとめて確認することが大切です。
(2)公的年金・社会保険料・扶養への影響を確認する
年金受取を選ぶ場合は、税金だけでなく、加入している医療保険制度や家族の扶養条件などへの影響も確認しましょう。
企業年金を年金として受け取ると、公的年金などと合算して所得を計算するため、所得税や住民税の負担が増える可能性があります。
さらに、年金収入が増えることで、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料などに影響する場合もあります。
そのため、年金受取後の手取り額を考える際は、税金だけでなく社会保険料も含めて確認することが大切です。
また、配偶者の扶養に入ることを考えている場合は、企業年金の受取額によって収入や所得の条件が変わる可能性があります。
税法上の扶養と社会保険上の扶養では判定基準が異なるため、扶養を維持したい場合は、企業年金の受取額も含めて事前に確認しておきましょう。
(3)受け取り方を後から変更できるか確認する
企業年金は、一度受け取り方法を選択すると変更できない場合があるため、申請前に制度の内容を確認することが重要です。
受け取り方法を選ぶタイミングは制度によって異なり、退職時に決める場合もあれば、一定の年齢に達した時点で手続きを行う場合もあります。
「一時金を選んだけれど、やはり年金にしたい」「年金を選んだけれど、一時金に変更したい」と考えても、申請後は変更できない可能性があります。
そのため、受取時期が近づいてから慌てて決めるのではなく、退職や受給開始の数カ月前から、税金・社会保険料・老後の生活費などを含めてシミュレーションしておくとよいでしょう。
具体的な受け取り方法や変更の可否については、勤務先の人事・総務部門や企業年金基金、確定拠出年金の運営管理機関などに確認しましょう。
企業年金の一時金・年金の選び方を決める3ステップ

企業年金の受け取り方を決める際は、必要な情報を段階的に整理しながら検討することが、納得のいく選択につながります。
ここでは、企業年金の一時金・年金の選び方を決める3つのステップを紹介します。
STEP 2:一時金・年金・併用の手取り額を比較する
STEP 3:老後の生活設計に合う受け取り方を選ぶ
STEP 1:勤務先の企業年金制度と受取条件を確認する
まずは、自分が加入している企業年金の種類と、選択できる受け取り方を確認します。
企業年金には、確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(DC)などがあり、制度によって受け取り方や受給開始年齢が異なります。
勤務先の人事・総務部門や企業年金基金、確定拠出年金の運営管理機関などに、次の内容を確認しておきましょう。
・企業年金の受取見込額
・受取開始年齢
・申請期限
・一時金・年金・併用のどれを選択できるか
・年金の場合の受取期間
・一時金と年金の併用割合
制度によって選べる受け取り方は異なるため、まずは「自分はどのような受け取り方を選べるのか」を把握することが大切です。
STEP 2:一時金・年金・併用の手取り額を比較する
次に、それぞれの受け取り方について、税金や社会保険料などを考慮したうえで手取り額を比較します。
一時金の場合は、加入期間などをもとに退職所得控除額を確認し、企業年金の受取額のうち、どの程度が課税対象になるのかを計算します。
年金の場合は、公的年金の受給額やその他の所得を確認し、企業年金を加えた場合にどのくらいの税負担になるのかを試算します。
あわせて、次のような点も確認しておくことが大切です。
・公的年金の受給額
・給与や不動産収入などのその他の所得
・社会保険料への影響
・配偶者の扶養への影響
これらを整理したうえで、一時金・年金・併用それぞれの手取り額を比較すると、税額だけでなく、実際に手元に残る金額を基準に判断しやすくなります。
税制や社会保険の仕組みが複雑で判断が難しい場合は、税理士やファイナンシャルプランナーなどに相談し、具体的にシミュレーションしてみるのも1つの方法です。
STEP 3:老後の生活設計に合う受け取り方を選ぶ
最後に、手取り額だけでなく、老後に必要な生活費や資産管理のしやすさも考えながら受け取り方を決めます。
一時金は、まとまった資金を自由に使ったり運用したりできる一方で、自分で計画的に管理する必要があります。
年金は定期的に収入を得られるため、老後の生活費を安定して確保しやすい点がメリットです。
| 観点 | 一時金が向いている | 年金が向いている |
|---|---|---|
| 税制面 | 退職所得控除を活用しやすい | 年金収入が少なく税負担を抑えやすい |
| 資産管理 | まとまった資金を自分で管理したい | 定期的に受け取りたい |
| 生活費 | 公的年金などで十分確保できる | 公的年金だけでは不足する |
| 長生きへの備え | 自分で資産を管理・運用したい | 長期間の安定収入を確保したい |
| 流動性 | まとまった資金を自由に使いたい | 必要な分を定期的に受け取りたい |
このように、「どちらの手取り額が多いか」だけではなく、「老後にどのような生活を送りたいか」まで含めて考えることが大切です。
税金や社会保険料、ほかの退職所得との関係などを踏まえると判断が難しい場合もあります。
その際は、ファイナンシャルプランナーや税理士などに相談し、自分の状況に合わせてシミュレーションしたうえで決めるとよいでしょう。
企業年金の受け取り方に関するよくある質問(Q&A)

企業年金は、制度によって選択できる受け取り方や受給開始年齢などが異なります。
ここでは、企業年金の受け取り方を検討する際によくある質問について解説します。
Q2. 一時金と年金の割合は自由に選べる?
Q3. 一度決めた企業年金の受け取り方は変更できる?
Q1. 企業年金は何歳から受け取れる?
ただし、通算加入者等期間が10年未満の場合は、受給開始年齢が段階的に繰り下げられます。
企業型確定拠出年金(DC)は、原則として60歳から75歳までの間で受給開始時期を選択できます。
一方、確定給付企業年金(DB)は、制度の規約によって受給開始年齢が定められており、60歳や65歳などから受け取るケースがあります。
また、制度によっては、受給開始時期を繰り下げられる場合もあります。
繰り下げによって受取額が変わることもあるため、受給開始時期を選べる場合は、税金や老後の生活費も含めて検討することが大切です。
具体的な受給開始年齢や繰り下げの条件については、勤務先の人事・総務部門や企業年金基金、DCの運営管理機関などに確認しましょう。
Q2. 一時金と年金の割合は自由に選べる?
例えば、一時金と年金を50%ずつ受け取れる制度や、一定の範囲内で割合を選べる制度があります。
一方で、一時金のみ、または年金のみしか選択できない制度もあります。
そのため、「1,500万円を一時金で受け取り、残りを年金にする」といった方法を希望していても、加入している制度によっては選択できない可能性があります。
受け取り方を検討する際は、まず制度上選べる割合や組み合わせを確認し、その範囲内で手取り額や老後の生活設計を比較することが大切です。
Q3. 一度決めた企業年金の受け取り方は変更できる?
一度、一時金や年金などの受け取り方法を選んで手続きをすると、その後に「年金から一時金に変更したい」と考えても、変更が認められない制度があります。
一方で、制度によっては、受給開始時期の繰り下げなどが認められている場合もあります。
変更できるかどうかや、変更できるタイミング・条件は制度によって異なります。
受け取り方法を決める前に、勤務先や企業年金基金、運営管理機関などへ確認しておきましょう。
まとめ

今回は、企業年金の一時金・年金・併用の受け取り方や、それぞれの税金の仕組み、手取り額の違い、選び方について紹介しました。
企業年金の受け取り方は、税金や社会保険料、老後の資金計画など複数の要素を踏まえて判断する必要があります。
自分に合った受け取り方を判断するのが難しい場合は、専門家に相談するのも1つの方法です。
ココザスでは、経験豊富なファイナンシャルプランナーによる無料相談を受け付けています。
「一時金と年金のどちらが自分に合っているのか知りたい」「老後資金も含めて受け取り方を考えたい」という方は、ぜひ一度、ココザスにご相談ください。
