旅費規程を整備して出張日当で節税できる仕組みとは?

出張日当による節税を検討する際は、まず給与と出張日当で税務上の取り扱いがどのように異なるのかを理解しておくことが大切です。
一定の要件を満たした出張日当は、法人側では経費として処理でき、役員・従業員側では給与とは異なる取り扱いとなる場合があります。
ここでは、出張日当が節税につながる仕組みについて解説します。
(2)会社側では出張日当を経費として処理できる
(3)給与で支給する場合と比べて手取りを確保しやすい
(4)出張日当による節税効果をシミュレーション
(1)出張日当は給与とは異なる取り扱いになる場合がある
出張日当とは、役員や従業員が業務上の出張を行った際に発生する、食事代や移動中の細かな支出などの負担を補うために支給されるものです。
通常、会社から個人へ支給される金銭は給与として扱われますが、出張に伴う旅費については、一定の条件を満たす場合、給与ではなく旅費として取り扱われます。
そのため、適正な旅費規程に基づいて支給された出張日当であれば、受け取る側では所得税の課税対象にならず、社会保険料の算定対象にも含まれない場合があります。
ただし、「日当」という名称で支給すれば必ず非課税になるわけではありません。
(2)会社側では出張日当を経費として処理できる
適正な旅費規程に基づいて支給した出張日当は、会社側では旅費交通費などの経費として処理できます。
例えば、役員や従業員へ年間50万円の出張日当を支給した場合、その支給が税務上認められるものであれば、会社の損金として計上できます。
損金に算入することで法人の課税所得が減少するため、結果として法人税の負担を抑える効果が期待できます。
給与として同額を支給する場合でも、会社側では経費として処理できますが、受け取る側では所得税や住民税、社会保険料などの負担が発生します。
(3)給与で支給する場合と比べて手取りを確保しやすい
出張日当を活用するメリットのひとつは、同じ金額を給与として受け取る場合と比較して、手元に残る金額を確保しやすい点です。
例えば、会社が従業員へ月5万円を追加で支給する場合、その金額には所得税や住民税、社会保険料などが影響します。
一方、実際の出張に対して旅費規程に基づく日当として月5万円を支給し、その金額や運用が適正であれば、給与とは異なる取り扱いとなる場合があります。
そのため、会社から支給される総額が同じでも、給与として支給する場合よりも受け取る側の負担を抑えられる可能性があります。
ただし、出張日当は給与の代替として自由に設定できるものではありません。

(4)出張日当による節税効果をシミュレーション
出張日当による節税効果について、代表取締役が月15日出張するケースを例に確認してみましょう。
1日3,000円の日当を月15日、年間12カ月支給すると、年間の支給額は54万円です。
| 項目 | 金額・条件 |
|---|---|
| 1日あたりの日当 | 3,000円 |
| 月間の出張日数 | 15日 |
| 月間の日当 | 45,000円 |
| 年間の日当 | 54万円 |
この場合、年間54万円を出張日当として支給することになります。
仮に法人税の実効税率を25%とすると、会社側では約13.5万円分の法人税負担軽減効果が期待できます。
また、同じ54万円を給与として支給した場合、受け取る側では所得税や住民税、社会保険料などの負担が発生します。
一方、適正な出張日当として認められる場合は、これらの負担が発生しない、または軽減される可能性があります。
ただし、実際の節税効果は、法人の利益状況、役員・従業員の所得水準、社会保険料率などによって異なります。
出張日当による節税が認められる条件とは?

出張日当を適切に活用するためには、旅費規程を作成するだけではなく、実際の出張内容や支給方法が税務上認められる条件を満たしている必要があります。
条件を満たさずに支給した場合、出張日当ではなく給与として扱われ、所得税や社会保険料の対象となる可能性があります。
ここでは、出張日当を適切に運用するために確認しておきたい4つの条件について解説します。
(2)実際に業務上の出張が行われている
(3)日当額が社会通念上妥当な範囲である
(4)旅費規程に沿って公平に運用する
(1)旅費規程をあらかじめ整備する
出張日当を支給する場合は、あらかじめ旅費規程を整備し、支給基準を明確にしておくことが重要です。
旅費規程には、以下のような内容を定めます。
・支給対象者
・日当額
・交通費や宿泊費の取り扱い
・支給条件や精算方法
事前にルールを定めておくことで、「誰に」「どのような出張に対して」「いくら支給するのか」が明確になります。
一方で、旅費規程がない状態で個別判断により日当を支給すると、支給基準の合理性を説明しにくくなります。
そのため、出張日当を導入する場合は、支給開始前に旅費規程を整備しておくことが大切です。
(2)実際に業務上の出張が行われている
出張日当は、業務上必要な移動や滞在に伴う負担を補うためのものです。
そのため、実際には出張していないにもかかわらず日当だけを支給することは認められません。
税務上、出張日当の支給根拠を説明できるよう、以下のような記録を残しておくことが重要です。
・出張先
・出張目的
・出張期間
・業務内容
・出張報告書
これらの記録があることで、出張が業務上必要であったことを説明しやすくなります。
(3)日当額が社会通念上妥当な範囲である
出張日当の金額について、税務上「1日○円まで」といった明確な上限は設けられていません。
ただし、企業規模や業種、出張内容などを踏まえて、社会通念上妥当と認められる金額である必要があります。
例えば、一般的な支給水準と比較して著しく高額な日当を設定している場合、実質的な給与や役員報酬の上乗せと判断される可能性があります。
金額を設定する際は、以下のような点を考慮しましょう。
・出張頻度
・出張先の物価水準
・他社の支給水準
・役職による職責の違い
設定した金額について、なぜその水準にしたのか説明できる根拠を残しておくことが重要です。
(4)旅費規程に沿って公平に運用する
旅費規程を作成していても、実際の支給方法が規程と異なる場合は注意が必要です。
例えば、以下のような運用は支給基準の合理性が疑われる可能性があります。
・特定の役員だけ異なる基準で支給している
・規程にない種類の出張に対して日当を支給している
旅費規程は作成することが目的ではなく、実際の出張申請や経理処理まで一貫して運用することが重要です。
また、会社規模や出張状況が変化した場合には、必要に応じて規程内容を見直しましょう。
出張日当を税務上適切に取り扱うためには、「旅費規程があること」だけではなく、実際の出張内容と支給内容が一致していることが重要です。
特に確認すべきポイントは以下の4つです。
・事前に旅費規程を整備しているか
・実際に業務上の出張があるか
・日当額に合理性があるか
・規程通りに運用しているか
これらを満たしたうえで適切に管理することで、出張日当を適切に活用できます。
旅費規程に記載すべき項目について

出張日当を適切に運用するためには、旅費規程の内容を具体的に定めておくことが重要です。
出張の定義や対象者、日当額、交通費・宿泊費の精算方法などをあらかじめ明確にしておくことで、実際の運用で判断に迷いにくくなります。
ここでは、旅費規程に盛り込んでおきたい主な項目について解説します。
(2)出張先や距離による区分を設定する
(3)日当の金額と支給条件を定める
(4)交通費と宿泊費の取り扱いを定める
(5)日帰り出張と宿泊出張の基準を定める
(1)出張の定義と対象者を明確にする
出張の定義と対象者を明確にすることで、どのような場合に旅費規程を適用するのかを判断しやすくなります。
例えば、「出張とは会社の業務命令に基づき、通常の勤務地以外に赴くことをいう」といった形で定義を記載します。
あわせて、役員や正社員だけを対象とするのか、パートタイマーやアルバイトなども含めるのかを定めておきましょう。
対象範囲を明確にしておくことで、人によって支給基準が変わるなど、不公平な運用を防ぎやすくなります。
(2)出張先や距離による区分を設定する
出張先や移動距離によって日当額を変える場合は、あらかじめ出張区分を設定します。
例えば、「片道100km未満の国内出張」「片道100km以上の国内出張」「海外出張」といった区分を設ける方法があります。
また、日帰り出張と宿泊出張で金額を分けることも可能です。
区分を設定しておけば、出張内容に応じて支給額を判断しやすくなります。
ただし、細かく分けすぎると管理が複雑になるため、自社の出張頻度や実態に合わせて設定することが大切です。
(3)日当の金額と支給条件を定める
日当の金額と支給条件は、役職や出張区分などに応じて具体的に定めます。
例えば、役員・管理職・一般従業員ごとに日当額を設定したり、日帰りと宿泊を伴う出張で金額を分けたりする方法があります。
また、「出張時間が一定時間未満の場合は半額とする」など、必要に応じて支給条件も定めておきましょう。
支給基準を具体的にしておけば、出張のたびに金額を個別判断する必要がなくなり、一貫した運用がしやすくなります。
なお、日当額は一度決めたら変更できないわけではありません。
物価や出張時の費用、他社の支給水準などを踏まえ、必要に応じて見直すことも重要です。
(4)交通費と宿泊費の取り扱いを定める
交通費と宿泊費については、精算方法や会社が負担する範囲を旅費規程で明確にします。
交通費については実費精算を基本とし、新幹線の利用区分や航空機のクラスなどを必要に応じて定めます。
宿泊費についても、「1泊○円を上限とする」「役員は○円、一般社員は○円まで」といった形で上限額を設けることができます。
交通費や宿泊費の支給基準をあらかじめ定めておけば、従業員ごとに経費の取り扱いが変わるのを防ぎやすくなります。
(5)日帰り出張と宿泊出張の基準を定める
日帰り出張と宿泊出張の基準を定め、それぞれに適用する日当や宿泊費の条件を明確にしておきましょう。
例えば、出張先までの距離や移動時間、翌日の業務開始時間などを基準として、宿泊を認める条件を設定します。
宿泊費を支給する場合は、ホテルの領収書などによって実際に宿泊したことを確認できるようにしておくことも大切です。
規程で定めた条件と実際の出張内容にずれが生じないよう、継続的に適切な運用を行いましょう。
出張日当の適正な金額はいくら?

日当の金額を決める際は、他社の支給水準を参考にしながら、自社の出張実態に合った金額を設定することが重要です。
財務省が2023年8月に公表した「民間企業における出張旅費規程等に関するアンケート報告書」では、国内出張の日当を支給している企業の平均額や、役職などによる区分ごとの支給額が調査されています。
ここでは、この調査結果をもとに、出張日当の金額の目安を紹介します。
(2)役職ごとに日当額を分けることも可能
(3)宿泊出張と日帰り出張で金額を変える方法もある
(1)国内出張の日当は2,000〜3,000円程度が1つの目安
国内出張の日当額は、企業規模や役職によって異なります。
財務省が公表した「民間企業における出張旅費規程等に関するアンケート報告書」では、国内出張の日当を支給している企業の平均額がまとめられています。
調査対象となった487社では、国内出張の日当額について以下の結果となっています。
| 項目 | 平均額 |
|---|---|
| 最低額の平均 | 1,780円 |
| 最高額の平均 | 3,786円 |
| 全体平均 | 2,621円 |
この結果から見ると、国内出張の日当は2,000円〜3,000円程度を中心に設定している企業が多いと考えられます。
ただし、企業規模や出張頻度、役職によって適切な水準は異なります。
例えば、役員や管理職については、出張時の責任や業務負担を考慮して、一般社員より高い金額を設定するケースもあります。
一方で、役員だけ極端に高額な日当を設定すると、実質的な役員報酬の上乗せと判断される可能性があるため注意が必要です。
(2)役職ごとに日当額を分けることも可能
旅費規程では、役員・管理職・一般社員など、役職ごとに日当額を設定することができます。
役職によって金額差を設ける場合は、それぞれの責任や出張時の負担など、合理的な理由を説明できるようにしておくことが重要です。
例えば、以下のような設定方法があります。
| 区分 | 日当例 |
|---|---|
| 役員 | 5,000円 |
| 管理職 | 3,500円 |
| 一般社員 | 3,000円 |
ただし、金額差を大きくしすぎると合理性を説明しにくくなるため、会社規模や一般的な水準を踏まえて設定しましょう。
(3)宿泊出張と日帰り出張で金額を変える方法もある
出張日当は、出張形態によって金額を分けることも可能です。
例えば、宿泊を伴う出張では、通常より長時間の移動や滞在が発生するため、日帰り出張より高い金額を設定するケースがあります。
例:
| 区分 | 日当例 |
|---|---|
| 日帰り出張 | 2,000円 |
| 宿泊出張 | 3,000円 |
また、遠距離出張や海外出張については、移動時間や物価水準を考慮して別の基準を設ける企業もあります。
自社の出張実態に合わせて、管理しやすい区分を設定することが大切です。
出張日当は、適切に活用することで会社・役員・従業員双方にメリットがある制度です。
一方で、節税だけを目的として相場から大きく外れた金額を設定すると、税務上問題となる可能性があります。
自社の出張実態や企業規模に合わせて、誰が見ても合理的と説明できる水準に設定することが重要です。
旅費規程の作成から運用開始までの5つのステップ

旅費規程を作成・運用するまでの流れを把握しておくことで、スムーズに整備を進めやすくなります。
ここでは、旅費規程の作成から運用開始までの5つのステップについて紹介します。
STEP 2:同業他社・業界水準の日当を調査する
STEP 3:役職・出張区分ごとの金額を設定する
STEP 4:規程を文書化して取締役会で承認する
STEP 5:全従業員に周知して運用を開始する
STEP 1:出張の実態と現在の支給状況を整理する
まずは、自社の出張の実態と現在の費用支給状況を整理します。
具体的には、出張の頻度や主な出張先、出張する従業員の役職、交通費・宿泊費・日当などの支給状況を確認しましょう。
現状を把握しておくことで、旅費規程に必要な出張区分や支給項目を決めやすくなります。
現在、日当を支給していない場合は、新たな支給基準を検討します。
すでに日当を支給している場合は、現在の支給方法や金額が出張の実態に合っているかを確認しましょう。
STEP 2:同業他社・業界水準の日当を調査する
日当の金額を設定する前に、同業他社や同規模の企業などが、どの程度の日当を設定しているのかを調査します。
他社の支給水準を確認することで、自社の日当額が極端な水準になっていないかを判断しやすくなります。
調査した資料や金額は、日当を設定した根拠として保存しておくといいでしょう。
STEP 3:役職・出張区分ごとの金額を設定する
調査した他社の支給水準や自社の出張実態をもとに、役職・出張区分ごとの日当額を設定します。
例えば、役員・管理職・一般従業員で金額を分けたり、国内日帰り・国内宿泊・海外などの出張区分によって金額を変えたりする方法があります。
金額や支給条件は一覧表にまとめておくと、旅費規程への記載や実際の支給処理がしやすくなるでしょう。
また、税務上の取り扱いに不安がある場合は、設定した金額について税理士などの専門家に確認すると安心です。
STEP 4:規程を文書化して取締役会で承認する
日当の金額や支給条件などが決まったら、内容を旅費規程として文書化します。
旅費規程には、制定日や施行日、出張の定義、対象者、日当、交通費、宿泊費などの支給基準を明確に記載しておきます。
規程を作成した後は、会社で定めた手続きに従って正式に承認します。
承認したことが分かるように、議事録や決裁書類などの記録も残しておきましょう。
STEP 5:全従業員に周知して運用を開始する
旅費規程の承認が完了したら、全従業員に内容を周知し、施行日から運用を開始します。
社内メールやグループウェアで共有したり、書面を配布したりして周知しましょう。
また、規程の施行にあわせて、出張申請書や出張報告書などの手続きも整えておくとスムーズです。
実際の出張についても旅費規程に沿って処理し、規程と実際の運用にずれが生じないようにすることが重要です。
出張日当の経理処理と必要書類

出張日当を正しく経理処理するためには、仕訳の方法や必要な書類を把握しておくことが大切です。
ここでは、出張日当を処理する際に準備しておきたい書類や経理上のポイントについて解説します。
(2)出張日当を適切な勘定科目で仕訳する
(3)日当と実費精算する費用を分けて管理する
(4)必要書類を適切に保存する
(1)出張申請書・出張報告書を作成する
出張日当を適切に管理するためには、出張の内容を確認できる書類を残しておくことが大切です。
代表的な書類として、以下があります。
・出張報告書
・交通費・宿泊費の精算書
出張申請書には、以下のような内容を記載します。
・出張先
・出張期間
・出張目的
・移動手段
また、出張後には、実際にどのような業務を行ったのかを記録した出張報告書を作成します。
これらの書類を保存しておくことで、出張日当を支給した理由や業務上の必要性を説明しやすくなります。
(2)出張日当を適切な勘定科目で仕訳する
出張日当は、「旅費交通費」などの勘定科目を使用して仕訳するのが一般的です。
例えば、役員・従業員に日当3,000円を現金で支給した場合は、次のように処理します。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 旅費交通費 3,000円 | 現金 3,000円 |
また、出張前に現金を渡す場合は「仮払金」として処理し、出張後に精算する方法もあります。
仕訳方法を社内で統一しておくことで、経理処理のミスを防ぎやすくなります。
(3)日当と実費精算する費用を分けて管理する
出張時に発生する費用は、日当と実費精算するものを分けて管理することが重要です。
例えば、以下のように区分します。
| 費用項目 | 処理方法 |
|---|---|
| 日当 | 旅費規程に基づく定額支給 |
| 交通費 | 領収書などに基づく実費精算 |
| 宿泊費 | 規程の範囲内で実費精算 |
日当は、出張中の細かな支出を補う目的で定額支給するものです。
一方で、交通費や宿泊費は実際に発生した費用を会社が負担するため、領収書などの証憑を保存する必要があります。
費用ごとに管理方法を分けることで、経理処理の透明性を高めることができます。
(4)必要書類を適切に保存する
出張日当の運用では、以下のような資料を保存しておきましょう。
・出張申請書
・出張報告書
・交通費・宿泊費の領収書
・経費精算書
特に旅費規程は、日当を支給する根拠となる重要な書類です。
また、出張内容や支給額が規程に沿っていることを確認できるよう、関連資料を一連の流れで管理しておくとよいでしょう。
出張日当は、旅費規程に基づいて適切に支給することで、会社の経費として処理できます。
ただし、重要なのは「いくら支給したか」だけではなく、「なぜ支給したのか」を説明できる状態にしておくことです。
出張申請から支給、経理処理までの流れを整備し、必要な書類を保存しておくことで、継続的に適正な運用を行いやすくなります。
旅費規程と出張日当を運用する際の注意点

旅費規程と出張日当を長期的に適正に運用するためには、日頃から注意しておきたいポイントがあります。
ここでは、運用する際の主な注意点について紹介します。
(2)仮払いと精算を適切に管理しないと経理処理が煩雑になる
(3)インボイス制度における旅費交通費の取り扱いに注意する
(4)日当額を見直さないと実態と合わなくなる可能性がある
(1)役員だけに高額な日当を設定すると合理性を問われる
役員だけ日当を著しく高額に設定すると、その金額の合理性を問われる可能性があります。
役員と従業員で日当額に差を設けること自体はできますが、役職や職責、出張時の負担などを踏まえて、合理的な水準に設定することが重要です。
日当額を決める際は、他社の支給水準や公表されている調査結果なども参考にし、役員だけが極端に高額にならないようにしましょう。
また、なぜその金額に設定したのかを説明できるように、設定の根拠を整理しておくことも大切です。
(2)仮払いと精算を適切に管理しないと経理処理が煩雑になる
仮払いと精算を適切に管理しないと、仮払金の残額が残ったり、経費を二重に計上したりするなど、経理処理でミスが生じやすくなります。
出張前に仮払いを行う場合は、出張後に速やかに精算するルールを定めておきましょう。
また、仮払金の残高を定期的に確認し、未精算の出張がないかを把握することも重要です。
出張申請から仮払い、精算までの手続きを統一しておくことで、経理担当者の負担軽減にもつながります。
(3)インボイス制度における旅費交通費の取り扱いに注意する
インボイス制度における旅費交通費の仕入税額控除は、費用の種類や支給方法などによって取り扱いが異なるため、注意が必要です。
一定の要件を満たす公共交通機関の運賃などについては、適格請求書の保存が不要となる特例があります。
ただし、すべての交通費や宿泊費が対象になるわけではありません。
そのため、交通費や宿泊費を実費精算する場合は、インボイスの保存が必要かどうかを費用ごとに確認しておくことが大切です。
一方、旅費規程に基づいて支給する日当は、実費精算する交通費や宿泊費とは支給方法が異なるため、分けて管理しましょう。
(4)日当額を見直さないと実態と合わなくなる可能性がある
日当額を長期間見直さないまま運用すると、現在の出張実態や費用水準と合わなくなる可能性があります。
物価や交通費、宿泊費などが変化すれば、設定時には妥当だった日当額が、実態と合わなくなることもあります。
そのため、定期的に日当額や支給条件を確認し、自社の出張実態や他社の支給水準などと比較することが重要です。
旅費規程を見直す際は、日当だけでなく、交通費・宿泊費の上限額や出張区分などもあわせて確認するとよいでしょう。
旅費規程・出張日当とほかの節税策を組み合わせる方法

旅費規程と出張日当による節税は、ほかの節税策と組み合わせることで、会社と役員・従業員の税負担を抑えやすくなります。
ただし、それぞれ適用条件や注意点が異なるため、制度の要件を確認したうえで活用することが重要です。
ここでは、出張日当と組み合わせやすい節税策について紹介します。
(2)短期前払費用と組み合わせて決算対策を行う
(3)決算賞与と組み合わせて年間の節税計画を立てる
(1)役員社宅と組み合わせて役員の負担を抑える
役員社宅を活用すると、会社が役員の住居を用意し、役員が一定の賃料を負担することで、住宅費の負担を抑えられる場合があります。
さらに、旅費規程に基づいて出張日当を支給することで、出張に伴う負担を補うこともできます。
役員社宅と出張日当はそれぞれ異なる制度のため、それぞれの適用要件を満たしているか確認したうえで組み合わせることが大切です。
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(2)短期前払費用と組み合わせて決算対策を行う
短期前払費用を活用すると、一定の要件を満たす前払費用について、支払った事業年度の損金に算入できる場合があります。
例えば、地代家賃や保険料などについて、一定の条件を満たしたうえで短期前払費用の特例を利用する方法です。
出張日当は年間を通じて発生する費用である一方、短期前払費用は決算期の状況に応じて活用できます。
それぞれの特徴を踏まえることで、節税計画を立てやすくなるでしょう。
ただし、短期前払費用には継続適用などの要件があるため、決算直前に都合よく利用できる制度ではありません。
事前に税理士などの専門家へ確認しておくことが大切です。
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(3)決算賞与と組み合わせて年間の節税計画を立てる
決算賞与は、一定の要件を満たす場合、未払の賞与を当期の損金に算入できることがあります。
例えば、従業員に対して支給額を通知し、事業年度終了の日の翌日から1カ月以内に支払うなどの要件があります。
出張日当は出張のたびに発生し、年間を通じて支給する費用である一方、決算賞与は決算期の利益や従業員への還元を踏まえて検討できます。
両方を活用する場合は、税負担だけでなく、賞与の支給による資金流出も考慮することが大切です。
会社の資金繰りに無理のない範囲で計画しましょう。
まとめ

今回は、旅費規程の作成方法や出張日当の仕組み、活用する際のポイントについて紹介しました。
旅費規程を事前に整備し、適切な金額の日当を設定することで、会社側では一定の要件を満たした旅費を経費として計上できる可能性があります。
また、役員や従業員に支給する日当についても、給与とは異なる取り扱いとなる場合があるため、法人の経費管理や資金活用の選択肢のひとつになります。
ただし、節税目的で活用する場合は、実際の出張内容があること、日当額が社会通念上妥当な水準であること、役職ごとの金額差に合理的な理由があることなどが重要です。
旅費規程を作成するだけでなく、出張申請書や報告書などの記録を残し、規程に沿った運用を継続する必要があります。
また、旅費規程以外にも、役員社宅や短期前払費用、決算賞与など法人で活用できる制度は複数あります。
それぞれ適用条件や資金繰りへの影響が異なるため、自社の状況に合わせて計画的に検討することが大切です。
「旅費規程を整備したい」「現在設定している日当額が適正か確認したい」「法人の節税対策を総合的に見直したい」という方は、税理士やファイナンシャルプランナーなど専門家への相談も検討しましょう。
ココザスでは、経験豊富なファイナンシャルプランナーによる無料相談を実施しています。
法人の節税や資産形成についてお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。
