勤務医が活用できる6つの節税方法

勤務医は給与水準が高い傾向にあるため、所得税や住民税の負担も大きくなりやすい職業です。
一方、給与所得者は経費として認められる範囲が限られているため、利用できる控除や制度を正しく把握することが重要です。
ここでは、勤務医が活用できる主な節税方法を6つ紹介します。
(2)iDeCoで所得控除を受ける
(3)生命保険料控除・地震保険料控除を活用する
(4)ふるさと納税を活用する
(5)住宅ローン控除を利用する
(6)法人を活用して節税する
(1)特定支出控除を活用する
特定支出控除とは、勤務医などの給与所得者が仕事に必要な費用を自己負担した場合、その一部を所得から差し引ける制度です。
会社員や勤務医の場合、通常は給与所得控除という「みなし経費」が自動的に適用されます。
しかし、実際に仕事で使った費用が一定額を超える場合は、特定支出控除を利用することで追加の所得控除を受けられる可能性があります。
例えば、勤務医の場合は以下のような費用が対象になることがあります。
・医学書や専門誌の購入費
・専門医資格などの取得費用
・研修や講習会の受講費
・通勤にかかった費用
・転勤に伴う引越し費用
ただし、支払った費用がすべて対象になるわけではありません。
勤務先の業務を行ううえで直接必要な支出であることや、勤務先などから証明を受けることなど、一定の要件を満たす必要があります。
特定支出控除を検討する場合は、領収書や支払い明細を日頃から保管し、勤務先にも確認しておくとよいでしょう。
(2)iDeCoで所得控除を受ける
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、老後資金を準備しながら、所得税や住民税の負担軽減も期待できる制度です。
iDeCoで支払った掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、その年の所得から差し引かれます。
所得税には、所得が高くなるほど適用される税率も高くなる累進課税制度が採用されています。
そのため、同じ掛金を拠出した場合でも、所得税率が高い人ほど所得控除による税負担の軽減効果が大きくなる傾向があります。
例えば、勤務先に企業年金制度がなく、年間27万6,000円をiDeCoへ拠出したとします。
所得税率33%、住民税率10%が適用されると仮定して単純計算すると、年間の負担軽減額は次のとおりです。
27万6,000円 × 43% = 約11万8,000円
ただし、勤務医が拠出できる掛金の上限は、勤務先の企業年金制度などによって異なります。
加入前に、病院の人事部や福利厚生制度を確認しておきましょう。
iDeCoは、掛金の所得控除に加えて、運用中の利益が非課税になることや、受取時にも一定の所得控除を利用できることが特徴です。
老後資金の準備と毎年の税負担軽減を同時に進めたい勤務医にとって、検討しやすい制度のひとつといえるでしょう。
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(3)生命保険料控除・地震保険料控除を活用する
生命保険料控除とは、生命保険や介護医療保険、個人年金保険の保険料を支払った場合に利用できる所得控除です。
支払った保険料に応じた金額を所得から差し引くことで、所得税や住民税の負担を軽減できます。
生命保険料控除は、主に次の3つに分かれています。
・介護医療保険料控除
・個人年金保険料控除
2012年1月1日以後に締結した契約については、所得税でそれぞれ最大4万円、合計で最大12万円まで所得控除を受けられます。
また、地震保険料を支払っている場合は、地震保険料控除を利用できます。
所得税では、支払った地震保険料に応じて最大5万円まで所得控除の対象となります。
これらの控除は、勤務先の年末調整で手続きできる場合が多く、別途確定申告をしなくても適用を受けられることがあります。
保険会社などから送られてくる控除証明書を確認し、年末調整や確定申告で申告漏れがないようにしましょう。
(4)ふるさと納税を活用する
ふるさと納税は、自分が選んだ自治体へ寄附を行うことで、一定の上限額まで、寄附額のうち2,000円を超える部分について所得税や住民税の控除を受けられる制度です。
寄附を行った自治体から、返礼品を受け取れる場合がある点も特徴です。
ふるさと納税の控除上限額は、所得や家族構成、ほかの控除の利用状況などによって変わります。
一般的には、所得が高い人ほど上限額も高くなる傾向があります。
上限額に関しては、「控除上限額シミュレーション|ふるさとチョイス」で計算することが可能です。
そのため、比較的所得の高い勤務医は、ふるさと納税を活用できる金額も大きくなる場合があります。
確定申告が不要な給与所得者で、寄附先が5団体以内の場合は、ワンストップ特例制度を利用できます。
ただし、医療費控除や住宅ローン控除の初年度などで確定申告をする場合は、ワンストップ特例の申請が無効となります。
その場合は、ふるさと納税の寄附額も含めて確定申告を行う必要があります。
寄附を行う前に、その年の収入や控除状況をもとに上限額を確認しておきましょう。
(5)住宅ローン控除を利用する
住宅ローン控除は、住宅ローンを利用してマイホームを購入・新築した場合などに、一定の要件を満たすことで利用できる税額控除です。
所得控除とは異なり、計算された所得税額などから控除額を直接差し引ける点が特徴です。
2026年に入居する場合も制度は継続されており、住宅ローンの年末残高などをもとに、原則として0.7%の控除額を計算します。
控除期間や対象となる借入限度額は、住宅の種類や省エネ性能、新築住宅か既存住宅かなどによって異なります。
住宅によっては、最長13年間の控除を受けられます。
例えば、控除対象となる年末時点の住宅ローン残高が3,000万円であれば、単純計算による控除額は次のとおりです。
3,000万円 × 0.7% = 21万円
ただし、実際の控除額には住宅ごとの上限があり、所得税や住民税から控除できる金額にも限度があります。
また、住宅ローン控除には合計所得金額2,000万円以下という所得要件があります。
収入が高い勤務医は、住宅を購入する前に、自分が適用要件を満たすか確認しておくことが大切です。
(6)法人を活用して節税する
副業収入や不動産収入、資産運用による収益などが大きくなった場合は、資産管理法人やプライベートカンパニーを設立する方法もあります。
法人を設立すると、個人の給与所得とは分けて法人の収益や費用を管理できます。
法人を活用した主な方法には、次のようなものがあります。
・事業に必要な費用を法人の経費として計上する
・法人に利益を残して将来の資金に充てる
・将来支給する役員退職金を準備する
所得が高い勤務医の場合、個人に適用される所得税率と法人の税負担を比較した結果、法人化によって負担を抑えられるケースがあります。
ただし、勤務医として受け取る給与を、自由に法人の売上へ移せるわけではありません。
法人で管理できるのは、原則として法人が実際に行った事業による収入です。
また、法人の設立後は、登記費用や税理士費用、法人住民税などの維持コストも発生します。
すべての勤務医に適した方法ではないため、副業収入や資産運用による利益の規模と、法人の設立・維持にかかる費用を比較したうえで検討しましょう。
勤務医にかかる税金と節税の基本を解説

勤務医が適切な節税対策を行うためには、まず給与にどのような税金や社会保険料がかかるのか、給与所得控除がどのような仕組みなのかを理解しておくことが大切です。
ここでは、勤務医にかかる税金と節税の基本について紹介します。
(2)給与所得控除の仕組みと控除額について
(3)勤務医が節税しにくい理由と活用できる対策
(1)勤務医にかかる所得税と住民税と社会保険料
勤務医が給与から負担する主な税金・社会保険料は、次のとおりです。
・住民税
・健康保険料
・厚生年金保険料
所得税には、課税所得が高くなるほど高い税率が適用される「超過累進課税」が採用されています。
税率は5~45%の7段階に分かれており、課税所得に応じて適用される税率が変わります。

引用|国税庁「No.2260 所得税の税率」
例えば、給与収入ではなく、各種控除を差し引いた後の課税所得が1,500万円の場合、所得税率は33%の区分に該当します。
ただし、課税所得の全額に33%が課税されるわけではありません。
所得の区分ごとに異なる税率が適用され、速算表の控除額を差し引いて所得税額を計算します。
住民税の所得割は、原則として都道府県民税と市区町村民税を合わせて10%です。
そのため、所得税率33%が適用される所得部分については、住民税と合わせた負担率が40%を超える場合があります。
一方、健康保険料や厚生年金保険料は、給与などをもとに決定される「標準報酬月額」に基づいて計算されます。

(2)給与所得控除の仕組みと控除額について
給与所得控除とは、会社員や勤務医などの給与所得者に適用される控除制度です。
個人事業主や開業医は、事業のために実際に支払った費用を必要経費として収入から差し引きます。
一方、勤務医などの給与所得者は、仕事にかかった費用を一つひとつ経費として申告するのではなく、給与収入に応じて計算された給与所得控除額を差し引く仕組みです。
給与所得 = 給与収入 – 給与所得控除額
また、給与所得控除額は、給与収入に応じて段階的に計算されます。
例えば、給与収入が660万円超850万円以下の場合は、次の式で計算します。
給与所得控除額=給与収入×10%+110万円
給与収入が850万円を超える場合、給与所得控除額は原則として上限の195万円です。
給与所得控除は、通常、勤務先の年末調整や源泉徴収の計算に反映されます。
そのため、勤務医自身が給与所得控除を受けるために、特別な申請をする必要はありません。
(3)勤務医が節税しにくい理由と活用できる対策
勤務医が節税しにくいといわれる主な理由は、給与所得者であるため、仕事に関連する支出を自由に経費として計上できないことです。
勤務医が勤務先から受け取る給与は、給与所得として扱われます。
多くの場合、所得税は給与から源泉徴収され、勤務先の年末調整によって税額の精算が行われます。
一方、個人事業主や開業医は、診療所の設備費やスタッフの人件費、医療材料費など、事業に必要な支出を必要経費として計上できます。
しかし、勤務医は雇用契約に基づいて給与を受け取るため、学会費や医学書の購入費、研修費などを自己負担していても、それらを自由に給与収入から差し引けるわけではありません。
また、給与所得控除額には上限が設けられており、原則として195万円が上限です。
仕事に関連する自己負担が多くても、その金額に応じて給与所得控除が自動的に増える仕組みではありません。
こうした制約がある勤務医だからこそ、次のような利用可能な制度を、自分の状況に合わせて組み合わせることが重要です。
・iDeCo
・生命保険料控除
・ふるさと納税
・住宅ローン控除
それぞれの適用条件を確認し、年末調整や確定申告で利用できる控除を漏れなく活用することが、勤務医の税負担を抑えることにつながります。
勤務医が特定支出控除を活用して節税するためのポイント

特定支出控除は、勤務医などの給与所得者が仕事のために自己負担した費用について、一定の条件を満たすことで所得から差し引ける制度です。
給与所得者が利用できる、実際の支出を反映した数少ない控除制度のひとつであるため、対象となる費用や計算方法を正しく理解しておくことが大切です。
ここでは、勤務医が特定支出控除を活用して節税するためのポイントを紹介します。
(2)特定支出控除の計算方法と節税効果を確認する
(3)申告に必要な書類を準備して確定申告を行う
(1)勤務医が特定支出控除の対象にできる費用を確認する
勤務医の場合、次のような費用が特定支出の対象となる可能性があります。
・転居費
・研修費
・資格取得費
・帰宅旅費
・職務に関連する図書の購入費
・職場で着用する衣服の購入費
・職務に関係する交際費
なかでも、勤務医に関係しやすい支出としては、次のようなものが挙げられます。
| 医師に関係しやすい支出例 | 内容 |
|---|---|
| 専門医資格の取得・更新費用 | 診療業務やキャリア形成に必要な資格に関する費用 |
| 学会参加費・年会費 | 医学知識の習得や専門分野の研鑽に必要な費用 |
| 医学書・専門誌の購入費 | 診療や研究に必要な書籍・資料の購入費 |
ただし、これらの支出がすべて自動的に控除対象となるわけではありません。
特に、図書費・衣服費・交際費などの「勤務必要経費」については、勤務先から職務上必要な支出であることの証明を受ける必要があります。
特定支出控除の利用を検討する際は、領収書や支払い明細を保管するだけでなく、対象となる支出かどうかを勤務先の総務・経理担当者へ事前に確認しておくことが大切です。
(2)特定支出控除の計算方法と節税効果を確認する
特定支出控除によって給与所得から追加で差し引ける金額は、次の式で計算します。
特定支出控除額 = 特定支出の合計額 – 給与所得控除額 × 1/2
特定支出の合計額が、給与所得控除額の2分の1を超えた場合、その超過部分を給与所得から差し引けます。
基準となる給与所得控除額は給与収入によって異なるため、すべての勤務医が同じ金額になるわけではありません。
まずは、自分の給与収入に対応する給与所得控除額を確認する必要があります。
例えば、年収1,500万円の勤務医で、年間の特定支出額が150万円だった場合を見てみましょう。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 給与所得控除額 | 195万円 |
| 給与所得控除額の1/2 | 97万5,000円 |
| 年間の特定支出額 | 150万円 |
| 特定支出控除額 | 52万5,000円 |
計算式は、次のとおりです。
150万円-97万5,000円=52万5,000円
この場合、52万5,000円を給与所得から追加で差し引けます。
仮に、所得税率33%・住民税率10%の合計43%で単純計算すると、税負担の軽減額の目安は次のとおりです。
52万5,000円×43%=約22万5,000円
ただし、実際の税額は、適用される所得税率や所得控除などによって異なります。
上記はあくまで目安として考えましょう。
また、支払った費用が特定支出として認められるためには、定められた条件を満たす必要があります。
領収書や明細書、業務との関係を確認できる資料を日頃から整理しておくことが大切です。
(3)申告に必要な書類を準備して確定申告を行う
特定支出控除を利用するためには、確定申告が必要です。
年末調整では適用できないため、勤務医自身が必要書類を準備し、申告手続きを行います。
申告の際に必要となる主な書類は、次のとおりです。
・特定支出に関する勤務先の証明書
・給与所得の源泉徴収票
・確定申告書
領収書や明細書には、交通費や学会費、医学書の購入費、研修費など、特定支出として申告する費用の内容がわかるものを用意します。
また、特定支出控除では、勤務先が発行する証明書も必要です。
申告期限の直前になって慌てないよう、勤務先へ早めに発行を依頼しておきましょう。
確定申告の期間は、原則として対象となる年の翌年2月16日から3月15日までです。
税務署へ提出するほか、国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用して申告することもできます。
特定支出控除は、対象となる費用を支払っていても、確定申告をしなければ適用されません。
利用を検討している場合は、日頃から領収書や支払い記録を整理し、勤務先の証明書を含めた必要書類を早めに準備しておきましょう。
勤務医が知っておきたいiDeCoの節税効果と活用方法

iDeCoは、老後資金を準備しながら、所得税や住民税の負担軽減も期待できる制度です。
勤務医が活用する際は、勤務先の企業年金制度によって異なる掛金の上限や、原則として60歳まで資金を引き出せない点を理解しておくことが大切です。
ここでは、勤務医が知っておきたいiDeCoの節税効果と活用方法を紹介します。
(2)所得税率に応じた年間の節税効果をシミュレーションする
(3)資金を使う時期に合わせてiDeCoとNISAを使い分ける
(1)勤務先の企業年金制度に応じた掛金上限額を確認する
勤務医のiDeCo掛金上限額は、勤務先に企業年金制度があるかどうかによって異なります。
企業年金制度とは、勤務先が従業員の老後資金形成を支援するために設ける制度です。
代表的なものとして、企業型確定拠出年金(企業型DC)や確定給付企業年金(DB)があります。
2026年11月までの掛金上限額は、次のとおりです。
| 勤務先の制度 | iDeCo掛金上限額(月額) | 年間拠出額 |
|---|---|---|
| 企業年金制度なし | 2万3,000円 | 27万6,000円 |
| 企業年金制度あり | 原則2万円まで | 最大24万円 |
なお、2026年12月からは掛金上限額が引き上げられます。
企業年金制度がない会社員は、月額2万3,000円から6万2,000円へ引き上げられる予定です。
企業年金制度がある場合は、企業年金とiDeCoの掛金を合わせて月額6万2,000円が上限となります。
(2)所得税率に応じた年間の節税効果をシミュレーションする
iDeCoで支払った掛金は、全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、その年の所得から差し引かれます。
iDeCoによる税負担の軽減額は、掛金額や所得税率、住民税率によって異なります。
ここでは、2026年11月までの上限額をもとに、企業年金制度のない勤務先で働く勤務医が、年間27万6,000円を拠出するケースを見てみましょう。
所得税率33%、住民税率10%の合計43%が適用されると仮定した場合、税負担の軽減額は次のように計算できます。
27万6,000円×43%=約11万8,000円
このケースでは、年間約11万8,000円の税負担軽減が見込まれます。
ただし、所得税率は年収ではなく、各種控除を差し引いた後の課税所得によって決まります。
そのため、実際の軽減額は、所得や家族構成、利用している所得控除などによって異なります。
また、iDeCoでは掛金の所得控除に加えて、運用中に得た利益も非課税です。
受取時には、受取方法に応じて退職所得控除や公的年金等控除を利用できる場合があります。
(3)資金を使う時期に合わせてiDeCoとNISAを使い分ける
iDeCoとNISAは、どちらも資産形成を支援する税制優遇制度ですが、優遇の内容や資金の使いやすさが異なります。
iDeCoの主な特徴は、掛金の全額が所得控除の対象になることです。
所得税や住民税の負担を軽減できるため、所得税率が高い勤務医ほど、所得控除による効果を得やすい傾向があります。
ただし、iDeCoの年金資産は、原則として60歳まで受け取れません。
受給を開始できる年齢は、加入期間などによって異なる場合があります。
一方、NISAは、対象となる金融商品から得た売却益や配当・分配金が非課税になる制度です。
掛金に相当する投資額は所得控除の対象になりませんが、保有する商品は必要に応じて売却できます。
| 項目 | iDeCo | NISA |
|---|---|---|
| 主なメリット | 掛金が全額所得控除の対象になる | 運用益や配当・分配金が非課税になる |
| 税制優遇のタイミング | 拠出時・運用時・受取時 | 運用時 |
| 資金の引き出し | 原則60歳まで不可 | 保有商品をいつでも売却可能 |
| 向いている資金 | 老後資金など、長期間使う予定のない資金 | 将来使う可能性がある中長期の資金 |
勤務医の場合、老後まで使う予定のない資金にはiDeCoを活用し、住宅購入費や教育費など、途中で使う可能性がある資金はNISAで運用するといった使い分けが考えられます。
ただし、どちらの制度を利用する場合も、将来必要になる資金を確保したうえで、無理のない範囲で取り入れることが大切です。
勤務医の法人活用による節税方法と注意点

副業収入や資産運用による収益がある勤務医は、プライベートカンパニーや資産管理法人を設立することで、個人とは異なる形で収入や費用を管理できる場合があります。
ただし、法人を設立すれば必ず節税できるわけではありません。
法人化による税負担の変化だけでなく、設立費用や維持費なども含めて判断することが大切です。
ここでは、勤務医が法人を活用して節税する仕組みと注意点について紹介します。
(2)事業に必要な費用を法人の経費として計上する
(3)家族への役員報酬で所得を分散する
(4)設立費用と維持コストを踏まえて法人化を判断する
(1)法人化による税率差と経費計上で税負担を抑える
法人の活用によって節税できる可能性がある理由のひとつは、個人に適用される所得税率と、法人にかかる税率の違いです。
個人の所得税には、課税所得が高くなるほど税率も高くなる超過累進課税が採用されています。
一方、法人の税負担は、会社の所得金額や資本金、所在地などによって異なります。
そのため、副業や資産運用による利益が一定規模に達している場合は、個人で収入を得る場合と法人で得る場合を比較することで、税負担を抑えられる可能性があります。
また、法人の事業に必要な支出を経費として計上したり、実際に業務を行う家族へ役員報酬を支給したりすることで、所得を分散できる場合があります。
ただし、勤務医として受け取る給与を自由に法人の収入へ移せるわけではありません。
講演や執筆、医療コンサルティングなど、法人が実際に行った事業による収入であることが前提です。
(2)事業に必要な費用を法人の経費として計上する
勤務医が法人を設立した場合、法人の事業に必要な支出であれば、経費として計上できる可能性があります。
主な費用の例は、次のとおりです。
| 費用項目 | 活用例 |
|---|---|
| 役員報酬 | 法人の業務を行う本人や家族へ役員報酬を支給する |
| 役員社宅の家賃 | 法人名義で住宅を契約し、一定の条件を満たしたうえで社宅として利用する |
| 生命保険料 | 法人契約の保険を活用する |
| 交際費 | 事業に関係する取引先との会食費などを計上する |
| 車両関連費用 | 業務で使用する車両の購入費や維持費などを計上する |
| 通信費 | 業務で使用する携帯電話やインターネットの料金を計上する |
| 消耗品費 | パソコンや事務用品など、業務に必要な備品を購入する |
例えば、勤務医が講演や執筆、医療顧問などの副業を行っている場合、契約や業務の実態を法人へ移すことで、その収入を法人の売上として管理できる場合があります。
そのうえで、事業に必要な費用を法人の経費として計上すれば、法人の課税所得を抑えられる可能性があります。
ただし、役員社宅では役員から一定の賃貸料相当額を受け取ることが必要です。
また、法人契約の生命保険料も、保険の種類や受取人、契約内容などによって税務上の取り扱いが異なります。
事業との関連性や利用実態を明確にし、領収書や契約書などの記録を保管しておくことが大切です。
(3)家族への役員報酬で所得を分散する
資産管理法人を設立し、配偶者や家族を役員にすることで、法人の利益を役員報酬として分散できます。
例えば、法人利益300万円を役員報酬として勤務医本人だけが受け取る場合と比べ、配偶者へ役員報酬を支給することで、世帯全体の所得税負担を抑えられる可能性があります。
また、役員報酬は法人の損金に算入できるため、法人税の負担軽減にもつながるでしょう。
ただし、役員報酬を経費として認めてもらうには、定期同額給与などの要件を満たす必要があります。
(4)設立費用と維持コストを踏まえて法人化を判断する
法人化を検討する際は、節税効果だけでなく、設立費用や維持費も考慮することが大切です。
法人設立時には、以下のような費用が発生します。
| 法人の種類 | 設立費用の目安 |
|---|---|
| 株式会社 | 約20〜30万円 |
| 合同会社 | 約6〜15万円 |
上記の費用は1つの目安ですが、さらに設立後も税理士への顧問料や法人住民税の均等割などさまざまな費用がかかるのです。
一般的には、副業収入が大きい場合や個人の所得税率が高い勤務医ほど、法人化によるメリットを得やすい傾向があります。
勤務医が確定申告で押さえておきたい3つのポイント

勤務医でも、収入の金額や勤務先の数、副業の有無によっては、確定申告が必要になることがあります。
また、医療費控除や特定支出控除など、年末調整では適用できず、確定申告をすることで受けられる控除もあります。
ここでは、勤務医が確定申告で押さえておきたい3つのポイントについて紹介します。
(2)医療費控除の計算方法と申告手順を理解する
(3)副業やアルバイト収入を漏れなく確定申告する
(1)勤務医が確定申告を行うべきケースを確認する
勤務医が確定申告をしなければならない主なケースは、次のとおりです。
・1か所から給与を受け取り、給与所得・退職所得以外の所得が年間20万円を超える場合
・2か所以上から給与を受け取り、年末調整されなかった給与収入と給与所得・退職所得以外の所得の合計額が年間20万円を超える場合
・特定支出控除を利用する場合
・住宅ローン控除を初めて利用する場合
・医療費控除を受ける場合
・ふるさと納税のワンストップ特例制度を利用できない場合
勤務医の場合、常勤先とは別の医療機関で非常勤勤務をしているケースも少なくありません。
ただし、2か所以上から給与を受け取っているだけで、必ず確定申告が必要になるわけではありません。
また、給与所得者が住宅ローン控除を初めて受ける場合は、必要書類を添付して確定申告を行います。
2年目以降は、一定の条件を満たせば勤務先の年末調整で控除を受けることが可能です。
ふるさと納税については、寄附先が5団体以内で、ほかに確定申告をする必要がない場合、ワンストップ特例制度を利用できます。
一方、寄附先が5団体を超えた場合や、医療費控除などを受けるために確定申告を行う場合は、ワンストップ特例の申請が無効になります。
その場合は、ワンストップ特例を申請した寄附分も含めて確定申告しなければなりません。
勤務先が1か所のみで、給与収入が2,000万円以下であり、副業による所得もなく、必要な控除の手続きが年末調整で完了している場合は、原則として確定申告は不要です。
ただし、確定申告によって税金の還付を受けられる場合もあります。
毎年の収入や控除の状況を確認し、自分に申告が必要かを判断することが大切です。

(2)医療費控除の計算方法と申告手順を理解する
医療費控除とは、その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が一定額を超えた場合に、超過した金額を所得から差し引ける制度です。
勤務医本人が支払った医療費だけでなく、生計を同じくする配偶者や子供など、家族のために支払った医療費も合算できます。
医療費控除額は、次の式で計算します。
医療費控除額 = 実際に支払った医療費 – 保険金などで補てんされた金額 – 10万円
なお、その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、10万円ではなく、総所得金額等の5%を差し引きます。
医療費控除額の上限は200万円です。
勤務医本人の治療費だけでなく、家族の入院費や治療費などが重なると、医療費控除を利用できる場合があります。
対象となる医療費を正確に把握できるよう、日頃から領収書や医療費通知を整理しておきましょう。
また、確定申告では、医療費の領収書を提出する代わりに「医療費控除の明細書」を添付します。
領収書は原則として提出する必要はありませんが、税務署から提示や提出を求められる場合に備え、確定申告期限から5年間は自宅で保管しなければなりません。
また、通常の医療費控除とセルフメディケーション税制は併用できません。
セルフメディケーション税制とは、一定の健康診査や予防接種などを受けている人が、対象となる市販薬を購入した場合に利用できる制度です。
両方の条件を満たしている場合でも、利用できるのはいずれか一方です。
年間の医療費や対象となる医薬品の購入額を比較し、控除額が大きくなる方を選びましょう。

(3)副業やアルバイト収入を漏れなく確定申告する
非常勤勤務やアルバイト、講演、執筆などによる収入がある勤務医は、所得の種類や金額に応じて確定申告が必要になります。
非常勤先の医療機関から雇用契約に基づいて受け取る給与は、原則として給与所得です。
一方、講演料や原稿料などは、活動の内容や実態によって雑所得または事業所得として扱われます。
一般的な副業として受け取る原稿料や講演料は、雑所得に該当するケースがあります。
この20万円は、売上や収入の金額ではなく、収入から必要経費を差し引いた後の「所得」で判断します。
例えば、講演料として年間30万円を受け取り、講演のために直接必要となった交通費や資料作成費が8万円だった場合、所得は22万円です。
30万円-8万円=22万円
このケースでは、副業所得が20万円を超えるため、原則として確定申告が必要になります。
副業所得を計算する際は、その収入を得るために直接必要となった費用を必要経費として差し引ける場合があります。
主な費用の例は、次のとおりです。
・講演資料の作成費
・執筆に必要な書籍代
・業務で使用するソフトウェアの利用料
・副業に使用した通信費
ただし、私生活でも使用する費用については、全額を必要経費にできるとは限りません。
副業に使用した部分を明確に分け、領収書や支払い記録を保管しておくことが大切です。
また、非常勤先から給与を受け取っている場合は、講演料や執筆料と確定申告の判断基準が異なります。
収入の種類を区別したうえで、常勤先と非常勤先の源泉徴収票、講演料や原稿料の支払調書、必要経費の領収書などを整理しておきましょう。
副業収入や非常勤勤務による給与がある場合は、申告漏れを防ぐためにも、毎年すべての収入先と金額を確認することが重要です。
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勤務医が節税するときに押さえたい3つの注意点

節税対策を取り入れる際は、期待できる効果だけでなく、制度の適用条件やリスクについても理解しておくことが大切です。
条件を十分に確認せずに利用すると、控除を受けられなかったり、申告漏れを指摘されたりする可能性があります。
ここでは、勤務医が節税するときに押さえたい3つの注意点について解説します。
(2)副業や非常勤収入の申告漏れを防ぐ
(3)節税効果だけでなく資金計画やコストも踏まえて選ぶ
(1)特定支出控除の適用条件と必要書類を確認する
特定支出控除を利用するためには、支出した費用が職務を行ううえで直接必要なものとして、一定の条件を満たしている必要があります。
勤務医として知識を身につけるための支出であっても、私的な目的が含まれている場合は、控除の対象にならない可能性があります。
例えば、次のような支出は、原則として特定支出に該当しません。
・個人的な興味に基づく学習費用
・私的な旅行にかかった費用
特に、図書費・衣服費・交際費などの「勤務必要経費」を申告する場合は、勤務先から業務上必要な支出であることの証明を受ける必要があります。
勤務先の証明がないまま申告すると、特定支出控除が認められない可能性があります。
制度の利用を検討している場合は、費用を支払う前に勤務先の総務や経理担当者へ確認し、証明書を発行してもらえるかを確認しておきましょう。
あわせて、領収書や支払い明細、業務との関係がわかる資料を保管しておくことも大切です。
(2)副業や非常勤収入の申告漏れを防ぐ
勤務医が非常勤勤務や講演、執筆などの副業をしている場合は、収入の種類や所得金額によって確定申告が必要になります。
申告が必要であるにもかかわらず手続きを行わなかった場合は、本来納めるべき税金に加えて、延滞税や加算税が課される可能性があります。
また、講演料や原稿料などについては、報酬を支払った事業者から税務署へ支払内容が提出される場合があります。
そのため、「少額だから申告しなくても分からない」と考えず、すべての収入を正確に把握することが重要です。
特に、複数の医療機関で非常勤勤務をしている場合は、それぞれの勤務先から受け取った源泉徴収票を確認し、必要に応じて給与を合算して申告します。
申告漏れを防ぐためにも、次の情報を日頃から整理しておきましょう。
・給与や報酬の金額
・所得の種類
・源泉徴収された税額
・副業収入を得るために支払った必要経費
収入先や金額を一覧で管理しておくと、確定申告が必要かどうかを判断しやすくなります。
(3)節税効果だけでなく資金計画やコストも踏まえて選ぶ
節税効果が期待できる制度であっても、自分の資金状況や将来の目的に合っていなければ、必ずしも適した選択とは限りません。
制度を選ぶ際は、税金がどの程度軽減されるかだけでなく、資金の使いやすさや将来の支出予定も考慮することが大切です。
例えば、iDeCoは掛金の全額が所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担軽減を期待できます。
一方で、拠出した資金は原則として60歳まで引き出せません。そのため、住宅購入費や教育費など、近い将来に使う予定のある資金を拠出すると、必要なときに利用できなくなる可能性があります。
また、法人化には、法人の設立費用や税理士費用、法人住民税、社会保険料などの維持コストがかかります。
副業収入や資産運用による利益が小さい場合は、節税によって減る税金よりも、法人の維持にかかる費用のほうが大きくなることもあります。
節税制度を選ぶ際は、次の点を総合的に確認しましょう。
・必要なときに資金を引き出せるか
・将来の資産形成にどのような影響があるか
・制度の利用や管理にどの程度の手間がかかるか
・手数料や維持費などのコストがいくらかかるか
勤務医が節税効果を高めるための3つのポイント

勤務医が節税効果を高めるためには、個別の制度を知るだけでなく、自分の状況に合った方法を組み合わせて活用することが大切です。
ここでは、勤務医が節税効果を高めるための3つのポイントを紹介します。
(2)長期的な資産形成も考えて節税制度を選ぶ
(3)税理士などの専門家へ早めに相談する
(1)利用できる所得控除と税額控除を漏れなく活用する
節税効果を高めるためには、自分が利用できる所得控除や税額控除を確認し、漏れなく申告することが重要です。
主な所得控除には、次のようなものがあります。
・配偶者控除
・扶養控除
・社会保険料控除
・生命保険料控除
・医療費控除
・寄附金控除
・小規模企業共済等掛金控除
・特定支出控除
ふるさと納税による寄附金控除や、iDeCoの掛金に適用される小規模企業共済等掛金控除なども、勤務医が活用を検討しやすい制度です。
一方、住宅ローン控除や配当控除などは、算出された所得税額から一定額を直接差し引く「税額控除」に該当します。
年末調整や確定申告の際は、適用できる控除がないかを確認し、申告漏れを防ぎましょう。
(2)長期的な資産形成も考えて節税制度を選ぶ
節税制度を選ぶ際は、目先の税負担だけでなく、将来の資産形成や資金の使い道まで考えることが大切です。
例えば、iDeCoは掛金が所得控除の対象となるため、所得税や住民税の負担軽減を期待できます。
また、老後資金を計画的に準備できる点も特徴です。
一方、NISAは投資によって得た利益が非課税になる制度であり、iDeCoと比べて資金を引き出しやすいという違いがあります。
老後まで使う予定のない資金にはiDeCo、住宅購入費や教育費など途中で使う可能性がある資金にはNISAを活用するなど、目的に合わせて使い分けることが考えられます。
また、節税によって手元に残った資金を貯蓄や投資に回すことで、将来の資産形成につなげることもできます。
(3)税理士などの専門家へ早めに相談する
節税対策を適切に進めるためには、早い段階で税理士などの専門家へ相談することも重要です。
勤務医の場合、収入や働き方、副業の有無、家族構成などによって、利用できる控除や適した対策が異なります。
特に、次のような内容は専門的な判断が必要になることがあります。
・確定申告が必要となる条件
・副業収入の所得区分
・法人化による節税効果
・法人の設立・維持にかかる費用
まとめ

今回は、勤務医が活用できる主な節税方法や、確定申告で利用できる控除、副業・アルバイト収入がある場合の申告について紹介しました。
勤務医は給与所得者であるため、個人事業主のように幅広い支出を経費として計上することはできません。
そのため、特定支出控除やiDeCo、ふるさと納税、生命保険料控除、住宅ローン控除など、利用できる制度を把握し、自分の状況に合わせて組み合わせることが重要です。
なかでもiDeCoは、掛金の全額が所得控除の対象となるため、所得税率が高い勤務医ほど税負担の軽減効果を得やすい傾向があります。
また、副業収入や不動産収入が増えてきた場合は、法人の活用を検討することで、所得分散や経費計上の選択肢が広がる可能性もあります。
ただし、節税効果は、収入や家族構成、勤務先の数、副業の有無、住宅ローンや保険の加入状況などによって異なります。
制度を利用する際は、適用条件や確定申告の必要性を確認し、目先の節税額だけでなく、将来の資産形成まで含めて検討することが大切です。
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